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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
45/145

ショッピングデート

 お次のデートはショッピングである。

 可愛い服を選んであげるとかじゃないけど。俺の新しい装備を買うだけだし。

 でも、ここはうちの国みたいに勇者の特権が使えるわけじゃないのにお金は足りるのだろうか。

 ちなみに、俺はお金の管理のずさんさが露呈しているため、全額ウィナが管理しています。

 ただ、ミーナちゃんの話によるとあまり勇者用の武具はないと言っていたが、果たして、目に留まるようなものがあるのかね?


「流石にアレよりましか」


「多分、アレより性能の低い防具はないんじゃないかな……」


 ウィナも苦笑しながら、歩いている。

 怒っていたのは収まったようだ。よかったよかった。


「うーん。でも、まず、その店がどこにあるかわからないね」


「それぐらい聞いておけばよかったな。しゃーねーから、適当に捕まえて聞いてみよう」


「じゃあよろしくね」


「……えっ?やってくれないの?」


「えっ?」


 二人して困惑する羽目になる。嫌だよ、こんなところで見ず知らずの人に声かけるの。

 という、メッセージを目でウィナに訴えるが、

『男の子なんだから、自力でなんとかしなさい』

 と、目で返された。

 よっしゃ、いっちょかっこいいところ見せたろうじゃないの。

 道ぐらい普通に尋ねられないのかと、怒られそうだけど。

 うーむ。なら、聞いても無視されずに至極丁寧に教えてくれそうな雰囲気を醸し出してる人を探してみよう。なるべく、女の人がいい。いや、下心とかじゃなくて、男だとなんか怒鳴られて終わりそうな気がしてやだ。(俺の独断と偏見)

 優しそうな人を見繕ってると、声をかけられる。おお、なんか困ってるオーラを出せばなんとかなるんだな。


「君、さっきから一人でキョロキョロしてるけど、何かあったのかい?」


 ……警察の人ですね。ちゃんと、この世界も、無秩序にならないようにそうした人がいます。

 俺が挙動不審だったから、職質だろう。え?職業勇者ですって答えなきゃいけないの?ただ、道を尋ねたかったのに、なかなかタイミングをつかめなかったばかりに?


「ほら、どうしたんだい?」


「あ、あの〜」


「ソード、何してるの?」


「ん?そちらは?」


「か……旅の仲間です」


「旅か……とてもその格好で旅をしてるとは思えないのだが」


「いや、あなたも仕事以外でもその格好してるわけじゃないでしょう?それと一緒ですよ。今日は休暇です」


「して、君は一体なんなんだ?」


「……勇者です」


「君が?」


「はい」


「まだいるんだね。ここも魔法使いの国だから、他の国から見れば、こんなにも魔法使いがいるのかってレベルだけど。勇者と言うならば、あそこの城を目指してるのかな?」


「え、ええ」


「そうか。頑張ってくれ。それで、君は一体何をそんなにキョロキョロと挙動不審にしてたんだい?」


「え、えっとその……」


 なんだろう。こういう大人って、圧迫質問と言うか、口調は丁寧なのにこちらが責められてるようにしか思えない。


「すいません。おまわりさん。こいつ、道を尋ねたかっただけなんです。ちょっと人見知りなんで、挙動不審に見えたかもですけど。あっ、そうだ。おまわりさん、この辺りに武具屋って、ありませんかね?」


 ウィナがフォローに回ってくれた。しかも当初の目的まで付け加えて。俺はできる幼馴染をもって幸せです。マジで号泣しそう。

 さすがに、ここでウィナに抱きついて泣くことは出来ないけど。


「そうだったのか。なら、武具屋はここからだと少し遠いな。私の車で良ければ乗っていくかい?」


「車があるんですか?」


「そりゃ、国の中は自由に使えるからね。警察は支給されているんだよ。ただ、少々肩身が狭くなるかもしれないけど、ただで送ってあげよう」


「だって。ソード乗ってこ!」


「え?俺、御用になるのは嫌だぜ」


「まあ、カモフラージュはしておくから。そこは気にしないでくれ」


 おそらく、この警察も魔法使いなのだろう。誰が何をやってるかなんて見た目では判断出来ない。

 遠いと言うなら、お言葉に甘えるか。一人ならまだしも、二人で居るんだし、万が一があってもなんとかなるだろ。

 俺はそうたかをくくって、お願いすることにした。

 助手席に乗る気は起きず、後部座席でウィナと二人で乗ったが。

 なぜ、わざわざ二人で居るのに助手席に行かねばならんのだ。


「仲良いね〜。もしかして付き合ってたりする?」


「「た、ただの幼馴染です!」」


「息もぴったりだな。はは、おじさんには遠い青春だな」


 言うほどおじさんと言う外見でもないが、そんな見た目の人ならいくらでもいるだろう。ていうか、警察というより、タクシーの運ちゃんだな。せめて、乗ってるのが警察御用達のパトカーでなければよかった。

 20分ほどすると、車は止まった。



「ここからなら、歩いていけるだろう。まっすぐ100mぐらいのところだ」


「帰りはどうすんすか?」


「1時間もあれば元の場所に戻れるさ。それぐらいは二人で仲良くな。こんなおじさんがいたんじゃ何も出来ないだろ?私も仕事があるし、そろそろ行こう」


 車を走らせて、警察の方は何処かへと去って行った。

 なんなら、飛べそうな気すらもしたけど、やったら大損害だろうな。着陸も上手く出来るか知らんし。


「じゃ、行きますか」


「もう、他の国に来てまでご厄介にならないでよ」


「俺のコミュニケーション力のなさを露呈したな」


「私はこれから先が心配だよ」


 降りた場所には、左手に用水路なのか、川なのかが流れている。

 そのおかげか、日が昇りきった今でも幾分か涼しく感じられる。

 先の警察の言うとおり、少し歩いたら、まあ、すでに看板は見えていたが、武具屋にたどり着いた。

 通りということもあり、あまりスペースが取れないのか、こじんまりとした佇まいだ。

 カランと、なんだか武具屋に合ってんのか分かんない音を立てる。


「いらっしゃい。今日は何をお求めで?」


「これぐらいで、剣と防具一式揃えれますか?」


「どちらが?」


「あ、俺です」


「君ね……うん、これなんかどうかな?剣士向きの装備はこの国じゃあまり売ってないけど、運が良かったね。うちはどちらかといえばそっち向きに商品扱ってるから」


 いそいそと、嬉しそうに装備を取り出していく。ああ、ようやくあの農民装備から脱却できるのか。長かったぜ。

 俺は手に取ろうとするが、ウィナはまだ悩んでいるようだ。


「これ、耐性とかどうですか?」


「ちゃんとコーディングしてるよ。基本魔法系統の攻撃は軽減できる。でも、光とか闇の血継魔法は軽減出来ませんけど」


「けっ……けい?」


「特殊な家系だと、基本系魔法が使えない代わりに、基本系の魔法に強い光と闇の魔法が使えるんだよ。光と闇は相殺する相性だね。闇の魔法は見たことないけど、光は時々使える人がいるんだよ」


「数が少ないから、耐性がなくても……」


「あっ、逆に光属性に耐性のある装備もありますよ。さらに闇属性に耐性のあるのも」


 なんか胡散臭い、黒塗りの装備と、逆に眩いばかりの黄金色の装備を取り出した。これなんか、鉄装備に色塗っただけじゃね?


「あっ、一番最初のやつでいいです」


「そうですか……」


 なんかションボリしてる。というか、こっちはあんまり売れてないんだろうな。


「な、ならこれ二つでそっちと同じ値段にしますけどどうでしょうか!」


 めちゃくちゃグイグイくんな。どんだけ売りたいんだよ。


「あの……そんなに買い手がいないなら、溶かして作り直せば……」


「それは商人としてのプライドが許さない!」


 そうですか。

 ウィナも呆れている。買い手がつかない商品ほど無駄なものもないしな。だが、これを買わせるのも商人としての腕の見せ所なのかもしれない。


「そういや、武器とか防具って、自分で作って売ってるんですか?」


「大抵はそうだね。旅に出るつもりはないけど、そういうのを作りたいって人は結構いるから。そういう人が競ってこうやって販売してるんだよ」


「でも、ここって魔法使いが多いし、魔法使い用の装備のが売れるんじゃ……」


「はは。僕の腕で売れてるなら、他の所は廃業寸前だね」


 要するに売れなかったわけだ。で、路線変更して、剣士向きの装備を売ってるということか。


「もっとも、剣士とかだと、近接攻撃が多いから、必然的に硬い装備じゃないといけないからね。作るの大変なんだよ。魔法使いが多いこの国では、あまり需要がないからね。こうして旅の人の新しい装備として売ってくしかないんだ」


「この国って、剣士とかファイターみたいなのを目指す人って少ないんですか?」


「そうだね。基本的に魔法の使い方を重点的に教わるから、物心ついた時から、魔法を使えるようになる。だから、剣士とか目指そうとする場合は、無理やり矯正することになるからあまり目指そうとする人がいないんだ」


 まあ、剣士と魔法使いでは戦い方は大きく違う。最初から魔法だけに絞ってるなら、戦闘術に関しては、中遠距離での攻撃の仕方を教わっているだろう。近距離での動き方はまた別に一から勉強しなくちゃいけないなら、やる人は少ないのだろう。俺だって、すぐに使える方を選択するだろうし。今から、魔法使いとしてやれと言われたらまず無理だしな。


「じゃあ、防具はそれで……剣はあります?」


「あ、剣はこちらです。ついてきてください」


 どうやら、地下があるようだ。狭いスペースでは何でもかんでも出来ないのだろう。下に保管庫かなんか作って、スペースの確保と言ったところか。


「えっと、今使ってるのある?」


「……」


「なんで目を逸らすんだい?しかも二人とも」


 木の棒です、なんてとても言えない。しかも、さらに王様からの支給品ですっていうハメになるぞ。王様の地位を落としてもいいのか?……いや、構わないな。一向に大丈夫だ。だって、俺は悪くない。


「手元にはないですけど、長さが80cmぐらいの木の棒です」


「……君、剣士だよね?」


「あ、いえ、さらにいえば勇者なんですけどね」


「そんな酷い扱いをされる勇者もいたもんだ」


 勇者は大概支給品で最初はやっている。ただ、二度目ともなると扱いが雑なのだ。なんでやねん。俺は同行者に奪われてんだよ。


「まあ、君のことは置いておいて……これなんかどうだい?」


 長さは申告しておいたので、ほぼ変わらない程度の長さの剣を取り出した。ただ、思ったより刀身が細身である。


「もう少し刀身が太いやつあります?」


「お気に召さなかったかい?なんか、線が細そうだったから、その方が使いやすいかなって思ったんだけど」


 店主の人は、別の場所へと移動して新しく剣を持ってくる。


「これはどうかな?」


「ちょっと使ってみていいですか?」


「どうぞ。でも、すっぽかすことはしないでくれよ?」


 まず、刀身が太い方を振り回してみる。やべ、意外に重いな……。使ってりゃ慣れてくるかもしれんけど、慣れるまでの時間がかかったらしょうがねえしな。

 一応、一通り振り回して小休止を挟む。俺が前に使ってたのどんな武器だったっけ?

 次に細い方を受け取る。レイピアとかよりは太いけど、でも、一般的に見られる剣よりかは細い印象だ。

 でも、こっちのほうが切るって感じかするな。さっきのは、殴るって感じだったし。

 攻撃手段としてはどちらもありだけど。

 先に重いほうを持ったせいか、かなり軽く感じられる。元々軽いのか、相対的にそう感じられるのか。

 でも、今の状態ならこっちのほうが使い勝手がいいか。


「どうだい?」


「こっちの細いほうでお願いします」


「毎度あり。ま、耐久性は少し劣るかもしれないけど、攻撃するなら申し分ないと思うよ」


「本当にこの値段で大丈夫ですか?」


「原価は安いからね。これでも十分元は取れるんだよ」


「そうですか」


 予定していたよりも格安で買えたのか、ウィナは申し訳なさそうに受け取った。


「ほら、剣ぐらいは持って」


「おお」


 ちゃんと、鞘もある。背中に背負うタイプのようで、ベルトで縛ることにした。


「ありがとうございました」


「はい、これも持って」


「俺のだから仕方ないとはいえ、嵩張るな」


「最近のは、軽くて硬いのが流行ってるからね。持ち運びは楽でしょ」


「着たときに重くて動けませんじゃ、誰も買わねえだろ」


「そりゃそうだ」


「ここからどうする?歩いて一時間ぐらいつってたけど」


「せっかくデートなんだし、もうちょっとゆっくりしてこ」


「だな」


 帰ったらアリスにどやされる気がするけど、今日のところは目をつむってもらおう。いつも、ウィナが我慢してんだから。

 ウィナはご機嫌な様子で歩を進めている。


「ほら、ソード。横歩いて」


「はいはい」


 一個下の幼馴染の頼み事を聞く機械となっていたが、向こうが楽しんでるならそれでよしとしよう。

 俺はそれでいい。自己犠牲なんて殊勝な心構えじゃないけど、俺なんかと一緒にいて楽しんでくれてるなら、光栄の至りだ。

 帰りは、ウィナの望むがままにデートを続けた。



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