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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
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父親の役割

 ルシファーの消滅後、意識を取り戻したリーチェルさんに肩を貸し、旅立ったばかりの国へと戻ってきていた。

 だが、ミーナちゃんに会うわけにはいかない。

 また戻ったら、先に進めないような気がする。

 だから、国に入ったあたりで別れることは言っておいた。外ならいざ知らず、中ならどこかで休息を取りながらでも帰れるだろう。幸い、そこまで体力が枯渇しているわけでもなさそうだ。

 だが、表情は今ひとつ覇気を感じられない。


「リーチェルさん。俺が言ったこと覚えてますね?」


「ああ。自分に言い訳をするな、だったな。まったく、悪魔に言われるとは世も末だ」


 思った通りだと言えば思った通りなのだが、リーチェルさんはいつも家を開けっ放しで、ミーナちゃんを置いていってしまってることに後ろめたさを感じていたらしい。

 母親も、自分と同じ職業をしているだけに、一緒にいられないとのことだ。世話もばあやに任せっきりで自分を慕ってくれていることに疑問を感じていた点はあるとのことだが。


「どうして、悪魔と契約なんかしたんだ?」


「……娘が眩しすぎたんだ。社会も何も知らない、純粋な娘が。私が戻る度に『おかえりなさい』って、何も疑わずに言ってくれるあの子が。私は研究者であるからな。知らなくてもいいことを知りすぎた。いつ、あの子にそれを漏らしてしまうかも分からない。それが、怖くてあの子と距離を置いていた。……だが、それも今日で終わりとしよう。今までの研究データは廃棄しよう。今度からは、あの子の親として、家でも出来ることをしようと思う。そうすれば、親として、父として出来ることも多いだろうからな。今更かもしれないが」


「それが賢明だと思うよ。でも、何事も遅すぎることなんてない。取り返しがつく段階なら、いくらでもやり直せる。ミーナちゃんがあんたを慕ってくれてるなら、まだ可能性はあるさ」


「ああ、そうだな」


「じゃ、俺たちもそろそろ行くぜ。ミーナちゃんとばあやによろしく」


「伝えておこう。して、次の行き先は見当がついているのか?」


「まあ、あまり決めちゃいないな」


「まだ、暑さは続くな。海辺の方へ行ってはどうだろうか。君は内地の出身のようだからな。きっと綺麗だろう」


「海か……」


 そういや、以前の旅は、内陸地を延々と歩いて終わったからな。海なんて見たことも行ったこともねえや。

 ただ、一応理由はあり、海辺のモンスターは陸上には出てこれないが、その分、海での戦闘力がバカみたいに高いらしい。そのために、あまり好き好んで行くような場所でもないのだ。

 だが、腕試しとして訪れ、ついでに観光するにはちょうどいいかもしれない。


「じゃあ、とりあえず行ってみます。体に気をつけて」


「そちらもな。旅で身を滅ぼすことをするでないぞ」


「縁起でもないことをいうな」


「年を取ると、そういうことが心配になるんだよ。若者には長生きをしてほしいからな」


「……少なくとも親より早く死ぬ予定はねえよ」


「じゃあ、これぐらいにしておこう。私も行くよ」


 リーチェルさんは足取りは重そうであったが、それでも確かに一歩、前へと歩いて行った。

 願うことなら、今度こそ、立派に親の務めを果たしてほしい。

 俺が言う立場ではないと思うが、長いことミーナちゃんを置いたままにしてしまっていたのだろう。

 それでも、敬愛をしていたのならば、それらばあやのおかげかもしれない。

 ……もしかしたら、ばあやがミーナちゃんの本当の母親だとか?


「まさかな……」


「どうしたの?」


「いや、何でもねえよ。次は海だ。もう少し東に歩けば、一週間ぐらいで着くと思う」


「何が目的?」


「海のモンスターは強いって話だからな。陸地で見なくなったとはいえ、海じゃ、その可能性はまだわからない。基本的に近づく奴も総数として少ないからな。調査がてらだ」


「ロロちゃんの持ってるアプリでなんとかならないの?」


「そういやあったなそんなの」


 魔王様制作アプリ『侵略のすすめ』。

 魔法使いの国にいる間は一度も使ってなかった。


「おーい。ロロちゃーん」


「んー?」


 トコトコと俺とウィナの元へ寄ってくる。


「ロロちゃんの携帯アプリでモンスター呼び出すのあったじゃん。あれって、今いるモンスターの位置とか確認できない?」


「どういうこと?」


「モンスターの目撃情報はなくなったけど、それはあくまでも陸地での話なんだ。海の方は未だ確認は取れてない。俺たちが先立ってやるのも、旅ならではだな」


「意外に勇者もやることあるんだね」


「本当はやらんでもいいんだけどな。やるやつがいないなら、出来る奴がやらないとな」


「ソードって意外に律儀だよね」


「やれることはなんでもやらんと、討伐する以外にでも、調査するでもどこかにその成果を提出すれば報酬がもらえたりするからな」


「それって受注してからじゃダメなの?」


「討伐なんかはそうだけど、調査はそれに限った話じゃないんだ。まあ、あえて受注しないという手もある」


「しないとどうなるの?」


「前なんかは、今みたいにデータ化したモンスターじゃなくて、ちゃんと物質化してたからな。倒したモンスターを装備に使ってたりもしてて、それが独占できるってのが一番大きいな。もっとも、今は数自体が少ないから、 無難に狩ったら報酬もらう方が効率いいんだけど」


「魔族の身としてはなんだか複雑だよ」


「ロロちゃんにする話じゃなかったな」


「まあ、いいんだけどさ。こっちの人だって、生きるために抵抗して、倒してるわけだし。例えば人だって、魔界に迷い込めば異物として排除されるわけなんだから。人間界におけるモンスターはそういうことなんだよ」


「理解が良くて助かるよ。まあ、そんなある意味未開だからこそ、お宝や悪魔もいるんじゃないかと」


「ソードの場合は前者のほうが目的意識高そう……」


「金はあっても困らないからな」


「そうだけどさ……」


 ロロちゃんもこの世界に住み着いて?慣れたのか、お金の概念も理解するようになった。

 まあ、あんまり金、金言うような強欲な大人にはなってほしくない。俺みたいな。


「さあて、未開の地へレッツゴー」


「踏み込んだ形跡がありそうな時点で未開ではなそうだけど……」


 ごもっともな意見ではある。

 昔々の人は、地球が平面だと考えてたらしいし。

 宇宙まで行ったやつが、地球は丸いことを証明し、青いことも提唱した。

 ……悪魔やモンスターが宇宙まで進出してたりしないよな?

 ぶっちゃけ放り出しても生きていけそうな気がするけど、俺たちに行く手段は持ち合わせてないので、どちらにせよ放置だな。

 浮遊城で足踏みしてるぐらいなのに宇宙まで行けるか。

 そんな果てのない話はともかく、俺たちは海へと進路を決めた。



魔法使いの国編はここで終わりです。次から新章に入ります

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