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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
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二人きりの勉強会

 図書館なんてものは、どこにでもあるものだが、大規模図書館とかは大体その国の中央に配置されている。

 分館ももちろん存在するが、所蔵数が圧倒的に少ない。

 最寄りで無い場合は取り寄せることも可能だが、時間がかかるとのことだ。

 普段行かないから、知らないことだらけだ。

 だから、こうしてある程度興味を持っているわけだが、きっと、俺だけなら一生縁がなかっただろうし、少しでも知識を蓄えてもバチは当たらないだろう。

 ただ、一緒に来た少女は若干頬を膨らませている。

 まだ、怒ってるのだろうか。怒らないって言ったのに。

 俺に当たらないだけで、なんとか鎮めようとしてるんだろうか。


「とりあえず入ろうぜ。中なら涼しいだろうし」


「うん……」


 手を差し出すが、それは無視されて自動ドアに向かって歩き出す。

 やれやれ、こりゃもう少し待った方がよさそうだな。

 ウィナの後ろに続くように俺も自動ドアをくぐった。


 ーーーーーーーーーーーーー


 ウィナは早速何か見つけたのか、適当に数冊抱えて、椅子に座っていた。

 俺も早いところ探そう。

 ただ、空へいく方法か。

 単純に、何処かへ空へ飛ぶためだけの装置があるとかそんなんなら楽なんだが、都合良く存在しないだろう。あったとしても、自分で作った方が早そうだ。

 結局魔法に頼ることになるんだろうけど。

 適当に、空間転移系の魔法について書かれたものをいくらか手に取る。

 でも、これも制約みたいなのがあるしな。ウィナもこれについてはあまり得意な魔法でもないようだし。

 そう考えるなら、やはりあそこまでの道を作るか、もしくは、翼を生やすか。

 そんなことが出来んのかね?

 ウィナのところへ向かう途中に、一冊の本が目に入る。

『高度3000メートルへ飛ぶ方法』

 そういや、あの城はどのぐらいの高さなんだろうか。高度3000メートルもあれば足りるか?

 何が書いてるか知らんけど、一応これも持っていこう。

 俺はウィナの隣に腰掛ける。

 だが、ウィナは本にかじりついたまま、対角線上へ席を移動してしまう。


「うっ……うっ……そりゃ、悪かったと思ってるけど、そんな露骨に避けなくてもいいじゃん……」


「わ、わ、泣かないで。隣り行ってあげるから」


 一応、図書館なので声を上げないように静かに俺をたしなめて、横に座って、頭を撫でる。


「もう……本当にちょっとしたことですぐ折れるんだから」


「だってさ……誰だって好きなやつに避けられたら悲しいだろ」


「しょうがないな、ソードは。で、何を借りてきたの?」


 俺は三冊ほど借りてきていた。二つは空間転移の論理的なものの本と、あと一冊はあれ。


「うーん。空間転移は私もあまり得意じゃないんだけど……せっかくだし、一緒に見ようかな」


 そもそも、空間転移というものは、自分が知っている座標へと移動するもので、自分が見たことのない地へとは移動は出来ないらしい。

 あと、移動距離の限界や、重量のこともあるようだ。

 一度に使える魔法量で変わってくるらしい。

 自分一人を運ぶ分なら、ほとんど消費も少なく済むようだが、それでも距離が伸びるほど、使う魔法量は多くなる。


「ウィナは、俺とロロちゃんを抱えたままでも移動できたよな?」


「まあ、あの時はそれほど距離も離れてなかったし。たぶん、修道院あたりまでいくと、70kg程度の負荷が限界かな?」


 ウィナが使う空間転移は、距離に比例して、重量も軽くしないといけないようだ。まあ、さすがに70kgの荷物を背負うようなことはないだろうし、自分一人が離脱するのなら、十分すぎる負荷だろう。


「ウィナ、自分だけで移動できる最大距離とかあるか?」


「魔法量とかから見た計算だと、大体1万キロ程度が限界だって。これも、魔法量が最大まであった状態での移動距離だけど」


「1万って……どこぐらいまでだ?」


「んー。地図があればいいんだけど……」


「じゃ、俺持ってくるよ」


「よろしくね」


 俺は世界地図を探しに席を立つ。

 大陸が一つに繋がってからというものの、地図を作るのが楽になったとかならないとか。

 結局、新しく陸が増えてたり、逆に減っていたら書き直しだしな。


「これでいいか」


 適当に目についた『世界地図』と書かれた本を持っていく。

 その間にも、ウィナは俺が持ってきた本を先に読み進めていた。


「空へいく方法とかつかめそうか?」


「空間転移魔法がまず、点から点への移動なのか、線での移動なのかでちょっと変わってくるんだよね」


「どういうことだ?」


「あくまで自分が見知ってる土地にしか移動出来ないから、今いる場所をAとした場合、移動距離は考えずBに転移できるのか、もしくは線で考えた場合は離れてる分の距離を考えてBへと移動するのか。もし、Bへたどり着く魔法量が足りなかったら、点の場合はそこで魔法が失敗だし、線だったら、途中の地点に移動するかもしれない」


「魔法量の調節で、もしかしたら移動距離が変えられるかもってことか?」


「仮定だけどね。私の場合は線での移動だと思うし」


「確か、ウィナは一箇所だけ固定していつでも戻れるようにしてんだよな?」


「うん。実家に固定しておけば何かあった時に安心だし」


「一箇所以上は固定出来ないのか?」


「あれ、維持するのにも魔法使ってるから。でも、あと一つぐらいなら出来るかな?使ってるって言ってもそう大した量は消費してないし」


「それどういう原理なんだ……?」


「まあ、そういうものって考えてくれればいいよ。実際のところは、私は座標を固定してるだけで、そこの維持は親がやってくれてます」


「ああ、そう。だから、他に保証の効かないところには固定出来ないのか」


「いついくとも限らないし。まあ、もっとも得意な人は知ってる場所なら、そういう面倒なことはせずに移動できるんだろうけど。それこそ、私みたいに線じゃなくて点の移動で」


「自分だけ、ちゃっかり帰る準備が万端なウィナさんパネェですね」


「帰る時は一緒だから気にしない。それで、地図はどうなの?」


「ああ」


 俺はまず、自分たちの国を指差す。

 意外に面倒なことに最東端にあるらしい。

 で、おおよそ位置で書き加えられた魔王城の位置はだいたい、地図の中央。ここで、大体1万2000キロ。ウィナの転移魔法でも少し足りないか。


「いや、2000キロって簡単に言うけど、かなりあるからね?ここが、どれぐらいか知ってる?」


「5000ぐらいか?」


「今1800キロ。あんだけよー休んでてどんだけ進んでると思ってるのよ?」


「意外に進まんもんだな。なんで、あの時はわりかしすぐにたどり着いたんだ?」


「まあ……城がうちの国に近かったことと、エドさんが何度か転移魔法使ってたから」


「え?あの人使えたのか?」


「騒がれるとめんどうという理由で、毎回ソードだけ気絶させてたから知らないのも無理はないね」


 俺、そんな理由で気絶させられてたの?

 格闘家のくせに魔法を使えるとはこしゃくなり。


「そんなこと言ってると現れるよ?」


「あの人の家って、ここから正反対のとこじゃなかったか?」


「そうだけど……ソードはしょうがないか」


 そうそう、しょうがない。そんなに頻繁に気絶させられて、特攻隊をさせてたようなやつにいい印象をもてという方が無理な話だ。


「そう考えると、魔王城ってかなりでかいな」


「残り1万キロと仮定しても、普通に外観が分かるレベルだからね。まあ、月みたいなものか」


「誰が作ったんだか」


 魔族を治める王だから、支配下は多いか。言われたことをこなすぐらいだったらできそうだし。

 地図はこの辺りにして、閉じることにする。

 おおよその距離がわかったところで、たどり着くまでの時間なども考えなきゃいけない。

 あの時の旅は1年を少し過ぎたぐらいだった。

 地上にあったし、それで済んだかもしれないが今回は、空中に浮かんでいる。

 それも、どれぐらい飛べば分からない位置だ。

 自分たちで、その経路を見つけなくちゃいけないことも考えると、下手すりゃいつまでも終わらないかもしれない。


「手詰まりだったら、あとはロロちゃん頼みだな」


「どうするの?」


「魔王は降りれないんじゃなくて、あそこにいなくちゃいけないから、降りて来られないと俺は思う。自分がいない間に乗っ取られててもアレだしな。だから、支配下の悪魔たちに捜索を頼んでんじゃねえか?」


「でも、あのGPSでロロちゃんの大体の位置はわかるらしいけど……なら、そのままロロちゃんだけ連れて行って、魔王城付近にまで行けばいいんじゃないの?」


「でも、悪魔のトップがあれだしな……」


 あれ=サタン。現在、我が国の警備兵をやってる。

 いや、今もやってるか知らんけど。

 下手したからどこかで俺たちの動向を見てんじゃねえの。

 嫌だわ、そんなストーカー。

 でも、ロロちゃん自身が悪魔たちの存在をあまり知らない上に、旅の間で会ったら倒して回るとか言ってるし、その情報が回ってるとするならば、おおよそ付きまとってくるとは限らないだろう……。


「空を飛ぶね……。人の体に羽を生やすなんてできやしないし……かといって、あそこまでの道を作るのにも、人手とか材料も必要だろうし……あの城になんか地上に繋がる仕掛けがあれば……」


 ウィナはウィナであの城への行き方を画策している。

 仕掛けか……それがあるならば、魔王自身使ってるかもしれない。

 もしかしたら、一度出したらしまえないものだから、出し渋っているのか。もしくは、出すこともしまうことも可能だが、時間がかかりすぎるのか。

 でも、そんな道が出来たなんて話を聞かないから、前者の方がまだ可能性としては考えうる……。

 いや、これはあくまでも地上へと繋がる仕掛けがあると仮定した場合だ。

 本当に存在しないのかもしれない。

 もしくは透明だとか?

 でも、空中に人が歩いてるなんてなったら、それこそ知られているだろう。


「やっぱり、俺たちがどうやって地上へ戻ってきたかを考えた方が、解決策は早く出せそうじゃないか?」


「なら、ソードは自分がどうやって出てきたか覚えてるの?」


「いや、さっぱりだが……なんか城から出る瞬間だけ記憶が抜き取られてると言うか……あの前後の記憶が曖昧なんだよ」


「きっとトラウマからその辺記憶がなくなっちゃったんだね。ゴメンね、無理に思い出せようとして」


「いや、そんな諭すように撫でないで。別にオッさんとの決闘はトラウマじゃねえよ」


 なぜなら、覚えてないからです☆

 覚えてないのなら、トラウマにもならんだろう。

 でも、ウィナから撫でられるのは気持ちいいので、終わるまでじっとすることにする。


「ソードはなんか打開策ありそうなの?」


「ひとつ思いついた」


「なに?」


「どっかにあの城に行くためだけの転移装置を作れいいんじゃないか?計算で座標は出せるだろ。適当に被験して、問題ないようなら突撃」


「被験ってなにで?」


「まあ、ぬいぐるみとかそんなもんか?座標が間違ってたら、落ちてくるし」


「空気抵抗とか風とか全く考えてないね」


「だから、座標を完璧にすればいいだろ?誰かできる人いないか?」


「 探せば、この国に一人か二人いそうだけど……婆やさんに聞いてみよっか」


「案外あの人が出来たりしてな」


「まさかぁ……ないよね?」


 探すならばまず身近から。そう簡単に見つかるとも限らないだろうけど、少しこの国で探して見ることにしよう。

 俺とウィナは本を片付けて、図書館を出た。



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