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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
52/145

遺跡調査~ロロside~

 スターとアリスと一緒に私は、遺跡の中へと進んでいた。

 いわゆる、クエスト初めて組。

 私のところのリーダーさんは、護衛の中で一番エロ……じゃない、偉い人らしい。

 ちなみに、エロいと感じるのは、ソードみたいなことではなく、体つきがいかにも大人な人のボンキュッボンというやつ。

 比べて私は……

 気づかれないように、皆の後ろでペタペタと自分の体を触ってみる。なんだか悔しい。いいもん、まだ成長期がまだなだけだもん。

 前を見ずにそんなことしていたもんだから、集団から少し遅れていた。

 それに気づいて、リーダーさんが私のところへ寄ってくる。


「早かったか?後ろにいては遅れてしまうだろう。前に来ないか?」


「だ、大丈夫です。ついて行けます」


「そうか?ならいいんだが、辛いならいつでも言ってくれ」


 気づかれたかと思った。

 リーダーのその人は、そのまま前へ向かいながら、一人一人に声をかけている。リーダーというものは、やっぱり周りの人に気を配らなきゃいけないものなんだろうか。私には向いてなさそう。


「ローロちゃん♪」


「わっ」


 アリスが私に抱きついてきた。

 何だか分からないけど、私は抱きつかれやすいタイプらしい。

 スター以外は大抵抱きついてくる。

 だき心地がいいのだろうか?

 自分も自分の分身がいたら、ちょっとやってみたい。

 そして、だいたい抱きつき方は皆後ろから、肩に腕を回すような形である。


「んー、ロロちゃん、ちょっと不機嫌?抱きつかれるのやだった?」


「別にそういうわけじゃないんだけど……なんで皆私に抱きついて来るのかなって」


「それはロロちゃんが可愛いからだよ~。お兄ちゃんも今頃『ロロちゃん成分が足りない』って、ウィナちゃんに泣きついてるんじゃないかな?」


 何だろう、その成分。どうやって分泌されてるの?私に抱きつくと元気でも湧いて来るの?謎は深まるばかりである。


「アリスもさ、私ばっかりに構ってないでスターのところ行ってあげなよ」


「好き好んで兄妹の近くにいく兄妹はいないんだよ?」


「そういうものなの?」


「そういうもの。私はロロちゃんが妹ならいつもこうやってべったりしてたいけど~」


「私が疲れそうだから、そうだったとしても程々にね……」


 私は一人っ子なので、アリスの気持ちはよく分からない。兄妹で血が繋がっているのだから、仲良くやればいいのに。

 血が繋がってるってだけで嫌なのかな?

 兄妹って、自分の主観で嫌なところを見出して毛嫌いするものなのかな?


「やっぱり、それじゃ寂しいよ……」


「どうしたの?」


 私が、二人を仲直りさせないと。


「ねぇ、どうしてアリスはスターのことを目の敵みたいに見てるの?」


「なんでって言われても……物心ついた時からそうだったし……今更どうこうっていう話じゃないんだけど……」


「私、スターのところに行ってくる」


 アリスの腕をほどいて、後方を歩いていたスターのところへ向かう。


「ん?どうしたんだい、ロロちゃん」


「ねえ、スターはアリスのこと嫌い?」


「いや、嫌ってはいないけど……」


「じゃあ好きなの?」


「また両極端な質問だね。ソードさんなら、『皆大好き!』みたいに言うんだろうけど、僕は別に聖人君子ではないし、好きなものもあれば嫌いなものはある」


「じゃあ、ソードとアリスならどっちがいい?」


「それなら、もちろんアリスを取る」


 んー、ソードはあまり男には好かれない質みたいだね。

 代わりに好いてくれてる女の子は2人いるけど。

 私?

 私はどうなんだろう。

 一応、ソードにとっても、皆にとっても……こうして可愛がってはくれるけど、魔王の娘なわけだし、敵対の関係のはずなのだ。

 私も最初は、ソードのことを疎ましがってたはずなのに、いつの間にか一緒に旅することになっちゃったし。

 ソードも私のことを好意的に見てくれてはいるけど、それが紛い物ではないことは分かるけど……。

 混じってるとはいえ、殆どは魔族の血だ。人間であるソードに恋愛感情みたいなものを抱くのは違うことだと思う。

 嫌いじゃないけど。

 猫の姿以外で、人に好意的に見られたのは初めてだったし。

 私のことはいいとして、スターとアリスの仲を取り持つことだ。

 どうすればいいんだろう。

 ソードやウィナのように私は気を使えるほどよく知っているわけでもないし、余計なことをしても火に油注ぐだけじゃないかな?

 …………迷ってもしょうがない。行動しなくちゃ。

 スターに声をかけようとした時だった。


「総員通達!何者かの襲撃を2番隊が受けたそうだ。現在2番隊で動けるのは3名。襲撃者はこちらへ向かっているとのことだ!リーチェルさんは私が護衛する!他のものは全方位を囲むように立ってくれ!」


 襲撃された?2番隊っていえば、ソードたちのところだ。ソードやウィナは大丈夫なのかな……。


「君は私と一緒にリーチェルさんを守ってくれ!」


「え?あ」


 掴もうとしていた手はすでにその場所にはなく、私の手は所在無さげに、空中を彷徨っていた。

 そのまま、引かれるがままに円の中央へと連れてかれる。


「大丈夫。君はここにいる誰より強い。無論、私よりもな」


「あの……何を言って……」


「さあ、準備はいいか!」


 その言葉の意味を問うことも許されないまま、武器を構えさせられる。

 結局、剣は身につかなかったので、杖で一応攻撃をしている。

 まあ、杖は打撃的な意味ではなく、魔力の底上げみたいものらしいけど。

 一応、陣営を組みながらも、少しずつ前へと進んでいく。

 あと、極端に固まっていても、襲撃の時に一網打尽の恐れがあると言うことで、多少間隔を開けた状態で配置している。


「まさか、君が選ばれるとはね」


「選ばれる?」


「彼女は大抵一人、自分以外にこういう不測の事態に私に護衛をつける。追加人員とは思っていたが、あそこの少年少女ではなく、君だったことが意外でね」


 スターとアリスのことを言っているのだろう。確かに見た目は、私が一番年下だし、頼りなく見える。それが、一般的な見え方だろう。事実、私がパーティーでも一番弱いと思う。ソードはなんだかんだ言ってるけど、前に旅をして、私のパパを追い詰めただけあって、何度かそれを彷彿とさせるような動きがある……ってウィナが言っていた。

 隊長さんは何を持って、私を一番強いって言ったんだろう。

 潜在的な能力の話かな?

 魔王の娘だから、確かにあるかもしれないけど、かといって、今使えるわけでもない。それに、この人が私が魔王の娘であることを知ってるわけでもあるまいし……。

 少し考え事をしていたが、目線の先に、一つの影を捉えた。

 が、すぐに見失ってしまった。


「何か来てます!」


「皆!構えろ!」


 その声に反応して、皆一斉に、さらに気を引き締めて構えを取る。

 だが、その統率も束の間で、殆どが一気倒れていた。

 何が起こったのか分からないほどだ。

 その人物は、悠々とその円の中に入り込み、剣をリーチェルさんへと向けていた。


「お前が、リーチェルだな。ここへ来た目的はなんだ」


「そういうことを聞くのは、まず自分が名を名乗ってからと教わらなかったか?」


「残念だな。俺にそんなことを教えてくれる人はいなかった。弱肉強食。どうせ消えていく運命さだめというのに、こちらの名を名乗ったところで無意味な話だ」


「消えないと言ったらどうする?」


「消えない?戯言だな。現にお前の兵隊の頭はすでに倒して……」


 カンッ


 私は、リーチェルさんに向けられていた剣を弾き飛ばした。

 そのアクションで、こちらに目線を向けられる。

 まるで、さっきまで興味がなかったかのようだ。その目は、まるで虫ケラでも見るかのようで……冷たい。


「お前は……」


「な、なに?」


「アッハハハハ‼︎こいつは愉快だな!リーチェル、この子に免じて、お前の首は残しておいてやる。命拾いしたな。だが、もう引き返すこったな。この先は何が起こるか分からんぜ」


 何故か高笑いしながら、その場を去って行った。何があったのだろうか。

 ただ……あいつは、私の正体を知っていた?

 多分、本来の目標はリーチェルさん一人だったんだろう。なぜ、リーチェルさんを狙う必要があるかも分からないけど。

 でも、最悪の事態は免れたってことでいいのかな……。

 その場に座り込んでしまった私の頭を、リーチェルさんは大きく、硬い手で撫でる。


「ありがとう。小さなヒーロー」


「でも……勝手にあいつがやめただけだし、私、何もしてない」


「でも、君がいなかったら私はあのまま殺されていたかもしれない。殺ることに、何のためらいもないヤツだな。ただ、このまま調査を続けようにもあいつがいては、調べることもままならない。今回はこれで引き上げるとしよう。3番隊に連絡は取れるかな?」


 私は、さっきリーダーさんが無線機を使っていたことを思い出して、探ってみた。


「これですね?」


 そのまま、リーチェルさんに渡す。


「そうそう。あー、3番隊。直ちに引き返せ。今回の調査は打ち切りだ。先ほどの襲撃者が向かってるが、決して応戦しようとするな。余計な行動を見せなければ、攻撃はして来ないだろう。何か聞かれたら、私の護衛で、引き返すと連絡が入ったと言ってくれ」


 連絡事項を伝え終えると、私に無線機を渡す。

 でも、私が持っているわけにもいかないので、リーダーさんの懐のところに入れ直した。

 そして、円の方で唯一残ってたアリスの方へ向かう。

 アリスはスターに膝枕をしていた。


「ごめんなさい兄さん。私のせいで……」


「アリス……」


「あ、ロロちゃん。大丈夫?」


「うん、私は平気。スターは大丈夫なの?」


「私を庇って……でも、気絶程度みたい。少しすれば起きると思うから」


  見た感じでは、特に外傷は見受けられなかった。あの男は妨害されないようにするだけだったんだろう。

 何が目的なんだろうか?

 すでに去って行った方向へと目を向ける。

 その姿が見えるはずもないが、妙に寒気がした。


「おーい!」


 それとは逆方向から、声がした。

 その方向へと顔を向けると、3人ほど姿があった。

 ウィナにソードに……あとは誰だろう?

 ソードは、こちらにたどり着いたと同時に息絶えた。


「情けないなぁ。そこまで飛ばしてないでしょ?」


「俺には……あれが、限界速度だったんだ……」


「ロロちゃん。襲撃者は?」


「もう奥へ行っちゃった。今回の調査は打ち切りだって。今は3番隊の人が戻って来るのを待ってる。ここの隊も、何人か倒れちゃってるから」


「そっか。うん。カルマさん、聞きました?」


「了解。でも、一応リーチェルさんのところへ行ってくるよ」


 カルマと呼ばれた、青年はリーチェルさんの元へと向かって行った。他の護衛とは違って、線の細い印象を受けるけど……まあ、私たちも同じようなものか。

 でも、私たちとは違って、正式な護衛だと思うので、実力はあるのだろう。


「ロロちゃん。おいで」


「?うん」


 ウィナに呼ばれて、ウィナの近くへと行く。

 そして、優しく抱きとめられる。前からは新鮮だ。


「どうしたの?」


「疲れたでしょ?私がまくらしてあげるから、少し休もっか」


「い、いいよ。私何もやってないし」


「いいから、いいから」


 半ば強引に、ウィナの膝の上に頭を乗っけられる。

 そこで緊張の糸が切れてしまったのか、いつの間にか、視界を閉じていた。

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