どんな時でも夜は訪れる
ロロちゃんが倒れたこともあり、今日は旅の歩を進めるのをやめ、その地点で休息を取ることにした。
ロロちゃんの看病は2人と交代して、現在は王子が行っている。
「熱中病にいい料理ってなんだったけ?」
「そんなピンポイントなもんを俺が知ってると思うか?」
「うん。ソードには聞いてない。聞こえる声で言ったこちらが悪かったです。すいません」
「謝るな。俺が役立たずのろくでなしみたいになるだろ。まあ、待て。俺のない知識を搾り出すから」
「0はいくら搾っても0ですよ?」
「なあ、アリス。せめてお前ぐらいは俺の弁護してくれよ」
「弁護は出来ないですけど、フォローはしてあげます。とりあえず、少量の塩分と水分を取らせるのが一番いいですね」
「じゃあ、塩水だな」
「あんたは黙っとれ。もしくは、ソードだけ料理を塩水にするけどそれでもいい?」
「すいません、ウィナ様。この乞食めにもご飯をお恵みください」
「まあ、修道院で少し分けてもらったからまだ残りはあるけど、人数増えたから、あと持って数日かな」
「目的地は決まってるんですか?」
「ん?ああ、さっき王子と話し合ったんだが、魔法使いの国に行こうと思う」
「魔法の使いの国……」
「知ってると思うが、俺の力は何らかの現象で塊として、抜き取られたらしい。魔王の特殊な力と言われれば、それまでだが、魔法ならどういう仕組みか理解できると思ってな」
「それはソードに理解できると思ってるの?」
「……こういう時こそ助け合いだぜ?」
無論、俺が魔法の論理について解説出来るはずもなく、一般的なことですら、ウィナに聞かないと分からないレベルであるから、到底それも理解出来ないだろう。
「一方的な頼りきりは、助け合いとは言わないよ。ところで、ソードはいつ私を助けてくれるのかな?」
「しゅ、終盤には」
「遅いし……終盤ってどこの話よ?」
「さあ、空が飛べたらかな」
「人には翼はないよ……」
人は生来から、古来から空に思いを馳せる。
だから、空を飛ぶ手段を探し、昔には飛行機という空を飛ぶ乗り物を作り出した。
だが、乗り物はモンスターが頻出するようになって、全て廃止。
出た鉄くずは、すべて武具に作り変えられた。
そもそも、国の外以外には使えないのだ。国から国に渡るにも、着陸点もない。
空から見える景色とはどんなものなのだろう。
例えば、今日のような晴れ渡った夜から下を見下ろせば、遠くまで見渡せそうだ。
「人は陸から離れては生きていけない」
「また、誰かが言ったような名言を叩き出したね。確かに空に行けば、空気は薄くなるし、火はつかないし人が生きていくにはとても難しいね」
「魔王はどうやって生きてんだろうな?」
「人間基準で考えちゃダメだと思うよ」
「……逆にロロちゃんは地上だと弱体化するとか?」
「空に行ったこと無いから分かんないけど、ロロちゃんって四分の一は人間って言ってなかった?」
「でも半分は魔王だろ?魔王のほうが血は濃そうだ」
「半分はエルフだったっけ?」
「ちょっと待て、それだと血の容量がオーバーするぞ」
「とんでもなくアホがいた!」
えっ、違うの?
「なんで一緒くたなのよ。まず、ロロちゃんのお父さんの血とお母さんの血に分かれるでしょ?」
「うん」
「さらに、そこからロロちゃんのお父さんのお父さんの血と、お母さんの血に。ロロちゃんのお母さんのお父さんとお母さんの血に分かれる」
「ごめんついていけなくなった」
「口頭でこいつに理解させるのは無理があったか」
呆れさせてしまった。分かりやすく説明しない向こうサイドにも問題があるのではないでしょうか?ない?
最初に2分割され、さらに半々に分割されを繰り返していく図式らしい。
分かりにくい?
最初にaがあるしよう。そこからbとcに分かれる。
そのbとcがさらにb1とb2、c1とc2に分かれるとすればいいか?
何?分からん?
俺に説明求めんな!(丸投げ)
ようは、あとはインスピレーションで分かっとけばいい。
最終的には1が分割されてるってだけの話だ。だから、1に収束するというわけだ。
以上、必要なのかどうか分からん血縁関係講座終わり。
そうこうしてる間にも、ご飯の用意が整ったようだ。
「はい、ソード。せめて配膳ぐらいはやって頂戴」
「あいよ」
「ロロちゃんは食欲ないみたいだったら、ソードが食べていいから」
皿に載せられた料理は、卵豆腐にサラダと水という、本当に腹の足しになるのかという健康料理だ。
あの子肉食だけど、大丈夫かしらね?
熱中症になった場合は、食欲が減退しやすいらしいから、こういう胃の消化に優しい食べ物がいいらしい。
うーむ、ウィナさん、マジお母さん。
「ロロちゃん。体の調子はどうだ?」
「だるい……重い……」
起き上がるのも億劫なようだ。
「ご飯あるけど食うか?食欲なくても、胃の中に何か入れた方がいいらしいぞ?」
「……私にも当てはまるんですかね?」
「さあな。魔王の子を看病したことねえし。いらないなら、俺が食うし」
「う〜、ウィナが作ってくれたんでしょ?残すのも勿体無いし、ソードにあげるぐらいなら、ちょっとでも食べる……」
そうは言うが、座って体を起こすのもやっとのようだ。
卵豆腐に手を伸ばして、ほんのひとかけらを口に運んだが、それ以降は手が止まってしまう。
「ごめん……食べれないや」
「無理すんな。水は置いておくから、好きな時に飲んどけ。水分は大事だからな」
配膳用のプレートから水のコップを置いて、立ち上がった。
「あんま外にいても、風邪引くか。そろそろ中に入れてやろう。王子、ウィナたち呼んでくるから、交代したらテント作るの手伝ってくれ」
「分かりました」
「ソード」
弱々しい声で呼び止められる。
「ん?」
「ありがとね」
「ああ。お兄ちゃんだからな」
やはり、水のコップもプレートに乗せて、王子にロロちゃんを運んでくるように指示した。
ロロちゃんが動けなくても、動かせないわけじゃない。
病気の時は、なぜか心細いものだ。誰かと一緒にいた方が心強いだろう。
自分がどんな状態にあっても、いつもと変わらないように夜は訪れる。
やがて眠るときが来て、朝を迎える。
テントを立てて、寝かせてあげたロロちゃんの顔はいくらか幸せそうに見えた。
訂正です。熱中症の食事にいいもので、塩分と水分をあげてますが、これは予防です。実際にかかった場合は、水分、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、タンパク質を摂取してください。食欲がない場合は、無理に食べなくてもいいですが、少量は食べて体力の消耗を防ぎましょう。




