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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
54/145

知りたい気持ち、分からない気持ち

 リーチェルさんに率いられて、屋敷へと帰還とした。

 門の前には、今か、今かと待ちわびていたのだろう、ミーナちゃんの姿も見受けられた。


「おかえりパパ!」


「ミーナ、危ないから中にいなさいと言っただろう?」


「だって、中にいてもつまらないし」


「仕方のないやつだ。さあ、皆さんも中へどうぞ」


「ああ、疲れた」


「まだ、ロロちゃん背負いっぱなしでしょ。せめて、どこかに寝かしつけてあげなさい」


「もう、ウィナの膝枕でいいだろ。ほら、そこにシッダン…あべし!」


 俺がシッダンさせられた。

 それでも、おんぶの体制を崩さないところはさすが俺と褒めておきたい。

 だって、言わなきゃ誰も褒めてくれないし。


「私も兄さんを休ませてきます」


「じゃあ、ロロちゃんはもらってくから、先にくつろいどきなよ」


 旅の仲間たちは、俺を残して散って行った。

 座って、惚けたままの俺に、ミーナちゃんが寄ってくる。


「どうした?」


「んーいや、お話聞けそうなのソードさんぐらいしかいないかなって。予定より早かったし、どうしたんですか?」


「まあ、敵襲にあったわけだ。弱いやつならそのまま追っ払えばよかったんだけどな。やたら、強いやつでこっちが返り討ちだ。探索を続けるには危険だと判断したからこうやって戻ってきた」


「明日からどうするんですか?」


「そうだな……その前にどこか移動させて。俺はなんでこの体制でいるわけ?あと、ミーナちゃん。その体制だと見えそうだぞ」


「わっ。ソードさんのえっち」


 なんとなく立ち上がって、ミーナちゃんの頭を撫でる。

 髪はよく梳かれていて、触り心地がいい。


「なんなんですか~?」


「まあ、ロロちゃんと一緒ぐらいだから、俺にも妹がいたらミーナちゃんとかロロちゃんみたいな子がいいなって思ってさ」


「一人っ子なんですか?」


「まあな。でも、半ば兄弟みたいな、幼馴染はいたけど」


「好きなんですか?ウィナさんのこと」


「……アリスには言うなよ」


「はい」


 ミーナちゃんの小さな顔についた耳に、ひそひそと話しかける。


「実は旅を始める前日にあいつにプロポーズしてる」


「ええっ!……そ、それで返答は?」


「バカなこと言ってないで働けだと。その時は、ウィナの家業を手伝ってたからな。役立たずもいいととろだったけど」


「なるほど、プロポーズするほど好きだと……」


「ただ、焦ってただけかもしんないけどな。一度旅して、勇者の役目なんて終わったって思ってたから。他にアテがあるなんて思ってなかったし、学校にも行ってないプータローだったからな。あいつしかいなかったんだ」


「見抜かれてたんじゃないんですか?消去法で選んでたこと」


「かもな。でも、旅に出てまた色々考えてはいるんだ。見ての通り、アリスはベッタリだし、ロロちゃんだって放っておけないし」


「ああ、そういえば昨日デートしてたんですっけ?」


「あんまりほじくり返さないでほしいな……」


「何かあったんですか?」


「アリスが怖い」


「なるほど」


 デートの一つも軽く出来ないこんな世の中。

 しかも、嫉妬してくるのは、一国の姫ときたもんだ。

 普通なら大喜びなところだが、弱小勇者と釣り合いが取れるのかと聞かれたら、俺はノーだと答えるだろう。

 アリスはそれでも構わない、と言うだろう。

 じゃあ、その後のアリスはどうなる?と聞かれれば、どうなるかは分からない。

 跡継ぎなら、王子がやればいいかもしれないが、それでも姫であるアリスに注目が集まらないわけではないだろう。

 せめて、なんか実績でも残していれば別だが、俺はただ単に魔王を倒し損ねて、逃がしてしまったへっぽこ勇者だ。

 それを武勇伝のように語るのも見当違いな話だ。


「ソードさん。こんな話を知ってますか?1対1なら、こじれない限りは円満。1対多数なら、結局どうにでもなる。1対2では必ずどちらかに刺されるそうです」


「なんの話だ?」


「一人の男の人が、女の人と付き合う場合です」


「ロロちゃんを加えれば、どうにかなるということだな?」


「それは、また曲解な気がするんですけど……でも、このままだといつかどちらかに刺されても文句は言えないですよ」


「善処したいところだが……旅が終わらない以上どうしようもないな」


「別に、旅の途中でどちらかに決めちゃえばいいじゃないですか」


「甘いぞ、ミーナちゃん。例えば、仮にどちらかに決めたとしよう。どちらを選ぶにせよ、必ずパーティで影響が出る。全員が割り切ってるならまだしも、当人が一番困惑してるだろうからな。だから、俺は今は選べないんだ」


「スターさんはどうなんですか?」


「あいつは、ウィナのことが好きみたいだが、修道院に入ってて、枯れたみたいだな」


「すごい言いようですね……」


「今、あいつに負けてるのは、ルックスと剣技ぐらいだ」


「何も残ってないじゃない」


 後ろからウィナの声が聞こえてきた。


「どこから聞いてた?」


「スター君が枯れてるとか、その辺りから」


「て、待て。俺に勝ってるところが何もないだと⁉︎」


「あ〜せめて、ロロちゃんの扱いに長けてるだけは入れとく」


「もうすでに勝ってるようなものだな」


「ロロちゃんの比重偏りすぎじゃないですか⁉︎」


「うちのパーティにおけるロロちゃんへの甘やかし具合は半端じゃないぞ。ウィナですら甘い」


「私が他の人だと、厳しいみたいな言い方しないでよ。ミーナちゃんが誤解するでしょ」


「いや、ウィナさん優しいと思いますよ」


「私が厳しいのはソードだけだから」


「だから俺が捻くれるんだぞ」


「余計なことしなければ私も怒りません」


「余計なことって……?」


「とりあえず、一緒にいれば分かるよ」


「私、そんなに一緒にいません」


「ミーナちゃん、もう一回耳かして」


「はい?」


「ウィナは嫉妬してるんだよ」


「なるほど」


「ウィナさん、可愛いです」


「何を吹き込まれた」


「さーて、何かねー。ばあやー、すいませーん。風呂出来てますー?」


 詮索されると面倒なので、ここは逃げの一手だ。

 幸い出来ていたので、そのまま疲れを取らしてもらうことにする。


『私、足手まといかな……』


 湯船に浸かった時、ロロちゃんが言っていた言葉が浮かんできた。

 結局、甘えてなんとかなってしまう環境が、結果、強くなれずに来てしまったのかもしれない。

 今のロロちゃんを強くしてあげるためには何が必要だろうか。

 魔王の娘というぐらいだから、潜在的な力はまだまだ未知数である。

 もしかしたら、その文献があるかもしれない。

 明日はお勉強だな。

 少し、気が沈んだが、知識はあって無駄なものでもない。

 何よりも、ロロちゃんのためだ。


「うしっ、やってやるか」


 明日に備えて、今日は早く寝よう。

 何か忘れてるような気がしなくもなかったが、それは結局、忘却の彼方へと行ったままだった。




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