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魔王拾いました  作者: otsk
プロローグ
16/145

第一回嫁選手権

 某日。日付の概念はどうでもいいのだ。正確な日付はだいたい街で確認をする。だから、俺たちが数えてるのは、旅をした日数だ。それを証明するために、俺は日記形式で何があったかを記している。内容は長くなるので割愛。これは報告書にもなるので、あまり適当なことはかけないのだが、ぶっちゃけあることないこと書いても、王様の逆鱗に触れなければ大丈夫だ。

 逆鱗に触れることは今のところ分かっているのはこの腕にしがみついてる我が国の姫のことぐらいだが……。

「アリス、離れて歩いてくれ。視線が痛いし、歩きにくい」

「誰も迷惑してないですよ?」

 俺が迷惑しているというのが、今の発言から聞き取れなかったのだろうか。それとも彼女の耳は自分の都合のいいように解釈ができるようにでもなってるんですか?便利ですね。

「後ろ歩いてる奴らが今にも殺しそうな目で見てるだろ。主に俺を」

「モテますね。お兄ちゃんは私のものですよ」

「アリスのものじゃない」

「じゃあ、誰がお兄ちゃんの嫁になるか今ここで決着をつけましょうか」

「「それ乗った!」」

 二人が威勢良くこっちに来た。あんだけ離れてて聞こえんのかよ。地獄耳だな。しかも、アリス自身が勝てると思い込んでるところが相当痛い。

 それよりもあまり二人を挑発しないで。あんた勝てないでしょ?無論、俺も勝てません。

 でも、あえて俺はこの格言を掲げる。

 負けません 認めるまでは

 負けっていうのは、認めたら負けであって、認めなければ負けではないよね?誰かそうだと言ってください。でなければ、俺は人生に負けまくってます。

「さてソード。言ってくれるわよね?」

「あはは。そんな怖い目をしても俺は屈しない……」

 髪先が焼けた。あはは、危ないなぁ。顔面に当たってたら、俺のイケメンフェイスが台無しだぜ。

「大丈夫よ。私の魔法の最大出力でなければ、再生させることは可能だから。さて、次はどこに行くかな~」

「愛してるぜハニー」

「そんな脅迫に屈しないでよ!」

「あ、あれ?」

 俺、何か間違えた?

「とにかく!脅迫はなし!」

「ちっ」

 ねえ、俺の幼馴染本当は俺のこと嫌いなんじゃないの?長いこと付き合ってきたけど、ここにきて雲行きが怪しいよ。いつからあんなに歪んだ行動を示すようになったの?

「こういうのは本人の口から言ってもらうのが一番だよ。さあ、お兄ちゃん。言うがよろしだよ」

 語尾がなんかおかしいぞ、アリス姫よ。姫なのに俗物にまみれすぎじゃないか?

「そういえば、私結婚してくださいって言われた」

 ロロちゃん爆弾発言。

 というか、その爆弾発言の元凶を作ったのは俺だ。

「へ、へえ~。それはいつのことかな?そもそもロロちゃんとお兄ちゃんは会って間もないはずだけど?」

 そういや、あの時は何かを誤魔化そうとして、咄嗟に出したセリフがそれだったな。我ながらにアホだと思う。渾身の告白はウィナが流しました。

 そのウィナにも旅に出る前にプロポーズしたんだけどな。そういや、告白とプロポーズはどう違うんだろうか。

「で、どうなの?」

「アリス。こういうのは責められて吐き出すもんじゃないぞ。お互いに好意を寄せて成立するもんだ」

「恋は最初は片思いだよ。向こうはこっちのこと知らないかもしれないし。でも、私とお兄ちゃんは知り合いだしラブラブだから問題ないね」

 問題ありまくりだわ。何を根拠にこの子は言い放ってんの?俺に選択権はないの?

 アリスはいいこと言ったと思ってるのか、かなりのドヤ顔をしてる。効果音で『どやぁ』とか聞こえてきそうです。

「仕方ない。まだ会って日が浅い上にまず魔王の娘であるロロちゃんは除外で、あとはウィナちゃんか。いきなり巨大な壁だよ。暴力的な意味で……きゃん!」

 チョップ一発、アリスの頭に入っていた。王様の前だったら……ウィナなら許されるか。王様、ウィナのこと気に入ってるみたいだし。逆に俺だったら、1にも2もなく断罪だろうな。

 それに、今のはアリスが悪い。

「ウィナちゃん……暴力的な女の子は嫌われるよ~」

「いや今更だし、余計なこと言わなければいいし、俺はそんな暴力に屈しない」

「ちょっと私が暴力をふる前提で話すのやめてよ。私は……」

 そこでウィナは話すのを止める。思い当たる節でも探してるのだろうか。だったら、俺にはかなり思い当たる節が多いけどな。旅の間はウィナより、エド……さんに殴られた回数の方が多いから、ウィナの印象は薄いけど、かなりの回数引っ叩かれたような気もしないでもなくもない。

 結局どっちだったかは、そこまで印象が残ってないということはそんなに叩かれてないんだろう。エド……さんにやられたときは毎回半殺しにされてた気がするから。

 うん。それにくらべりゃウィナは可愛いもんだ。

「ウィナでよかった……」

「それはいったい誰と比較してるの?」

「俺が知る限りで、最強の女の人」

「ああ、はい」

 納得はしてくれたらしいが、受け入れてるかどうかはまた別問題。

「だから、お兄ちゃんは私のものなの!」

「姫がそんな俗にまみれたようなことを言うな!」

「問題なのはソードが今誰を好きかということだよ!」

 当の本人はほっといて、三人で口論な始まってしまった。どうしよう、収拾つかなくなってきたな。

 そもそもなんで言い争ってんのこの子達。

「えっと、ちょっといいか?」

「「「ソード(お兄ちゃん)は引っ込んでて!」」」

 だから俺についての話じゃなかったの?なんで俺が蚊帳の外にされてんの?そこに俺の意思は関係なしなの?誰か教えてよ。

 教えてくれる人は誰もいないし、女子三人はひたすら口論してるばっかだし、俺は何をすればいいんでしょうね?で、なんの話だったっけ?

 ああ、確か俺の嫁を決める話だったか。なんでそうなった。

「待て待てお前ら。本当に俺なんかの嫁でいいのか?養うことなんて当分できやしないだろうし、働き口も曖昧なままだぞ。それに家事もほとんどできん」

 これでよくもまあ専業主夫になりたいと俺は抜かせたな。自分で自分にうんざりしてくる。

 三人は再び考える様子を見せる。

 そして、一番最初にアリスが口を開いた。

「それなら問題ないです。うちは王族ですし、使用人もいくらでもいます。お兄ちゃん一人を養うことなんてわけないです。お兄ちゃんは私を愛してくれればいいんですよ」

 ある意味一番魅力的な提案だが、アリスは肝心なことを忘れている。

「アリス、俺が城に住むということはあの王様と顔合わせしなきゃいけないんだ。ついでに俺は王様から嫌われているようだしな」

「父上はどうでもいいです。お兄ちゃんが私のことを好きかどうかってことが重要なんです!」

 お父さん無視ですか。そういえば、アリスも王様のことあまり好いてはなかったな。

「はいはい。アリスのターンは終了。次は私」

「え?全員回るの?」

「当然でしょ?」

「あと俺はお前からの好感度はかなり低いと思ってる」

「一緒に旅してまで言うか……」

 そう言われても、ウィナに俺が何かしてやれたかと聞かれると何もしてやってない。むしろあれで、好感度が上がってたら逆にすごい。上がるもんなの?

「幼馴染なんだし、一緒にいておかしいなんてことないでしょ?それともソードは私と一緒にいるの……イヤ?」

「むしろ一緒にいるという概念なら一番いいんだが」

「なら、私でいいよね?嫁というは生涯を共にするパートナーなんだよ?」

「俺はいいとして、お前がそれでいいのか?なんか乗せられてやってないか?」

「う〜ん」

「考えてるようじゃまだだな。はい、次……まあいいか」

「諦めないでよ!構ってよ!」

 ラストバッターロロちゃん。空振り三振で終了。

「終わってないよ!まだ打席に立ってすらないよ!」

「キャンキャン吠えない。よしよしゴロゴロ」

「猫かあたしは⁉︎」

 お気に召さないらしい。どう対応したらいいものか。猫がダメなら犬か?

「人の扱いしろ!」

「いや魔族だし」

「四分の一は人間なんやで」

 だからイマイチキャラが安定してない人が多いです。最後に至っては誰だよ。

「えっと、人に魔族にエルフだったっけ?どこにカテゴリーすればいいんだよ」

「みんなと同じ土俵に立てるように人でお願いします」

「ツノを生やして言われても……」

「ちなみに消すことはできないけど形態を変化させることは可能だよ」

「へえ。見せてくれよ」

「ちょっと待っててよ……」

 頭のツノを掴み、目を閉じた。それで変わるのか?

 そう思ったが、ロロちゃんが手を離すと確かに形状は変わっていた。

「やっぱ猫じゃん」

「ムキー!見せてって言うからやってあげたのになんなのさその感想は!」

  魔王のツノから、可愛らしい猫耳へと形態変化。たぶん、自分が猫化してる時のあれだろう。

「まあ、でも……これはこれでいいな。魔王の娘ってバレることもないし、このままでいればいいじゃん」

「それは無理な相談だよ」

 そう言うと同時に猫耳は再び魔王のツノに戻った。なるほど、時間制限があるのか。しかもかなり短いようだな。

「これ、なんの話だったっけ?」

「第一回チキチキソードの嫁選手権じゃなかった?」

「かなり胡散臭い選手権だな。出場選手も三人しかいないし、決定権は無論俺だよな?」

「そりゃ、ソードが決めなきゃどうすんのって話であって」

「一人を選ぶことによって残りの2人を悲しませる選択となるのか。重いな」

「やっぱりソードは人の子じゃないとダメ……かな」

「なんで?」

「だって、勇者なんだし、人の血が混じってるとはいえ、私は魔王の娘だし。最初から勝ち目はない勝負なのかなって」

「なんだよ。ロロちゃん。会ったばかりなのに俺のこと好きになったのか?」

「分かんない。好きっていう感情は。今まで誰かをカッコいいとかあこがれとか抱いたことないし、その人のことを知りたいとか考えたこともないし。それは結局私が子供だからかな」

「ロロちゃんは俺のこと知りたいか?」

「…………」

 少し間を開けて頷いた。

「でも、やっぱり魔王の娘だし……無理だよね」

「……そんなことはない」

「えっ?」

「ロロちゃんが俺のことを好きだって言ってくれるなら応えられるか分からないけど、気持ちは受け止める」

「でも……今はまだ……」

「別にいいさ。旅が終わるまでに答えを出せば。俺は待っててやる」

「なんかその言い方だと、ソードは私のことが好きみたいに聞こえるけど?」

「ああ、大好きだな。何度でも言うが可愛いは正義だ」

「変なの」

 ロロちゃんは微笑を浮かべて、俺の前から去った。待機してる2人の元へと向かう。

 一応、これで終わりということだな。

「では結果発表」

「なんで争ってたかもよく分からないままだったんだけど」

「それは俺にも分からん。とりあえず一番だけ決めときゃ丸く収まるらしいから言っておく」

 可愛い子ばかりで、俺はいつか後ろから首をはねられそうです。刺されるどころの騒ぎじゃないのが、俺クオリティ。そんなのは俺は望んじゃいないけど。一夫多妻制ならみんな幸せになれると思うんだ。いわゆるハーレムエンド。俺自身もなんでこんなに女の子から好かれてるのか知らない。だけど、2人ほどあやふやだ。なら、選択肢は一つだろうと言われるけど、やっぱりそれで割り切れるほど簡単なものでもない。

 別に誰を選んでも、みんな納得して受け入れてくれると思う。……みんなではないな。一人はマジで刺してきそう。それを考えたら、やっぱり安定なのか?そんなヤンデレ彼女はやだ。

 それでも一人選ぶのなら俺は……

「ロロちゃん。俺はロロちゃんを選ぶ」

「わ、私?」

「一応、説明してもらおうかしら?」

 うん、そうだよね。むしろ、説明せずにスルーしたら俺はこの場で放置される羽目になるだろう。通りかかった人はそれを見て何事かと騒ぐだろう。

「せめて、人に見つかりにくい場所でな……」

「思考が明後日すぎるんだけど、何があった?」

「わりい。説明だったな。まず、アリス。アリスは人との距離の取り方を覚えろ。恋人でもないのに、ベタベタされても困るだろう」

「私は困らないもん」

「俺が困ってるの。好きなのは分かったから、俺のことが好きなら俺が困るようなことはしないでくれ」

「お、お兄ちゃん私のこと嫌いなの……?」

「好きか嫌いかって言われたら好きだから。ただ、ベクトルを間違えるなってこと。分かった?分かったら返事」

「はーい」

 最初から諭すのがめんどい。2人しか説明しないけど。でも、最終的にロロちゃんが一番のわけを説明しなきゃいけないから3回は説明せなあかんのか。

「えっと、次ウィナ」

「納得いく説明をしてくれるわよね?」

「どう説明するであれ、攻撃されることが確定されてるのはツッコんではいけないところなのか?」

 なんで、片手にすでに火の玉を浮かべてるんだよ。攻撃準備万端じゃねえか。

 言葉を選んで慎重にしないとな。

「えっと、ウィナは俺と幼馴染だな?」

「確認するまでもないでしょ」

「察してくれ」

 案の定飛んできた。かなり上方へ逸れていったが、きっと彼女なりに配慮してくれたんだろう。やっぱり優しいな。

「そんなんで納得するかボケー!」

「ええ〜してくれねえの?何年俺の幼馴染やってんだよ」

「ああもう分かったわよ。あくまで現段階での話よね?」

「まあ。そうだな」

「ん。ならいいよ」

 解放された。あんな適当な言葉足らずでも容認してくれるのだ。幼馴染っていいですね。

「じゃ、あとはロロちゃんを選んだ理由か」

 あのあまりこっちを見ないで。近い近い。話ににくい。

「2人と違って逆に何も知らなかったからだな。2人だと知ってるからこそ、何かしらアドバンテージがあるんだよ。それじゃ不利だしな。まずは同じ土俵に立たなければ勝負にならない」

「何が言いたいの?」

「そうだな……しばらくは2人で寝るか」

「ズルい‼︎私もお兄ちゃんと一緒に寝る!」

「昔散々一緒に寝たろ。まずは近くにいて、俺のことを知ってもらう。それが一番だ。あとは純粋にちっちゃくて可愛い」

「やっぱこいつロリコンだったか……」

 皆まで言うでない。欲情してるというより庇護欲が働くんだ。なんか構いたくなるんだよ。でも、嫁候補だとまた違ってくるような……。ロロちゃんが年を取れば問題ないな。

 えーっと、あと……。

「少なくとも六十年も待たねえといけねえのかよ!」

「ああいや、あくまで私の年齢の120歳は魔界においての年らしいから、普通に数年経てば……」

 自分の体をペタペタと触る。現実は見た方がいいよな。数年後が楽しみです(ゲス顔)。

「うわーん。ソードが成長するわけないだろって目で見てくるー」

「ええ?そんなこと思ってねえよ!ちょっとしか」

「思ってるじゃん!首を洗って待ってろ!」

 それ、果し合いの捨て台詞じゃね?自分が成長するかどうかにおいての台詞ではないよね?


 今日の記録

 第一回嫁選手権開幕。優勝、魔王の娘、ロロ・アークハルト(12)。自称120歳だが、見た目年齢で換算。同出場選手の2名は、フェアではないという理由で判定負け。

 その嫁は……。

「せっかく、お嫁さん選んで泣かせるとはね〜」

「制裁が必要だよお兄ちゃん」

  ちょっと意地悪が過ぎたため、女子2人に泣きついた模様。圧倒的戦力差で俺は敗北を喫した。


  なんで俺負けてんの?

 

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