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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
110/145

報告

 一足先にウィナたちが戻って報告を終えたとのことだったので、俺とロロちゃんは戻るなり勝手に寝てしまったが、当事者の俺たちでないと分からない部分がいくらかあるとのことで、早朝に起こされてしまった。


「何をやってるんじゃ己は‼︎」


「ウィナさんや。君は昨日のことは知ってるだろ」


「ここまで堂々とされると逆にムカついてくるからソードのみに八つ当たりをしてみた」


「だから、もう少し寝かせてくれ」


「会話が繋がってないから!早く起きて報告して来なさい!その後寝ればいいでしょうが!」


「しーしー。ロロちゃん起きちまう」


「起きて欲しいんだけど」


「おーい。ロロちゃーん。朝だぞー。早く起きないとウィナがキャメルクラッチ食らわせるって」


「きゃらめ〜る……」


「どうやら、技の名前だってことを知らないみたいだな」


「それ以前にロロちゃんにやらないから。しかも、ロロちゃんお菓子だと思ってるよ」


 確かに似てはいるが、一文字違うだけで全くの別物だからな。しかも、ロロちゃんまだ寝ぼけてるし。


「あ〜もう、よだれ垂らして」


 近くに置いてあったティッシュを使って、垂れてる部分を拭き取ってあげる。


「なんだろう。なんとなくお母さん的な感じ」


「気持ちは分かるけどね。ロロちゃん母性本能をくすぐる塊みたいな感じだから」


「男だから父性か」


「父性本能ってなに?」


「ひたすら愛でたいと感じることじゃね?」


「いいからとにかく起きなさい。ロロちゃんは背負ってって。布団は私が片しておくから」


「ああ!寒い!布団プリーズ!」


「とっとと行け!」


 結局、再び寝ることは叶わず、布団は持って行かれた。ロロちゃんは俺の背中でまだスヤスヤ寝てるけど。


 ーーーーーーーーーーーーー


「え〜この度は寝床を貸してくださりありがとうございます。つきましては……」


「そんな社交辞令はいらん。何があったかを簡潔に話してもらいたい」


 どうやら、エルちゃんの援助なしでも会話が成立するようになったらしい。何があったかと聞きたいが、キャラ作りだったんだろうなということでここに留めておく。


「まず、悪魔のことだな」


「うむ」


「いつからいたか知らんが、数がいれば悪魔を撤退させることぐらい簡単だっただろう。だが、それはしなかった。長老、あんたは正体を知っていたからだ。自分の娘だと」


「やはりか……消滅したことはすでに知っておる」


「腑に落ちないのが、俺は過去を見てきた。信じる信じないは自由だが、あの時、エアリスとその娘を襲ったのは誰だったんだ?」


「……元婚約者じゃ。エアリスはその婚約者のことを好いておらんかった。気付いたのは、エアリスが死んでからじゃったがな。娘がいることも知っておったよ。その元婚約者は子まで憎かったんじゃろうな」


「…………」


 さすがにここに来るまでにはロロちゃんを起こしたので、今は手を繋いで隣にいる。

 その繋いだ手は少し力がこもっていた。


「で、その子がエアリスの娘か」


「だから、あんたの孫だ」


「……まあ、邪険にして今更おじいちゃんなどと呼びたくもあるまい。それに、一緒にいたいのは他にもいるじゃろう」


「……ママは」


 ポツリと言葉を落とす。


「私は、ママの意志を継ぎたいと思う。私は純血のエルフじゃないけど、それでも違う道を歩めることを証明したいと思う」


「……儂からはとやかくはもう言わん。一つ言っておくなら、もうここへは近づかんほうがいいじゃろう。もっとも、来る方法自体がないかもしれんがな」


「いいよそれでも。でも、風の便りで私の名前を聞くぐらいには轟かせて見せるから」


「そういえば、名を聞いてなかったな」


「ロロ。ロロ・アークハルト。年齢不詳です」


「なんで歳を知らないんじゃ……」


「ママなら知ってかもだけど、聞きそびれたし、パパは行方知れずだし。そもそも、エルフがどういう成長曲線を描くのかも知らないし」


「ピークは人と変わらんよ。ただ、そのピークが永く、衰えが遅いんじゃ。魔族がどうかはわからんがな。詳しい年は父親に聞くといい」


「他に何か聞きたいことある?」


「悪魔は……もういなくなったってことでいいんじゃな?」


「正確にはもう後2体いるけどな。聞いた話だと、悪魔はエルフの亜種だとか?」


「そもそも数が絶対的に少なすぎる。突然変異と言ってもいいかもしれん。エアリスのようなのは特例だがな。で、残っているものの名は知っているか?」


「さあ?一人はサタンって悪魔の長だが、もう一人はどんな奴かもわかんねえな」


「まあ、ここに影響がないのなら構わないが。して、ロロよ」


「ふわぁ〜……ん?」


「人と話してるときに大きな欠伸をするでない……それは、後々に何処かの誰かに直してもらうとするか。色々あったが、すまなかった。祖父であるにも関わらず、娘を受け入れず、挙句、孫にも非干渉のまま今日まで来てしまった。後悔ばかりだ。だから、ロロ。君には後悔のないようにこれから生きてほしい」


「ご心配なく。私、結構自由にやってるし、ソードたちと会ってから、毎日楽しいよ。まだ、短い時間だけど、ずっと続けばいいなって思ってる」


「そうか。……人と触れ合うのも悪くない選択なのかもな。もう、儂には遅いかもしれんが。……言われるまでもないと思うが、勇者よ。ロロのことを頼んだぞ」


「あっちからもこっちからも頼まれんな俺。いいんだけどよ。最初に会った時から、厄介ごとは全部引き受けるつもりで一緒にいんだから」


「……お主のような人間が勇者でよかったと、儂は思うよ。では、報告ありがとう。出て行くときは儂も見送らせてもらおう」


「サンキューな。じいさん」


 ーーーーーーーーーーーーー


 見送りはフィアとエルちゃん。そして、各長老の計四人というなんとも寂しい見送りだった。

 全く、ビクビク怯える毎日から解放してやったというのに、薄情な奴らだな。さして、それを望んでいるわけでもないが。


「では、送ってきます」


「ありがとうございました」


 エルちゃんが頭を下げると、二人の長老も各々頭を下げる。妖精の方はともかく、エルフはまず隣人と手を取り合うべきなのだと思う。

 魔族と人間で仲良く出来るんだ。近しいやつらで仲良くできないわけでもないだろう。

 そりが合わない奴らもいるかもしれない。だが、全員が全員そういうわけでもないだろう。フィアやエルちゃんのように友達にだってなれるはずだ。

 いつか手を取り合ってくれることを願って、俺たちは妖精の里を出た。


 ーーーーーーーーーーーーー


 洞窟の中へと出てきて、振り返るとそこに妖精の里へ繋がる入り口はすでに塞がっていた。

 名残惜しくはないと言えば嘘になるが、少しもったいないようには感じた。

 まあ、自分で言ったのだから、何度も振り返る必要はない。

 出会いがあれば別れがある。

 時が経てば、忘れ去ってしまうものなのかもしれない。

 後で話して、『そんなこともあったね』って言う程度のことなのかもしれない。

 でも、誰かにとっては、ずっと心に刻まれる出来事にもなりうるのだ。

 良いことでも、嫌なことでも。

 まあ、まとめようとしてるが、まだ終わってはいないのだ。


「さて、出て来たはいいが。次はどこへ向かうか。特に行く当てもないんだよな。サタンが現れてくれりゃこっちとしては楽なんだけど」


「ソードはまだ作業残ってるでしょ。せっかく人気がないし、地面があるんだから、ここで儀式やっちゃうよ」


「意外にじっとしてるだけなのも暇だし苦痛なんだよな。誰か話し相手つけといてもいい?」


「こっちに影響が出て、失敗しても知らないよ?」


「はいすいませんでした。自重させていただきます」


「ねえ、ウィナ。それって、ウィナじゃないと難しい?」


「それなりに魔力があるっていうのが最低限にあるみたいだから。ロロちゃんなら可能かもしれないけど、やった後に私がどうなってるか知ってるでしょ?」


「そだね。やめとくよ」


「あの〜なんの話ですか?」


「フィア。まだいたのか。帰っていただいて大丈夫だぞ?支障はもうない。案内役ご苦労様。大儀だったぞ」


「労っても無駄です!」


 ちっ。そうやすやすと帰るはずもないか。


「舌打ちしませんでした?」


「気のせいだ。かと言って、お前がここにいてやることもないだろう」


「せっかくなんでその儀式とやらを見てから帰ることにします。私はいないものとしてカウントしていただいて結構です」


 カウントしてる時点でステルスできてねえだろう。でも、無理やり返すにも、入り口は閉ざされているし、こちらからはどうしようもない。

 邪魔はしないというのなら置いておこう。


「いるならいるで手伝ってくれ。魔方陣描いたり、事後の処理もしないといけないからな」


「なんだかいやらしい響きです」


「儀式つってんだろうが‼︎」


「それも含めて。何かの隠語かと」


 どこからそういう知識を仕入れてくるんですかねぇ。欲はなかったんじゃないの?

 ちなみにこの儀式にそういった観点は一切ありませんのであしからず。

 誰に向かって言ってるのやら。


「僕たち暇ですね」


「ウィナちゃんが疲れると思うから、寝床用意しとこう。ほら、手伝って」


「そうだね」


 降ろしていた腰を持ち上げてグラスフィールド兄妹は、今日の野宿先を作ってくれるようだ。そういや、飯があったっけ?

 俺が作るわけでもないのでどうしようもないが。

 だが、俺は俺でやることがなくて、ウロウロしてしまっていた。

 あまり落ち着きがなくても、周りから怒られそうなので、同じく手持ち無沙汰っぽいロロちゃんの横に座ることにする。


「みんなよく動くね。私、こういうことは足手まといだからおとなしく隅っこで座って終わるのを待っていた方がいいんだよ。その方が効率よさそうだし」


「でも、皆で何かやりたいっていうのはあるかもな。ロロちゃんだって、自分だけ何もやらずいつのまにか終わってた。で、その終わった中に入り込むのはなんか居心地悪いだろ?」


「そうなんだけどさ……余計な仕事増やさせたくないじゃん」


「ロロちゃんなら笑って許してくれるよ。俺なら大顰蹙だからな。一番年上が何やってんだって」


「それは……まあ、ソードだし……」


 ある意味すごいな、ソードだし、で片付けられることが。俺の存在価値って……。


「でも、ウィナの方は確かに俺たちがしゃしゃると邪魔になりかねんからな。失敗がきくスターたちの方手伝うか」


「そうだね〜」


 動き出すと、近くにいたスターから指示が飛んできた。


「何してるんですか。荷物多いんですから、早く中にしまってください。ロロちゃんはアリスのところ手伝ってあげて」


 この口調からの扱いの差が分かりやすすぎる。俺は若干涙目になりながら、作業を開始し始めたとさ。

 ウィナはウィナの方で、フィアを上手く使いながら、魔法陣を描きあげていた。どうでもいいけど、ウィナとフィアって字面だけ見るとクリソツだな。報告書書くときどうしよう。

 ……妖精のことはなかったことにすれば問題ないな。

 思い出したかが吉日ということで少し進めておくことにしよう。


 現在、12月2日。最北端の国に身を置いている。

 メンバーは、自分を含めて5人。全員が体調は良好。

 魔王に力を奪われたが、徐々に取り戻しつつある。あと、2ヶ月以内には戻りそうだ。

 次なる目的を考えるとともに、ここに生存確認を記しておく。




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