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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
114/145

勝利の余韻

「ん……」


 眠りから目を覚ました。

 眠りというより気絶をしていたわけだが。

 マジで死ぬかと思った。

 場所は、テントを張っていた洞窟内で、介抱はロロちゃんが珍しくしてくれていた。いつも、ウィナがこういうのは役割だったんだけどな。


「起きた?」


 ロロちゃんが今にも泣きそうな顔をしていた。

 でも、ここにいるということはサタンに勝ったんだろう。俺は、ロロちゃんの頭に手を乗せて撫でてやる。


「頑張ったな。ロロちゃん」


「うん……私、頑張ったよ。あと、これ、アリスが見つけたんだ」


 そう言って差し出したのは、俺の力の欠片。戦いの根本とでも言えるパワーのようだ。


「ありがとな。ちょっと、まだ起きれねえから、アリスに後で礼言っとかねえとな」


「ソード、実は3日ぐらいこのままだよ?」


「マジかよ。じゃあ、ウィナもとっくに起きてるか」


「うん。まあ、さすがに病人明けを使うわけにはいかないから、私とスターで変わりばんこでやってたけど」


「アリスは?」


「ウィナの監視役。私がやるって聞かないから」


「なるほどね」


 ただ、3日経って目覚めても俺は動けないのか。結構なダメージ負ってんだな。こんなのはいつ以来だろうか。

 戦いには勝利したが、俺自身は負けたんだ。

 俺が弱かったから。


「というわけで、魔法はどうにもならんから、空を飛びつつ戦う方法を模索しようか」


「絶対に魔法を覚えたほうが早そうだよ。それ以前にもっと凹んでるかと思ったら、案外ポジティブだね」


「俺が弱いのなんて周知の事実だからな」


「羞恥の事実?恥さらしってこと?」


「しゅうちが違う」


 ある意味恥さらしな気もするけど。誰がうまいことを言えといった。


「っ……」


「まだ痛む?」


「ああ……動けないのはこれが一番大きいな」


「でも、かといってウィナを使うわけにもいかないし」


「まあ、筋肉痛みたいなもんだろ。2、3日すれば普通に動けるさ」


「さっさと、こんな寒いところから脱出したいんだけど」


「すいません……」


 もう一度エルフの里に身を置かせてもらえないだろうか。

 あれだけ大見得を切った手前戻りにくいことこの上ないけど。


「あ、どうもです。四日ぶりです。フィアです」


「何しに来やがったこのアホ」


 唐突に現れたのは、早々に逃亡して里に帰っていたと思われたフィアだった。


「いえ、もちろん帰りましたよ。ですが、反応が未だに残ってたのでまた使いっ走りに出されたわけです。ひどい話ですよね」


「どうでもいいが、妖精は回復魔法を使えるか?使えるなら俺を動ける程度までに回復させて欲しいんだが」


「あれあれ?勇者さん負けたんですか。無様にも」


「喧嘩売ってんのかてめえ」


「だって、そこのお嬢が起きてるとこ見れば、あなただけボコボコにされたようにしか見えないですよ」


「ウィナは動けなくてここで待機。スターは間抜けにも悪魔の檻に捕まった。アリスは俺の力の欠片を探して、結果的に戦ってたのは俺とロロちゃんだけなんだよ」


「なるほど、お嬢は健気に戦って勝利を収めたというのに、勇者さんは悪魔に打ちのめされたと」


「だから、お前、俺のこと嫌いだろ」


「仲良くする義理もないですから。ですが、いるなら丁度いいです。皆さん集めてください」


「動けないって言いませんでした?」


「喋れるぐらいなら大丈夫です」


「お前が行ってこーい‼︎」


 ロロちゃんが妖精を引っ掴み、テントの外へと追い出した。

 なんか乱暴になってません?

 元気なのはいいことなのだが、暴力属性がつくことをお兄ちゃんは許してませんよ。


「誰がお兄ちゃんだ、誰が」


「前にお兄ちゃんって言ってくれたじゃん」


「あれはノリだから」


 とか言ってるうちにぞろぞろテントの中に入ってきた。

 てか、邪魔だな。フィアは小さいからいいとして、5人もいられるようテントではない。


「元々二人ぐらいのやつを三人で使ってて狭いぐらいだしね」


「兄さん、もっと向こうに行ってください!私が狭いです!」


「僕だってこれで精一杯なんだ我慢してくれ」


「私がウィナの上に乗ればいいよ」


「それ、どういう妥協案?私、了承してな……もう」


 抗議する間も無くロロちゃんはウィナの膝の上に収まった。この場合はスターの上の方が良かったんじゃないですかね?位置的に遠かったのもあるかもしれないけど。


「では、始めましょう」


「狭いんだから早くしろよ」


「え〜っとですね……なんだったか……ああそうです。こんなものが」


 どこから取り出したか分からないが、手紙のようなものを俺たちの前に差し出した。

 俺は受け取れないので、代わりにスターがそれを受け取る。


「まあ、私の用はこれぐらいです」


「ついでに俺を回復させて」


「それなら私が……」


「「ウィナ(ちゃん)は休んでて‼︎」」


「うう……」


 2人に止められて、しょんぼりしている。世話焼きなのはいいことなのだが、どうにも無理しすぎる傾向があるからな。こうやってストッパーがいるのはいいことだ思う。


「まあ、そのままデカイ体が横たわってても邪魔くさいのでやってあげましょう。ジッとしていください」


 体が小さい分、出力できる魔法の量は少ないようだが、回復してくれる分はありがたい。

 少々、時間がかかったが、なんとか体を起こせるレベルには回復した。


「はあ……疲れました。何してこんなにダメージを負ってるんですか」


「ちゃんと戦ってたんだよ」


「まあ、後私にできることはないので帰ります。お疲れ様です」


 お疲れなのは向こうのようだが、長居する必要もないのだろう。

 フラフラと飛んでいく妖精を俺たちは見送った。


「で、何が書いてあるんだ?」


「急かさないでください。今から読みますので」


「でも、なんで妖精の里に来たんだろう?」


「それも含めて書いてあるだろ」


 スターが読み上げていく。

 というか、ほとんど書かれていないらしい。

 情報といえば、この雪国を抜けて、西へと進めとのことだ。


「で、結局誰からだよ」


「セド・ギルフォードと書かれてます」


「またあいつか!何度も何度も‼︎」


「深く追求するだけ無駄というものですよ。では、片付けて出発しましょう」


「寒いから、もう少しここで温らせて」


「己はいい加減出て行け」


「きゃん」


 よく考えれば、ウィナたちのテントで寝かされていたのだ。背負ってきたのがアリスだからと考えれば妥当なところというか、俺たちのテントよりこちらのテントの方が若干ながらに広いのだ。色々都合が良かったのだろう。

 そこから追い出されたわけですが。


「さ、寒い……」


「動けばマシになりますよ」


「せっかく悪魔に勝ったんだし、もう少し休息を取らせてくれ」


「祝勝会はあなたが寝てる間に終わりました」


「なんで俺が起きてからやらねえんだよ‼︎」


「いえ……正直起きてからも無様に負けたというのに、堂々と入り込めるかどうかということになりましてね」


 微妙に気遣いされたが、そもそも檻に捕まって何もしなかったこいつに言われたくない。


「というのは、冗談で特に何もしてませんよ。そもそも祝勝会ができるような状況でもありませんし」


 俺と喋りつつもいそいそと片付けを進めていく。手際いいなこいつ。おかげで、俺の安住の地は全てなくなった。


「寒い……」


「何度目ですか。なんだったら、女子達の方を手伝ってきてはどうです?」


「それだ!よし、行ってくる!」


「……目がギラついてたけど、まあ、あの人が期待するようなことは起きないだろうな……」


 後ろでボソっと聞こえたが、俺は女子のテントへと直行した。


「あたっ!」


「でっ!」


 そして出会い頭にロロちゃんとぶつかった。なんかデシャヴを感じる。


「なんでソードがここにいるの!」


「いや、向こうスターがすぐ終わらせちゃったから一応手伝いだよ」


「本当……?」


「ホントホント」


「あ、ソード。ちょうどいいや。テント、片すから手伝ってくれる?」


「うん……分かった……」


「……なんでこんなに元気ないの?」


「期待してたことが起きなかったからじゃない?」


「?」


 やはりラッキーイベントは持つものが起こせる奇跡なのですね。

 前に使ったから、尽きてるのでしょうね。あれは常時発生型ではなかったのか……。


「なんかものすごく失礼なこと考えてない?」


「ないない」


「ソードの妄想は置いといて、ここからその指定されたところまでどれぐらいかかりそう?」


 妄想でひとくくりにされた。しかし、反論する言葉もない。仕方ないので、こちらも黙々とテントを片付ける。あ〜寒くて手がかじかむ。


 ガッ


「だっー‼︎」


「うるさい!テントぐらい静かに片付けれんのか!」


「だって……挟んだ……」


「さっきまで死ぬギリギリの怪我をしていたやつの吐くセリフではないね……」


「てか、お前こそジッとしてろよ。アリスにでも任せて」


「アリスに任せられる?」


「あ〜」


「納得しないでよ‼︎私だってこれぐらいできるから!ウィナちゃん代わって!」


 ガッ


「痛い!」


「ほら、言わんこっちゃない。女の子が嫁入り前からほいほい傷ついちゃダメだよ」


「うう〜。ウィナちゃんだってそうじゃん」


「私は失敗しないから」


「てい」


 バチン


「痛い!」


 三者三様に指を挟んだ模様。これ、地味に痛いのだ。


「わざとやるんじゃない!」


「ちょっとドジっ子の方がソード君だって好きだよ」


「……いや、怪我をしないことに越したことないからな。あと、見え見えなのはいただけん」


「だ、そうだよ」


「誰に確認を取ってるのか……」


 ドジっ子とか、見ててヒヤヒヤするからな。こっちの神経すり減らしながら付き合うのは精神的に辛そう。


「あ〜そういえば、ここから目的地までどれぐらいかかるかだったな」


「あ、忘れてた」


 自分で質問して忘れてるんじゃないよ。

 で、まずはこの雪国を抜ける時間だが、入って間もないぐらいだから半日もあれば抜けれるだろう。

 で、また西に戻るのか。メンドくさ。


「地図を見る限りでは、また海岸辺りのようですね」


 なかなか終わらない俺たちを見かねたのか、それとも待ってるのに飽きたか、スターはこちらへと来て補足を加えた。


「ここからなら2週間程度で行けるだろ。アクシデントがなければだが」


「何があるんでしょうね?」


「あいつが何をさせたいんだか分かんねえけど、セドが行った先でいないことを祈る」


「強いらしいですし、手を貸してもらうのは?」


「ぜっっっったいにない」


「そこまで強調することですか……」


「ソードにとって、あの人若干トラウマになってるみたいだから……」


 器用にテントを片付けながは、ウィナが説明する。

 散々説明する際に虚ろになるから、詳しく説明する必要もないだろう。


「とにかく。行った先で、あいつがいようといなかろうと力は借りない。いいな」


「う〜」


 ロロちゃんが地図をくるくるさせている。


「ここが北だよね?」


「そうだな。俺たちがいる位置だ」


「じゃあ、こっちが東?」


「まあ、そうだな」


「じゃあ、ソードたちの国ってどこ?」


「あり?東じゃなかったっけ?」


「いや、修道院が東よりにあるってだけで、私たちの国は南だよ」


「初耳」


「自分の国の位置ぐらい知っときなさいよ……よし、これでおっけ。みんな、あったかい格好した?」


「俺だけ寒い」


「我慢しろ」


 みんなと大して格好は変わらないのだが、寒い。動いても大した効果は得られなかったようだ。

 とりあえず、眠くならないうちにこの雪国を抜けよう。

 俺は、欠片と呼ぶには少し大きめの塊をポケットに突っ込む。

 こんだけデカイとウィナの負担が大きそうだからな。今、やらせるわけにもいかない。


「ソード、何やってるの?行くよー」


「ああ」


 吹雪が少し止んだのを見計らって、俺たちは洞窟を抜け出し、雪原に踏み出した。




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