パーティの構成
姫を外に連れ出して、街から離れること数十分。姫はもちろんのことウキウキだったが、正直なところ不安しかない。
サタンの話から察してくれるとありがたいのだが、俺はまだ、姫に直接力を失ったことを言い出していない。
期待してくれてるから、それに応えたいというのがあるのだが、今ではそれができそうにもない。ないないづくしで取りつく島もない。
その姫はというと……。
「街の外ってこうなってるんですね~。何もないです~」
すっかりピクニック気分。全くもって危機感を抱いていない。確かに危険はないと言ったけど、これはあんまりに欠如してませんかね?
「ロロちゃん、ちょっと姫に危機感を持たすためにモンスター出してくれないか?」
「ええ~。あれMP割と使うんだよ?」
MPってなんだ?それ使うとロロちゃんから何か吸い取られる機能でもついてんの?それハイリスクローリターンじゃね?ローリターンって、ロリたんって見えてきた。可愛い。
俺も本格的に病気かな……。こんなことばかり考えるようになってしまっている。自分より年下の子ばかり相手にしてるから感覚が狂ってるんだな。そうに違いない。それ以外にはない。
「で、そのMPってなんだ?」
「まあ、モンスター出すための力。モンスターパワーのだと思われます。時間がたたないと回復しないみたい」
「今のロロちゃんのMaxは?」
「えっと……7だね。ついでにあのブタモンスターだすのには3必要だよ」
意外に割高だな。フットピッグ。初期の雑魚モンスターなんだから1でもいいぐらいだ。
「で、1回復するのにどれぐらい時間かかるんだ?」
「一分」
「一度に出せるモンスターの最大は?」
「5体。それがどうかしたの?」
「そのMPを回復するためのアイテムとか道具的なものは存在するのか?」
「うーん」
携帯ゲーム機をスクロールさせながら、機能の確認をしている。
大体こういうのって、説明とかすっ飛ばして適当に進めちゃうよね。で、説明書に重要なこと書いてるのに、自分が読まなかったばかりに詰んで憤慨するという。そんな複雑な操作を載せるなとか言いたいところだけど。
「特にないみたいだね。レベルが上がるとMPの回復速度が早くなるとかはあるみたいたけど」
「また使えるのか使えんのかよーわからんアプリだよなこれも」
例えば、フットピッグを召喚するのに出すMPが1なら一度に5体出せて、さらに5分経過すればまた5体出せるというエンドレスができるわけだが、如何せん中途半端にMP消費量が高いせいで最大で2体しか現段階では同時召喚はできない。
でも、今なら2体ぐらいがちょうどいいぐらいの戦力か。
「そういや、結局姫が何をしたいのか聞いてないし決めてなかったな」
「何でもいいんですか?」
「やれる範囲ならな」
姫は何が得意なのか分からないが、聡明な子だし、魔法系統が得意だろうか。別に武器を使ってもいいけど、あまり野蛮なことはさせたくない。傷をつけようものなら王様に殺されるような気もするし。気じゃなくて確定事項だなこれは。
「そうですね~。………」
言葉に詰まる。
考える時間はいくらでもある。
少しだけ待ってやろう。
30分後~
どこからともなく寝息が聞こえてきた。飽きた誰かが寝てるんだろう。
俺も眠くなってきた。……じゃない。
「姫、いったい何をそんなに悩んでるんだ?」
一瞬怒声が出て来そうだったが、それでは大人気ないので、出来る限り感情を沈めて姫に話しかける。
「うーん。やっぱりアリスかな!」
かな!じゃない。
いったいこの子は何について悩んでいたんだ。何で戦うかじゃなかったのか?
相変わらず何を考えてるのか読めない。
ウィナは眠りこけていたロロちゃんを木陰に連れて行って膝枕をしてあげていた。俺も寝てたらしてくれんのかな?
「お兄ちゃんなら私がやってあげます」
「俺、口に出してたかな……?」
「いえ、お兄ちゃんの考えてることなら分かりますから」
俺の考えそんなに筒抜けなの?ロクに何か考え事することもできないじゃん。
好きとか尊敬を通り越してストーカーの域に達していると思う。
「で、考えはまとまったのか?」
「お兄ちゃんが私をアリスって読んでくれるなら、ソードお兄ちゃんって呼んであげます」
それランクアップしたのか?ほとんど変わってないように感じるぞ。
俺の微妙な視線を感じ取ったのか、姫は説明してくれる。
「世の中の界隈は個人名をつけてお兄ちゃんと可愛い女の子に言われるのが、人生最大の目標だと聞きました」
誰にだよ誰に。そんな情報を垂れ流したおバカさんは誰だ?
「ソースはお兄ちゃんです」
俺かよ。俺いつそんなこと言った?まったく記憶にないぞ。ここにおけるお兄ちゃんが、王子のことなら俺が言ってないのは明確になるが、姫は王子のことは兄様と呼んでるしな。分かりづらい。
「ええ、記憶にないでしょうね。私が催眠をかけて、うわ言でそう言うように仕向けましたから」
「あっさりと言ってくれるが、そんな恐ろしいことをしないでくれ」
「恐ろしいこと?」
「下手すれば俺は、姫の操り人形だぞ……そこ、その手があったかと言わんがばかりに手を打つな」
「ダメでした?」
「ダメも何も、俺の人権はないのか?」
「お兄ちゃん、私のためならなんでもやってくれるよね?」
「よし、お兄ちゃん頑張るぞー……ってなるか‼︎そんな恐ろしい話を聞かせれた後で頷く奴がいたら見てみたいわ!」
王様だったら頷きそうかも。たらればの話はいいや。ここにいもしないオッさんのことを話してもしょうがない。それ以前にあのオッさんの話はあまり出したくない。忠誠心?何それ?食えるの?
「あと姫、イマイチ喋り方が安定してない。統一させてくれ」
「下手に喋ると誰かと被りますしー。妹キャラでやろうにもロロちゃんと被りますしー。敬語も実のところ固っ苦しいんで嫌なんですよ」
「よし、もっとフランクリーにいこう。俺のことを名前で呼んでみろ」
「お兄ちゃん」
「俺はお兄ちゃんって名前じゃない……」
「今更ソード君とも呼べないよ〜恥ずかしい」
お兄ちゃんと呼ばれるのは、本当の兄である王子に申し訳ないのと、こっちが恥ずかしいというのがあるのだが、こっちの意見はもちろん無視ですよね。分かってます。
「ウィナはお姉ちゃんじゃなくて、ウィナちゃんって呼んでるだろ。あんな感じじゃなダメなのか?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだからお兄ちゃんなんだよ?」
そんな哲学的なことを言われても困る。別に俺は誰の兄でもない。一人っ子だし、兄弟姉妹はいたことがない。
「それに、姫には王子がいるだろ。本当のお兄ちゃんが」
「兄様は……私にあまりかまってくれなかったし……」
「年子だったのもあるか。年が近い兄妹だとそういうのも起こりやすいらしいしな。兄妹がべったべたに仲がいいっていうのもフィクションの話なのかもな」
「いいもん。あんな兄はこっちから願い下げです。結局、私も家も見捨てて修道院へ修行に行っちゃったし……修行ならお兄ちゃんがやってくれてたのに」
「あのな、姫……」
言うならここが一番いいタイミングだろう。実際、王子が城を離れたのは、俺が力を失ったことを知ったからだ。王子は知っている。だから、相手が出来なくなった俺を庇うように、修道院へと向かったんだ。姫は王子のことを誤解しているかもしれない。誤解を誤解のままにしてはいけない。誰かが、解いてやらなければ。
「姫、王子が城を離れたのは俺のせいなんだ」
「どういうこと?」
「見てもらったほうがいいな。ウィナ」
ロロちゃんを起こさないようにゆっくり地面に下ろしてから、俺のほうへ駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「ちょっと、モンスターと戦いたい。ロロちゃんのアレ使えるか?」
「あれって本人しか使えないとかないの?」
「動かしてみないことには分からんが、ロックとかかかってなければ、誰でも使えるだろ」
「う〜ん。分かったよ」
ウィナはロロちゃんの懐を探って、携帯ゲーム機を持ってくる。どうでもいいけど、ちょっと動作がエロかったです。本当にどうでもいい。
「えっと、ここをこうして……一体でいいよね?」
「ああ。もし、俺がヤバかったらウィナが倒してくれ」
「おっけ。じゃあ、いくよ」
少し離れた位置に光の柱が出現する。ロロちゃんと姫への配慮だろう。向こうが出した瞬間に奇襲をかけてこないとも限らない。
「姫、ついてきてくれ。あと、姫は手を出さない、首を突っ込まないこと」
「私じゃ戦力にならないってこと?私だって……」
「そういうことじゃない。ちょっと証明しなけりゃいけない。それは、俺が一人でやらなきゃいけないことだ。こればっかりは口で言っても信用には足らんからな。だから、姫は今回は観戦だ」
頭に手をおいて撫でてやる。
どこか、まだ不満そうだったが、納得したのか頷いてくれた。
そして、ウィナも、ロロちゃんを背負ってこちらに向かってきた。
俺は、ちゃんと証明しなければならない。俺自身の今の強さを。
力を失っていることを。
俺も背負っている木の棒に手をかけ、駆け出した。
……どうしても木の棒じゃギャグにしかならないから、どうにかしないとな……。




