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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
108/145

愛情

 入れ違いでロロちゃんは、エアリスの元へと向かっていった。

 そして俺は、あの空間で何を見てきたかを……やはり、虚言を交えて話すことにする。人間、こうやって嘘を積み重ねていくんだな。言ったらこじれそうなことばかりだし。だけど、王子に関してだけは、包み隠さず話すことにした。こいつだけは特に支障がなさそうだったからな。


「じー」


「な、なんだよ」


「なんか隠してない?」


「確かに、俺の目で見たものが真実だ。だが、その真実をすべて話したら支障が出るやつらがいっぱいいるからな。誰とは言わんが」


「いったい何を見てきたの……」


 女子2人は口を塞いで欲しいことだと思います。


「それはともかく、なんでロロちゃんだけを行かせたんですか?せめて、それぐらいは説明してください」


「……確かに、あの奥にいたのは悪魔だった」


「なら、僕たちも!」


「まあ、待て。人の話は最後まで聞くもんだ」


 俺は1人行こうとするスターの腕を掴む。


「あの悪魔は……ロロちゃんの母親だ」


「は、母親……?」


「で、でもロロちゃんのお母さんはもう亡くなってるって……」


「ロロちゃんのお母さんってことは、魔王の奥さんだってことだ。まあ、何をやったかまでは分からんが、一度は死んだ体を無理やり生き永らえさせたらしい。ぶっちゃけいえば、死んだまま生きているってことだな」


「あ、あのエアリス様がいるんですか?」


「やっぱり、エルフの中では有名だったんだな」


「何者だったんですか?」


「おじいちゃんの娘だったんです。だから、私にとっては叔母にあたる人ですね。とても、好奇心が旺盛な人でしょっちゅう外に出てはおじいちゃんに怒られてたそうです。だから、私はあの人のこと、尊敬してました。おじいちゃんはエルフ以外を嫌ってましたが、エアリスさんは誰とでも仲良くしたいって思ってた人ですから……」


 だから、あの魔王に惹かれ恋をし、ロロちゃんを宿したのか。

 だったら、あれは長老ではなく、誰だったのだろうか。まさか、自分の娘をそんな風に、ましてや自分の孫にもあたるロロちゃんを追い込んだりはしないだろう。

 もう終わってしまったことだが。


「ロロちゃんの目に、自分の母親が映るかどうかはわかんねえけど、ロロちゃんには伝えてから行かせた。それに、もう残りの時間は少ないらしい」


「野暮な介入はしないってことですね」


「どちらも満足のいく結果は得られねえかもしんねえけどな。やっぱり、忘れたままじゃ可哀想だし、ロロちゃんだって自分の母親のこと、ちゃんと知っておきたいだろ。そりゃ、いい記憶ばかりじゃないだろうけどさ」


「ロロちゃんは私たちのことなんて話してくれるかな?」


「さあな。少なくとも嫌いなら、こうして一緒にいることはねえと思うし、悪くは言わねえだろ」


 出口付近で、たむろっていたが、その出口から小さな影が現れる。


「ソード!みんな!ちょっと来て!」


「な、なんだよ」


「いいから早く!」


 せっついて、俺の袖を引っ張り出口へと走り出す。それに流される形で、みんなが走り出した。

 もう、すでにエアリスが作り出していた空間はなく、特に違和感を感じさせることのない出口だった。


「ママ。連れてきたよ。私の……友達」


 エアリスは先ほどの高台ではなく、下の地面まで降りてきていた。そして、姿は悪魔としての姿を保てなくなったのか、ひどく衰弱して痩せこけた顔をしているように見える。


「……また会っちまったな。一時間程度前のことだけど」


「まさか、私もこの子が連れてきてくれるものだとは思いませんでしたから。それでは、もう一度名前を伺ってもよろしいですか?」


「ソード・ブレイバー。勇者だ」


「わ、私はウィナ・ウィルザートです」


「僕はスター・グラスフィールド」


「私はアリス・グラスフィールド。スターの妹です」


「こんなにも……ロロには友達が出来たんですね。これからも仲良くしてくれると嬉しいです。この子には寂しい思いをさせてしまったので」


「心配することねえよ。ロロちゃんが望むなら俺たちはずっとに一緒にいてやるから。なんと言われようともな」


「ママ。心配しなくても大丈夫だよ。私、元気にやってくから。……ごめんね。心配させて」


「親なんて、子供をいつも心配してるものなのよ?甘えさせてあげる時間が少なくてゴメンね。いつも、私たちのことに巻き込んじゃって」


「ううん。こうして、また会えたんだから。もう、会えないって思ってたから。だいぶ、歳をとっちゃったみたいな姿だけど」


「親に向かってなんてことを言うか」


「あはは」


 再び見ることは叶うまいと思った風景がそこには広がっていた。仲睦まじい、親子の姿。ただ、先ほども言ったとおり、時間は多くは残されていない。せいぜい、もってあと数時間だろう。

 だから、水入らずで邪魔が入らないようにと俺は、二人きりにさせたのに。ロロちゃんは何をしたかったんだろうか。ちゃんと、友達が居るよって伝えたかったのだろうか。

 エアリスの要望でロロちゃんと一緒に遊んでる姿を見せて欲しいとのことで、ロロちゃんが疲れ果てるまで遊びつくすことにした。

 あの、ロロちゃん、遊びとはいえ、全力で魔法をぶち当てようとするのやめてください。いくら害がないとはいえ。結果的に、俺を集中砲火とかいう、イジメにも等しい祭りとなった。ちくしょう、魔法使えないからってあんまりだ……。

 流石に、遊びでもウィナの魔法だけはどんな影響が出るかわからないので最小限に止めてくれていたが。いや、なら止めてください。

 それでも、終始ロロちゃんは遊んで、笑ってくれていたので元気な姿は見せられたと思う。


「あー疲れた」


「一番疲れたのは俺だと思うんですけどね……」


「お疲れ」


「水……水をくれ……」


「向こうの方に湧き水がありますよ。普通に飲んでも問題ありません」


「私汲んできてあげる」


「僕も行きますよ」


「私も水飲みたいです〜」


 3人ほど狙いすましたかのように、フラフラと行ってしまった。追いかけようにも俺は疲弊しきって動くことはできない。

 ロロちゃんだけは、俺の近くに居てくれている。


「ロロちゃん。お母さんの近くにいていいんだぞ?俺なんかいつでも構えるし」


「うーん。一応、言っておこうかなって。そろそろ時間もないだろうし」


「何を?」


「ママ」


 ロロちゃんはエアリスの元へと寄っていく。例によって、俺を引っ張りながら。痛いのでもう少し丁重に扱ってもらえると嬉しいんですけど。

 もうすでに、エアリスはほとんど動けない状態であったために仕方のないことではあるが。


「どうしたの?ロロ。まだ、遊んでていいわよ。お母さんはここにいるから」


「手遅れにならないうちに言っておこうって思ったの。聞いてもらえる?」


「ええ。ロロの言うことなら今ならなんでも聞いてあげる」


「ありがと、ママ。あまり大したことじゃないけど……」


 だったら、俺を連れて来る必要があったんですかね?


「ソード、黙ってて」


「声出てた?」


「最近なんとなく、ソードの思考が読めるようになってきた」


「なんだよそれ」


「女の勘」


「まだ、女っていうほどじゃ……ぺったんこだし」


「胸で判断するな!もー!ソードのバカ!」


「……ロロちゃんに嫌われた……死のう……」


「わー!嫌ってない!嫌ってないから!ソードのこと好きだから!」


「……ホントか?」


「うん……」


 あれ?何この反応。俺はどうしたらいいのかしら。


「ママ、私、好きな人ができたの。この人」


 そう言って、俺の腕に抱きつく。胸こそないけど、女の子特有の柔らかさが腕に伝わってくる。胸がないのは余計なお世話か。


「バカでスケベで能無しだけど……魔王の娘だって知ってからも私のことよく見てくれて、優しくしてくれて、いつも守ってくれた。そして、これから一緒に居てくれるって言ってくれた。勇者のくせにね。魔王の娘を守るなんてね。でも、そんなおバカさんだから、私はソードのこと好きになったの」


「そう……いい人が見つかってよかったわね。……ソードさんは返事をしてくれたのかしら?」


「俺は……」


 いつも、好きな気持ちを向けられては躱してきた。アリスにはそれで傷つけ、諦めさせてしまった。

 ウィナには、答えを旅が終わるまでには出すと言った。

 これが、答えとなるのだろうか。

 確かに俺はロロちゃんのことが好きだ。でも、きっとロロちゃんが俺に向けている『好き』とは異なるものだろう。

 なら、俺の返事は……


「そう深刻そうに考えなくてもいいよ。アリスのこと見てて、私も大体分かってるから。だから、答えはなくてもいいんだよ。勢いだけで、その場しのぎだけで答えて欲しくないから。その時が来たら……また言うから。その時に答えて」


 その時、きっとロロちゃんと別れる時だろう。魔王の娘なのだ。元々、魔王の元へと返すという目的で一緒にいたのだ。一時の感情に流されるぐらいなら、俺のことは嫌いになって突き放してあげたほうがよかったのか?

 俺が期待させるようなことをしてしまったせいなのか?


「無駄だよ」


「何が……?」


「ソードが私に嫌がるようなこと出来るはずないし、私が今更そんなことでソードのこと嫌いになるはずないんだから。だから、ソードは選ぶだけだよ」


 やはり、俺の考えが浅はかなのか。ロロちゃんにお見通しなぐらいだからな。答えは出なくとも、伝えておかなければならないことはある。


「エアリス。俺はロロちゃんを選ぶことがないかもしれない。それでも、自分勝手で我が儘な話かもしれないけど、俺はそれでもロロちゃんと一緒にいたい。たった半年だけど、そう思う」


「いいんですよ。魔王の娘というだけで、どこからも煙たがられてしまったというのに、勇者であるあなたが私たちの娘のことを好きになってくれたのですから。私は、満足です。もう、これで最後ですから」


「ね、ねえママ。もう少しだけ、もう少しだけお話ししよ?だから……最後なんて言わないで……」


「泣かないの。可愛い顔が台無しよ?私はいつでもいるから。あなたのここに……」


「嫌だ……嫌だよ……ママ……ずっと私といてよ……これでお別れなんて嫌だよ……」


 俺はロロちゃんがエアリスに泣きすがってる姿を見て、エアリスだけに分かるように会釈し、物陰で見ていた三人をひっ捕らえて、今度こそ出て行くことにした。もう、俺たちが出来ることはない。

 最後は、本当に二人だけで居させてやろう。

 それが、せめてものエアリスのロロちゃんに対する償いだ。

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