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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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猫の習性

 話は変わるが、猫という動物がいかなようなものかご存知だろうか。

 無論、俺はそんな知識などないわけだが、イメージだけで言えば、自由奔放で甘え上手だということだな。

 ……ロロちゃんにぴったり当てはまるぞ。ロロちゃんはやっぱり、猫の方が分量が多いんでないですかね?

 別に今回は猫の話をするわけではないのであしからず。


「なあ、ロロちゃんは猫に変身できるよな。なんか変身できるものってて基準とかあるのか?」


「んー、別に聞いたことないけど。元々変身する能力は私たち代々に伝わってる魔法みたいなものだし」


「性格に影響するとか?」


「もー、性格って人格形成がされる3歳ぐらいまでにはだいたい決まるんだよ?」


「ロロちゃんの場合は30年あるんじゃね?」


「こっちと向こうで時間の流れが違うものなのかもしれないし」


「そりゃそうだな」


 だからこそ見た目も相まって12歳ぐらいということにしてるし。でも、ロロちゃんが小さいだけで、普通12歳の女の子はもう少し大きいような……。まあいいか、可愛いし。


「それより、なぜロロちゃんがそんなことを知っている。ことわざすら適当なのに」


「ウィナからちょこちょこ勉強教えてもらってるもん」


「ソードもロロちゃんを見習って勉強したら?」


「俺はこの身一つでできる職業に手をつけるさ」


「本当に護衛の仕事ぐらいしかできなさそうだね……」


「スターよ。いい加減考えてくれたか?」


「僕のところより、ウィナさんのところで雇って貰えばいいんじゃないですか?用心棒ぐらいにはできるでしょうし、薄給で雇えますよ」


「うち来る?」


「今回の旅に出る前まではそうしてましたけどねぇ」


 給料は出なかったけど。


「ウィナちゃんの家は何をしてるんだい?」


「一応は薬屋です。魔法で調合した特殊なものを売ってるんですよ」


「へぇ。ウィナちゃんが看板娘なら繁盛してそうだね」


「だとよかったんですけどね」


「ん?そうでもないのかい?」


「対モンスター用とか結構扱ってて、それが売れ筋だったんですけど、ここ2年はモンスターの気配もぱったりですから。どういう路線にシフトしていくか模索してます」


「薬屋から護符屋にでもしたらどうだ?魔力込めて、あなたをお守りします的な」


「怪しい宗教団体みたいな店にしないでよ」


「実際に魔力は存在するもんだしな。効果があるかどうかはともかく」


「そういえば、うちの修道院以外にもいくつか宗教があるようですね」


 スターが思い出したかのように口にした。それに対して、何年か旅をしていたカルマさんが答えてくれる。


「互いが干渉しすぎないように、ある程度の距離は取られてるけどね。スター君がいたのはクロイツ修道院かな?位置的には」


「ああ、はい。そうです」


「なら、この辺はまた別の宗教が支配……っていうと語弊があるけど、信仰されてるね」


「こんなところじゃ、宗教もへったくれもねえけどな」


「君は無神論者のようだね」


「大抵人は大体そんなもんでしょう。スターだって、外面だけで内心は信仰は形だけにしとくか程度のもんだろうし」


「院長の顔を立てて、黙秘権を行使します」


 当たってんじゃねえか。

 そもそも、宗教も祈りたい人は祈っていいですよ的なニュアンスであり、人に強制するようなものでもないしな。

 まあ、でも何かしらの偶像を立ててすがりたいという気持ちはいつの時代も一緒なのかもしれない。


「おっ、入口が見えてきたよ」


 年長者だからという理由で、カルマさんが先導してくれていた。

 幸い方向音痴とかはなかったので、スムーズにたどり着くことができたが。


「近くで見てもよく分からないな」


「とりあえず登ってみようか」


「ですね」


 海辺に浮かぶ謎の島にそびえ立つ、謎の塔。

 謎だらけすぎるな。

 島は元からあったとして、この塔がなんのために作られたものなのか。

 見た目の寂れっぷりからして、今も使われているということはなさそうだ。

 それでも昔は何かしらの需要があって、使われていたことは確かだろう。


「この距離で塔ではないとすると、灯台かな」


「灯台か。船を使うときに、目印となる光を出すやつですよね?」


「まあ、僕も船を使ったことないけど、ここのあたりは何年も船を出してないみたいだし、使われなくなって寂れたって考えるのが妥当なところかな?」


「まあ、それを一番の仮説として調べていきましょう」


 他の奴らを牽引しながら、灯台と思われる建造物に入っていく……が、入り口前で立ち止まっているのが1人。


「アリス、何やってんだ?中行くぞ」


「い、いや、その…ね?怖いとかじゃなくて、あんまり高いところに登りたくないっていうか……」


「アリスって高所恐怖症だったか?」


「いえ、そんな話は聞いたことないですけど」


「いや、あんまり高いところ行くと城を思い出しそうで」


「ああ……」


 確かにアリスの自室は高い位置にあったな。

 閉じ込められて、命令されるがままに過ごしていた日々。

 自由に過ごせるようになったとはいえ、それはまだ1ヶ月程度のことだ。

 まだ、苦い記憶は消えていないのだろう。


「スター、そんなことないか?」


「まあ、僕はすでに修道院で解放されていたようなものですし」


「じゃあ、スター引っ張ってやれ」


「僕がですか?」


「言っとくが、拒否権はないぞ?」


「お兄ちゃんは引っ張ってくれないの?」


「あいにく、今日はウィナに傅く機械なんでな。アリスばっかに構ってたら、向こうがご立腹だ。アリスも罰ゲームに賛同したんだから、我慢しろ」


「う〜」


 俺を身売りしたから、あまり文句も言えないのか、少しむくれていたが、聞きわけたようだ。

 あとは……。


「ロロちゃん」


「あ〜、なんとなく頼まれると思ったよ。アリスのところにいればいいんだよね?猫で」


「そうだな。2人だと心配だからな。猫の状態なら余計な口出しはできないし、2人もロロちゃんだって分かってるから、むやみに喧嘩しようとはしないだろ」


「ソードはその頭をもう少し別のベクトルに向けられたらよかったのにね」


「……そうだな」


 暗がりだったこともあってか、ロロちゃんは俺の前で変身し、猫の姿となる。

 そして、アリスの元へと駆けていき、アリスの腕の中に収まった。

 思ったけど、俺がいつも担いでる時、あの状態でいてくれれば、持ち運びも楽なのだが、猫のままでいるのは楽ではないと言っていたので、常時魔力を消費している状態なのだろう。

 無理な相談ということだ。

 猫の状態では、他の魔法が使えないし、戦闘には不向きだし。

 まあ、だからこそ愛玩用として、渡り歩くこともできたとも言えるかもしれない。

 現に、ロロちゃんが腕の中にいることで、スターのことを気にせずに歩けているように見える。

 どちかと言えば、気にしてほしいところなのだが、まずは面と向かって距離を詰めてくれなきゃ意味を成さない。

 この前は失敗した。

 今回もまた……。

 いや、二度失敗しようが三度目。三度目失敗しようが四度目。

 何度でも繰り返せばいい。

 完全に壊れない限りは、修復は可能なはずだ。

 そもそも、溝はどこまで深いのか。

 表面上を取り繕うだけでなく、根本を埋めていかなければならないだろう。

 何がトリガーになるか分からない。

 でも、俺たちが、俺がいては余計にこじらせてしまうだけだ。

 俺は見守ることしかできないのかもしれない。

 あとは、2人にもしくは、喋れないロロちゃんに任せるしかない。


「あの二人、まだ仲直りできてないのかい?」


「お互い、接し方が分かんないだと思います」


「あと……あの猫はなんだい?」


「ロロちゃんです。変身ができんですよ。魔法の一種みたいですけど、本人も分かってないみたいで」


「兄である君も分からないのかい?」


 そういや、この人に対してだけはそういうことになっていた。腹違いとか、ぶっ飛んだ話もいいとこだ。


「片親が一緒なだけですからね。会ったのも最近ですから」


「……の、割にはかなり君に懐いているようにも見えるけど?」


「元がそういう気質なんでしょう。人に甘えるのが上手いというか、使うのが上手いというか。ま、でも、自分でも使ってる自覚があるからこそ、頼んだ時に引き受けてくれるんでしょうけど」


「難儀というか、君たちの関係はよくわからないね」


「誰のこと言ってるんです?」


「さて、誰のことだろうね」


 ぼかしていくあたり、俺は感づいているものだと思っているのだろう。

 確かに難儀な話だ。

 人の関係を一言で表せるのなら簡単なことはない。

 アリスとスター然り、俺とロロちゃん然り、ウィナだって絡めていくと、ただ仲間と形容するにはおかしなものなのかもしれない。

 新しい第三者の視点というのはそれだけ雄弁に語るのかもしれない。

 俺たちか考えてるものよりずっと、明確な答えを示してくれるのかもしれない。

 その答えも一つの選択肢であるだろう。

 ただ、一つの記号で表せるような陳腐なものでもないはずだ。

 ただの兄妹で終わらす関係でもあいつらはあるまい。

 姫と王子。その立場に置かれているからこそ、互いを尊重しあい、互いを高める必要がある。

 スターは剣をとった。

 アリスは……まだ、見つけていないのかもしれない。

 俺のことに盲目になりすぎてる気がする。

 そのせいで、大切なことが見えずに……いや、そうすることで無理に目を逸らしているのではないだろうか。

 やはり、早々に諦めさせるべきなのだろうか。でも、そのせいで余計に亀裂が生じたら?

 俺には、およそそんなことはできない。あいつの心に傷をつける真似なんて……。

 だから、やはり俺は見てることしかできないのか。

 俺は、先に上に登っていく二人の兄妹を見つめていた。



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