尋ね人
またも、旅路の途中ある人を拾ってしまった。いえ、ローグさんではありません。あの人何してるんだろ?
拾ったのは、自称魔法使い。
まあ、正直な話は役職なんて大概自称だし、俺だって自称勇者(笑)なんて言い方をされても致し方ない。
俺の話じゃなくて、その魔法使いの話だ。
何でも最強の杖を探していたが、見つからず、その途中で面白い文献を見つけたらしく、そちらへシフトしたらしい。
誰だそいつって、何ヶ月か前にミーナちゃんが言ってたミーナちゃんのお兄さんだそうです。
「あはは。まさか、ミーナの知り合いとはね。こんなところで見つかるとは思ってなかったな」
「1度ぐらい帰ろうとか思わなかったんですか?」
「さすがになんの収穫もなしに帰るのはプライドか許さなくてね。まあ、これで2年も帰ってないからさすがに生きてること証明するのに帰らないとな」
「帰るとしたらいつ?」
「今調査してるのが終わったら、何も収穫がなくても帰るよ。そういう君達はいつまで旅を続けるんだい?」
「この子を父親のところへ戻すまでですよ。実際勇者なんて言ってるけど魔王討伐なんかしないし、モンスターだって今はいやしないし」
「そうだね。僕もモンスターがいなくなって調査がしやすくなったよ。もっとも、僕が使う魔法も、モンスターがいなくなってはあまり意味をなさないのかもしれないけどね」
「そ、そんなことないですよ。ミーナちゃんもばあやさんも言っていましたよ。あの国で一番の魔法使いだって」
「2年も経ってしまえば、僕より上の人なんていくらでも出てくるさ。随分、あいつには誇張して言ってしまったからな」
「……なんで、最強の杖を探し求めたんですか?」
「旅に出た頃はまだ、誰にも負けないって自負があったからね。それを持てば、さらに誰にも負けないんじゃないかって。結局、何も見つからなかったけどね。最後の手がかりだ。……そういえば、名前はまだ言ってなかったね。僕の名前はサイド。よろしく」
「それで、その最後の手がかりって?」
「ノアの箱舟って、知ってるかい?」
「ノアの……」
「箱舟?」
俺とロロちゃんで疑問を呈する。
聞いたことがないな。勉強不足なだけかもしれんが。
「ウィナ、解説よろ」
「めんどくさいなぁ。いいけど。ノアの箱舟っていうのは、創成期。まあ、人間が文明を築き始めた頃に悪いことをする人が絶えなくて、ノアって人が人間を排除するために、起こした大洪水があったの。その際に、ノアは箱舟を作って、自分と奥さん。さらに息子家族に動物のつがいを船に乗せて、全て洗い流した。その洪水は40日にも渡り、地上に生きるものは絶滅した。そして、洪水が終わったのを見て、ノアは地上に降りて、祭壇を作って、神様に焼き尽くすものを捧げたの。神様はノアとその子孫たちを祝福して、二度と地上を滅ぼすような洪水を起こさないことを契約して、虹を架けたんだって」
「要約すると?」
「ノアって人が地上を洪水で滅ぼして、自分とその家族はノアが作った船に避難してたってこと」
「ノア、パネエな」
「まあ、昔の宗教にある伝説みたいなものだけどね」
「その船が、近くにあるんですか?」
「出会うにもいくつか条件があるみたいだけどね。今まで発見されてなかったものだけど、これも魔法によるものみたいなんだ」
「昔の人は魔法を持ってなかったから、存在の確認ができなかったってことですか?」
「そうなるね。いわゆる結界の類だけど、僕一人じゃ、結界を解くには少々骨が折れそうだ」
「……どうやって知ったんです?文献に載ってるのなら、誰かがやったってことでしょう?」
「独自の調査だよ。これでも、結構そういう方面に長けていてね。まあ、父の影響も受けてはいるけど。……そういえば父には会ったかい?」
「ええ。クエストの依頼主でしたので」
「まあ、割に募ってるからね。おかしな話ではないか。研究職だけど、自分の足で、未開の領域に行くことも多いんだ」
「……あの、申し上げにくいんですけど」
「どうしたんだい?よそよそしいな」
「その……お父さん。リーチェルさんは研究職を辞めたそうです」
「え?どういうことだい?」
「ここからは信じるかどうかはご自由ですけど、悪魔ってご存知ですか?」
「空想上のモンスターではなかったのか?」
「ええ。魔王の手先として、動いてたわけですが、全部で7体いて、そのうちの1体がリーチェルさんと契約を交わしてたんです」
「なぜ、父が……」
「ミーナちゃんと会うのが辛かったからだそうです。知らなくてもいい領域を知られてしまうことが怖かったんだそうです」
「それで……父は?」
「悪魔は俺たちが消滅させました。研究職を辞めて、これからはミーナちゃんと一緒にいるためになるべく近くに居られるような仕事をするそうですよ」
「そうか……僕がいない間に抱え込んでいたのか」
サイドさんは、一呼吸置いて、再び話し始める。
「うん。なら、これを終えたら帰って顔を見せよう。怒られるかもしれないけどね」
「……ソードはいいの?」
「あん?何のことだよ?」
「前の旅が終わってから王様経由で報酬を渡したんだし、その後は一人暮らしの挙句に私の家に転がり込むし、会いに行かなくていいのかなって」
「知らせがないのは元気な証拠だと昔かいうらしいからその方がいいだろ。しょっちゅう顔を合わせてるとうちはどちらもうんざりするタイプなんだ」
「面倒な幼なじみだ……」
「あ、あそこじゃない?」
ロロちゃんが指を指す。
確かに街が広がっていた。しかし、こんなところに街があったんだな。海の近くは危険だと聞かされてたから、以前行ったような、砂浜しかないような場所ばかりかと思っていた。
「ここも数年で出来たところみたいだからね。モンスターが出なくなったって証拠だろう」
「ここにあるんですか?それに、そんなデカイものなら、すぐに見つかりそうっすけど」
「かなり強力かつ特殊なようだからね。それに空を飛んでいたらしい」
「空を?」
見上げてみるが、特に異常は見当たらない。強いて挙げるなら、もうすぐ雨が降りそうなぐらいか。
上を見てたら、頰に何か当たった。
そして、ポツポツと降り始める。
「降ってきたね。急ごう。こんなところで雨に当たって風邪引いたなんて笑い話にもならない」
みんなして街へと走り出す。
だが、一人だけ、その降り始めた雨の中に佇んでいる。
「ウィナ、風邪引くぞ」
「え?あ、うん。今行く」
何かを見つけたのだろうか。
ウィナが見つめていた方向に向けてみるが、厚い雲が覆ったままで何も見えなかった。




