過去の自分(2)
お次は察しがつくと思うが、王子と姫のところだ。ウィナとはかなり幼少の時から出会っているが、グラスフィールド家、すなわち城へは少し成長してから初めて行った。多少は成長してからじゃないと王様が面倒だったんだろうなとか、適当なことを今になって考えている。
確か、王様にはスターに対して新しい先生と紹介されたんだっけか。
「よし。ソード、お前がこの子に剣を教えてやるんだ。そのためにお前をココに連れてきたんだからな。あの無能王様みたいに自分の身を自分で守れんようじゃ話にならんからな。今のうちから教えてやれ」
「はあ?なんで俺?父さんでいいじゃん」
「ばっか。それじゃ意味がねえだろ」
「なんの?」
「それが考えられないようじゃお前はバカだな」
「それは父さんがバカだからって母さん言ってたぞ!父さんがバカだから俺もバカなんだって!父さんの教育が悪い!」
「ったく、いらんとこばっか受け継ぎやがって。世の中上手くいかんもんだ。とりあえずソード。お前は勇者にならねばならん。魔王がいる限りはな。我が国の王子に剣を教えるのもその一環だ」
「分かったよ。…………」
「ほら、挨拶しろ」
「い……いや。一応、王子様なんだろ?俺なんかでいいのか?」
「俺の息子だから大丈夫だ。王様、俺に頭上がんねえから。ほら、行ってこい」
俺はあの時は親父に背中を押されてた。いつの日か、背中を押されることはなくなったが、それはいつのことだったろうか。
「お、お願いします」
「お、おう。……ん?」
「どうした?ソード。始めていいぞ」
「いや、あそこに女の子が……」
俺が指差す方向にアリスの姿を捉える。うわっ、ちっちゃ!今も小さいけど。
まあ、この時はいかにも姫様って感じのドレスを着ていて……まあ、着させられているという言い方もできるけどな。この時はまだ、お兄ちゃんのやること、やることにくっついてきてるような時だったんだろう。
「姫様だな。ほら、君もおいで」
親父に呼ばれてアリスが出て行こうとすると、使用人らしき人に止められる。
「姫様、お兄様のお邪魔になりますから。ここから見てるだけと言ったでしょう」
「やー‼︎」
まあ、3歳そこらの子に言うこと聞けって言ったところで無茶な話だろうな。結局この時は使用人が折れたのと、親父が見張ってるからということでアリスも一緒にいたな。
「まずは……何やればいいんだっけ?」
「お前は数年間何をやってきたんだ。適当に剣を振り回してきたわけじゃないだろ?」
「んー……えっと、王子。まずはこれを構えるんだ。俺のを見て、同じようにだぞ」
「は、はい」
しばらく、俺が王子に教えてるのを観賞することにする。
あー、そこはそうじゃない。
今の俺がそんなこと言ってもこの時の俺がそんなことを理解してはずもないな。
ただ、俺のめちゃくちゃな講義にでもしっかり自分のものにしているスターは大したものだと思う。
「ここまでだな。今日は終わり」
「あ、ありがとうございます。次は……」
「え、つ、次?」
「あした!」
「え?」
「あしたきてください!」
「えっと……父さん。明日は大丈夫なの?」
「仕方ねえな。明日だけだぞ。明後日からまた修行だからな。王子。君の訓練は一週間に一回だ。今日やったことを何度もやって体に覚えさせるんだ」
「体におぼえさせる……?」
「そうだ。何度もやれば自然にできるようになるからな」
「も、もう少しいいですか?」
「お、俺はいいけど……」
「おにいちゃんばっかりズルい!わたしも!」
「ははは。人気だなソード。でも、王子の方はまだやることがあるんじゃないのか?」
「そうでした……明日またお願いします」
「お、おう」
王子はこの時は俺が教えてたの以外にも色々習い事してたみたいだからな。4歳そこらの子にやらせることではないと思う。王子に生まれたから仕方のないことだったんだろうか。
「ねーねー。こんどはわたしとあそんでー」
アリスは兄があんな感じなので、自分と遊んでくれる人を探していたのだろう。最初から嫌ってたわけじゃないんだよな。今は戻ってきたようなのでいいことだ。
まあ、この時のアリスは俺からすれば小さい子をあやしてるもんだったけどな。だから、気付けなかったんだろう。何年経っても、恋心を知る年になっても。
ごめんな、アリス。
今更な後悔をしつつ、また開いていた空間に進んでいた。
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今度はどこに着いたんだろうか。
俺の面影を追いかけて。
その肝心の俺はどこだ?
少しキョロキョロさせていると、見つけた。
親父と一緒に剣を構えている。
ということは戦闘中か?この時はまだモンスターも路駐歩いていれば出てくるレベルだったからな。
「や!放して‼︎」
女の子の悲鳴。誰が捕まってる?
それ以前にこれはいつのことだ?
少し遠目だから、今見えているのが、いつの俺なのかイマイチ判別がつかない。
声が聞こえた方に、歩いて行くとようやく判明する。
これは12,3歳の時だ。
捕まってる女の子は……
「ロロちゃん?」
確かにあれはロロちゃんだ。今よりも小さいがさすがに分かる。俺が12,3歳だから、単純計算なら5,6歳だが、ロロちゃんは年齢不詳なのでこの時がどうなのかは不明だ。でも、少し小さいぐらいで今とあまり大差ないようにも感じられる。
しかし、前に会っていたのか。ロロちゃん自身も覚えてるかどうかわからないけど。俺も覚えてなかったし。
だけど、どうして俺はこの時にロロちゃんを見逃したんだ。
「おい!お前ら!女の子相手に大人が何やってんだ!」
「ああん?なんだこのガキ」
「子供は家で大人しく遊んでな」
「子供だからってバカにすんな!」
「だってさ」
「足が震えてるくせにな。ギャハハ」
「いいからその子を離せ!」
「そういうわけにもいかないんだ」
「こいつはあの魔王の子供だ」
「魔王の……?」
「そう。だから、いつ何をしでかすか分からん。お前たちのためでもあるんだぞ」
「その子が魔王の子供だからってその子が何かしたのか‼︎勝手な憶測だけでその子を排除するのか‼︎」
「きゃんきゃん騒ぐんじゃねえよガキが‼︎」
「がっ」
「ったく、手を煩わせんじゃ……」
「お、おい。何やってんだよ」
「お前らこそ何やってるんだ?」
「そりゃ、魔王の子供を俺たちが葬れば……って誰だ?」
「さて、誰でしょう。答えは永遠に知らんくて結構だ‼︎‼︎」
ロロちゃんに被害が及ばないように、親父が男二人の脳天をかち割る勢いでぶん殴っていた。
影ながら拍手。
「で、君は、魔王の子供なのか?」
「…………」
「言いたくないなら、それでもいいだろう。それに行くところがあるのなら、行きなさい。私たちは何も見なかった」
「で、でも……」
「どうやら、他にもいるみたいだからな。数は残り10人足らずか。私の後ろをそのまま走って行きなさい。そうすれば逃げ切れるだろう」
「……あの、名前だけでも」
「俺か?俺は、シールド・ブレイバー。昔勇者だったものだ。そこに転がってんのは、俺の息子ソード・ブレイバー。魔王の子供がなんだ?俺の息子の言うとおりだ。君は何もしちゃいない。現魔王ですら、そちらからは何もしちゃいないんだ。いつか、君もその答えを知る時が来るのかもな」
「?」
「さあ、もう行きなさい」
「あ、ありがとう」
ロロちゃんはそそくさと去っていった。お互いにあまり覚えてなかったのは、互いに会話もせず、ろくに顔もちゃんと見てなかったからかもしれない。
その後に来たなんだかよくわからない連中は親父が一掃して終わっていた。
イマイチ、あの悪魔が見せている俺の過去のつながりが読めない。
最後まで行けばわかるのだろうか。
俺は次の空間へと歩き出す。




