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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
62/145

大人の境界線

 八月八日。

 何を隠そう、この俺、ソード・ブレイバーの誕生日だ。

 誰か祝ってくれないかな……

 いや、あんまりそわそわしてても挙動不審過ぎて、皆にスルーされるのがオチだろう。

 ただ、誰も気にも止めてないのかいつも通りぐだっている。

 仮にも魔王討伐パーティなのに、こうも気が抜けてる状態で大丈夫なのか?と不安に思わざるを得ないわけだが、まあ、フィールドに出てるわけでもないし、そこは目を瞑ろう。

 そういう俺自身も特にやることを見つけないために、結局ゴロゴロしてるわけだが。

 ……あんまり、旅に出る前と変わってねえな。危機感がないから致し方ないのかもしれないが。


「おにーちゃん♪」


 ゴロゴロしていたところに、アリスが声をかけてきた。


「デートしよ」


「デートか……」


 そういや、約束してたな。

 やることないし、ウィナも回復したし、誰も祝ってくれそうにないしアリスとデートしていたほうがよほど有意義に時間を潰せるだろう。

 一応、断ってから出てくか。

 誰に断っていこう……?


 ▷ウィナ

 ばあや

 スター


 ゲームだったら、こんな感じに選択肢が出て、選択ミスったら別ルートへ突入とかあるんだろうけど、現実にそれぐらいで人間関係に影響が出るとは考えにくい。

 ただ、話した相手が相手なら、何かが起こるかもしれない。

 ゲームと違って、一人の子を追ってけば、他のルートの女の子が後ろから刺してくるということもあり得るのだ。

 やだ、ウィナさん怖いです。

 ウィナに限定したのは、おおよそ言って行動に出るのはウィナぐらいだからだ。

 だが、俺はそんなことは気にせずに断るべき相手であるので、ウィナに言っておく。


「ウィナ、今からアリスと出かけてくるから」


「んー。夕方には帰ってきなよ」


 見事にお母さん的対応で返された。

 なるほど、これが年上の余裕か。

 一応、他にも断っておこうと思い、全員の居場所を突き止めることにする。


 ロロちゃんとミーナちゃんは、昨日作った、お手製の的を使って魔法のトレーニングをしていた。

 まあ、あまり使うことはないだろうし、いっそのこと壊すぐらいまで使ってくれるとありがたいことだ。


「よっ、捗ってるか?」


「あ、ソード、アリス。どうしたの?」


「ちょっと出かけてくるから、一応言っとこうと思ってな」


「誰が?」


「俺とアリスが」


「デートですか⁉︎」


 ミーナちゃんのほうが反応してきた。こういうことに興味津々なのだろう。


「ああ、そうだ」


「いいですね〜。私たちは邪魔しないので、楽しんできてください」


「ええ〜。私も遊びに行きたい〜」


「ロロちゃんは、私と遊ぼ」


 ロロちゃんは訴えかける目で見てくる。

 だが、アリスも楽しみにしていただろうし、俺もそれぐらいは応えるのが義務だと思う。


「また今度、一緒に遊んでやっから。今日は我慢してな」


 頭を撫でて、ミーナちゃんにロロちゃんを任せた。

 この様子だと、ミーナちゃんはまだしも、ロロちゃんはなんにも知らなさそうだな。聞いてないってんならそこまでだけどさ。

 二人に手を振り終え、姿が見えなくなる位置まで行くと、アリスの手を握った。

 アリスは少し戸惑ったような表情を見せたが、顔をほころばせる。


「じゃ、行くか」


「はい♪」


 ーーーーーーーーーーーーー


 今日のところは徒歩であるが、まだ日も高いことだし、少しぐらいは足を伸ばしても問題はないだろう。

 だが、そうどこに何があるとかはあまりしらないため、華麗にエスコートとは出来なさそうだが。


「おにーちゃん、こっちこっち」


 アリスに任せた方が良さそうだな。

 俺はアリスに引っ張られるままに、ついていく。


「結構、適当に行ってる気がするんだが、行く当てはあるのか?」


「うーん。こう見えても私は箱入り娘なのです」


「知ってる」


「だから、こうやってぶらぶら歩くこともままならなかったわけなんだよ」


「何かやりたいことあるか?金はいくらか分けてもらったから、ちょっと遊ぶぐらいなら出来るぞ」


「いいよ、無理しなくて。買いたいものがあったら、私には無限の財源があるから」


 それ、俺たちから徴収してる税金じゃねえのか?回り回って、俺のところに戻ってきているが、基本的に城の財源はどうやって回っているのだろうか。


「デートなんだから、女の子は男にねだるもんだぞ。少しぐらいは太っ腹なところ見せないとな」


「そのお金もウィナちゃんがほとんど管理してるけどね〜」


「うっ……痛いところをつくんじゃない」


「ふふ。別に無理して、見栄を張らなくてもいいよ。甲斐性なくても、強くなくても、私はお兄ちゃんのことが好きだから」


「そっか、ありがとな。で、今日は何の日か知ってるか?」


「初デート記念日?」


「んな記念日作らんでもいい。もっと、こう……なんかあるだろ」


 自分から自分の誕生日だと、言いふらすのも、なんかのプライドがはたらいて恥ずかしいので、微妙にぼかして言うことにしたが、このままでは本当にアリスの初デート記念日になってしまいそうだ。


「すぐに思いつかないということは大したことではないと思うので、次行きましょう。私服見たいです。国内では、堅苦しい服装ばっかりなので、ウィナちゃんみたいに動きやすくて可愛いのがいいです」


 注文の多いお姫様である。

 いや、実際に姫だから、学校に行くにも、結構かっちりした服装だし、城に戻れば、ドレスだしで、人並みに憧れはあったのだろう。

 今現在は何を来てるか?って、当然ほぼ行き当たりばったりで来たので、そんな服を持ち合わせてるはずはないので、ばあやが急造仕立てで作ってくれたのだ。

 あの人は何者なんだろうか。

 まあ、流石に作ってもらったものが気に入らないなんてことはなくても、自分の好みの服を探したいというのは女の子としては当然の思考なのだろう。

 そういうことに無頓着な俺は、基本的に機能性を求めるのだが。

 適当に歩いていると、小洒落た洋服屋を見つける。

 何故かは知らないが、モンスターが国の中へなだれ込んでくることはないので、決して荒廃してるような場所はなかなかない。

 だから、普通の人は、普通にごくごく平凡な日常を送っている。

 俺には縁遠かった世界だ。

 だから、親父も人並みに普通の暮らしというのもしたかったのかもしれない。今、それが叶えられているのなら、本望であるだろう。

 俺もいつか、そうなる日が来るのだろうか。

 魔王を巡って、世界中に足を伸ばさなくてもよくなるのだろうか。


「お兄ちゃん、どうしたの?やっぱり……私とじゃ、楽しくない?」


「そんなことねえよ。可愛い女の子引き連れて、それも一国の姫ときたもんだ。楽しくないわけないだろ」


「じゃあ、難しい顔してどうしたの?」


「……やっぱさ、何事もなく平穏に暮らしてる人もいるわけじゃん?わざわざこうやって旅に出て、危険を冒すこともなくさ。そう考えると、俺は何してんだろうなって。もっと、別にやりたいことがあったんじゃないかって、思うとな」


「でも、お兄ちゃんがいなかったら、今頃魔王に世界を侵略されてたかもしれないし、私だって、お兄ちゃんと会うこともなかったかもしれないよ?」


「たらればの話だしな。別に意味はねえよ。こうやって、旅に出て、魔王を倒そうということには変わりないしな」


「うーん。あ、これにしよ」


 アリスは何か目当てのものを見つけたらしく、レジへと向かって行った。

 服を買ってたわけじゃないみたいだが、何を買ったんだろうか。


「お待たせ」


「そんなに待っちゃいないから、いいんだけどさ……何買ったんだ?」


「他のみんなが忘れてても、私は忘れないよ。はい、これ」


 さっき買ったものが入った袋を俺に渡してきた。

 といっても、かなり小さいものだが。

 中身を取り出すと、編まれた一本の紐が出てきた。


「なんだ?これ」


「ミサンガだよ。身体のどこかに輪っかにしてつけて、切れるまで使い続ければ願いが叶うの」


「乙女だな」


「乙女ですから。夢は見たいの」


「で、どこにつければいいんだ?」


「手首か足首がいいけど……手首だと色々邪魔になるだろうから足首かな。私がつけてあげる」


「自分で願わなきゃ意味ねえんじゃねえの?」


「だから、お兄ちゃんは私につけて。お兄ちゃんのが切れたら私の願いが、私のが切れたらお兄ちゃんの願いが叶うの」


「面白いな、それ。じゃ、俺はアリスの足首につけておくぞ」


 それぞれ願いを込めながら、ミサンガをつける。

 迷信めいたものだが、悪くはない。


「そして、私からの誕生日プレゼントです。お兄ちゃんおめでとー!」


 パチパチ、と控えめな音で拍手される。

 やっぱり、面と向かってお祝いされると気恥ずかしさがあり、俺は顔を背けた。


「照れてる?」


「ちょっとな」


「ここ、小物とかも色々売ってるみたいだから、もう少し見て行っていい?」


「ああ、デートだしな。アリスが満足するまで付き合ってやるさ」


「わーい♪」


 無邪気に喜ぶアリスを見てて、微笑ましく思うのと同時に、まだまだ子供なんだと感じた。

 俺は?

 今日で19となった。

 20になれば成人と見なされる。だが、何をもって、大人と定義するのだろう。

 自分で自分の尻拭いをできるようになったら?家庭を持ったら?周りが認めてくれたら?

 まだ、俺はどれも出来そうにない。

 他の奴らから見れば、カテゴリーとしては大人の部類だ。

 自分に自覚はなくとも、そうでなくてはならない。

 でも、まずは目の前の女の子一人ぐらいは守れるようにしようか。

 大人だ子供だ言う前に、まず一人の男にならなきゃいけないのだから。

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