最強の杖
「でけえな〜」
「うん。結構なお屋敷だね〜」
庶民派二人の感想。
「そう?うちの方が大きいよ?」
「ロロちゃん。別に大きさで張り合ってるわけじゃないから」
「うち城ですしね」
王族派の感想。
ったく、なんで五人中三人が王族出身なんだ?一人は魔王血族だし。
でも、俺もウィナも一般的な視点から見ればそれなりの資産はある……俺の方はなかったな。親父が全部売っぱらったせいで。
くそ、恥を忍んででも家に戻っておけばよかった。
「ばあやー。帰ったよー」
「おやおや。お嬢様お帰りなさい。そちらの方々は?」
「旅の人。宿に行くとこだったから、ついでだと思って私のところに泊まってもらおうかと」
「そうですか。ご主人夫妻は現在不在ですが、どうぞゆっくりしていってください。夕飯はまだでしたか?」
「い、いえお構いなく」
「食べていってください。最近は私とお嬢様の二人だけで食べていたので、こうして人がたくさんいた方が楽しいのですよ」
「そ、それなら……あ、私手伝いますよ」
「そうですか。旅でお疲れのところすいませんが、ありがたいです」
「いえいえ」
ウィナは、多分使用人さんと一緒に厨房の方へと向かっていった。
律儀だなあいつ。作ってもらいやいいのに。
いつも自分が作ってるから、作ってもらうという発想がないのか。
まあ、俺以下四人はだいたい同じような感じだが。
「一緒にしないでください。僕はこれでも、修道院では自炊もしてたんですよ」
「修道院はシスターが作ってるって話じゃなかったか?」
「カインとアベルが食べたがらなかったので、僕が作ってたんです。最初の方はひどいものでしたが、やはり慣れですね。一週間もすれば食べれる味になりました」
意外に主夫スキルの高い王子だった。流石に修道士だったといったところか。
それに比べて……
「ロロちゃんこの角なにー?」
「これは……一応身体の一部」
「何で生えてるの?」
「わ、私エルフとのハーフなんだー」
「へーすごーい!」
まあ、嘘は言ってないな。エルフに角が生えてるなんて言われたら、エルフの人たち起こりそうだけど。
まあ、うちのウィナ以外の女子は雑談に花を咲かしている。
「アリスはどうして旅してるの?」
「んー。好きな人がやってるからかな?」
アリスは照れくさいことを言ってくれている。
「へー誰々?スターさん?」
「ロロちゃんかな」
俺じゃないんかい!
きっと、ミーナちゃん以外はそう思ったことだろう。
現にロロちゃんが一番驚いている。
「ついでと言ってはなんだけど、スターは私の兄なの」
「兄妹だったんだー。二人とも綺麗だね」
「ふふ。ありがと。ミーナちゃんも可愛いよ」
「そうかなー。あ、そういえば、私も兄弟がいるんだー。お兄ちゃんなんだけど、今旅してるの」
「へー。どんな人?」
「攻撃魔法がすごいの!本気を出したら、空の星まで届くって!」
そいつはすげえや。流石のウィナもそこまでの射程距離はないだろ。
「でも、照準はブレブレで正確に狙えるのは15メートルが限界だって」
それだったら、空に向けて射ったやつはどこに向かうんだ。
妹の手前、誇大して言ってたのか。
だが、魔法使いの国であるし、ウィナ以上のやつがいても不思議じゃないな。
「そのお兄さんはなんで旅に出たんだ?」
「んーとね、私のお兄ちゃん六個上で、二年前にこの国に代々伝わってる最強の杖の話を聞いたの。どこか封印されてるらしいんだけど、どこに封印されてるかも分かってないのに出て行っちゃって、それ以来音信不通なの」
「二年も探して、分からないんだったら、戻って顔でも見せてやればいいのにな」
「いいの。お兄ちゃん頑張ってるから。私も早くお兄ちゃん手伝ってあげたいな」
「ミーナちゃんは旅に出れないの?」
「この国で魔法使いは15歳以上にならないと、旅に出ちゃいけないの。私はあと二年待たなきゃ……まあ、それまでに見つかって戻って来てくれたならいいんだけど」
「じゃ、俺たちが旅してる間に会ったら言っといてやるよ」
「本当⁉︎」
「ああ、約束する」
「じゃあ指切り」
俺と小指を絡ませて指切りをする。
まあ、こんな感じに時間を潰していく。
遊んでばかりの女子二人は同じ女子のウィナとどこで差がついたんだろうか。まあ、年下ってこともあるだろうけど。
「ソードー。スター君ー。料理出来たから運んでもらえるー?」
奥からウィナの声が届いた。男子の俺たちしか呼ばないところに意図的なものを感じる。
まあ、使うなら男手だけども。
別に反論する気もないので、立ち上がって、厨房へと足を運んだ。
ーーーーーーーーーーーーー
「ごっそさん」
「早いな。あんた」
「久しぶりに肉々しい肉を食べたぜ」
「旅でいつまでも肉を保存をしておけると思うな」
おかげさまで、最近は山菜やら、川で釣ってきた魚でガチなサバイバル気分を費やしていた。
肉となるような獣もいないし。
ちなみにそういう獣は、大体家畜である。
「おかわりいかがですか?」
「あるんすか?」
「ええ。少し作り過ぎてしまいました。よかったら食べてください」
「それじゃ遠慮なく」
使用人さんは再び戻って行った。
「なあ、ミーナちゃん。あの人はどれぐらいここで働いんてんだ?」
「私が生まれる前からだって。多分、お兄ちゃんが生まれたぐらいじゃないかな〜。他にも何人かいるけど、専属の使用人はばあやだけ」
「他にもいるのか?」
「うん。でも、その人たちは自宅出勤だから、ちゃんと働く時間が決められてるの」
「へえ」
「そんな目をされても、うちは足りてますよ」
「ちぇ」
「スターさんとアリスさんのところも使用人がいるんですか?」
「こいつら、一応王子と姫。俺はこいつらの親の下僕」
「本物?」
「嘘を言っても仕方ないでしょう。まあ、自国でない限りは王の存在は分かっていてもその子まではあまり知られていないものですから」
「ほぇ〜」
何かに感心したかのように、二人を見ている。まあ、普通は王子と姫と交流なんてあるもんじゃないからな。例え、自分の国の人でなくても、その存在自体が物珍しいだろう。
「スターさんの国は自由なんですか?」
「いやね。僕とアリスはほとんど、親に反抗して出てきたようなものなんだ。僕は二年間修道院にいて、アリスは不登校」
「今言わなくてもいいじゃないですか!」
「アリスさん。ちゃんと学校行かないといけないですよ?」
「うっ。年下の子に言われると意外に応えるな……」
なら、ちゃんと行っておけよ。そうすりゃウィナみたいに後ろめたい気持ちにならずに済んだのに。
「ま、アリスもスター君も成績は優秀だったから。高等部に進まなくても大丈夫って判断だからこうやって旅に出てるんだよ」
「ウィナさんは?」
「私は、一応行ってた感じかな。友だちもいたし、なんだかんだ友だちがいればなんとなく足が向かっちゃうような所だったよ」
こいつもこいつで魔法学の成績がずば抜け過ぎて、魔法学の単位だけで高等部も卒業できるレベルだったらしい。普通は一つの科目だけで卒業できるとかそんな奴はいない。
「ソードさんは?」
「俺?俺は……」
「「学校に行ってない」」
「てめぇらはもう少しオブラートに包めねえのか⁉︎」
とんだ暴露祭りだよ。こいつらに思いやりの心はなかったのか。
「え?アリスさんと一緒ですか?」
「引きこもり姫と一緒にしないでくれ。俺は行けない理由があったんだ」
「なんですか?」
「俺の親父も勇者でな。俺を勇者にするべく、勇者の勇者による勇者にするための教育を叩き込まれてた」
「結果論で言えば、血筋でなれたんですけどね」
「そんなぶっちゃけたことを言うんじゃない。お前に剣を教えてやったのはどこの誰だ?」
「はて、誰でしたかね?」
「お前らなんて嫌いだ!」
俺はばあやと入れ違いになるように、屋敷の外へと出た。
ーーーーーーーーーーーーー
「行っちゃいましたよ」
「ちょっといじめすぎましたかね?」
「なんとメンタルの弱い勇者か」
ソードがいなくなったので、私が進行役をすることにする。
「もう、兄様!お兄ちゃんをいじめないで!」
「あの人もいい年なんだし……」
「お兄ちゃんは言葉責めには打たれ弱いの!」
「そんなメンタルがったがたな勇者でよく前の旅を遂行出来ましたね」
「いや、前の旅でもかなり折れてたよ。折れすぎて、最終的に私としか会話しなかったぐらいだし」
基本的に、あのパーティは色々と比重が偏っていたような……戦力分配然り、人間関係然り。
基本戦法が、ソードを一人で特攻させてたし。さすがに、見ててかわいそうだった。
助けに行こうとしても止められるし。
食べ終わったら、迎えに行ってあげよ。
そう考えてたら、ミーナちゃんの質問はロロちゃんに向かっていた。
「ロロちゃんは12歳なんだよね?旅出て大丈夫なの?」
「え、えーっと」
助け舟出した方がいいのかな?大体、こう言う時に助け舟を出していたのがソードだし。なぜ、肝心な時にいない。仕方ない、ソードを使っておくとしよう。
「ロロちゃんはね、ソードの親戚なの」
「え?そうなの?」
「話を合わせない」
疑問を普通にぶつけてくるこの子はたまに空気を読めない。
ソードが甘やかしてるのがこういうところに出てきているような気もする。
やっぱり教育にはアメとムチが必要だよね。
うちのパーティにおけるこの子の教育はアメが9.5割、ムチが0.5割。
言うほどワガママでないのは、親の教育が良かったのかな?
何気に侮れない魔王。私も戦ったけど、結局逃げられた。
うちのパーティの教育方針はまた考えることにしよう。
ついでにロロちゃんはこくこくと頷いて、同意を示した。
「う、うん。その……お父さん同士が兄弟で……はとこだっけ?」
「いとこ」
「そうそう、そのいとこってやつなの。ソードのお父さんに頼み込んで一緒に旅させてもらってるのー」
ものすごく棒読みだ。私が12歳の時はどんな感じだっただろうか。この子のように無邪気な感じだっただろうか。それとも、物事を斜に構えて見てなかっただろうか。
どちらにせよ、今のロロちゃんの心情は答えを用意してなかった子供がしどろもどろになっているということだ。
私もお姉ちゃんだし、魔王の子だってバレると面倒だし、カバーはしてあげないと。
「そうそう。お兄ちゃんのソードがちゃんと守るっていう条件の元こうして一緒に旅してるの」
「私もお兄ちゃんが一緒だったら旅出来たかな?」
「ダメですよ。他所の国がよくても、ここではちゃんと決まりがあるのですから」
「分かってるよー。言ってみただけ」
ミーナちゃんは、行儀悪くお皿の料理をフォークでいじくりまわしている。少し、不満なのを言葉にしないが態度で表しているのだろう。
私の視線に気づいたのか、ハッとして急いで料理を片付け、ごちそうさまと挨拶した。
「あとで上に来て。私の部屋ね!」
そう言い残して、姿を消した。
やっぱり、自分より年下でそれも女の子が旅に出ていることが悔しかったのだろうか。
「あっ、そうだウィナ。ウィナはいなかったから聞いてなかったと思うけど」
ロロちゃんから最強の杖の話を聞く。魔法使いの国に伝わる最強の杖。
私が今装備してるものはどうなのだろうか。
ミーナちゃんが反応してなかったのを見ると、これは違うのか。それとも、ミーナちゃん自身はそれの実像を知らないのか。
「ばあやさん。その最強の杖の文献とかありますか?」
「あることにはありますが……この国の人以外は見せられない決まりになってます」
「そうですか……」
私だって、魔法使いの端くれだ。
そういう魔法使いに関連するようなものには興味はある。
魔法については知識はあるけど、魔法使いの武器とも言える杖に関してはそこまで造詣は深くない。
「どうしたら、見れますかね?」
「一応、図書館はありますから。あなたも見たところ魔法使いなのでしょう?そこなら、誰でも検閲可能ですから、時間があるなら行ってみてはどうでしょうか?他の国にはない魔法についての記述が書かれた本もたくさんありますよ」
「本当ですか?ありがとうございます。教えてくださって」
「いえいえ。旅の人には親切にしないといけませんからね。あまり、他の国のことは分からないでしょうから」
んーむ。意外と旅人というのは、他の国から来たこともあり、敬遠されがちなのだが、この人はそういうことはないようだ。
魔法使いの国という珍しいところでもあるので観光客のような人は多いのだろう。
みんなが食べ終わるのと同時に、私は拗ねて出て行った、幼馴染を迎えに行くこととした。




