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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
112/145

戦う意義

 安全区域に置いてきたとはいえ、ウィナをひとりぼっちにさせているのは申し訳なく感じる。

 何もかも、空気読め男が勝手に引っ張り出して戦えとか言ってくるからだ。


「というわけで俺はとても怒っています」


「これが欲しくないのか」


 どこから取り出したか知らんが、俺の力の欠片が入っていると思われる巾着袋を取り出した。


「そんなもんを大事に持っているとは、お前は俺のこと大好きか」


「言われたことを忠実に守っているだけだ」


「魔が差して捨てちゃったってやつもいたらしいけどな」


「問いただしたいところだが、そんなところに労力を使う必要性もあるまい。ただ、倒して終わりというのはいささかつまらんな」


「何する気だ?」


「宝探しといこう。今から私が適当なところにこれをぶん投げる。見つけ出した方の勝利だ。無論、見つける前に競争相手を倒すのは常套手段だな」


「よし、やるぞ。今すぐやるぞ。さっさとやるぞ」


「何故かすごいやる気ですね」


「お前達三人で探してくれ。サタンは俺が足止めする。見つけたら、援軍頼むぜ」


「思えば圧倒的に不利だな……」


 地味に落ち込んでいる。なら、なぜ提案した?悪魔は馬鹿ばっかりか?サタンだけはまともだとロロちゃんから聞いていたのに、この体たらくだ。だが、俺はそんなことに考慮して戦力を減らすなどという愚策はしない。

 唯一の愚策といえば、俺が単体でサタンとやり合うとしているところだが……。

 根本的に悪魔長といったものの戦闘能力がどれぐらい優れているのかとかはよく分からない。

 ちゃんと戦ったのって結局のところ2体だけだしな。

 それもほぼ俺の力が欠けている状態だ。

 今は、ほぼ万全の状態である。そして、さっき戻ってきた力は、サポート。みんなと協力するための力だ。

 あれ?この戦い方において一番必要ねえじゃん。


「し……しくった……。ロロちゃん!作戦変更だ!俺の支援頼む!」


「どうしたの急に」


「まだ戻ってない欠片が二つある。それが、パワーと固有スキルだ」


「こゆう……スキル?」


「例えば、俺みたいに剣を使うやつならどれだけ上手く扱えるかみたいなものだな。熟練度ともいえるが」


「私なら杖が上手く使えるかみたいなもの?」


「そ。パワーとそれが俺には欠けている。そして、先程ウィナに戻してもらったのはサポート。いわゆる協力する力だ。俺一人で戦ってても何の意味もない力だな」


「だから、私を連れてきたと」


「今ここにちゃんと連携が取れることを証明したいと思う」


 そもそも一人でやろうなんてことが傲慢だったのだ。悪魔で最も実力があるとされるサタン相手に一人で立ち向かうということ、それが愚策だった。

 でも、一人より二人。その方が強いに決まってる。


「さて、やろうか」


「……私としてはあまり姫様とやりたくはないのです……が!」


 スターとアリスが走っていった方向に何かを投げつけた。

 だが、二人はサタンに背を向け走ってるためそれに気づかない。


「スター!アリス!後ろ‼︎」


 叫ぶがその声が届いているのか。

 そう思ったが、スターの方が気付いて振り返った。

 何をサタンが飛ばしたかと思えば魔法で作った檻のようなものだった。

 スターは逃げ切るのは無理だと考えたのか、アリスだけ押し出した。


「に、兄さん!」


 大した音は鳴らなかったが、スターだけがその檻にとらわれ、アリスはその檻に駆け寄る。


「いたっ」


「無理をするんじゃない。それは私の魔力で作った特別製だ。出ることも壊す事もたやすくできることではない」


「アリス。別に今何か異常があるわけじゃない。先にソードさんの力の欠片を探すんだ」


「う、うん」


 駆け出すアリスの姿をサタンは見つめている。

 そして、ため息をつくように言葉を出した。


「……さすがに、二人一緒に捉えることはできなかったか。まあ、いいだろう。一人ならすぐには見つかるまい」


「お前も大概やること汚ねえな……」



「4対1なんだ。これぐらいは許してもらおう」


 今現在、3対1に戦力減りましたけど。

 戦う分には2対1だけど。


「で?お前も飛ぶのか?」


「なんの話だ?」


「上級モンスターは飛んでるって話だね。翼生やして」


「それなら私も可能だ。残念ながらあの城まで飛ぶことは不可能だが」


「飛ぶとして、あの城まではどれぐらいかかるんだ?」


「半日……まあ、12時間ぐらいだろう。さすがの私もそこまでの体力がない」


「飛ぶのって体力使うんだな」


「まあな」


「じゃあ、今飛んでるのも非効率な話じゃないか?」


「そうだな。一旦降りよう」


 降りるのにも急降下ではなく、ゆっくり降り立つようだ。


「今だ‼︎ロロちゃん‼︎」


「え?何を?」


「今こそ意思疎通してくれよ!」


 まったくの連携の取れなさに涙することになった。

 降り立つ時とか一番攻撃チャンスじゃん。俺たちはそのチャンスを逃してしまったぞ。


「何をコントしているんだ」


「ええい!特攻じゃ!ロロちゃん後は頼むぞ!」


「ちょっ、ソード⁉︎」


 剣を振りかぶって、サタンに向かって走るが、いかんせん下が雪が降り積もっていたことを忘れていた。

 足が取られて走りにくい。

 だが、それにも負けず、サタンに向かって走る。

 動きにくいのは向こうも同じはずだ。


「うおおおおお‼︎」


「無駄に威勢はいいな。だが、どれだけ優れた剣を持とうと、それが届かなければ意味がないだろう」


「ぐあっ」


 魔法を放たれて、俺に直撃する。

 そうか。向こうには、その場から移動せずともこちらを攻撃する手段があったんだ。

 俺はアホか。


「すいませんでした。アホでしたので、しばらく横たわってます」


「そんな悠長なことをさせるか!起き上がれ‼︎」


「ぐほっ!」


 さらに魔法を追撃させて、俺を吹き飛ばした。

 そりゃ、そうだわな。格好の的を攻撃せずに放置してるわけないよな。

 無様にロロちゃんのところまで転がされる。


「大丈夫?」


「正直辛い」


「なぜ、わざわざ特攻したのか。ソードの射程距離短いのに」


「向こうが魔法を使うことを考慮していなかった」


「バカだね」


「バカでした」


「姫様、そこにいると当たりますよ?」


「やってみなよ。そうやってるうちに負けるよ?」


「言いますね。なら!」


 ロロちゃんもろとも攻撃しようとする魔法を放つ。


「負けないもん!」


 詠唱しながら、氷の結晶を作り出す。だが、詠唱なしで魔法を放てるサタンにそのスピードで叶うはずもなく、発動前に攻撃を受けて魔法は途切れてしまう。


「ゲホッ」


「やれるか?ロロちゃん?」


「ソード……うん」


 身を挺したお陰でロロちゃんへ直撃は免れた。俺へは直撃してるけど。

 無駄に強えな。

 あの位置から一歩も動かずに俺たちを圧倒している。

 だからこそ、ウィナが今までいかに俺たちをうまく動かしてくれていたかを実感する。

 攻撃の要がいないから、こちらの攻撃にリズムが作れない。

 何か突破口でもあればいいのだが……


「正直、こちらの戦力が不足してるのは否めないな」


「ウィナがいないだけで大幅にダウンしてるもんね」


「あいつ万能だからな」


「だからこそ、私たちだけで戦えるようにしないと」


「あいつに頼りっぱなしも、勇者としての名が泣くぜ」


「そういえば、勇者だったね。その設定を忘れてかけてたよ」


「正直、敵から言われてる方が多いような気がする。味方から言われないと、俺本当に勇者だっけ?みたいなことになってるよな」


「何をごちゃごちゃ言ってるんだ。まだ終わってないぞ!」


「まず、あいつを動かすことだな」


「そうだね。とりあえず、私たちも移動しよう」


 二手に分かれて、回り込むように移動することにした。

 そうすれば、まず、サタンは俺を追撃してくるだろう。それならば、俺の方向を向きざるをえない。

 そして、そうなればロロちゃんの方は死角になる。ただ、そう都合よくいけば、の話だが。


「ふむ、考えたな。だが、勇者。お前はまた一つ見落としている」


 何をだ?

 と思ったら、再び飛び上がった。

 ああ、そういえばそうでしたね。あなたたち飛べるんですよね。ズルいわちくしょう。

 ただ、飛ぶことで体力を使う、ということは、あの城まで12時間ということも鑑みて、そこまで保たないとは言っていた。

 俺たちも攻撃しつつ、かつこの気候だ。そこまで長く飛び続けることは難しいだろう。


「ちくしょー!飛ばれたら攻撃届かねえんだぞ!降りて戦え!」


「なぜ、わざわざ相手の土俵に降りて戦わなければならないのだ。お前はアホか」


 なんで、どいつもこいつも飛んで戦いやがる。

 俺に飛ぶ手段なんて持ち合わせていないし、遠距離攻撃はできない。

 だが、一撃ぶち込めば、そのダメージは大きい……はず。

 前回はそこまで飛ぶことが得意でなかった海竜とだったが、あの時はアリスが弓で、あと雷魔法で効率よく弱点を突いていたのも大きかっただろう。


「ふむ……弱点か」


「なんか思いついた?」


「悪魔なんだから、全般的に光の魔法が効きそうだな」


「誰も使えないでしょ」


「うおリャァー!」


「ちょっ、何してるの⁉︎」


 半ばヤケクソに剣を投げたが、まあ届くはずもなく、数メートル先に突き刺さった。


「何がしたいんだ……」


 ううむ。相手側にも飽きられてしまった。

 これが届かないとなるといよいよ俺に攻撃手段がない。他に弱点は……

 近くにいたロロちゃんを見る。


「な、なに?ジロジロ見て」


「弱点見っけ!」


「きゃ、きゃあ!」


 とりあえずロロちゃんを抱き抱えて、肩の上に乗せる。


「降ろせバカ‼︎」


「暴れるな。余計に危ないぞ」


「これでどうするの……」


「これで、サタンは下手に攻撃でき……ぐわっ!」


 気づかないうちに魔法が飛んできて、吹き飛ばされた。


「やっぱりバカでしょ」


「……仕方ない。俺が盾になってるから、届くまで、サタンの羽を集中的に攻撃するんだ」


「ウィナみたいに命中精度もないし、威力もないし、魔力も少ないよ?」


「何もかもウィナに任せてちゃだめだろ。あいつがいなくても俺たちはやれること証明しないと」


「う、うん。やってみる」


 おおよそ、サタンも俺たちが見えて攻撃がしやすい位置に滞空しているのだろう。

 ということは、そこまで離れてもいないため、俺たちにも攻撃手段はあると言える。

 ロロちゃんは詠唱を始め、氷の結晶を再び作り出す。

 簡単に羽に傷を負わせるなら、これが一番攻撃手段としては最適だろう。

 だが、果たしてそれがどれぐらい当たるのか。

 相手は、以前のようなただの的ではなく、動くのだ。

 そして、休む間も無く、サタンは魔法を繰り出してくる。

 そりゃ、向こうとしては早めに終わらせないと宝探しどころでもないからな。あからさまに適当に投げてたし、どこに落ちたかも分かるまい。

 アリスも探すのに難航しているようだ。

 俺は、サタンの魔法がロロちゃんに直撃しないように凌いでいる。

 なんとか、ロロちゃんが魔法を放つまでは保たないと。

 そうこうしているうちに、ロロちゃんが一発目を放つ。

 一発といっても、それが大量にあるが、サタンはどう出るか。

 氷の結晶が一直線に向かう。

 サタンは、そのスピードを予測していなかったのか、もしくは量を予測していなかったのか、モロに直撃していた。


「やりますね。姫様……」


「むぅ。わざと避けなかったでしょ」


「言ったでしょう?どれぐらい成長しているかも見たいと。この分なら良さそうですね。ギアを上げますよ」


 羽に傷こそついたものの、まだ余力はありそうだった。

 サタンはギアを上げると言った通り、先程とは段違いの魔法を繰り出してくる。

 俺たちはそれに成す術なく、食らってしまう。


「ぐ……う……」


「はぁ……はぁ……」


「こんなものか……勇者よ。お前は、なぜ戦う?そこまで傷だらけになって。勇者だからといって、別にお前が身を挺して戦う必要もないだろう」


「約束……したから……」


「ん?」


「あいつと約束したから……俺が守るって。だから……俺は剣を取る。お前に負けてるようじゃ、俺は……あいつを悲しませちまうから……」


「涙ぐましいな。だが、まだ力が足りん!」


「ぐあっ!」


 すでに、サタンは見切りをつけて地上へと降り立っていた。

 剣を握ろうにも、手に力が入らない。

 腹ばいの状態をさらに蹴り上げられ、その場にうずくまる。

 これじゃリンチだな。

 これなら、俺じゃなくて、スターとアリスを置いておいたほう勝率はあったのかもしれない……。

 でも、俺はそれでもこっちを選ぶのだろう。あいつらを傷つけたくないから。傷つくのは俺だけで十分だ。

 だけど、結局、ロロちゃんも傷つけちまった……。ダメだな……俺。何やってんだろ……。


「まだ、やるんじゃないのか?」


「…………」


 声が出てこない。冷たい地面の上にさらされ、体温が下がっているようにも感じる。

 まだ、出来るはずだ。

 でも、その力が湧いてこない。

 立ち上がるための足が震えている。

 よほど、ダメージを食らってしまったようだ。


「ふん。私も、宝探しをしてこよう。何、案ずるな。止めはささん。しかし、この気候ではすぐに力尽きるかもしれんがな」


 サタンはそういって、三たび翼を広げ、俺の力の欠片を探しに入った。

 あのままじゃ……アリスが……。

 ……立てない。

 そういえばロロちゃんは……


「…………」


 雪の上で座り込み、放心しているようだった。無理もない。

 また、何もできなかったって、自分を責めるんじゃないだろうか。

 それはよくない。

 足を引っ張ったのは俺だ。ロロちゃんはよくやってくれた。


「ロ……」


 声をかけようとしたが、その声も掠れて、雪の中に吸収されてしまう。

 だが、聞こえたのかロロちゃんは俺の方を向いた。

 その顔には涙が伝っていた。

 なんで、泣いてるんだよ。大丈夫だから。俺は、大丈夫だから。

 アリスを助けてやってくれ。

 俺はそう口を動かす。だが、無論声は出てない。

 ロロちゃんは俺の方に近づいて、俺に抱きつく。


「ゴメン……ソード。また、ダメだった。私、弱いままだ。こんなんじゃ、誰も助けられないよ……」


 俺は涙をぬぐってやろうと、腕を伸ばそうとするが、挙げきる前に、地面へと落ちてしまう。まったく、誰だよ流したのは……。

 だったら、せめて笑ってやろう。俺は大丈夫だって。

 上手く、笑えてるかはわかんねえけど。


「バカ……ソード。お願いだから死なないで……」


 酷い顔だなロロちゃん。

 俺はまだ死なねえよ。それともそこまでボロボロか?体も芯まで冷え切っちまってるか?


「私がもっと強かったら……もう……守られてるばっかりは嫌だから……‼︎」


 ロロちゃんは手で力一杯涙を拭った。

 その言葉は涙声ながらに力強い。

 別に今強くなくたっていい。

 もっと、これから一緒に強くなっていこう。

 ……いや、ロロちゃんは今、この時強くなくちゃいけないんだろう。だから、今の無力さに吠えているのだ。

 だけど、今の無様な俺にロロちゃんのために何ができるだろう。

 そう考え、ロロちゃんの手に触れた。なんとか、それだけの力は残っていた。


「ロロ……ちゃん?」


「え?」


「せ……なか……」


 確かに、俺の瞳はそれを捉えていた。

 ロロちゃんの背中にサタンと差はない翼が生えているのを。

 そういえば、生やすこと自体はできるけど、飛ぶことはまた別問題だと言っていたな。

 飛べるのだろうか。その羽で、この雪の舞う空を。


「……ソード。剣、借りるよ」


「…………」


 声が出なかったために、頷くことで肯定の意を示した。

 ロロちゃんは、空高く舞い、その姿は悪魔などではなく……やはり、魔族でもない。

 やっぱり、ロロちゃんは天使なのだろうと、背中に生えた雪色に染め上がった羽を見て、思っていた。







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