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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
42/145

勇者と魔法使いの恋愛事情

 朝が訪れた。

 宿のベッドよりもかなり高級らしく、寝心地はとてもよく、疲れも一気に取れた気がする。

 ただ……


「アリス。己、夜這いに来やがったな」


 こいつの行動力を逆に見習いたい。城からも抜け出してたくらいだしな。

 忘れかけているが、アリスも姫である。姫としての立ち居振る舞いはどこへいったのやらだが。

 まだ寝ているようだったので、起こさずになんとか抜け出す。

 隣のベッドで王子もまだ寝ていた。

 近くにあった時計を見てみると、まだ5時前だった。

 随分と早く起きたもんだな。

 せっかく抜け出したので、そのまま廊下へと出ることにする。


「あ」


「ウィナ。おはよう」


「あ〜おはよう。アリス、そっちに行ってない?」


「案の定だよ」


「もう。すぐ目を離すとこれなんだから」


 ウィナは呆れたようにそう言う。


「そういや、こうして寝起きでウィナと会うの久しぶりだな」


 寝相がいいのか、寝癖はほとんど立っていない。

 いつも縛っている艶やかな髪を今は下ろしている。


「う〜、まさかソードがこの時間に起きてくるとはぬかった」


「別に寝起き姿なん、一緒に暮らしてた時に散々見ただろ」


「女の子はいつでも可愛く見られたいの。だから、抜けた姿を見せたくないものなの」


「可愛いと思うけどな」


 ウィナは背中をビシビシ叩いて、下へと降りていった。痛えな。

 多分、洗面所に向かったのだろう。

 まあ、なんか怒らせてしまったようなので、鉢合わせならないようにするか。

 俺は厨房へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「あら、早いですね。枕が合いませんでしたか?」


「とんでもない。ただ、他所の家だと早く起きちゃう体質でして」


「そうでしたか。朝ごはんまでまだ時間がありますが、先に召し上がりますか?」


「できるなら。あと、ウィナも起きて来てるんで二人分お願いします」


「かしこまりました。昨日のところでお待ちください」


 ばあやはいつ頃から起きているのだろうか、朝ごはんの下準備を始めていた。

 まだ下準備ってことは四時半ぐらいか。早起きだな。使用人はそれだけやることが多いのだろうか。現在は一人だけって聞いたし。

 俺もなんか手伝えばよかったかな?

 まあ、いらん世話か。

 俺がやったら逆に時間かかりそうだし。

 俺は食卓へと行き、ウィナを待つことにした。


 ーーーーーーーーーーーーー


 それからほどなくして、ウィナは食卓へと赴いた。

 若干眠そうだった眼はいつも通り大きく、くりくりとしている。


「ソードも顔ぐらい洗ってきたら?目やにがすごいよ?」


「飯食ったらにするわ。で、今日はいつ行く?」


「いつとは?」


「おわぁ!」


 ばあやが朝ごはんを運んできてくれていた。全然気づいてなかったから、予想外に驚きすぎた。


「ありがとうございます。別に隠すことでもないですよ。ソードなんですけど、昨日見ての通り農民みたいな装備なんで、新しいのを買ってあげようかと思いまして。それをいつ行くかって話です」


「そうですか。なら、今のうちに行ってはいかがですか?他の方には言っておきますので」


「いやいや、ちゃんと言ってから行きますって」


 なんか、ばあやがウィナのほうに近づいていく。


「他の方がいらっしゃったら、二人きりでいられませんよ?」


「そ、そそそそういのいいですから!」


 なんか、すごくウィナが動揺してる。

 そして、再びばあやに耳打ちをしている。


「……かしこまりました。他の方にはうまく言っておきますので」


「ほら、ソード。早く支度して!」


「な、なんだ?」


「いいから!」


 急かされるように、支度をさせられる。と言っても、顔洗って、着替えるぐらいだか。ちなみに、フィールドに出ない時用に私服を持っている。大したものではないけどな。


「それじゃ、よろしくお願いします!」


「気をつけてください」


 なんだかよく分からないままに、ウィナに手を引かれて、屋敷を出た。


 ーーーーーーーーーーーーー


「どうしたんだウィナ。こんな時間から出たって、どこの店も開いてないだろ」


「…………いいでしょ別に」


「まあ、いいけどよ」


 さすがに、朝なので日差しは柔らかい。というか、まだ昇り始めたぐらいだ。現在、六時前。少し、薄暗さすらある。


「そういや、こうやって二人で歩くなんてなかったなー。たまにはいいな」


「…………なんでそこまで気づいてるのに、そう言わないのよ」


「へ?」


「あーもうとぼけるな!」


「いやいや、なんの話だよ」


「ふー。………じゃあ、意地でも言わせてやる」


 何だか恐い。無理やり言わせるのは脅迫って言うんだよ。ん?脅してないから脅迫じゃない?


「今日はソードは女の子と二人きりで買い物に行ったり、図書館に行く予定です。これを世間一般ではなんていうでしょう」


「羨ましい」


「感想じゃない!ちゃんと用語があるでしょうが!」


「どーどー。そんな怒るもんじゃないぜ。可愛い顔が台無しだ」


「よくまあ、そんな歯の浮くようなセリフを言えるわね……」


「俺は見たまんまの事実を伝えてる。半分、脳と口が直結してると考えてもらっても構わない」


「じゃあ、その直結してる口でさっきの答えを出してちょうだい」


「デートだろ?あんま意識しすぎんなって。考えすぎると余計恥ずかしくなるから。なんなら手でも繋ぐか?」


「うう……なんで、こんなやつを私は……」


「ほら、開店まで時間あるし、ちょっと観光して行こうぜ」


 俺は、ウィナに手を差し出す。俺の右手にウィナの手がおそるおそる乗せられた。

 さあ、デートを始めましょうか。


 ーーーーーーーーーーーーー


 ウィナの手を引いているが、どうしても意識してしまっているのか隣じゃなくて、半歩後ろを歩いている。


「ウィナ。隣に来てくれない?少し、歩きにくいんだが」


「そ、そそそうだよね。いい天気だね」


 テンパり過ぎてて、会話が噛み合ってない。ここまで緊張しいだったのか?


「ウィナ。お前もてそうなのに、デートの一つもしたことなかったのか?」


「い、いいでしょ別に!私の勝手だし!」


「ああ、はいはい」


 変なところでカタブツなんだよな。

 貞操観念がガチガチ。

 確かに、店にも学校のやつが来た試しもない。いや、男子の話であって、女子はいくらか来てたよ?

 まさか……


「お前、男より女の子のほうがいいのか?」


「なんでそーなる!」


「いや、俺の勘違いならそれでいいんだ。うん」


「……決めてるだけだもん」


「あっそ。だったら、逃がすんじゃないぞ?お前、逃がしたらずっと引きずりそうだし」


「うん」


 笑顔を俺に向けて、少し体を寄せた。

 やっぱり、そういうことなんだよな。こいつが、頑なまでに誰とも付き合おうとしないのは。

 男なんて、他にもいくらでもいるのに。

 いつか、誰かに刺されるかもしれない。

 誰かを選ぶということは、誰かを傷つけるということだ。

 選んだ時はそれを祝福してくれるかもしれない。

 でも、選ばれなかった方は、きっと影で泣くことになる。

 だから、俺は選べない。

 その場しのぎの回答しか持ち合わせていない。


「今日は何勉強するんだ?あんま難しいと俺寝るぞ」


「自分で読めそうなもの探すしかないね」


  今日することを話題として、話をそらす。そうすることで、俺はその思考を底へと沈める。

 鈍感なつもりはない。ただ、目をそらし続けてるだけだ。なら、いつか面と迎える日が来るのか。

 まだ、時間はある。

 せめて、この旅が終わるまでには答えを出そう。

 そらし続けてるのは、やはり失礼だ。好意を向けてくれてるのに、それに答えを出さないのは。


「あっ、あそこに座ろ」


 木の木陰となっているベンチを見つけ、そこに今度は逆にウィナに引っ張られる。


「涼しいね〜」


「ああ。今から暑くなるだろうけど、ここなら凌そうだ」


 木漏れ日を眺めてるとうつらうつらとし始めてしまった。

 やっぱり、あんま寝れてないのか。

 自然と目は閉じていった。




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