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魔王拾いました  作者: otsk
魔法使いの国編
34/145

ウィナによる魔法講座

 ここで、以前も言っていた魔法についての説明をしておこうと思う。

 具体的に誰に向けてだと言われそうだが、基本的に魔法がロクに使えない俺と、魔法についての定義があやふやで独学でなんとかやってるロロちゃんに向けてである。

 講師はもちろん、現役魔法使い、我が国トップの実力者ウィナさんである。

 王子とアリスは聞く必要がない、というか二人の仲がまだイマイチなのでとりあえず2人きりにしてみた。

 だが、少し離れたところで口論が聞こえるのは気のせいだろうか。

 心配で見に行こうとしたが、ウィナに最大級の笑顔で脅されたので、大人しく正座して講義を聴くことに。


「なんでこんなことになってるの?」


「別に俺だって、魔法を使わなくてもやってるんだから、聞こうが変わらんと思うんだが」


「黙りなさい。そこの2人。あんたたち2人がいかに魔法を軽視してるかが見て取れたので、ここで魔法の重要性を再認識して、骨の髄まで叩き込むので覚悟すること」


「ウィナが怖いよう……」


「おーよしよし。俺も同感だ。だが、開放はされそうにないから一緒に乗り越えよう」


 ウィナの威圧感に圧倒されながらガクブルしているロロちゃんを足の上に乗せて、ウィナの話を聴くことにする。


「ソード!あんたはそれで聞けるわけ⁉︎」


「いんだよ。この方が落ち着くし」


「あんたら両方寝るようにしか見えんから、離れろ!」


 横暴講師によって、ロロちゃんと引き離された。なんだか収まりが悪い。一体化していたものが取り外された気分。

 まあ、こんなことになったのも先ほどのモンスターとの戦闘のせいだが……


 ーーーーーーーーーーーーー


「ウィナ頼む!」


 モンスターと取っ組み合いになり、気を引いている間にウィナの魔法が叩き込まれる。

 簡単な連携攻撃の形の練習だ。

 ロロちゃんも2匹は同時に出せるようになったので、戦闘の体制に変化が出てきた。

 王子が加わったことで、近接は三人となり、後衛で2人が魔法を使う形だ。

 アリスが前線で戦ってるのに違和感を覚えざるを得ないのだが、アリスはアリスでかなり動きはいい。どこで覚えたのやら。

 ウィナは一発で倒さない程度の火力の攻撃しかしていないので、最後はウィナ以外の誰かが攻撃を叩き込まなければならない。

 だが、結局模造刀から木の棒へとランクダウンした俺ではトドメがさせない。

 マモンを倒したというのになんという体たらく。


「なあ、ウィナ。こう、攻撃力の底上げみたいな魔法使えないのか?」


「私が使える補助魔法は、ある座標への空間転移だけだから。もっとも、補助魔法に特化した人もいないわけでもないけど、絶対数が少ないよ」


「なんだ、ウィナにも出来ない魔法があんだな」


「私だって万能じゃありません」


 そうこうしてる間に、弱ってた方をアリスが、ロロちゃんと協力して王子がもう一匹を倒していた。

 やはり、王子はかなり戦力になりそうだ。修道院でも鍛えてたみたいだし、俺みたいなプー太郎とは大違いだな。

 だが、こうしてモンスターと戦ってみると、近接攻撃を繰り返していた方が有利だし、言うほど魔法の出番はないのではないだろうか。

 アリスと王子だって魔法を使えないわけではないし、魔法だけに特化して戦う必要はあるのか?


「どうしたの?」


「いや、魔法だけに特化するよりさ、魔法も戦いの中に組み込んで戦った方が効率的じゃないかって」


「私も、武器使って攻撃したい」


 ロロちゃんも寄って来てそう答える。ロロちゃんの場合は力が弱いから武器を振り回すようなことは出来ないと思うんだが、やはり自分で倒したと言う感覚を感じたいのだろう。


「ほう?ソードは魔法だけに特化してる私が弱いと?そして、ロロちゃんは魔法は役に立たないと……?」


「「い、いやそこまで言ってな」」


「2人とも正座‼︎」


 こうして、今まで避けて来た魔法についての抗議が始まってしまった。

 ウィナさん、意外に沸点低いです。


 ーーーーーーーーーーーーー


「まず、最初に魔法を使うには、その魔法についての知識があることが前提となります」


「どの魔法についても知識はないので放棄してもよろしいでしょうか?」


「お前は一個ぐらい覚えてけ!」


 口調が荒くなってます。女の子の日に当たっちゃったかな?イライラしてるのかもしれない。

 でも、口に出しては言わない。言ったら、多分最上級魔法で攻撃されて、明日には俺の焼死体が転がってるのかもしれない。

 そんな未来だけはやだ。


「とりあえず、全部について説明してると時間はいくらあっても足りないから、ロロちゃんも使える氷属性の魔法を中心に今日は説明します」


 時間があったら、全部説明する気なんだろうか。頭のいい子は、これだから怖いです。ぶっちゃけ俺は肉体労働派だから、頭を使うのは苦手です。感覚派なんです。脳筋なんです。筋の方は旅に出るまで若干衰えていたけど。

 じゃあ、ただの使えないやつじゃん。

 一個ぐらい使えた方がいいのか?


「まず、魔法は5段階で強さが分かれてます。さらに属性で分けると5個に分かれ、計25の魔法があることになります」


「段階についてはどう分かれてるんだ?誰か査定するやつかいるのか?」


「段階については、詠唱の長さによって変わるよ。長ければ長いほど強い魔法になる。でも、それだとやっぱり隙が大きいから基本的に誰かに守ってもらいながら発動する形になるよ。でも、己の力量で1段階の魔法も弱い人の3段階レベルの強さになることもあるよ。じゃあ、試しにロロちゃんのと、私の比べてみようか。ソード、受けて体験してください」


「俺をいじめて楽しいか⁉︎」


「と、まあこのような反応になるのでよほどの限り人に向けて攻撃することはやめましょう」


「はーい」


 ロロちゃんは元気に返事してるが、よほどのことがあれば攻撃するとあれは示唆してるんですよ。絶対にやらないでください。

 ウィナに至っては、氷属性の魔法で、悪魔の腕も凍らせてたしな。どんだけやねん。人にやったら、壊死するわ。


「ウィナ」


「先生」


「……ウィナ先生。マモンに使ったのはどれぐらいの強さのやつですか?」


「あれは3段階目ぐらいです。ちなみに剣をコーディングしたのは2段階目です。何段階って呼称面倒だな……レベルでいい?」


「俺はなんでもいいんだけどよ……」


 結局、俺が使えないのなら早く終わらせて欲しい。


「じゃあ、あの木の丸太を使いましょう。ソード君持って来てください」


「ぼくは使わないので、先生自分で持って来てください」


「持っ・て・こ・い!」


 今にも詠唱を始めて、俺を攻撃しかねない勢いだったので、大人しく取りにいくことにする。先生、一人で持ってくの重たいよう。

 まあ、丸太というほどなので、転がして運ぶことにし、ウィナの前まで持っていく。


「ちょっと、至近距離じゃやりにくいので、もう少し前に」


 指示されて、そのまま通り過ぎる。


「その辺で。じゃあ、威力をちょっとでも間近で見るために丸太の後ろに立ってください」


「外したらどうする気だ⁉︎」


「そんなヘマは意図的でなければしないで、安心してください」


 全然信用ならない。むしろ外す気満々にしか見えない。

 しかも、ウィナより先に独学のロロちゃんがやると思うので、どちらにせよ当たる気しかしない。

 いくら、ロロちゃんの魔法が弱いと仮定しても当たればダメージは免れないだろう。

 てか、普通に2人と同じ視点で見てちゃダメなの?

 あっ、なんかロロ選手がアップを始めました。

 そういや、魔法には詠唱が必要なこと言ってたけど、ロロちゃんは使ってなかったような……。


「エクストラ・ブリザード!」


 ロロちゃんが魔法を唱えると、小さな氷の塊が幾つも、こちらをめがけて飛んでくる。

 ちょっと待て、マモンの時は冷気とかそんなもんだったじゃねえか。どういう了見でそんな力加減なんだ。

 というわけで、丸太を盾にして、身をかがめる。

 冷気とともに、幾つかの小さな氷の塊が頭上を通過した。

 通り過ぎた氷はすぐに目に見えなくなる。

 大きさは、一粒5ミリ大ぐらいか。そこまでの大きさでもないが、目に入ったら痛いしな。


「避けるなソード!」


「当たったら痛いだろうが!」


  なんで身を呈してまで魔法の威力を感じねばならんのだ。ロロちゃんは力加減が出来ないのか、その場、その場で魔法の威力が変わってるようにも見えるし。


「そういや、ロロちゃんは詠唱してないけど、詠唱しなくても使えるのか?」


「いや、いろんな都合上言ってないように見えるけど、ちゃんと詠唱してるよ?」


 なんだ?都合って。都合で省かれてるのか。なら、俺も使えるんじゃね?


「詠唱しなくても、使えるとか思ってる人は、詠唱はしないと発動しないので頭に入れとくこと。あと、使える魔法については何処かで言ったかと思うけど、レベル1は基本的に誰でも使えます。それ以降は……こういう言い方もなんだけど才能によるところが大きいです」


「ウィナ先生。他の属性は何があるんですか?」


「他は、火、風、雷、回復が基本となります」


「水はないんだな」


「水は氷と同じカテゴリーなので。形態変化って知ってる?」


「いや知らん」


「でしょうね。あんた聞いた私がバカだった」


 とても貶されているように思えます。


「とりあえず、水には三つの形態があって、気体、液体、個体に分かれます。それぞれで詠唱が違うんだけど、攻撃としては氷が一番優秀なので、学校では基本的に氷属性を教えられます。使いたい人のみ、水、水蒸気の魔法も学ぶんだよ」


「ウィナは使えるのか?」


「まあ、基本魔法は全部コンプリートしてるから。水蒸気は気体だから使えないと思われがちだけど、水蒸気爆発っていう現象もあるから、他の魔法と組み合わせればかなりの威力の魔法が出せるよ」


「それは一人でやるの?」


「うーん。一人でやってもいいけど、なかなか都合良く、火と水属性の魔法を使える人も少ないから。基本的には、単体での攻撃力が低い人で組んで魔法を出します」


「タイミングとかある?」


「水蒸気爆発を起こしたいなら、先に水がないといけないから、水属性の魔法を使える人が使っておく必要があるね。そこに高熱を加えると水蒸気爆発ができるよ」


「でも、それって水分があたりに充満してないとダメなんじゃないか?それだと広いフィールド上じゃあまり使えないだろ」


「上手い人は、敵の目の前にうまく合わさるように魔法を到達させるからね。一概に広いところじゃ使えないとも言えないんだよ。じゃあ、実演してみますか」


「水蒸気爆発を?」


「いや、面倒だから氷魔法を。まだ、私の方は体験してないでしょ」


 結局、俺はまた丸太のところへ戻って、ウィナの魔法を体験しなければならないらしい。散々見てきたのだが、どういう原理で発動しているのかは全くの謎だった。

 俺に魔法の知識がないのが悪いんですけどね。


「ブリザード!」


 氷が刃となって一直線に飛んできた。

 鈍い音ともに、丸太に突き刺さる感覚があった。

 その氷は溶けることなく、丸太に刺さっている。


「まあ、本数を増やしてもよかったけど、それだとソードが危ないから抑えたよ。こうやって、形を保ち続けるのも、その魔法の力が強いってことにも繋がるよ」


「で、これはいつ消えるんだ?」


「ほっとけば、5分ぐらいかな。氷なんかは武器にも出来るからね。剣とか作るまでにはもう少しレベルを高くしないといけないけど」


「かなり汎用性が高いんだな」


「あとは対モンスターにおける魔法についての説明をします」


「適当に殴っとけば消滅するだろ」


 ウィナに殴られた。

 俺を殴ったところで消滅するわけじゃないんだぞ。痛いだけだ。


「己は私の授業を聞いてなかったのかな〜?」


「いや、待て。俺だって魔法を使えてたらこんなことは言わない。使えないから、どう対抗策となるのかがわからないんだ」


「はあ。ま、それを今から教えていくよ。ロロちゃん、あのゲーム機貸してもらえる?」


 ロロちゃんからゲーム機を借りて、俺に見せながら説明をする。

 倒したモンスターは、特徴も登録されていくようだ。

 ピッグフットを例にしていく。

 こいつの弱点は、火と氷らしい。

 確かに、ロロちゃんが最初の時に、氷魔法を放った時に動きがトロくなってたな。


「まあ、武器だと、特殊なものだとドラゴンに効いたりするのもあるけど、大抵が無属性だからね。さて、問題。どうすれば、弱点をつきながら武器で攻撃する?」


「はい」


「ロロちゃん」


「魔法で武器を作ればいいと思います」


「いや、ロロちゃん。あくまでも魔法で形が作れるのは氷だけだからね。例えば火で形作っても、ロロちゃんは掴むことは出来ないでしょ?」


「はい」


「ソード君」


「武器にその弱点となる魔法を纏わせればいいんだな?」


「そう。まあ、本来ならそのために魔法使いはパーティに何人かいるけど、私だけで事足りるんだけどね」


「わ、私いらない子……?」


「そ、そんなことないから!むしろソードの方がいらない子だから!」


 だから、俺に矛先変えて、disってくるのをやめてもらえませんかね?

 てか、俺いらない子ですか?

 そりゃ、ロロちゃんのほうはいるだけで癒しを与えてくれるからな。

 ぶっちゃけ役立たずは俺だな。

 生きててすいません。


「ウィナ〜、ソードが泣いてる」


「ゴメン。ストレートに言い過ぎた。あくまでロロちゃんよりって話であって、ソードも必要だからね。ほら、泣かないで」


「俺も……戦力になるかな?」


「ほら、勇者でしょ。メソメソしない。さあ、立ってたって」


 魔法使いの女の子に慰められながら、勇者は立ち上がる。どんな情けない構図なんだろうか。


「なあ、俺も魔法使えないかな?」


「いや、魔法も一朝一夕で出来るもんじゃないから。私たちがサポートするから。力、早く取り戻さないとね」


「ぐうたらしてる間にやっとけばよかったな」


「今更後悔してもしょうがないよ。それに、魔法なくてもやってきたじゃない」


「そうだな」


 どうにも頼りない武器だが、木の棒を俺は手にする。

 ようは戦い方次第なのだ。

 魔法使いは、前線で戦うメンバーをサポートする重要な役割を担う。

 各魔法をコンプリートさせてる魔法使いがうちのパーティにはいるのだ。

 ただ、俺の幼馴染という理由で。

 ウィナには感謝しなくちゃならないな。


「さてと、そろそろ止めに行きますか」


「何を?」


 ロロちゃんは疑問を浮かべてるが、授業中で終わってなかった兄妹の口論を俺とウィナは止めにいった。

 あいつらは、よくもまあ、そこまで意見を違わせられるもんだな、と逆に感心してしまっていた。

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