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魔王拾いました  作者: otsk
海辺の灯台編
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旅は道づれ

 旅は、人との交流が醍醐味だとか言う人もいるが、それこそ旅なんて目的がなければやってられないものでもあるかもしれない。

 目的も到達点もないものは、飽きるか、挫折してしまうものだ。

 一人なら尚更だろう。励ましてくれる人がいないのだから。

 まあ、目的も励ましてくれる仲間もいる俺がなぜこんな事を語っているかというと、どこかの誰かが旅は道づれ、世は情けとか言ったもんだから、そういう人を旅路で拾ったわけだ。

 縁もゆかりない人なら、そんな厚かましく世話になろうとも考えないだろうけど、縁もゆかりもあった人だから、無視ができなかったのだ。


「よく言うよ。俺には関係ないからほっとけって言ってたくせに」


「いや、実際関係なくね?パーティの枠的にはいっぱいいっぱいだし」


「いや~仕事クビになって、路頭に迷ってたんだ。ちょっと世話になるよ」


「あんたが一番上なんだから、年下に仕事の斡旋を頼むって間違ってるだろ」


 今、拾ってしまって旅に同行してるのは、以前のクエストで一緒になったカルマさんである。

 リーチェルさんに直接仕事をもらいに行こうとしたところ、今日付けで隠居暮らしをすると言われ、一番若い自分は事実上解雇されたとかなんとか。

 ということは、俺たちがリーチェルさんに会う前に会っていたということか。

 その後に、魔法使いの国を出て、行くあてもなくフラフラ歩いていたところ俺たちに遭遇して、こうやって一緒にいるわけだ。


「で、君たちはどこに行くんだい?」


「まあ、とりあえず……海かな?」


「海か~。今だと、気軽に遊びにって場所でもないけど、調査ってところ?」


「まあ、そっすね」


「で、君たちは泳げるの?」


 ……泳ぐ?


「泳ぐ必要があるのか?」


「いや、基本的にはないだろうけど、もしものためにさ」


 学校に行ってた組は確か、そういったカリキュラムも組まれていたと聞くが、俺は、泳ぐという行為を行ったことがない。

 どうしよう。さらに足手まといやん。


「ろ、ロロちゃんは泳げるか?」


「猫でなら」


「……猫って泳いだか?」


「いや、私に聞かれても。ロロちゃんが泳げるっていうなら泳げるんじゃない?」


 そもそも、猫でならということは、現在の状態では泳げないということか。

 猫で広大な海に放り出されたら、見つけることはほぼ不可能だ。

 そもそも、猫だと戦えないし、カモフラージュが目的のものだったし。


「まあ、そこはなんとかなるとして、私この人のことよく知らないんだけど」


「ん?ああ、そうか。あの時、隊も違ったしな。ちょっと、自己紹介しとくか」


「こういうのは年長者からするものだね。僕からしよう。僕は、カルマ・ヴィラン。魔法使いの国にいたけど、元はあそこの国の出身ではないんだ。まあ、だからこうして路頭に迷っていたわけだけどね」


 あそこの国の出身なら、他に働く先もあっただろう。それだけ、あの国は特化していたということになる。


「なら、本当はどこなんですか?」


「もっと、北の方だね。行く機会があるなら、教えるけど、魔王の城に行くのなら、特に寄る必要もないところだ。寒いだけだからね」


「それって雪降ってる?」


「いきなりだね。まあ、年中降り続いてるよ。時々、吹雪で前が見えなくなったり、足元が雪で進めなくなったりね」


「大変ですね」


「まあ、それでも街はあるから暮らせないってわけじゃないけどね。国から出てくるのは大変だったよ」


「自分の国で働く気はないんですか?」


「色々あってね。武者修行って言って、嘯いて出てきたんだ。あの国ほどじゃないけど、魔法が栄えていてね。そうでもしないと、暮らすことができないからなんだけど。僕自身もそれなりに腕に自信があったんだ。でも、上には上がいた。魔法に頼ることなく、相手を圧倒する力。もちろん、魔法は便利かつ強力な力だ。ただ、僕にはそれ以外の何かが足りない。国に戻る前に、何かを掴んでおきたい。今のままじゃ、外の国に気圧されて、敗走してきたみたいだからね」


「国を出てどれくらいなんですか?」


「もう、4、5年になるかな。多分君が思ってるよりは年上だよ。もう25だ」


 もうあと、2、3歳は若いと思っていた。


「まあ、僕はこのぐらいだ。勇者のソード君と、魔法使いのウィナちゃんは前に聞いてるから、あとは君たち三人だね」


「なら、僕からしていきます。名前は、スター・グラスフィールド。と言っても、ソードさんやウィナさんと同じ国の出身ですので、他にいうことはあまりないのですけど。つい最近まで修道院で修行してて、ソードさんに引っ張り出されました。修道院で修行してたのも、ソードさんが旅から帰ってきたらヘッポコになってからなんですけどね」


「勇者なのに扱いがぞんざいじゃないか?」


「血筋でなっただけですからね。旅から戻ってきて、弱くなってたら、そりゃなんとでも言われますって」


「えっと、君は一体何者だなんだい?」


「勇者ですけど」


「ソード君には聞いてない」


 そりゃそうだ。


「僕は一応、あの国の王子なんですよ。父が嫌で出てきているんですけど」


「誰にでも事情があるもんだね。じゃ、次は君かな?」


 アリスを見て、話しかける。

 なんかアリスの顔が営業スマイルにしか見えない。なんだ、その胡散臭い笑顔は。


「アリスっていいます。そこのとは、年子の兄妹なんです。私は今年15です」


「兄妹ってことはお姫様?」


「世間一般の認識的にはそういうことですね」


「はあ、いるものだね。うちの国はそういうものはないから。形式的に長はいるけど」


「どこの国もそういうわけじゃないんだ」


「しかし、一国の姫君たちがそろって出てきてるのは大丈夫なのかい?」


 実際には大問題だと思う。


「国王が自分の子供ほったらかしでしてね。まあ、うちの国も建国してから日が浅いですから、国民も大して気にしちゃいませんよ。王子だ、姫だ言っても、そんなに人前には出て行かないですし」


「私はお兄ちゃんが旅に出てるので同行することに決めました」


「……?つい最近まで、スター君は修道院にいたんだよね。どっちのが先に旅に出たのかな?」


「アリス。混乱するから、知らん人に話すときは俺のことはちゃんとソードさんと呼べ」


「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」


「え、と、どういうことかな?」


「こいつは自分の本当の兄のことは兄さんで、俺のことをお兄ちゃんって呼んでるんです。ややこしいし、勘違いするからやめとけとは言ってんですけどね」


「以前聞いたのはそういうことかい」


「察してくれるとありがたいです」


 カルマさんはひとつ咳払いをして最後の一人に、目を向けた。


「そ、そんなに見られると照れるなぁ」


「そんなスター的な要素を含んだものではない」


「いいじゃん、ちょっと夢見たって。ねえ、お兄ちゃん」


「やめろ!ロロちゃんまでそう呼ぶんじゃない!」


「嬉しいくせに」


「ぶっちゃければ一番嬉しい」


「正直すぎるね……えっと、自己紹介だったよね」


 今一度、ロロちゃんはカルマさんを見る。

 そして、俺の方に耳打ちをしてくる。


「兄についていってますじゃダメかな?」


「今の会話聞いてたら、兄妹じゃないことは分かるだろ」


「なら、設定変えるから」


「あんま話しこじらせるなよ」


「分かった」


「えっと、いいかな?」


「うん。私はロロ。ソードと異母兄妹です」


「うおおおい‼︎」


「な、なかなかに壮絶な人生を歩んでるようだね……」


 カルマさんの顔がだいぶ引きつってますが。

 そりゃそうだろう。


「それならそうと、なんであの時に言ってくれなかったんだい?」


「い、言いづらくて……」


 今もものすごくいたたまれない気持ちでいっぱいです。


「んーでも、かなり幼く見えるけど、幾つだい?」


「ひゃ……12です」


 なんとか、120とは言わずに済んだか。出かかってたけど。


「そっちの国は随分と開放的なんだね」


「実際、法律なんてあってないようなもんですし」


 俺は16で旅を開始し、ウィナは15で俺に同行していた。

 現在、王子はすでに誕生日を過ぎたため16だが、アリスに至っては誕生日が来てないので14である。

 ……アリスの発育具合がおかしいような気もしてきた。ウィナだって、14,5ぐらいでそんなに凹凸ははっきりしてなかったんだけど。


「まあ、いいもの食べてますから」


「なんで君は俺の考えを読めるのかな?」


「お兄ちゃんの考えはいつでもお見通し!」


「やだ、何それこわい」


 アリスだけだと信じたい。ウィナにまで感知されてたら俺は、穴に潜りたい。もしくは、深い海の底で貝になってたいです。

 でも、海の中だと、モンスターにやられそうだな。普通の生物と、モンスターが混在しているのかは知らんけど。

 それを調べるの目的だ。


「えっと、ロロちゃんでいいかな?ロロちゃんは、なんでソード君についてきたの?」


「え……えっと〜ま、魔王に会ってみたくて」


 なんかかなりギリギリな会話な気がする。


「君のような幼い女の子が無理をすることはないんだよ?」


「だ、大丈夫だよ。ソードがいざとなれば、守ってくれるから」


「責任重大だな。お兄ちゃん」


「もう、それでいいです」


 この人が同行してる間は、俺はロロちゃんのお兄ちゃんということになりました。まあ、立場的にはそう呼ばれてもおかしくはないのだが。

 新たなる不安材料を引っさげて、俺たちの旅は続いていく。

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