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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
66/145

vsルシファー 第二ラウンド

 一時空へ飛んだかと思ったが、リーチェルさんの体を安全な位置へ移動するために、再び降りてきて、何処かへ置いた後に俺たちの前に姿を現した。


「随分と律儀なんだな。悪魔っていうぐらいだから、人のことをもっとぞんざいに扱ってるもんだと思ったんだが」


「仮にも契約した相手だからな。感謝の心ぐらい持ち合わせている。離れたからといって、丁重に扱うことには変わりない」


「……まだ、これからも使うつもりか?」


「どう取るかは自由だ。だが、この戦いで使うつもりはない」


 言葉通りに取るならば、ここで俺たちが倒さなければ、再びリーチェルさんはこの男に力を貸すことになるのだろうか。

 父親としての働きを捨ててまで?

 いつから、ミーナちゃんはあのような生活を送っているのだろうか。

 ウィナが言っていた通り、子供が親に孝行出来る時間なんて短い。懐いてくれているのなら、それは立派に子を愛してあげていた証拠だ。

 どうしてかは知らないが、いつまでもあの子と親を離れ離れにしておくわけにはいかない。

 そのためにも……


「お前は、ここで倒す」


「私としてもここで倒されるつもりなど毛頭ない。ただ、お前が望むのなら、狙いはまずお前からだ勇者‼︎」


 先ほど放ってきた闇の魔法を連発するように、俺に向けて放ってくる。

 幾つか避けきれずに被弾し、十数メートル後方に飛ばされた。


「ゲホッ。ったく、空から狙い撃ちは卑怯くさくねえか?」


「戦いに卑怯など存在しないと言ったのはお前だ」


「そうだな。そんなのは戯言でしかない。ただ、こっちだって指くわえて、ただやられるの待ってるだけじゃねえよ」


「何?」


 ルシファーの四方向から大小様々な属性の魔法が向けられていた。

 魔力の差によるものだろうが、ルシファーは身動きが取れないだろう。

 その放たれた魔法たちは、ルシファーを取り囲み、煙を巻き上げる。


「どうだ……?」


「弱い……弱いなぁ」


「効いて……ない?」


 いや、効いてはいるだろう。ところどころ、傷はついている。

 強がりなのかは、見た目では判断しにくいが、まだ余裕があることは確かだろう。


「まあ、こちらも1人ではある。数では不利だ。だが、仲間と協力して、強大な敵を倒す。勇者としては、基本はこれが鉄則なのだろう?」


 そもそもの話は、最初からバカみたいに強い勇者もいないので、仲間を集って倒していくのだから、必然的に最後まで仲間と協力していくことになる。

 最後まで協力してくれるのは、人徳なのか、別れるに別れられずなあなあでやってきてしまったのか、どちらにせよ、敵を倒すために力が足りない時は、借りるのは定石だ。

 ただ、現状、魔法が使えなくて、遠距離攻撃を持たない俺は足手まといどころか、いないほうがいいレベルではあるのだが。


「どうした、勇者。そんなところでほうけて」


「いや、俺には生憎平面でしか戦う術がなくてな。誰かに協力してもらって、お前を地上に引きずり降ろさないとな」


「ふん。おおよそ、ダメージを与えられそうなのはそこの魔法使いぐらいであろうに。何を期待している」


 期待?ルシファーの目にはそう見えているのか。

 今のを食らった上で、そう判断を下したのか。

 でも、それで今の上限を見切るのは早い。

 練習より、実戦で実力を上げてくやつなんていくらでもいるんだから。


「なあ、アリス、ロロちゃん。ちょっと頼まれてくれ」


「イヤだ」


 アリスは頷いたのに対し、ロロちゃんは抵抗しおった。


「何が不満なんだ」


「命令されてる感じが」


「しゃーねぇな。お願いします、ロロ様。どうか私目に力を貸してください」


「よろしい」


 なんで、下に出ないとあかんのか。


「何すればいいの?」


「ロロちゃんは、ルシファーの羽を狙って氷魔法を、アリスは弓は使えるか?」


「はい。ちなみに矢は、無限に連射できます」


 その自由に変えられる武器は万能すぎるだろ。

 ただし、多少なりは性能は落ちるようだが、アリスならカバーできる程度だろう。

 だが、固定はそろそろしたほうがいいのかもしれない。

 今は、使えるのならそれに越したことはない。


「じゃあ、続けれる限り矢を放ってくれ」


「ソードはどうするの?」


「…………後方待機」


「働いてよ」


「仕方ねえだろ!攻撃が届かねえんだよ!飛べねえし、ジャンプしようにも届かねえんだから」


「届かないなら、こういう時は都合よく誰かが、手助けしてくれるというのが定説……」


 どこの定説だよ。

 補助してくれるような機会もありゃしないし、空を飛ぶための魔法も持ち合わせてはいない。

 空間転移はできるかもしれないが、した後の処理がどうしようもないために却下。

 したがって後方待機して、あいつが降りてくるのを待つしかないのだ。

 こうしてる間、ルシファーは何をしてるかというと、ウィナとスターと応戦していた。

 スターが攻撃をしのぎ、ウィナが攻撃を放つ。魔法使いが戦うのにスタンダードな形だ。

 俺たちの態勢が整うのを待ってくれている。


「出来る限りは、俺も攻撃を凌いでみる。被弾した場合は……すまん」


「もっと他にないの⁉︎」


 ない。ご理解をいただきたいと思う。

 どちらかで絶え間なく攻撃を続けていれば、直撃は免れないだろう。

 だが、こちらの体力が尽きる前にあいつが降りなければこちらに打つ手は無くなるし、もう一度飛び直されても、同様だ。

 そもそも、降ろすまでにどれだけの力を要するかも分からない。

 俺は黙って盾となるだけだ。

 ルシファーもこちらの動向に気づいたみたく、攻撃をこちらにも照準を合わせてきた。

 禍々しい色に覆われた魔法を次々とはなってくる。

 俺は、2人に攻撃が当たらないように攻撃を叩き落としていく。

 剣で魔法が切れるのかと聞かれそうだが、一応、魔法というのは物質化されたものであるので切るという概念は通じる。

 スピードだけは戻っているので、なんとか2人を庇いながら、防げそうだ。

 上空で爆発が起こり、ルシファーが墜落してきた。

 スターがそれに合わせて、ジャンプをし、片翼を切りにかかる。

 いや、切るというよりは、あれは突いてるな。

 見事に貫通し、ルシファーはそのまま飛ぶ余力はないのか、地面へと降り立った。

 あそこまでダメージを受けて、普通に立つのも大したものであるが。


「良いのかよ。ご自慢の翼は使えないようだが?」


「元よりあればいい程度の飾りだ。私とて、接近戦が出来んわけではない。それに、片翼が残っていれば使い用はある。もう片方も、今使えないだけで、そのうち元に戻る」


「じゃあ、今使えなくしてやる」


「やってみろ」


 そうルシファーは言い、肩から生えていた翼は形状を変え、ルシファーの手元に剣として姿を現した。


「なんだよ。どいつもこいつも、形態変化が流行ってんのか?」



「形態変化も魔族の特権だ。ただ、そこの娘が使っているのは、どういう原理かは知らんがな」


 旅の途中でどこぞから拾ってきたとかそんなレベルかもしれないしな。

 もしくは、魔族の形態変化をベースに編み出した武器なのかもしれないし。


「わざわざこちらの土俵に立ってくれるとは思わなかったぜ」


「ふん。勇者というのは血なのか剣を好むらしいからな。その土俵で打ち砕けば、プライドもあったものではないだろう」


 ロロちゃんが言っていたのはそういうことか。

 相手の土俵に立ち、その上で実力を上回り、完膚なきまでに叩きのめす。

 自分が誇っていたものを砕く。

 それがこいつのプレイスタイルということだ。


「じゃ、勝てば問題ないな。あと、ルシファー。一つだけ忠告しとくぜ」


「なんだ?」


「俺には剣に対してのプライドなんざ一つも持ち合わせちゃいねえんだよ‼︎」


「堂々と言うことか!」


 我ながら悲しき事実だが、あくまでも使えるという程度なので、あまりレベルは高水準ではないのだ。自分も弱いことは分かっている。

 だから、今は誇りも何もあったもんではない。

 だから、ルシファーの誤算は魔王が俺の力を奪った時点で、誰よりも強い勇者という称号は持ち合わせてないということを分かってなかったことだ。

 故に俺はワンマンプレイなどしないし、出来やしない。


「食らえ!ルシファーッッッ‼︎」


「甘っ……⁉︎何だこれは⁉︎」


 ルシファーの足元がいつのまにか凍っていて、その場から動けなくなっていた。

 正面からは俺が、背後からはスターが迫っている。


「甘いのはそっちのほうだっつーの」


 二人で、ルシファーの体を突き刺す。

 返り血を浴びる。

 その瞬間に、氷は溶け、ルシファーは崩れ落ちた。


「な、なぜ、止めを刺さない」


「やってもらうことはあるからな。まずは、契約を解除しろ。悪魔の契約なら一方的に解除も可能だろ」


「そんなもの、私が消滅すれば勝手になくなる……まだあるか?かはっ」


「俺の力を返してもらおうか。まあ、大したもんじゃねえのは分かってるけどよ」


「賢さの欠片だな。……余りの小ささに知性の欠片もないような奴だと思っていたが……どうやら私の見当違いだったようだ……。リーチェルの服に入れてある。そこから持ってけ」


「……お前は、何がしたかったんだ?」


「……覚醒だ。まだ、早かったようだが」


「そうか。別に急がすようなものでもないだろ。それこそ、徐々にしていくものだ。トリガーがあるなら別だが」


「私も……何だかんだ甘いようだ。姫様の知り合いというだけで、非情になれなかった……。ここで倒されても……私は魔界へと戻るだけだ。だが、ここに居られるももう長くはない。あと数十分も放置していれば自動的に消滅するだろう……」


「……そうか。リーチェルさんに何か言い残しておくことはあるか?」


「……自分に言い訳をするな、と伝えてくれ。それを言えば、きっと分かるだろう」


「分かったよ。スター、行くぞ」


「あ、はい」


 少し、意識がぼんやりしていたようだが、呼ばれて我に返り、俺の元へと来る。

 三人の元へと戻ろうとしたが、俺たちとは反対向きに走って行く姿があった。


「ルシファー」


「姫様ですか。なんの御用で?」


「魔王としての覚醒条件ってなんなの?」


「さて、私の口からはなんとも。ただ、助言をするのならば、魔王様は大切なものを失って覚醒されました」


「大切な……もの?」


「ええ……。私に言えるのはそれだけです。では、悪魔がいうことではないですが、天命を祈ってます」


 数十分と言ったが、すぐにルシファーは姿を消した。

 ふと、風が吹き、ロロちゃんの髪を揺らす。

 それは、ルシファーが残した何かなのか、俺たちが知る由も無い。

 だが、ロロちゃんが何かを感じ取ったのならそれでいい。


「大切なもの……か……」


 ロロちゃんはそう呟いて、空を仰いでいた。

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