空に近い場所で
地図によると、五階が頂上で、俺たちはようやくたどり着いたようだ。
だからと言って、ボスモンスターがいるわけでもないし、驚くような宝が眠っているわけでもない。
したがって、感慨深さなんてものは存在しないのである。
「まあ、睨んだ通りだったかな。これが、光を飛ばす装置だよ」
その装置は中央ではなく、階のあちこちに置かれていた。
数としては5、6個ってところか。
一か所に置くよりは、より遠くまで光で照らすことができるだろう。が、維持ができるかどうかというのはまた別問題である。
現に今は使われていない。起動するかどうかすら謎である。
「叩いてみっか」
「そんな原始的な直し方でいいのかい?」
「壊れようが責任問題には問われない。トンズラすればいい」
「そこまで無責任な勇者もどうなんだい?」
ルールや常識には囚われない、型破りな生き方をしたいです。ウィナがいる限りそれは永遠に限らないけど。
かといって、ウィナが邪魔だとかそういう話ではない。
むしろ、近くにいてもらわないと困る。
たぶん、俺だけだったら、本当に路頭に迷うことになるからな。今でこそ、色々俺が指示を出したり、決定をしたりしてるけど、それもウィナがいてくれるからこそできている話だ。以前の旅が活きているということだな。
「ただ、こうして中央だけ空いてるってのもなんか奇妙だよな。こんだけ大掛かりなもんを動力なしで動かすのは難しくないか?」
「魔法使ってたんじゃない?」
「それでも、かなりの人数使うだろうし、そもそも人件費だってバカにならんだろう」
「なんか、ソードが頭良く見える」
「それは錯覚だろう」
俺が言うより先にカルマさんによって否定された。
なんで、俺はこう毎回貶されるんでしょうか?
「ま、それでも動力源が別のところにあるんじゃないかって言いたいんだよね?」
「ただ、今こうして登ってきてそれらしきものがなかったし、地図にも載ってない。隠し部屋って可能性もなくはないけど……」
部屋をぐるっと一周してみる。
ここは何か手入れをされていたか、植物がここまで成長しなかったのか、少し小汚いという程度だ。歩き回って危険は少なそうに見える。
「ん?」
「なんかあった?」
「いや、これ」
非常時以外押さないでください
「物凄く怪しいね」
「今まさに非常時だ」
ただ、少しプロテクトされていて、少し力を入れるぐらいでは割れそうにない。
とりあえず、思いっきり殴ってみた。
ガッ
「痛い……」
「涙目で訴えられても……でも、これじゃ非常時にも簡単に割れそうにないね」
「なんのために設置してんだよ」
「ん〜。何らかの危険が迫ってたけど、誰もこれを破壊できなくて、そのままお陀仏したとか」
「そのまま仏さんだけ回収して、放置してるってことか?」
「可能性の話だよ。でも、普通に力を加えて破壊できないんじゃ、他に手順があるとか」
「そんなもん俺たちが知るわけないでしょう」
「いえ、ソードさん。ここに、それらしき文献が刻まれてます」
「…………」
スターがある一つの光を飛ばす装置(名前は知らない)のところに何か見つけたようだ。
「どうやら、数種類の魔法を組み合わせてぶつけることでそのプロテクトを破壊する仕組みのようですね。どこかの面倒な魔法使いが作ったはいいけど、誰も破壊できなくて放置されてるとかそんなところでしょう。そもそも、かなり長い年月ここには人が立ち入ってないようですし」
「なるほど。ウィナが使える魔法を全部一緒にぶつければいいわけだな?」
「できるか!」
「えっ……?」
「いや、そこで『できないの?』って目を向けないで。魔法の出し方教えたでしょうが」
「ああ……。スター。その魔法って何を使えばいいか分かるか?」
「灼熱の炎で溶かし、絶対零度の氷で凍らせ、稲妻の如き光を浴びさせ、竜巻の如き風を巻きおこせ、だということです」
「回りくどい。要約してくれ」
「火の魔法で、高温にした後、氷魔法で一気に冷やし、雷の魔法で電気を発生させて、風の魔法で何かが起こるんでしょう」
「風だけ役割分かってねえじゃねえか」
「プロテクトを破壊するのに必要なものだとは思えないからですよ」
やってみないとわからないということか。ここに来て、引き返すのも癪なので、やってみるか。
「ソードは何一つやらないけどね」
「魔法は使えん」
「胸を張っていうことでもない……」
ウィナは万能に使えるが、他の人は使える魔法は限られているので、ウィナがフォローしていく動きだ。
無論、俺は後方待機。被害は被りたくないです。
「あと、四人でいいみたいだから、うーん、最後は私がやるよ。風の魔法使える人っていた?」
確認を取っていくが、全員首を横に振ったので、ウィナがやることに。
風の魔法って使用用途があまりないので、優先順位として低いのだ。
結局もう一人はスターが外れた。
スターもあまり使える程度ではないらしいし。使えないことはないんだろうけど。
役割はこうなった。
火→アリス
氷→ロロ
雷→カルマ
風→ウィナ
うちのパーティの男性陣の役に立たなさよ。女の子にばっかり頼ってすいません。
ロロちゃんが猫のままじゃないかといつの間に元に戻ってるんだと聞かれそうだから、先に弁明しておくと、5階にたどり着いた時点で元に戻りました。ロロちゃんが飽きたらしい。したがって普通に魔法を使えます。
スターが読んでたやつ、かなり大仰に書いてあったみたいだけど、大丈夫だろうか。
心配しながら見つめているとどうやら始まったようだ。
アリスが火の玉を放つ。
キィン、と謎の効果音が鳴った。第一段階クリアということだろうか。
次に、ロロちゃんが氷の冷気を放った。
「ロロちゃん!寒い!」
「少しの間ですから我慢してください」
途端に温度が下がるもんだから、叫んじまったよ。
スターに諭されて、黙ることにする。
寒さのあまりに、膝も震えてるけど。
次は、カルマさんだ。
ぶっちゃけ実力は未知数だ。あの時のクエストでは、特に何もしてなかったし。
まあ、普通に魔法を放つぐらいは問題ないだろう。
と思っていたら、急に辺りが暗くなりだした。
そして、普通ではあり得ない雷がプロテクトに命中する。
どうありえないかって、普通上から下へと行くはずなのに、窓から横向きに入ってきおった。
命中したのを確認して、ウィナが竜巻のような風を巻き起こ……
「待て待て待て!飛ぶ!色々飛ぶ!」
なんで、あいつ最大パワーでやってんだよ!
ウィナが台風の目となって、そのあたりは無風となっているが、周りがすごいことになってる。
無論、魔法なので痛みなどはないが、風という現象は身で感じることになっている。
どうなってるのかって、飛ばされるということはさすがにないが、立ってられない。
止むまで、ジッとしている間に、パリンと音を立てて、何かが壊れたようだ。
その音とともに風も止んだ。
「大丈夫?」
「これが大丈夫に見えますかね?」
「あはは。予定外に強くしちゃったよ」
「ったく……」
ウィナに手を借りて立ち上がる。
他も各々手を借りてたが、男で借りてたのは俺だけでした。なんだか敗北感。
それはともかく、プロテクトは外れてボタンがむき出しになっていた。
「これって、一度しか押せないのか?」
「まあ、やってみないことには分からないよね」
「まあ、流石にいいとこ取りで押すわけにはいかないから、押したいやつ押していいぞ」
「じゃあ私押す!」
ロロちゃんが元気よく、そして躊躇なく押した。
君の遠慮のなさには僕は脱帽です。
ゴゴッ
どこか遠くで、何かが動いた音がした。
やっぱり、どこかのスイッチだったのだろう。
「じゃあ行きましょうか」
「……これどうします?」
スターが心配そうに見上げていた。
人間に影響はなかったが、他の物質に影響があったらしく、天井がちらほら穴が開いて、崩れ落ちそうだった。
「気にするな。なんか言われても元から腐ってたとか言えばいい」
「言及する人もいませんけどね」
俺たちは、いつもより高い場所で少し冷たい風を受けていた。




