翼を求めて
今日は勉強を兼ねて、全員+ミーナちゃんを連れて、図書館へと向かっていた。
今日は珍しく、ロロちゃんは自分の足で歩いている。
とは言うが、ただ単にミーナちゃんと手をつないで仲睦まじく歩いているので、するに出来ない状況であるというのが正しいのだが。
でも、ロロちゃんも楽しそうなので良しとしよう。
「アリス、何をそんなにふてくされてんだ?」
「寝不足なだけです」
「いや、寝不足でほおは膨らまんだろう」
「私も手をつないで歩きたいです」
「分かったよ。ほら」
「いいんですか?」
「そっちがしてほしいって言ったんだろ?嫌なら、やめるけど」
「やったー!」
精神年齢はあそこの年少組とあまり変わらないのではないかと思う今日のこの頃。
あんまり軽はずみにやっても、今度はウィナがふてくされるので、これまた面倒くさい。
まあ、ウィナは先日にデートしてるので、これぐらいは許容してくれるだろう。
「じゃ、スター君は私と手をつなごうか」
「えええ?い、いいですよ。子供じゃあるまいし」
「別に迷子にならないようにつなぐんじゃないよ。ね?」
「ぼ、ぼくでいいんですか?」
「なーに、遠慮してるの。お姉さんに甘えなさい」
「な、何か違う気が……」
ウィナがこっちを向いて、あっかんべーをしてきた。何に、対抗心燃やしてるんだよ。
「ウィナちゃんも大概子供ですね」
「昔から何か張り合う癖があるからな」
どいつもこいつも子供だなと思いはしたが、なんだかんだ一番子供であるのは自分なのかもしれないと、年長者ながらにそう思いつつも、楽しそうにしている面々を見ていた。
ただ、みんな、昨日あった現実から目をそらしているのかもしれない。
俺だってその一人だ。
ダメージ的には王子が一番深かったかもしれないが、一番自分自身がどうしようもないと感じているのは、ロロちゃんだろう。
自分のビジョンが見えてないのだから。
そのためにも、今日で何か見つけられるといいのだが。
「お兄ちゃん。着きましたよ?」
「ん?ああ。じゃあ、ここからは各自で自分が読みたいもの……ちゃんと自分のためになるものを探してきてくれ。俺は場所取りでもしてるから」
「じゃあ、また後で」
入り口付近で三々五々と散って行った。
自分に足りないもの。
これからの目的のために必要なもの。
各々によって探し求めるものは違うだろう。
それを自分が理解してるかどうかということだが。
なるべく大人数で座れる場所を探して、八人まで座れる机を見つけ、そこに陣取ることにする。
夏休みの期間であるし、学生とかもいそうなものだが、みんな、自分の家でやっているのかパラパラといるぐらいだ。
「みんな、魔法使いになるために勉強してんのかな……」
「そうでもないですよ?」
「ミーナちゃん。もう見つけたのか?」
「私は、宿題がまだ残ってますので……ロロちゃんのやつ一緒に探してあげてたんですけど、なかなかいいのがないみたいなんで、探してあげてくれませんか?」
「別にミーナちゃんでもいいと思うけどな」
「私だとその……背が足りなくて、上の方が届かないので」
「そっか。なら、荷物見ててくれるか?たぶん、ウィナあたりならすぐ来るだろうし」
「はい、分かりました。ロロちゃんは向こうの方にいますので」
ミーナちゃんは指を指して、奥の方を指していた。
あの様子だと、探してる理由が言い出せなかったんだろうな。
たぶん、魔界関係のことかもしれんし。
下の段の方をしゃがみこんで、本を選んでいたロロちゃんに声をかける。
「何かいい本あったか?」
「ソード。ちょうどよかった。上の方で探して欲しいものがあるんだけど」
「魔界関連か?」
「うん……さすがに、ミーナにそれを頼むわけにはいかないし、理由聞かれたらうまく言えそうにもないし」
「もういっそのこと言っちまったらいいんじゃねえか?魔王の娘ですって」
「で、でも!ソードたちみたいに受け入れてくれるとは限らないし、せっかく出来た友達なのに……」
「冗談だよ。友達なくしたくないもんな。魔族だって、分かった瞬間にどうなるかも分かったもんじゃねえし」
「やっぱり……やめとこうかな」
「でも、調べるチャンスなんてそうそうあるもんじゃねえぜ?それに、あの子も結構勘が良さそうだしな」
「バレてるかもって?」
「言い切れないだろ?うーん、この辺はどうだ?」
そもそも、あまり魔界関連の書物も少ない。
人間界のものが魔界に行った話をそう聞かないからだろう。
興味本位で行けた人か、何かの許しを得て、立ち入りを許された人が文献に残したのか。
「お、重い……」
「悪い。持ってってやるよ」
「ソードは何かないの?」
「……あ~翼が欲しいな」
「人は空を飛べないからね」
「実は俺には天使か魔族の血が流れてるとか新展開ないの?」
「そもそも、魔族に翼があること前提で話していることにいささか、疑問を感じざるを得ないんだけど」
「ないのか?」
「今まで戦ってきたでしょ?」
「なんつーか、上級クラスになるほど空を飛ぶ機能がついてる感じだったかな。ロロちゃんも頑張れば飛べるんじゃね?」
「実際に翼だけなら生やすことは可能だけど……飛ぶとなると危険が伴うから」
まあ、魔王の娘とのこともあるし、出来ても不思議ではない。
ただ、忘れているがエルフの血もロロちゃんには混じっているのだ。
「じゃあ、俺はエルフに関しての文献探そうかな」
「どうして?」
「ロロちゃん、エルフの血も入ってるって言ったじゃん。俺も聞いたことはあるけど、会ったことねえんだよな。会える条件とかあったら、会ってみたいし」
「会ってるじゃん」
「いや、ロロちゃんは色々混じりすぎてどれが本質なのか……」
「うーん、それは私も分からない……。一応、魔王血族だから、魔族が一番近いかも」
「ま、だから、ロロちゃんの身の丈にあった、得意なこととかが分かるかもしれないし、もしかしたら、エルフの力を借りて空を飛べるかも!」
「それが本音ね……」
人類永劫の夢でもある。
それこそ、人間同士で種を繁栄させても、空を飛ぶなんてことは出来やしないけど。
「こうさ、擬似的でもいいから、羽を装着して、羽ばたいて空を飛び回りたいじゃん?」
「作れても、私の家にはたどり着かないと思うけど……」
「だよな……」
どんだけ飛べばあそこにたどり着けるんだろうか。
それこそ、魔法とかなんとかで強化してから飛び立つか、先日言ってた、空間転移的なことでやるしかないのか。
「なんなら、ロロちゃんだけでも帰せる方法があればいいんだけど」
「私覚醒?」
「してくれれば、旅もぐっと楽になるんだろうなぁ」
「ソードだってヘッポコじゃん」
「そうだ、忘れてた。力の欠片を戻す方法も調べねえと」
「まだ戻ってなかったの?」
「手元にはあるけどな……」
急造仕立てだが、手のひらサイズの小袋を持ち歩くことにした。
その袋に『スピード』と書かれた端から見たら、ちょっと色が綺麗な石ころにしか見えないことだろう。
「なんか字に見覚えが……」
「魔王が書いたのか?」
「いや、パパじゃなくて、たぶんサタンかなこれ」
「あいつ、意外にアホなのか?」
「逆、逆。他の悪魔がバカなの。だから、どんな力が宿ってるか分からずにも渡せなかったんだろうね」
「一応説明しても、覚えてるかどうか分かんねえしな」
「たぶん、下手したら力の吸収すら分からずに、どっかに捨てたやつもいるかも……」
「ええー」
力がもしかけた状態だったら、どうすんの俺。結晶が完成しないじゃん。
「たぶん、消えてなくなったり、壊されるようなことはないと思うけど、その辺りはもしかしたら、調べたら載ってるかも」
「ロロちゃんは分からないのか?」
「パパが使える魔法を理解して使えてたら、今頃こんなところにいないよ」
ごもっとも。
「でも、こっちのほうにはなさそくだな。ちょっとついてきてくれるか?」
「うん」
魔法全般のコーナーへと足を運ぶ。
そういや、王子とアリスは何を探しているんだろうか。
アリスはともかく、王子は物理的に攻撃力とかを上げる方が最善な気もする。
魔法に特化している国にそのような文献が置いてあるのかは不明であるが。
「いねえな」
「ソード、何してるの?ソードが探してるのこの辺だって」
「ああ、ありがとう。なんでそんなこと知ってんだ?」
「これこれ。検索機能があるんだって」
まあ、こんだけ広大な図書館だし、逐一探すとなると骨も折れる。見つからない場合は、こうやって検索ができると便利だろうな。
ロロちゃんに案内されるがままに、歩を進めて行く。
だが、いくら関連してるものと言って、ピンポイントであるのか……
「ソード、これなんかどう?」
ロロちゃんが、一冊の本を持ってきた。
タイトルは
『魔王から力を抜き取られた時の対処法』
「なんでそんなもんがピンポイントであるんだよ⁉︎」
「ソードうるさい。図書館では静かにだよ」
「ああ、悪い。まさか本当にあるとは……」
ロロちゃんから受け取った本の著者を見ると、
『著:シールド・ブレイバー』
「親父じゃねえか‼︎」
「だから静かに」
「悪い、ロロちゃん。だが、これは叫ばすにはいられないわ」
「ソードのパパが書いたもの?」
「著者を見る限りはな」
ついでに、協力、監修にパーティメンバーのみなさんとか書かれていた。
雑だな、オイ。
ただ、まあ先駆者の意見だ。無駄なわけではないだろう。
一応、それを脇に挟んで持って行くことした。
さて、打開策やら対処法は本当に見つかるのだろうか。




