魔法使いの国
ロロちゃんは二日程度で復活し、さらに歩くこと一週間。ようやく、目的地である魔法使いの国へとたどり着いた。
たどり着いたものの、特に誰かとパイプがあるわけでもなく、適当に散策しながら、情報を集めるしかないのが現状だ。
「ウィナ。お前は親が有名なんだから、知ってる人いんじゃねえのか?」
「親を知ってる人がいても、私を知ってなきゃ。親の七光りで優遇されたくないよ」
「パイプがあるなら少しでも有用に使わなきゃな。これから先の社会で生き残れないぞ」
「何のパイプもないソードに言われたくない……」
「いや、俺もゆくゆくは城の警備隊に……」
「勇者がそれでいいのか」
「元勇者のくせして後進の育成もせずに、農家を営んでる奴もいるんだぞ」
「うちの国も勇者をそれほど輩出してるわけじゃないから、普通の勇者って引退したら何するんだろ?」
「俺はニートで。ウィナに養ってもらう」
「働かなかったら養いません」
「何度も言うように、今時勇者と言う学歴じゃ、どこぞかの用心棒としてでしか雇われないぞ」
「スター君、アリス。このポンコツ勇者でよかったら雇ってあげて」
「よろすく」
「今の状態じゃ、とてもじゃないですが雇えないですね」
「だから、私のお婿さんになればいいんだよ」
アリスに振れば、どうしてもこの方向に話が持ってかれるが、ぶっちゃけ、俺が大人になって生きていくためにはそれが最善策な気もしてきた。
「アリス。ソードさんと結婚するなら、城から追い出すから」
「なんで⁉︎」
「いや、脛かじりする未来しか見えないし、せめて将来性のある人と……」
将来性か……。
俺に将来のビジョンが見えない。
いっそのこと、魔王と一緒に消えたら、それこそ俺としては大往生だろ。
そもそも、俺が大人になってなんの生産性をもてと言うのだ。
ああ、だから親父は農家を始めたのか。
「お兄ちゃんは今から頑張るもん!ねっ?」
「うん……頑張って野菜を育成出来るようにするよ……」
「もっと他のところで大成してよ!」
将来のビジョンが薄ぼんやりと見えきたところで、通りがかりの人に声をかけられる。
はて、何処かで会ったことがあっただろうか。
「そこのあなた。受難の相が出てます。悪いことは言いませんから、早いところこの国から出ていった方が身のためですよ」
俺を指差して、そう告げると魔法使い?らしき人は去っていった。
受難ねえ。いつでもあってるから、今更どうこう言われてもだな。
「ソード。あんなこと言われてるけど」
「魔法使いじゃなくて、占い師じゃねえの?適当に観光客っぽいのを捕まえて意味深なことを告げて、最終的に金取ろうとすんだよ」
これが、ソードが告げた最後の言葉だった。
「ロロちゃん。人を勝手に殺すんじゃない。俺は失踪しないし、ちゃんと一緒にいるっつうの」
「お金か〜。最近なくなりかけてたんだよね。ちょうどいいし、クエストやっていこうか」
「ぼくたちクエストやったことないんですけど、大丈夫ですか?」
「難易度が選べるからね。初めてなら、簡単なやつにしよう。それこそ山菜集めとかもあるし」
「それはどこでやるの?」
「俺が説明してやろう」
「別に私がするけど」
「ここでぐらいしないと、いよいよ俺の出番がないだろ!」
「ああ、はいはい。わかりましたから、ちゃっちゃと説明してください」
「まあ、どこの国にも集会所みたいなところがあるんだ。そこに掲示板があって、クエストが張り出されてる。自分が受けたいと思う奴があれば、その集会所の受付で受理してもらう。そこから、クエストは開始だ」
「質問いいですか?」
王子が聞きに入る。
「複数人が依頼する場合はあるんですか?」
「いや、その辺は早い者勝ちだ。毎朝クエストは出るからな。早ければ選択権はある。遅いと、報酬金が安かったり、逆に超高難度のものしか残ってなかったりする。クエストは失敗した場合は、再度張り出されて、その場合は受注は可能だ」
「はい」
今度はアリスから質問が上がる。
「受注するにもお金がかかると聞いたんですけど、いくらぐらいですか?」
「それは一律100Gだ。これは、一つのクエストに発生するものであって、誰がいくかとかは登録だけでいい。人数分払うとかはないからな」
「はい」
今度はロロちゃんが手を上げる。
「ロロちゃん。とりあえず、クエストに関する質問なら何でもいってくれ。答えれることならなんでも答えるぞ」
「いや、流れで上げただけ。特にないです」
ないんかい。でも、可愛いから許す。
「あ、じゃあ質問する。時間制限はあるの?」
「調査が目的のクエストとかもあるからな。長いやつは一ヶ月とか設けられてるけど、大抵は三日〜一週間が期限かな。例え、達成してもその設けられた期限内に報告しなければクエストは失敗だ。もちろん、報酬金は出ない。逆に、早く終わる分には構わない。討伐なんかは早いに越したこともないしな。逆に調査は一定期間やっておかないと、クエスト失敗とされる。ちゃんとやってるか見るために監視もつくんだ」
「報告書がめちゃくちゃだったら困りますもんね。内容が改竄されてても困りますし」
「まあ、あと質問があるようなら追い追い説明するから。でも、今から行ってちょうどいいクエストがあんのか?」
そろそろ、夕刻で日も傾きかけていた。
一日で終わるようなクエストに今から出るとなると、集会所の受付も閉まっているだろう。そうなれば、翌日に出さなければいけないので、二度手間だ。
「まあ、クエストは明日にしようか。今日は宿を探そう」
「やっとベッドで寝れます〜」
まあ、最近はどこの宿もベッドがデフォルトが多い。別に俺は、寝られれば、地べたでもいいんだけどな。
だが、流石にこの時期に、しかも街の中で、地べたに寝転がってる奴がいたら通報もんだろうな。
「ウィナ。金は大丈夫か?」
「少なくなってきたって言ったけど、そんなに急ぐほどでもないし、大丈夫だよ」
「まあ、それでも無料の宿があればなー」
今時そんな都合のいい宿も存在しないか。行きがかり上で、家が広い人に会って、泊めてもらえないだろうか。
宿を目指して歩いていると、ちょうど角のところで何かとぶつかってしまう。
「いてっ。なんだ?」
見ると、ロロちゃんよりは上、アリスよりは下ぐらいの女の子が倒れていた。
その子は頭を押さえている。
「ご、ごめんな。こっちの不注意で」
「い、痛いです〜」
ぶつかった女の子は、頭を押さえ込んだままこっちを見ようとしない。
いや、帽子のツバが邪魔で前が見えてないのか?
俺は、被っていた帽子を脱がせた。
「あっ、私の帽子〜」
「ここにある。ちゃんと前見てないと危ないぞ」
立ち上がった女の子の手に帽子を載せてやる。
いかにも、魔法使いが被ってますっていうような、三角形の帽子だ。
「う〜。お兄さんにぶつかるまでは誰にもぶつかりませんでした。ということは、お兄さんが不注意なのです」
「え?俺が悪いの?」
まあ、どちらにせよどちらも不注意だと思うが。
それに、ぶつからなかったのは、ちゃんと他の人が避けてくれたじゃないのか?
「ソード。早く行くよー」
俺は最後尾で歩いていたので、どうやら少し遅れてしまっていたようだ。
俺は女の子に手を振って別れることにする。
「ねーねー。お兄さん。旅の人?」
「ああ。そうだけど」
「今日どこに泊まるの?」
「宿に泊まる予定だけど。ほら、仲間待たせてるし早く行かないと」
「なら、うちに来て!お父さんもお母さんもいないし、いるのは使用人のおばさんだけだから暇だったの!」
「いや、あのだな……」
「もー、ソードどうしたの?」
なかなか来ない俺を心配してウィナがこちらに来てしまった。
俺の腕にしがみついている女の子と俺の顔を交互に見て、怪訝な顔をする。いや、何もしてないから。
「どちら様?」
「いや、ちょっとぶつかっちゃったんだ」
「で、なんでこんなことなってるの?」
「あ〜なんかこの子の家に泊まりに来て欲しいんだって」
「お姉さんも旅の人?」
「う、うん。この人と一緒に旅してるの。もう後三人いるけど」
「じゃあ、みんなうちに来て!うち広いから五人ぐらいなら大丈夫だよ!」
「ちょ、ちょっと待った」
俺は、ウィナの肩をつかんで、作戦タイムに入る。
「大丈夫なのか?」
「まあ、悪意があるようには見えないけど……」
「いや、女の子自体には多分何もないだろう。問題は家にいると言った、使用人が問題だ。さらに、俺には受難の相が出てるという」
「えーっと、あなたの名前を教えてくれるかな?」
ウィナは俺を無視して、女の子に喋りかけていた。俺には何が起きても大丈夫って認識なんですね。分かります。
「私、ミーナっていうの。お姉さんは?」
「私はウィナ。こっちはソード。向こうにいるのは、男の子がスター。女の子は、どっちも小さいけど、まだ大きい方はアリス。小さい方はロロ」
「えーっと、ウィナさんにソードさんに、スターさんにアリスさんにロロちゃん……かな?」
「ミーナちゃんは何歳だ?」
「私は13です」
「じゃ、この中で年下はいないな」
「えっ?私が一番下なんですか?」
「あ、いやロロちゃんは12歳だ」
初対面の子にロロちゃんが120歳なんて言っても信用しないだろう。別にロロちゃんも年下扱いに抵抗があるわけじゃないし、訂正をしておくことにする。
本当にあの子何歳なんでしょうか。
「じゃ、私呼んでくるからちょっと待っててね」
「はい」
ミーナちゃんは、不思議そうな顔をして俺を頭から足先まで見ている。まあ、見ようによっては旅人だが、大半の人は「農家ですか?」と質問するだろう。まあ、魔法使いの国に農家がフラフラ歩いてるのも変だし、旅人だと判断したのだろうか。
「ソードさんはなんで旅をしてるんですか?」
「あー。一応な、こんな格好だけど俺は勇者なんだ」
「え?勇者って」
「連れてきたよー」
「この人じゃないんですか?」
ミーナちゃんは、王子を指差してるが、まあ確かに俺よりは勇者らしい格好か。鉄装備に剣を携えている。
せめて俺も、木の棒じゃなければなあ。
「え、と、なんですか?」
「ああ、お前が勇者じゃないのか?って話だよ」
「そうですか。残念ながら、勇者となるにはまず自分の国で一番力を認められなければならないんですよ」
チラッと俺を見るが、やめてくれない?あの時はお前、適正年齢じゃなかったし、第一、血が一番優先されるシステムだろうが勇者は。
今の実力ではそう言われても仕方ないが、このままバカにされ続けるのも癪に触るぜ。
「……ミーナちゃん。どこかに武具が売ってるところないかな?」
「うーん。ここは魔法使いが最優先されるから剣士のための武具は少ないかな。ごめんなさい。力になれなくて」
「いや、いいよ。じゃ、案内してもらえるか?」
「はい♪」
ミーナちゃんは嬉しそうに、先導しながら歩き始めた。
とりあえず、ここでなんとか武具を揃えようとした俺の目論見は外れたわけだが、この装備でクエストに入って大丈夫だろうか。
だが、この時間ではどこも閉店だろう。明日になったら、少し見に行くとしよう。




