タイムトラベラー
またも、不自然に空いた穴をくぐって、洞窟の中を進んでいく。
どうやら、この中を進まないと奥へと行けないようだ。
なんでこんなにダンジョンチックなんですかね?ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのですよ。こんなところで出会ったところで何と発展などしません。少なくとも俺があった中では大概戦闘に発展しました。
「モンスターがいたりしねえよな?」
「くくりとしては妖精は害のないモンスターみたいなものなので。あんなのと一緒にされるのも心外ですけど」
「魔法とか使えるのか?」
「戦闘能力は一切ないですね。その代わりと言ってはなんですが、妖精もエルフも治癒魔法を使えますよ。長生きできるのもそのあたりにあります」
「妖精は短いんじゃ?」
「体の大きさが関連してるでしょうね。まあ、生きるのにベストな体というのはどんな生き物にもあるものです」
「そろそろ出口ですよ~。では、私とフィアちゃんはここで待機してます~」
「え?行かないの?」
「戦うことになったら、私たちは足手まといでしかないから~。しょ~がないよ」
「ううん……じゃあ、皆さん。メシウマな成果を期待してます」
「お前は一体どこの世界の住人なんだ」
妖精の時点で夢の世界の住人な気がしないでもない。そして、メシウマって女の子が使うようなセリフでもない。
「あれ?」
ウィナがすっとんきょうな声を上げ、一歩、後ろに下がる。
「どうしたんだ?」
「入る直前まで何の変哲も無いけど、入ったら、なんか気持ち悪い空間みたいで……」
「おかしいですね。普段、そんなものないんですけど」
「普段、って言っても年に一度あるお祭りでしか使ってないんですけどね〜」
「どっちにしろ行ってみないことには何も分からんだろ。俺が先に行ってくる。とりあえずは俺が戻ってくるまで待っててくれ」
「ちょっと、ソードに何かあったらどうするの!」
「何も起こらねえよ。このままの姿で戻ってくるって。待ってろ」
ウィナの頭に手を乗せて、抗議を黙らせる。
保証なんてどこにもない。
「では、生贄お願いします」
「生贄扱いか!」
このような酷い扱いする奴もいるしな。人による扱いの差が激しいです。
では、試しにロロちゃんが一人で行くとしよう。こうなります。
「行っちゃダメ!」
「僕が行きますから!」
「ロロちゃんはここにいて!」
きっと、こうなります。まあ、ちっちゃいし、一応一番年下ってことにしてるし、扱いに差が出るのは当然だね。
比較対象が悪いといえば悪いのだが、分かりやすいということで。全員で行って、全員で戻れなくなるもいけないしな。
俺は一歩、足を踏み入れる。
ーーーーーーーーーーーーー
「なんだ……ここ……」
不気味な空間だ。
上下左右共に同じような摩訶不思議な色をしていて、どこに向かっているか分からない。
(こちらに来い)
「誰だ⁉︎」
後ろを振り向いても、前を向いても、左右を見ても、誰もいない。
(今、お前が向いてる方向を真っ直ぐに進め)
真っ直ぐに。
そもそも、真っ直ぐに進めるものなのか分からない。自分が真っ直ぐ歩いている感覚が無いのだ。どの方向も同じ景色が続いて、変化が見られない。
だが、進まないことにはどこにも出られないだろう。
聞こえた声を頼りに再び歩き出す。
絵の具の色をグチャグチャに混ぜたような色合いの空間をどれぐらい歩いただろうか。いい加減、同じような景色ばかりに辟易してきた。
(そろそろ出口だ)
「ああ、そうかよ。ご丁寧にありがとさん。俺の後ろの悪魔さんよ」
「流石に気づくか」
「そこまで鈍感でもバカでもねえよ。何が目的だ」
「いや、あれだけ人がいたのに来たのはお前一人だったからな。話は聞いてたぞ、勇者。俺を倒しに来たようだな」
「ぶっちゃけた話はお前が俺の力の欠片を渡してくれれば戦闘もクソもやらなくていいんだけどな」
「だが、シナリオ的にそうはいかないだろう」
「なんだ?お前は戦闘狂なのか?戦いたい病か?」
「人を気が狂ってる奴みたいに言うな。だが、俺自身戦闘には不向きなものだ」
「自分の能力を公開してくれんのか。親切なやっちゃな。悪魔とは思えないぜ」
「正直、人間の一般的な見解による悪魔らしい悪魔は一体だけだな。そして、そいつはまだ倒されていない。さすがに所在地まで知らんがな。そして、俺が使う能力は時間だ」
「時間?魔法の類なのか?」
「特殊な力だからな。唯一の俺だけが使えるものだ。ま、それゆえに他の力は使えないわけだが、これも使い方次第ではいかなる相手にも渡り合えるようになる」
「勝てるわけではないんだな」
「自惚れるほどの力を持ち合わせてないからな。能力としてはこんな感じだ。空間自体を逆行させたり、対象者を退化させたりな」
「進めたりはできないのか?」
「いい着眼点だ。その通り、この能力は先へ進めることだけはできない。ま、ないものを作り出すことは不可能だということだ」
「そこまで説明して、お前は俺に何を求めるんだ」
「それは、過去のお前に聞いてみることだな」
「どういう……」
「正解は、その出口の向こうだ」
名前も知らない悪魔は、俺の後ろ側を指差す。空間が切れて、そこから光が漏れ出していた。
時間を遡る。
俺は一体何をこの目で見るのだろうか。
過去をやり直せるわけでもあるまい。
過去の俺自身に何をやらせたいのか聞いて来い……ね。
そもそも、聴けるものなのか。聞いたところで、この悪魔をどうしたらいいのか。
それ以前に、この悪魔はこの妖精の里にどんな影響を及ぼしているのか。
多分、俺という存在を確認するとともに、あの悪魔がどのような存在であるかを考えて来いということなんだろうか。
賢くない頭をかき回しても、大した仮説なんて出てこないだろう。
この目で見たものが真実だ。
悪魔の言葉を信じるのも癪だが、光が差す方へと自然に導かれていた。




