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魔王拾いました  作者: otsk
プロローグ
12/145

二人の姫様

 そういえば、牢屋のほうなんて入ったことなかったから、道が分からない。城と言うだけあって、かなり入り組んだ造りになっていて、どこになんの部屋があるかも数え切れないぐらいだ。王様ですら把握してないんじゃないだろうか。理由は王様って結局の所、部下に任せて、自分はほとんど仕事してなさそうだから。

 俺の独断と偏見によるものなので、全国の王様及び、この街の王様がどうかは知らない。

 だだっ広い、回廊をあちこち見渡しながら、歩き続ける。城っていうのは、どこもこんなもんなのかね?怪しげな部屋とかもあるけど、俺は小心者なので開けないことにします。

 しばらく歩いていると、前方から黒猫がこっちに向かって来た。

 そして、俺の懐に飛び込んで来たのをキャッチする。


「ロロちゃん、どうしたんだ?猫の姿で城の中走り回って。見つからなかったのか?」


 ロロちゃんと思われる黒猫は前足で口の前にバッテンを作る。猫の状態だと喋れないってことかな。

 まあ、王様には猫の存在は知られてるし、このまま抱きかかえて王様の所へ行くとしよう。


ーーーーーーーーーーーーー


 城の中にはご丁寧に案内板が置いてあったり、張り出されてたり。

 やっぱり迷う人がいるんだろうな。各階の中央に地図も置いてあるし。

 これのおかげで、謁見の間にたどり着くことができた。できたからと言って、王様がいるわけではないのだが。

 見渡す限りだと、人の気配は感じられない。王様だって、四六時中玉座に座ってるわけでもあるまい。諦めて引き返そうとした所に声をかけられる。


「ソード。お主、なぜこんなところにいる?」


「お宅のところの兵士に罪をなすりつけられ、今の今まで檻にぶちこまれてました」


「罪?」


「姫の誘拐と監禁」


 嘘は言ってない。言ってないが、これだけ言うと、俺、すごい犯罪者。


「娘を誘拐だと~?」


「人の話聞いてたか王様?罪をなすりつけられた、ってだけだっつの。たぶんもう保護されてんじゃねえの?」


 あの後に俺は気絶させられて、檻に突っ込まれたので、姫がどうしたかはしらないが。サタン一人なら、まだ俺の家にいる可能性もある。ついてきてるなら、別だが。

 だが、サタンのことを見知ってるはずの、ロロちゃんが俺についてきたってこともあり得る。


「脱走してから、戻ってきたという連絡は受けていないが……」


 やはり、なんらかの方法を使って、ロロちゃんが姫を押さえて、俺についてきたのだ。

 この城内にいないと言うなら、まだ探し回っていて、いるとも思われてない俺の家に滞在してるのかもしれない。


「まだ捜索中か?」


「しても、なぜ姫はわざわざ脱走なぞしたのか。出て行ってもすぐに捕まるのが関の山だろうに」


 あんたが鬱陶しくて逃げたんですよ。

 などとは口が裂けても言えない。

 言ったら俺の首が跳ね飛ばされるだろうし。こう言うのは姫の口から直接言ってもらったほうがいいだろう。言ったら言ったで、俺にとばっちりが飛んできそうな気がする。何、この詰み状態?ならば、俺の口から言ってやるのがせめてもの優しさか。


「実はここに来る前に姫に会ったんですよ。俺は逃亡の手伝いをしたわけですが、逃げてきた理由を聞いたら、王様、あんたが嫌だからと言うのと、学校がつまらないだそうだ」


「それはアリスがそう言ってたのか⁉︎」


「嘘言ってどうすんだよ。まだ見つかってないなら、俺も探してきてやる。それで姫に言ってもらえばいいだろ?」


「ううむ。確かに直に行ってもらわねば分からん。だが、聞いて我はどうすればいいのだ?」


 いや、知らねえよ。姫にどうしたいのか聞けばいいだけの話じゃないのか?

 そんなことを聞いたところで、結論は出ているものだが。

 だが、姫にも選択権などほとんどない。ここから出て行ったところで行く当てなどない。頼みの綱の俺とウィナは旅に出ているのだ。王様だって、知らないところに最愛の姫を預けておくわけにもいくまい。

 姫がなぜ、今日を選んで脱走をしたのかも気になるところだ。俺たちが今日戻ってくるという連絡なんてしてないし、情報が回るはずもない。それこそ、誰かが手はずをしなければ……。

 手はず?

 一つの可能性を俺は思いつく。だが、推測の範囲で、分かったところでどうしたというレベルだ。でも、確認をするだけでも違ってくるか。四六時中ストーカーされてるなんてたまったもんじゃない。

 どこかの誰かと同じように項垂れている王様は放っておくこととし、姫の捜索へと足を向けた。


ーーーーーーーーーーーーー


 城から俺の家まではだいたい徒歩で15分ほどだ。もっと便利な移動手段はないのか?魔法と言わなくても、こう乗り物とかさ。旅はちゃんと徒歩で行くから、街中ぐらいはなんとかしてもらいたい。

 旅で乗り物を使わないのは、どんなモンスターが生息してるかも不明だし、気候によって使えない可能性もある。俺たちよりも小さいのなら、多少なりとも使い用があるが、乗り物を使いながらでは、攻撃はロクにできないのだ。

 だから旅に乗り物は撤廃されたんですね。分かります。労力は無駄に増えてるけど。

 移動方法について頭を抱えていると、腕の中でもぞもぞと動く感触が確認される。

 そういえば、ロロちゃんを抱きかかえたままだった。

 下ろして、自由にしてやる。もっと言うなら、俺の家までは抱きかかえてたほうが良かったような気もする。

 いや、別に他意はないですよ。猫の温もりが気持ち良かったとかないですよ。猫単体でいると危ないからちゃんと、俺が守ってあげようという紳士的精神です。説得力ない?

 路地裏へ入ると、薄っすらと煙が漏れてきた。そこから、ロロちゃんが出てくる。


「って、その姿で出てくるなよ!」


 慌てて、頭の角を隠そうとロロちゃんのローブを頭から被せる。


「わぶっ。何すんの」


「ツノ。さすがに晒しっぱなしじゃまずいだろ。その姿でいたいなら、そうすること。それがいやなら、猫のままでいてくれ」


「別に防具だって言い張ればいいじゃん」


「バレたらことだろ」


「むしろ被ってるほうが怪しまれる。堂々とてれば結構バレないもんだよ」


「ま、いいか。ほら」


「何?」


「手つないで行くか」


「どうなるの?」


「妹を連れて歩いてるように見える」


 もしくは、幼子をちょろまかしてるロリコン。後者はヤバイ。


「他意は?」


「ない」


「即答されるのも腹が立つけど、まあいいや」


 つないだ手はその小さな身体と同じように驚くほど小さい。

 ここまで身長差があると親子みたいな気もする。

 そんなことを思いつつ、少し苦笑する。子供ね……。


「どうかした?」


「んー。いや、俺にも子供ができたらこうやって手つないで歩きたいなってさ」


「ちょっと、子供扱いしないでよ。私だってこっちでは12歳だよ」


「まだまだ子供だよ。あと60年頑張れ」


「こっちで18?長いよ」


「じゃああと30年」


「えっと15か。確か、結婚ができる年だっけ?」


「ああ。そこまできたら大人だよ」


 意外に堂々としてたら、みんな気にも留めないみたいだな。

 時々「あれニート勇者じゃない……?」「あんな小さな子連れて何してるの……?」とか、陰口叩かれてたけど。

 ちゃんと働いてるもん!二日前からだけどさ!この子だって、見た目小さいだけだよ!俺は保護者さ!

 なんて叫んでも誰も耳を貸しやしないだろう。俺の評価は二年でガタ落ちだ。

『何にもしない。ニート勇者』

 事実何もしなかった。己を鍛え上げることも、培ったその腕を役立てることも。力を失ったといえば、誰かが納得してくれただろうか。きっと、納得してくれるのは一緒に旅をしたウィナだけだ。だから、その評価も甘んじて受け入れよう。


「ねー、ソードバカにされてない?普通勇者ってもっとちやほやされてるものだと思ったんだけど」


「今の俺じゃそんなやつは姫ぐらいだよ。昔から変わらず俺のことを『すごい!』って根拠も何もなく褒めてくれるような子だからな」


「ふーん。さっき勇者の家にいた、小さい人?」


「確かに姫も小さいがロロちゃんほどじゃないぞ」


「あんな成長の見込みが見られない人と一緒にしないで!」


 いやあ、姫は背は低いかもしれんが出るところ出てるし、ロロちゃんより完全に成熟してます。女の子って不思議。


「ロロちゃんはロロちゃんで可愛いからそんなケンケン鳴かない」


「鳴いてないもん!」


 ツンデレつうか、駄々っ子だなこれじゃ。

 なだめてるうちに俺の家に戻ってきた。まだ、うちにいてくれてるといいんだが、なんせボロ屋だから居心地はあまり良くないだろう。すでに拠点を変えてるかもしれない。変える拠点があるかどうかは別としてだが。

 ドアノブに手を掛ける。またも、何の抵抗もなく回った。まだいるということか。


「ロロちゃんが帰ったよー」


「普通俺の生還を言うところじゃね?」


 ユルユルな発言をしながら我が家へと踏み入れる。

 居間までたどり着くと、ウィナと姫が互いに顔を背けて、顔を赤くしていた。何があった。


「も、もしかしてお前ら……」


「な、何かな?」


「俺の秘蔵発酵ヨーグルトを食ったな⁉︎返せ!」


「んな怪しげな食物食べるか!いつからあんのよ!」


「あー……かれこれ……4,5……あれ?もっと前か?もうすでにどこにあるかすら忘れた」


「なぜ、そんなものを私たちが見つけて食べたと言う結論が導き出せるのかが不可解よ……」


 なんか作ったような気がするが、どこに置いたかも忘れてしまったので、誰か処理しといてください。ビフィズス菌だぜ。腸の調子を整えてくれると専らの噂。別の意味で腹がピーピー言っても俺知らね。どこに置いたかすらも忘れてるくらいだし。


「ヨーグルトが違うとしたらどうしたんだ?まだ暑くないだろうにそんな顔真っ赤にしてよ」


「いや、暑いのよ」


「倒れるです……」


 そんな暑いかな?まだ夏には早いと思うんだが。


「ソード察しが悪いよ。女の子が二人揃ってこそこそしてたらこれはあれだよ。ソードの秘蔵コレクションを見つけちゃったんだよ」


「いや、再生機械がないし、俺にそんな余裕はないから」


 金銭的な理由と、精神的な理由で。常にカツカツになりつつ、俺はこのままでいいのか?という疑念に苛まれる毎日を送ってきていたのだ。ちなみにこの家はウィナもちょいちょい来てるから隠したところで見つかるのが関の山。

 それ以前になぜ、ロロちゃんはそんな知識を持っている。


「違うのか〜。じゃあどうでもいいや」


「適当だな。あっ、姫」


「は、はい!何ですか⁉︎」


「いや、そんなおっかなびっくり声を出さなくても何もしないから。ちょっと一緒に城に来てくれ。王様が待ってる」


「……ついに許可が出たのでしょうか?」


「何の許可かは知らんがたぶん出てないぞ。残念だったな」


 姫は、残念そうに落ち込む。いったい、何を許可して欲しかったんだ?


「そういや姫についてこいって言われてたのに、こっちがついてきたのは良かったのか?」


 こっち=魔王の娘。

 この街にはちゃんと姫が存在するのだから、アリス姫のほうがついてくるのが道理だ。しかも、サタンのやつは入り口から突っかかってきたから、奥のほうにいたロロちゃんは見えてなかったはずだ。だから、俺は最初は姫のほうがついてくると思っていた。だけど、ついてきたのはロロちゃんのほうだった。サタンは分かっていたのか、確認をしなかったのかどうかは真偽のほどは分からない。


「兵士が来た時に用があるのは私のほうだって分かったから。別に無策に行ったわけじゃないし、向こうが手だししてこないことは分かってたから。まあ、ソードには悪いことしたよ」


「じゃあ、あれが誰だか知ってるか?」


「うん。七大悪魔の悪魔長、サタンだよね?顔は隠れてたけど、気配で分かったから」


 さすがに魔王の娘といったところか。戦闘能力に芳しくなくても、味方の区別は気配でつくとは。


「でも、ソードも何て言って解放してもらったの?あの調子だとソートの首をはねても私を引っ張り出すと思ったのに」


「俺もその覚悟だったけどな。ロロちゃんが望んで俺たちと一緒にいるって言ったら引き下がってくれた」


「あれ?ロロちゃん、さっきの人に姫って呼ばれてたよね?私は、アリス姫のほうだと思ってたんだけど。いきなりソードが連れて来たし」


 ウィナは至極最もな疑問を呈してくれる。俺はこのまま、流されると思ったよ。


「これは……俺から説明していいのか?」


「別にどう説明しても結論は覆らないからいいよ」


 居間の丸机を中心として、円状に座る。両隣には二人の姫。対面にはウィナだ。何だろう、若干ハーレム状態に思えてきたよ。俺にそんな度量は持ち合わせてないけど。


「まず、ロロちゃんが魔王の娘だということは全員知ってるな?」


 二人を見ながら言うと、二人とも頷いた。


「ということはだ、もっとわかりやすく言えば、魔族の王様の娘ということになる。だから、魔族たちにとっては、ロロちゃんは姫に当たるわけだ。俺たちにとってアリスが姫に当たるようにな。だから、さっき来た兵士は魔族であって、ロロちゃんのことを姫と称したわけだ」


「うーん?でも、その兵士も一応この街の王様の配下なんだよね?だったら、姫って言ったら普通アリス姫のほうを指さない?」


「まあ、それも含めて今から確認しに行く。とりあえず、全員来てくれ」


 王様にアリス姫のほうの説明をしに行かなくちゃいけないしな。

 うまいこと行くといいのだが……まあきっと無理だろう。

 最初から否定的だが、脱走した姫がうまいこと取り繕うはずもない。

 憂鬱に肩を落としながら、家の鍵を閉めた。

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