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魔王拾いました  作者: otsk
妖精の舞台編
102/145

過去の自分

「あれ?」


 どうやら意味見ている景色は今見ていた景色とは大きく異なり、見覚えのあるものへと変わっていた。

 というより、俺の自宅だ。


「ほら、行くぞ」


「嫌だ〜」


 なんか若々しいが荒々しくもある青年が小さな子供を引っ張り出している。

 さすがに、この現場を見過ごすわけにはいかんだろう。母親は何をしているんだ。


「おい、アンタ」


 声をかけたが、聞こえなかったのかスルーされて、そのまま子供は引きづられていく。

 おいおい、無視とはいい度胸だな。


「聞こえてねえのか!」


 今度は無視されないように肩をつかもうとするが、すり抜け勢い任せにつんのめってしまう。


「触れない……?」


 おおよその親子であろう二人はギャアギャア騒ぎながら進んでいった。

 一応追いかけてみるか。


 ーーーーーーーーーーーーー


「ほれ、何してる。俺はこっちだぞ」


「おいつけるか!バカ!」


「親に向かってバカとはなんだ、バカとは」


「いだだだ!すいませんすいません!」


 見たことある懐かしい光景。

 これは、4歳頃。修行を始めてすぐぐらいだろう。あの頃、親父のことが大嫌いだった。まあ、今もだが。きっと、この頃からの名残だろう。だが、この時は自分の親父は勇者という立派な仕事をしていたって尊敬がまだあったような気もする。

 15年も前のことだからあまり覚えちゃいないが。


「がんばれよ」


 そう呟いていた。

 その結果が今の俺だが。彼は将来このようなことになるとは考えもつかないだろう。

 後ろに奇妙な空間ができていた。

 次の場所へ向かえということだろう。俺はこの場から姿を消した。


 ーーーーーーーーーーーーー


「ん?」


「どしたい。ソード」


「なんか、声が聞こえた」


「なんて」


「がんばれよって」


「はっはっはっ。そいつは俺が言ったんだ」


「がんばってるよ!」


「かっかすんな。飯にするか」


「うん!」


 ーーーーーーーーーーーーー


 お次はどこへと行くのだろうか。


「って、ここかよ」


 半年前まで暮らしていた幼なじみの家。

 またも、いたのは幼き日の俺だ。

 親父に手を引かれている。今度はイヤイヤではないところをみると、幾らか楽しみにしていたのか、緊張していたのか。


「よー。久しぶりだな」


「急に連絡してきたかと思えば娘に会わせろだと?お前みたいなやつには目にも入れさせん」


「冷たいこと言うなよ。俺の秘蔵っ子連れて来たからよ」


「………」


「そういえば、お前にも子供がいたな。うちの子より一個上だったか?」


 幼き俺はコクコクと赤ペコのように首を振る機械と化していた。


「ははは。お前の子供とは思えんな。おいで。名前はソード君だったかな?」


 再びコクコクと頷いて、親父の手を離した。

 そして、親父は一人残されて、俺はウィルザート家へと入っていく。

 俺の後を追うように俺もついていく。

 自分の後を追うのって奇妙な気分だな。


「ウィナー。新しい友達だぞ」


 ウィナのお父さんが呼ぶと、扉の向こうから少しだけ顔をのぞかせている小さな女の子がいた。

 何あの可愛い子。


「だあれ?」


「ソード君だ。ウィナよりは一個上だからお兄ちゃんだな。ソード君、ウィナと仲良くしてやってな」


「う、うん」


 オドオドしていて中々おじさんの後ろから出ようとしない。

 今の俺だったら飛びつく勢いだが犯罪だな。この時の俺を蹴り飛ばして挨拶に行けと言ってやりたい。触れんから無理だけど。

 こっちがオドオドしていると、ウィナの方から近づいてきた。


「ソード君?」


「う、うん」


「わたし、ウィナ。よろしくね」


「よ、よろしくね」


 この時4歳だから、ウィナは3歳か。やっぱり何歳でも可愛い子は可愛いな。この時の記憶なんてほとんどないから新鮮だ。ひたすら親父にボコられてた記憶ならある。幼児虐待で今からでも訴えられると思う。

 それはさておき、ウィナが来てくれなければ、俺はずっと一人でいただろう。そうすれば、今こうして旅をして、魔王を追いやることなんてこともできなかったんだろうな。

 感謝ばかりだ。

 また、空間が開く。いつまで続くのだろうか。




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