二人の悪魔(3)
二人と約束した夜がきた。
作戦を練ると言ったが、向こうも(うち1人)は純粋に遊びたいだけにも見えるので、具体的には何をして遊ぶか程度のことだが。
今回はちゃんとロロちゃんも目を覚まして俺たちについてきた。少し年の離れてる俺たちよりロロちゃんの方が比較的遠慮も少ないだろう。見た目の問題で。こんなこと口に出したら、またプリプリ怒りそうなので、黙っておく。それはそれで見て見たい気もするけど。
「ロロちゃん、カインたちとなに話してたんだ?」
「何の話?」
「昨日、俺たちが王子と外に行った時ロロちゃんだけ中に残って2人といただろ?何か話したいことでもあったのか?」
「んー、後で話すよ。せっかくだし、2人と遊びたいし」
歩きながら話すのには少し量が多いと言うことか。一体、何をそんなに話し込んだか。魔王一族の勘でも働いたのか?
こうして、四人で歩いていると、他の人たちは修道士かシスターなので、服装が統一されている。どうにも浮いてる感は否めない。
「そういや、修道士しかいないって言ってたけど、神父はいないのか?シスターいるならいると思うんだが」
「限られた人しかなれないとか、もしくは神父となった人は別のところへ行くことになるとかそんなことじゃないの?別にいないわけじゃないでしょ」
「なんだかな〜」
でも、ここは修道院であって教会ではない。ともすれば、いないこともあるのか。
1人で勝手に納得して、先に進む。
どうしても気になるというわけでもないし、機会があったら王子にでも聞くとしよう。
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すでに部屋に戻っていた王子に訳を話して、カインとアベルを外に引っ張り出してきた。一応、監視ということで、王子もついてきている。
「ロロちゃーん!遊ぼー‼︎」
アベルの方はロロちゃんを引っ張り回して遊んでいる。こうして見てると、俺たちのパーティで最年少(?)のロロちゃんがお姉ちゃんをやってるように見えるから不思議なものだ。
カインはというと、近くにある木で作られた椅子に座って、妹の様子を見守っているようでもある。
「カイン。お前は遊ばないのか?」
「アベルと違って、どうしても遊びたいわじゃないですし。どうしても、ああやって騒ごうというのがぼくにはできないんです」
「カイン。剣はできるか?」
「え?いや、子供達は持たせてもらえないので……」
「じゃ、特別演習だ。俺が教えてやる。王子、持ってきてくれ」
「用途を聞かれるに決まってるでしょう」
「そんなもん、俺と王子が模擬決闘やるとか言っておけばいいだろ。監督は自分がやると言っとけ」
「横暴なところは相変わらずですね……少し待っててください」
そう言って中へ戻って行った王子の顔は少し嬉しそうにも見えた。
「あいつ、笑えるのな」
「そりゃ、人間だし笑うでしょ」
「いや、何となく感情が欠落してたような気がしたんだ」
「うーん。でも、アリスが関わってることはよく感情を露わにしてたような気もするけど……」
「呼びましたか?」
「相変わらず耳が早いな」
「いや、半径5m以内にいますからイヤでも聞こえてきますよ」
「アリスから見て、王子はどんなやつだった?」
「なんですか?いきなり」
「ちょっとした興味本位だよ」
「そうですね。学校に行かなくなるまでは、成績は高等部含めても三本指に入るとまで言われてて別にそれに慢心せずに努力するような人でしたよ。『上には上がいる。ぼくが一番にならなきゃ国を背負った時に申し訳が立たない』っていうのが口癖でしたよ。まあ、それゆえに私と関わる時間がなくて、私はなんかの妄信者じゃないかって思ってました。別に兄様のことが嫌いなわけじゃないですし、でも、多分初見じゃとっつきにくいんじゃないかなって思うんです」
上には上がいる。たぶん、おそらくその一人であっただろう幼馴染を横目で見る。頭の良さはそれはほぼ、魔法を使うに当たっての指標にも繋がる。適正というものはあるが、ウィナは最年少で、基礎魔法と呼ばれる魔法を全て使いこなしたという話だ。これは全てで5つあり、強さの段階も5段階、計25個の魔法を自在に使いこなせることを表す。
魔法を扱うにも知識がなければ制御はできないし、暴発したり不発なんてこともザラだ。無論、俺に魔法の知識はない。
ついでに一般的な平均を言っておくと、一つマスター、よくて二つ目を使えればいいところだ。だから、ウィナは異常なレベルだと言えるだろう。トップレベルでも二つマスターしてるぐらいだしな。
「結局、一番にはなれずに学校も中卒。まあ、中等部で高等部レベルのことはマスターしていたので何ら問題ないと父上がしたわけですが」
「アリス、王子に冷たくないか?」
「きっと、お兄ちゃんがずっと王子って頑なに呼び続けてるのと同じ理由ですよ」
「?」
そういや、俺はここに来てからと言うものの、何のしがらみもないが、あいつのことを王子と呼び続けている。名前で呼んでも全く構わないのだが、名前て呼ぶことに抵抗があるのだろうか。それとも、師弟関係だったあの頃にまだ縋っているだろうか。俺がまだ上だと鼓舞するために。すでに、俺は教えられなくなったというのに。
嫌な汗が背中を伝う。何に恐れてるんだ俺は。
その話の矢先の王子は剣を二本携えて、戻ってきた。
「レプリカですから、切れることはないですよ。それでも当たると痛いと思うので寸止めはしてくださいね」
「わーってるよ。もう一本は短いな?」
「いきなり大人が使うサイズのものは振り回せないでしょう。ま、持って来る時はうまいこと誰にも見つからなかったので大丈夫だと思います」
王子は半分の刀身ぐらいの剣をカインに手渡す。
カインは初めて持ったとは思えないほど、静かにその剣を構えた。
「初めてじゃ……ないのか?」
「ここに来るまでは、護身として使ってましたから。自己流でメチャクチャにやってたから……こうして教えてもらえるのは嬉しいです」
子供だと、剣を使うとなると、気持ちが高ぶって、無闇に振り回したりするものだが、カインに関してはそんなことはないようだ。
俺はそれで親父に一週間ほど禁止にされたけどな。
「まずは何を?」
「そうだな……剣を振るうならまず筋力から……って言いたいがそんな時間もねえし。とりあえず試しに俺に切りかかってみてくれ」
「だ、大丈夫なんですか?」
「当たっても切れるもんじゃないし……そう簡単に当たると思うなよ?」
「では、行きます」
カインは間合いを測るために俺から遠ざかる。あの短い刀身では、かなり近づかないと当たらないだろう。それを鑑みれば、俺の圧倒的優位に変わりはない。
俺は一歩にじり寄った。
その瞬間、カインが動いた。
一瞬でその間合いを詰め、剣を振りかぶる。俺は何とか反応し、その剣を受け止める。
「さすがに一撃じゃいきませんか……」
「たりめえだろ。ガキに負けるほど、弱くねえよ」
正直なところはかなり危なかった。
近づく瞬間が見えなかったのだ。あいつは一体何をした?
俺はあいつの間合いから離れて、体制を整え直す。
カインは深追いをせずに、その場で立ち止まっている。
間合いが短くて正直助かった。同じ長さの刀身なら、防御は間に合ってなかっただろう。
いや、短い分、剣速が上がっていると考えてもいいのか?元があの速度なら、かなり厄介だ。メチャクチャにやってたという割には理にかなった攻撃をするようだし。
「どうした?どんどん来ていいんだぞ」
それでも、俺は虚勢を張り、あくまでも俺が優位であると見せる。子供相手に手玉に取られているようじゃ、魔王討伐も夢のまた夢だ。
カインはそれを受けて、攻撃を繰り出した。
その攻防は一時間ほど続いた。
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演習はカインの腕が上がらなくなってきたところで終えた。
「はぁ……はぁ……ありがとうございました」
「こっちこそ。悪くなかったぞ」
「もう、夜も遅いですし、ぼくはシャワーを浴びて寝ることにします」
「1人で大丈夫か?」
「ええ。そこまで子供じゃないですよ……あと、アベルをお願いします」
アベルはといえば、あの木の下でロロちゃんと一緒に寝ていた。
2人とも運ばなければいかんな。
「アベルのほうは私が運んでいきます」
「お前は券を返さなくちゃいかんだろ。俺たちで運んどくから、返しに行ってきてくれ」
「そうですか。なら、お願いします」
「ウィナ。アベルのほうを頼む」
「了解」
俺とウィナは2人に近寄り、背中に乗っける。
「カインとアベルが兄妹ってより、ロロちゃんとアベルが姉妹みたいだな」
「うーん。でも、ロロちゃん一人っ子っぽいし、あんまりお姉ちゃんに向いてないような……」
「って、あれ?アリスは?」
「出入り口付近に……いないね。どこに行ったのかな?」
「はあ……。アリスも子供じゃないし、自分で戻って来るだろ。たぶん、王子のところに行ったんだろう」
「だといいんだけど……」
いなくなった、アリスの行方を案じつつも、先に2人を寝床へ連れて行くことが先決だ。
結局、ロロちゃんに話を聞くことができなかったな。
ふと、空を見ると、月が満ちかけていた。
明日は十五夜かな……。
そんなことを考えながら、背中の重みを感じていた。




