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魔王拾いました  作者: otsk
修道院編
25/145

二人の悪魔(2)

 目がまだ虚ろだが、ようやく目が覚めたようだ。

 アリスの話によると朝ごはん食べた後、俺たちがいなかったからまた寝たらしい。どんだけ寝たいんだよ。確かに言うほどやることもないけども。


「ふぁ〜………」


 またベッドに倒れこんだ。起きる気さらさらないじゃねえか。何のために起こしたんだ。


「すぅすぅ」


「もう、寝かせておこうか」


「そうだな」


 この分だと昼過ぎても起きなさそうだけど。どうすんだろう。いきなり、頼まれごとを遂行できなくなっちまったぞ?


「直接行くのは?」


「んなもん、答えてくれるわけないだろ?それに下手に刺激したら何が起こるかも分からんだろ」


「あの〜なんの話してるんです?」


「院長に頼まれてな、少し調査をしてる」


「ソード、端折りすぎて、肝心の調査内容話してないよ」


「言っていいもんなのか?」


「どうせロロちゃんにも聴くんだから、アリスに言っても変わらないでしょ」


「あの〜」


「まあ待て。ちゃんと話す」


 アリスが急かすので、とりあえず必要そうなとこだけ、ピックアップして話すことにする。


「昨日会った二人の子供に悪魔の嫌疑がかけられてるから、実態がどうなのか調べろってこと?それなら、一緒にいる兄様の方が詳しいんじゃ」


「尻尾を出さないみたいだしな。でも、昨日ロロちゃんが何か話してたみたいだから何か知ってるんじゃないかって、こうして起こしに来たわけだが」


 見事に幸せそうに寝ています。無理やり引っ張り出して、起こすのもかわいそうなほどだ。俺、娘とか生まれたら超過保護になりそう。


「しゃーないな。とりあえずは俺たちが交流をしに行こう」


「ソードは避けられてなかった?」


「それには目をつむってくれ。相手のことをよく知らんまま悪魔扱いするのもなんだろ。でも、王子のと院長の話を聞く限りはあの子たちは何か心を見てる」


「スター君も?」


「あいつはずっと監視されてるよう感じがするとだけ言ってたが、一応気を使って、あの子たちだと明言するのは避けたんだろう。理由は分からんけど、あの子たちは王子に狙いを絞ってる。王子に何があるのか、俺たちも同じように見るのか。少し試してみよう」


 俺はウィナとアリスを率いて、王子の部屋へと向かった。

 もちろん子供達も何かするだろうが、あの二人が何かを他の子供達と一緒にやるようには見えなかったし、部屋に篭ってると考える方が妥当な気がするからだ。

 ロロちゃんが再び起きたときに困らないように書き置きをしてから部屋を出た。


 ーーーーーーーーーーーーー


 一応、修道士の部屋と一般の客の部屋は分かれている。俺たちが泊まった部屋の近くには孤児の子供達の部屋があるそうだ。

 道理で何となく騒がしかったはずだよ。


「いいじゃん。子供は少しやんちゃなぐらいがちょうどいいよ。辛気臭くしてても楽しくないだろうし」


「俺は女の子は全力で可愛がるが、男子は積極的に差別する」


「嫌われる典型だよ……」


「だから俺には男友達がいないのか」


「今更気づかれても……」


「兄様とは友達ではないんですか?」


「あいつとは師弟関係だからな。友達とはまた違うんだよな。でも、違う形なら友達になれてたかな」


「今からでも遅くないんじゃない?」


「……あいつはまだしばらく修道院にいるだろ」


「ふーん?そう?ま、ソードがそう言うなら別に私は構わないけど」


「なんだよ。要領を得ないな。はっきり言えよ」


「まあまあ。着いたよ」


『Star・Glassfield』と名前が刻まれたプレートの部屋を前にする。

 俺は一呼吸おいてノックをした。


「はい……どちら様でしょ」バタン


 言い切る前に閉められた。俺はどんだけ信用がないんだ?それとも初対面のあのタイミングで何かを感じ取って、嫌われたのか?それだけで嫌われるスキルを持ってる俺、マジですごいです。誰も欲しくないだろうな。


「ご、ゴメンね。怖かった?私たちだよ?昨日来たでしょ?」


 ドアの向こうに向けてウィナが声をかけると再び扉は開かれた。

 また何かに怯えるようにオドオドしていたが、俺がそんなに怖いんですかね?


「えっと、この人も入れてあげていいかな?悪いことはしないし、スター君の知り合いなの」


「ウィナさんにとっては誰なんですか?」


「わ、私にとって?え、えっと、そう!幼馴染!」


「そして、私のお兄ちゃんだよ」


 当然のごとくサラリと嘘を混ぜるのはやめてもらえませんかね?姫よ。


「アリスさんはスターさんが兄だと昨日聞いたんですけど……」


「あっちは戸籍上の兄。こっちは兄的な存在」


「そういうことですか」


 納得するなよ。しかも、お前も納得させるような説明をするなよ。分かりにくいだろうが。

 男の子の方、確かにカインだったか。俺を再び見据える。

『心を盗み見られたような感じがした』

 俺はそれに注意をはらって、カインを見る。視線は俺の目を見てる。目は口ほどに物を言うともいうし、会話をしなくとも、読み取れるものでもあるのだろうか。

 だが、それも一瞬であり、すぐに目をそらした。


「入ってください。スターさんがいないのに来たってことはぼくたちに用があるんですよね?」


 なかなかに聡い子だ。うちの寝ぼけ姫もこれぐらい感づいてくれると助かるが。きっと、今も幸せに眠りこけてることだろう。もしくは、夢の中でくしゃみしてるかもな。


「あの……えっと……」


「ソードだ」


「ソードさんは体が大きいので隅の方に行ってもらえると、部屋が使いやすいので助かります」


 さりげに俺のポジションを指定されてしまった。なんで毎回こんな役割なんですかね?

 まあ、確かに広い部屋ではないし、向こうの言い分ももっともなので、ノコノコと部屋の隅に行って体操座りをする。


「いや、わざわざその座り方じゃなくても……」


「なんか部屋の隅ってこの座り方がデフォな気がするんだよ」


「いや、ソードがいいならいいんだけど」


 王子の部屋は二段ベッドに、学習用の机。部屋の中央に丸卓が置かれているだけの簡素な部屋だった。

 修道院だし、アクセサリーのような細々したものは置けないのだろう。必要最低限のものだけを置いてある感じだ。

 だが、カインとアベルが遊ぶためのものなのか、学習用の机の下にいくらかおもちゃが積まれていた。

 俺が部屋の隅っこに座った後、三人は丸卓を囲むようにして座った。

 そして、一人は俺の正面に座っていた。


「あなたはだーれ?」


「お、俺はソードだ。君は?」


「あたしはアベル。よろしくね」


 小さく柔らかそうな手を差し出される。拒む理由もないので、軽く握手をする。だが、いかんせん手の大きさが違いすぎて、完全に包み込むような形になってしまった。


「手、大きいね」


「まあな。大人だからな」


「いや、体は大人だけど精神はまだまだ子供だからね」


「ソード、お膝の上に乗っていい?」


「ん?ああ、もちろんいいぞ」


 俺は体操座りを崩して胡座の体制に座り直した。出来た空間にアベルは座り込む。


「こら、アベル。迷惑だろ」


「気にすんな。これぐらいしかしてやれることもないしな……」


「な、なんか面倒な人ですね」


「子供ながらに一瞬でそれを見抜くとは、なかなかにいい目をしてるよ」


「それは褒められてるのでしょうか?」


「将来的に悪い人に会ってもうまく対処ができるという意味では、いい方かな」


「すでに妹をさらわれてる気分なんですけど」


 なんてことを言うんだ。だが、なんかこの子の方はずっと、カインの後ろに隠れていただけなので、そんなに俺に抵抗を抱いていないようだ。無邪気な笑顔が可愛いです。しかも、妙に懐かれたようだ。


「とりあえずとって食うようなことはしないから、ウィナ聞いてくれない?」


「はいはい。てか、それもソードの役割だと思うんだけど……カイン君。ちょっと幾つか質問いいかな?」


「え、ええ。答えられる範囲なら」


 少し警戒するように体を強張らせたが、答えようとする意思はあるみたいだ。

 なんか妙に大人びてると言うか、だから同年代の子供達とウマが合わないのか。


「そうだね……まずカイン君とアベルちゃんはいつから修道院にいるの?」


「えっと……半年ぐらい前からです。身寄りがなくて、ここなら誰でも引き受けてくれると聞いたから」


「うん。答えたくなかったら、自分が答えれるところまででいいよ。イヤならイヤって言ってくれればいいから」


「は、はい」


「じゃあ、次だね。どうしてスター君の部屋にいるの?」


「……何だか、ぼくには他の子供……ぼくも子供ですけど、眩しすぎて……肌に合わないんです」


  眩しすぎるねぇ。他の子供たちを見たことないけど、きっとカインとは決定的に何か違うんだろう。カインの本能とも呼べる部分でそう感じているのか。それとも、他の理由があるのか。

  いかんな。どうしても、前提条件があるせいで疑り深くなってる。

  もう少し様子見てみるか。


「うーん。確かにカイン君は大人っぽいしね。じゃあ、他の修道士さんやシスターさんはどうかな?」


  カインは首を振る。やはり、王子に固執してるようなも見える。だが、本当にそれだけなのだろうか。逆に考えれば、王子でなければダメな理由があるんじゃないか?

  考えてると、頬をぐにぐに引っ張られる。


「痛い痛い。そんな引っ張らんくても呼んでくれれば返事するから」


「ソード。呼んでも返事しなかったもん」


「あー、そうだったか?悪かったな。それで、どうしたんだ?」


「さっきからお兄ちゃんの方ばかり見てる。私と遊んで」


「遊ぶたってな……何か遊びたいのがあるのか?」


 これぐらいの年だとまだ、ままごととかだろうか。小さい頃に付き合わされたような気がする。あれ?思えばこの頃から上下関係は出来ていたのか?そして、俺の役はペットだった気がする。せめて、旦那様か、お父さんとかさ。人の扱いにしてよ。ペットってなんだよ。いじめ以外の何物でもないだろ。咎める人がいなかったから、どうにもなりませんでしたが。こうして独裁政権が出来上がってくんですね。まあ、ウィナはそんなことにならず、立派にお姉ちゃんをやってます。


「えーっとねー。うーん。お外行きたい!」


「アベル。外はダメだっていつも言ってるだろ」


「お外行きたいー!ソードからも言ってー!」


「と言ってもだな……。カイン、なんで外はダメなんだ?」


「……ぼくたちは極端に日の光に弱いんです。そのことは院長様にも言ってあります。だから、他の子供のように外で自由に遊べないんです」


「なら、夜はどうだ?夜なら日の光は無いし、俺たちもついて行くよ」


「それなら……それでいいか?アベル」


「お外行けるならガマンする」


  中々に聞き分けのいい子だな。将来的に大成してほしい。

  それよりも久々に兄妹というものを見た気がした。最も身近な兄妹は久しぶりに会ったのにお互いになんとなく距離をとってるしな。本当は互いに互いを心配しているのだが……近くで見てる俺からすれば、それがもどかしい。

  それからまたボーッとしていたら、ウィナの質問は終わっていて、アベルもアリスと遊んでいた。


「ありがとね。じゃあ、また夜に来るから」


「はい。お願いします」

 

 しかし、あの程度でウィナは確証を掴めたのだろうか。それとも、ただ単に世間話だけしていただけなのだろうか。

 少なくとも俺の判断ではグレーと言ったところだが、まだ観察を続ける必要があるだろう。

 俺たちは約束した夜までにまた計画を練ることにした。

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