二人の悪魔
今朝は修道院のけたましい鐘の音で目が覚めた。
俺たちは別に構わないそうだが、ガンガン鳴らされてたら眠るもんも寝れないし、起きたくもないのに目が覚めてしまった。たまにはいいかもしれない。
扉を開けると一人の修道士とかち合った。
「なんだ?見ない顔だな。新入りか?もう集会が始まるぞ」
「え?いや、俺は……」
「新入りがつべこべ言うな!さっさと行くぞ!」
「なんでこーなんだよー!」
ソード・ブレイバー。朝6:30頃、修道士に拉致された模様。
誰だ、早起きは三文の徳とか言い出したのは。
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ロクに服装も整えないまま、俺は集会が行われるというエントランスに運び込まれていた。すでにかなりの人数が整列をしている。
俺を運び込んだ修道士は並んだ修道士たちを数えて回っているようだ。
そして、俺の隣には王子が立っていた。
「なぜ、あなたがいるんですか?」
「こっちが聞きたい。なぜ、俺はここへ運び込まれた?」
「そこ。私語は慎め!」
割りに厳格な人のようだ。勘違いも甚だしい、とんだせっかち野郎のようだが。
「え〜揃ったようだな。では、始める」
何をですかね?ラジオ体操?健康的だな。
「修道院の掟を全員で斉唱するんですよ」
「いや、知らねえよ。口パクでなんとかならんか?」
「あの方は全員を見て回って声も聞いてますから……出るなら今ですよ。服装も修道士のものではないですから、通ると思います。それに客人がいることを士長も知ってると思いますから」
王子が士長と呼んだその人物。歳は30前半ぐらいだろうか。そんなに歳は食ってないようだ。
確かに今行かなきゃ、どうなるか分かったもんじゃない。
俺は大きく手を挙げた。
「なんだ?そこ」
「あの、俺、修道士じゃないんですけど」
「何を言うか。修道院にいる男は全員修道士のはずだが……いや、そういえば昨日から男一人と女が三人泊まってるいう話だったな」
どうやら、向こうも勘違いに気づいたようだ。そもそも運び込んだのを俺だと認識してるかどうかも定かではないのだが。
これで、解放される……。
さっさと、こんなむさ苦しいところは抜けて、あいつらのところに行って癒されよう。
そう考えていたが……
「確か、男は勇者だという話だったな。ちょうどいい。掟は知らないだろうから、斉唱はしなくていいが、ちょっと会議に出てもらおう」
会議ってなんですかね?今後の俺の待遇を決める会議ですか?男はちゃんと働いてここに泊まれと?慈悲もクソもあったもんじゃないな。ここは修道院じゃないんかい。
「なに、別に君を酷使しようと考えてるわけじゃない。君の見解を聞きたくてね」
「はあ、その間俺は何をしてれば?」
「会議はこれが終わった後すぐに行う。三十分程度だ。参加したければしてもらっても構わない」
誰が参加するか、誰が。
かと言ってすることもないので、普段修道士が何をしてるか見ることにした。
こんな朝っぱらから起きて何をするんだか。
「クロイツ教の教え!その1!……」
と、まあ、眠気が急激に襲って来たので、それ以降のことはよく覚えていない。気づいたら起こされていていた。
「あなたもよく堂々と寝れますね」
「体が慣れてねえんだよ。しかもこっちはいきなり拉致されたんだ。多少は目をつむってもらいたい」
「まあ、私が審判を下すわけじゃないですのでいいんですが……」
「スター。知り合いなのか?」
俺と王子が話しているところに割って入って来た、迷惑来まわりない修道士長。名前は知らない。
「ええ。修道院に来る前に剣を教わってた人です」
「ほお。後で私と合わせてみるか?」
「いや、やめてくれ。こっちはロクな剣を持ち合わせてないんだよ」
「ああ……」
王子が同情するように俺を見てきた。受付のときにこいつに渡して、何処かにしまわれたと思うのだが、あれを見て察しがついたのだろう。お前の親父が渡したものだよ。
「なら、うちで余ってるものを貸すが……」
「いやいや自分の手に馴染まないものは振るうなってのがうちの教えでな」
「……?」
修道士長は疑念の眼差しを向けてくるが、初対面の相手に力を失ってることを話してもしょうがない。大体手合わせなんか最近ロクにやってないのに、野生の勘でなんとかなるほど感覚は戻っちゃいない。
しかも、向こうも士長にまでなってるほどだし、力も備わってるんだろう。まず勝ち目はない。だから、無難に避けるべきだ。
「それより、会議するんだよな。こんなところでくっちゃべってないで、さっさとやろうぜ。俺、また寝るかもしれんからさ」
「む、そうだな。早いところ行わなければ。私は用意をしてこよう。場所の案内はスターにしてもらってくれ」
士長は羽織っていたマントを翻して足早にその場を去った。
エントラスには俺と王子だけが取り残されていた。
そもそも、俺が起きたときにはすでに他の修道士たちは出払っていたからな。
「そういえばシスターもいるんじゃないのか?一緒にやらんのか?」
「ええ。彼女たちは朝食の準備をしてるので」
「……俺たちの分なくね?」
「一人一人の分をその場で用意してくれるので多分大丈夫かと。粗食ですし」
「会議はどうしようか」
「えっと、現在7:20ですか。ここから食堂まで五分程度で食堂から会議場まで五分程度。会議は8:30からなのでまだ大丈夫とおもいますよ」
「じゃあ一度部屋に戻るか。あいつら起きてるか確認しがてら」
「妹ならともかくウィナさんなら起きてるんじゃないんでしょうか?」
「お前は自分の妹をもうちょい信用しろよ」
「信用しての結果です」
仕方ないな。妥当な判断だと思う。パーティ四人中三人がねぼすけだ。ウィナさんすいません。
なんで朝起きられるの?朝って寝るもんじゃないんですかね?そういう考えだから、俺は朝に弱いのかもしれない。基本的に夜のほうが危険だから起きてろって教えのせいだけど。
「つか、すぐに始めるっつうから向かおうと思ったんだけどな……時間ぐらい教えろよ」
「あの人はせっかちな性格ですから……せっかち過ぎて重要事項の連絡を忘れてたりします」
士長として致命的じゃね?重要事項だったらちゃんと伝えろよ。それで、こっちに被害があったらどうするんだ?
まあ、士長がその場合は自分で尻拭いをするんだろうな。修道院に被害があるだけで俺たちになんら関連することではない。それで、ここに重大な損害があったのも聞いてないし、多分この人が通達してないことは瑣末なことなんだろう。
俺と王子は女子たちが寝ている部屋の扉の前に立つ。
そもそも、部屋自体は一つで中で仕切りを作ってるってだけなんだが。一体誰が、そんな面倒なことをしてるんだろうか。そんなことしなくても、部屋を二つ貸せばいいだけの話だと思うんだが。
「私が一応配慮したんですよ。院長様は二つ貸しても構わないと言っていましたが、あなたが不憫だと思いまして」
「さすが俺の一番弟子!」
「暑苦しいんですが……それ以前に私以外に弟子がいたんですか?」
いませんね。後にも先にも弟子は王子しかいなかった。これから先も俺が師匠として腕をふるったり、教鞭をとったりすることはないだろう。
王子はそんな俺を無視して、部屋をノックする。
弟子よ。冷たくないですかね?
ノックの音に応えるように、扉は開いた。案の定出てきたのはウィナであったが。
「ちょっと、私じゃ不満みたいな顔して。失礼じゃない?」
「いや、こうも予想通りだとな。眠りこけてる方が、意外性があって面白いというか」
「ねぼすけ3人を起こしてるのはいつも誰だっけ?」
「ウィナ様でごぜーます」
「変わりませんね」
「おはよ。スター君」
「おはようございます。うちの妹は迷惑してないですか?」
「ま、まあ。いつも通り……平常運転?」
「その言い方だと、平常運転で迷惑をかけてるようにしか聞こえないのですが」
ぶっちゃけ、迷惑をかけてるのはウィナではなく、俺なのだが、あくまでアリスのは好意からきてるものなので、無下にするのも心苦しい。
そのアリスは幸せそうに眠りこけていますけどね。ノックまでしてんだから起きろよ。
「すぐにご飯ができるので、支度して食堂まで来てください。あと、少しの間ソードさんを借りますのでよろしくお願いします」
「全然いいよ。むしろこき使ってやって」
「いやおかしいだろ。そこは『私も一緒行く!』とか可愛く言ってくれよ」
「言ってどうにかなるの?」
「どうにもならんけど」
ため息をつかれた。俺、何かしましたかね?いや、したからなってるんだろうけど。
「とりあえず、起きないようでしたら、書き置きだけでもしておいてください。後で持って行きましょう」
「何から何まですいません」
「いえいえ。慈善事業ですからね。修道院というのも」
「偽善になってなきゃいいけどな」
「そう……見えますかね?」
「いんや。でも、他のやつがそうでも、お前が履き違えなきゃいいさ」
「あなたはどうなんですか?」
「んー。さあな。魔王討伐を志してる以上人にとっては慈善事業なんだとは思うぜ」
「人にとっては?」
「……まあそういうことだ」
「なんの話してるの?」
「なんでも。二人は?」
「まだ起きないみたい。私だけ行くよ」
「まったく……じゃあ、行きましょうか」
どうにも王子はアリスのほうにだけ、注意が向いているようだが、やっぱりここに来たことをあまり快く思ってないのだろうか。
だが、王子も別に嫌いでそういう態度をとっているわけでも、思考回路になっているわけでもないだろう。
純粋に心配なんだな。
「どうしたんですか?ニヤニヤして」
「いや、お前割とシスコンだなと思って」
「身内のそれも女の子がこんなところまで来てたら心配もするでしょう。妹と旅するのはここまでって言ってましたけど、妹はその後どうするんですか?」
「あー考えてなかった。また話すか。時間はあるか?」
「一応、私にも職務がありますので」
「修道士も面倒なもんだな」
「慣れればルーティンワークになりますから。キツイのは最初のうちだけですよ」
「じゃあ、夜か」
「ええ」
「もー。さっきから二人でなに話してるの?私だけ仲間はずれにしないでよ」
「妹を持つと大変だなって話だよ」
「ホント?」
「まあ、概ねそんな感じです」
「むー」
まだ納得行ってない様子だったが、俺たちも早く朝食を取りたかったので、なだめながら食堂へ向かった。
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「会議の予定時刻は8:30って連絡じゃなかったか?」
「そのはずでしたが……」
なぜか遅刻扱いとされた。罰として、追い出されこそしなかったが、立たされている。周りからの微妙な視線が痛い。
「なんで私も立たされるかな〜」
「一蓮托生、連帯責任だ」
「連帯責任もなにも、何も知らされずについてきただけなのに」
「そこ。私語は慎め」
「それ以前にあなた、ちゃんと通達してないのにこの仕打ちはどうなんですか?」
「ああ?」
語気を強めて威圧してくるが、その程度の相手はいくらでもしてきた。口撃ならいくらでもできるし、その対抗策ならいくらでもある。
「そっちは8:30に集合と通達したらしいじゃないですか。スターからそう聞きました。ですがなんです?10分前に来てなお、それで遅刻扱いと?そもそも、あなたは俺に時間の通達をしてないですよね?それで咎めるのはどうかと思うんですけど」
「私は8:00だと通達した。それを聞いてなかったのはそっちの責任だろう。そもそも、時間を聞きにも来なかったのによくそんなことが言えたもんだな」
「そんな言い方しちゃいます?そもそも出てもらいたいと頼んだのもそっちですよね?だから、別に俺には拒否権があるんですよ。この会議に出ようが出まいが俺にデメリットはないんで」
「ちょ、ちょっとソードさん」
「大丈夫だって。俺を信じろ」
止めようとした王子を逆に止めて、さらに続ける。追い出されても特に困ることはないのだ。こちらの後ろ盾はあんなせっかち野郎ではなく、院長なのだから。
「口の減らんガキだ」
「修道士ともあろう者が庶民に向かってそんな口でいいんですかね?神さん泣いてますよ?」
「クロイツ神は最後には正しいものに審判を下す。この程度は瑣末なことだ」
「あっそ。ガキに挑発された程度で頭に血が上ってる人が見てもらえんのかね?」
「貴様!一度表へ出ろ!その口を閉口させてやる!」
「やめんか!」
院長の怒声により、一旦その場での口での横行は止む。士長の方はまだ何か言いたそうだが、俺の方は黙ってすましておく。そうしたほうが、こっちのほうが落ち着いてると見られ、逆に向こうは身内であるがゆえの指導をされる。だから、この勝負はどうなろうが、俺の勝ちなのだ。
「ったく、士長にもなって、その短絡さは何とかならんのかの?」
「お言葉ですが、院長様。先に挑発してきたのは向こうであって……」
「その挑発に乗ってどうする。どうみても10は年下の相手に大人の対応を見せんか」
「……申し訳ございません」
さすがに院長には頭が上がらないようだ。士長も何らかの形で院長に助けられているだろうからな。親みたいなものでもあるんだろう。
「今日は代わりに儂が議長を務めよう。お主は補佐を頼む」
「はっ」
何かの情報をまとめた資料が会議に出ている人たちに配られていく。
会議に出ているのは俺たちも含めて十人ちょいの少数だ。あまり口外したくないことなのだろうか。
俺たちを引き入れたのはあくまでも第三者としての視点が欲しかったのか、それとも勇者であることの肩書によるものか。
一応配られた資料に目を通す。
そこには二人の名前が挙げられていた。
「カインと……アベル」
「ふむ。知っておるかの?」
「ええ。お……スターの部屋に行ったものですから」
「顔見知りか……会ってるなら話は早い。何か、感じなかったかの?」
「ここに載ってる以上のことですか?」
院長はいかにも、と大仰に首を振る。士長のほうは、後ろのホワイトボードへ渡した資料を貼っていた。新たな情報を書いていくんだろう。ただ、俺はほとんど顔を合わせなかったしな……。
「俺より、ウィナのほうが詳しいんじゃないですかね?」
「ええ?私もあまり話せなかったし……でも、人見知りでスター君の部屋にいるだとしたら、それはそれで違和感がありましたけど……」
「ふむ。その違和感でいい。言ってくれないか?」
「人見知りっていう割には、会話はつっかえつっかえになることはないし、喋れないというよりは喋らないって感じでした。なんか、品定めでもするように観察してた、とでも言うんですかね?」
「なるほど。スター」
「そうですね。何となく、それは自分が信用してもいい人物か見てるようにも感じますけど、でも、それなら二人して見てる必要もないと思うんです」
カインとアベル。二人の子供を見ての判断を下していく。あんな小さな子供になんかの考えがあって、人を観察してるというのは考えにくいことだが、こうして会議が開かれている以上、誰かが何かしらの違和感を抱いて、誰かに進言したんだろう。
だが、王子の話によればあの二人が懐いているのは、王子と院長だけだ。他の修道士、シスターに関わりがあるとも思えない。もしくは、ここは孤児院のようなこともしてることだから、他の子供達の誰かが聞いてきたか。……それもないな。子供なんて自分のことでいっぱいいっぱいだ。一度は仲良くしようと試みても、それを拒絶すればあまり執拗に関わることはしないだろう。
「あの一ついいですか?」
「うむ。意見があるならなんでも言ってくれ」
「そのカインとアベルに何かあるという根拠の元でこの会議を開いてるんですよね?なら、なんの根拠ですか?」
もっとも根幹のところを俺とウィナは聞いていない。王子も特に言ってなかったが、言うのをはばかられたか、言わないように口止めでもされてたか。
「言っていなかったか?」
「とりあえず、私たちは聞いてないです」
「ギル。書いてくれないか?」
ああ、あの士長ギルって名前だったのか。一向に名前が出て来ないからこのまま士長で押し通そうかと思っちまったぜ。
ギルはホワイトボードに二人の名前を書いたのちに矢印を加えて、一つの単語を書き入れる。
『悪魔』
その単語だけ、妙に強調されてるようにも見える。
「あんな幼子相手に悪魔って、穏やかじゃないですね」
「その通り、穏やかではない事態だ。今でこそ、何も起きてない。だが、いつ何が起きるともわからん」
「儂も、子供達をそのように疑いをかけたくない。だが、昨日お主らに話を聞いてから心当たりを覚えてな。今、お主らは悪魔を探してる。そうであったな?」
俺とウィナは二人して首を縦に振る。
それを見て院長は話を続ける。
「儂は初めて会ったときじゃな。あの二人と目を合わせたとき、何か心を盗み見られたようなそんな気分になった。だが、儂はそんなことで拒んだりはせん。身寄りのない子供だったからの。快く受け入れた。だが、他の子供とはあまり馴染まなくての。その辺りはスターから聞いておるかの」
「ええ。だから、普通に子供達がいる部屋じゃなくてスターの部屋で寝食をしてるって」
「なぜ、修道院の中のものでスターだけに懐いたのか。それとも本当は誰にも懐いてなくて、何かの目的を持ってスターの近くにいるのか」
「子供相手に考えすぎじゃないんですか?実際に被害が起きてるわけじゃないでしょうに」
「被害が起きてからでは遅いのだ。それはお主もよくわかってることだろう。だから未然に防がなければならない」
「例え子供だとしてもですか?」
「こんなことは言いたくないが、普通の子供とは違うかもしれん。儂はともかく、他の修道院のものには近づこうともせんからな。少し、見てくれないか?」
「構わないですが……いつまで?」
「一番はあの子たちの正体を突き止めることじゃ」
「正体ねぇ……」
ホワイトボードに堂々と悪魔と書いてあるが、院長は認めてはいないのだろう。本当に悪魔なら、俺たちはどう出ればいいのか。探し求めるものを悪魔たちが所有してると言うことは、悪魔だった場合は倒して、俺の力を取り戻さなければならない。
相手は子供だが、どんな力を持ってるのかすら未知数だ。
「ソード」
「ん?」
「あの子たちを悪魔って疑ってる?」
「現状は五分だな。どうやって、クロイツ修道院が悪魔の情報をつかんだのか知らんけど、目星をつけてる。もしくは、本来は別にいて、あの子たちを悪魔に仕立て上げようとしてるか、の二択だな」
「誰がそんなこと……」
「仮説だ仮説。とりあえずは向こうに頼まれた通りに動こう」
「質問がなければ今日のところはここで終わろう。皆、職務に戻ってくれ」
各々席を立ち始める。ほとんどが会議室から出ていくと残ったのは顔見知りばかりだった。
「では、私も職務がありますので」
「あ、ああ。がんばってこいよ」
軽く会釈をして、王子もその場から去った。
つくづくウィナがついてきてくれてよかった。
一人だったら何かしら詰問されてたしか思えないな、この空気。
「では、私もいきます。院長様、大丈夫でしょうか?」
「年寄り扱いするな。まだ、お前に席は譲らん」
「考えておりませんよ。お気をつけて」
軽く微笑んで、士長も退席した。これで残ったのは、俺とウィナ、そして院長だけだ。
「さて、最後まで残った、と言うことは何か言いたいことがあるのかの?」
「まあ、今から具体的に何をするかとか、それ以前に俺は避けられてるみたいなんですが」
「なら、外で遊ばせてやってくれないか?中に閉じこもってばかりでは、いささか可哀想であろう」
「それも、あの子たちの意思の自由でしょう。でも、多分情報ならすぐ集まりますよ。ほら、ウィナ行くぞ」
「えっ?ちょっと!」
俺はウィナの手を引いて、会議室を後にした。
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「とりあえずこの辺でいいか」
俺は引いていたウィナの手を離す。
「もー、喧嘩売るし、意味深な発言で会議室後にするし何がしたいの?」
「俺は本能の赴くままに生きる」
「それ、理性を失った獣と一緒だよ。人間であることのアイデンティティがないよ」
「冗談はさておき、とりあえずロロちゃんに話を聞くとするか」
「ロロちゃん?何かあったっけ?」
「昨日、王子と外に出るときロロちゃんだけ残ったろ?何か分かったことがあるかもしれんだろ」
「あの子のことだから、昨日の晩御飯のことすら忘れてそうだけど」
「何気にひでえな……。とりあえず今のところの情報源はあの子だけだし、聞いてみる他ないだろ」
「はいはい」
あんまり期待してないウィナだったが、もし、あの子たちが悪魔ならロロちゃんなら何か聞き出してると、俺は信じてる。
期待していいよね?
部屋の前に着き、ウィナがノックするとアリスが出てきた。
「もーどこに行ってたんですか?」
「書き置きしたでしょ?少し会議に出てくるって」
「終わる時間も書いてくれないと不安じゃないですか」
「まあ、それは置いといて。アリス、ロロちゃん起きてる?」
「いえ、まだ寝てます」
肝心の目的人物は、なんかすごい寝相で寝ていた。
情報収集の最初のステップはねぼすけの魔王の娘を起こすことだった。




