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魔王拾いました  作者: otsk
プロローグ
1/145

侵略再び

ある一人、勇者と崇められる青年がいた。彼は齢16歳の時、地上を侵略しようとした魔王を退けたのだ。

旅はわずか一年ほど。

期間が早かったこともあってか、魔王はそこまで力を蓄える余裕もなく、あっさり降伏。

だが、魔王は自身の城を空中へ押し上げたのだ。

空飛ぶ要塞と化した、魔王城へたどり着く手立てはなく、勇者は半分の真実と半分の虚偽を混ぜ、報告をした。

今現在、空を飛ぶ方法を考えるとともに、王へその手配を頼んでいたが……。


「あ~。暇だ」


昼下がり。今日も今日とて、働いてる真っ最中だ。だが、暇なのには変わりない。


「なんで、俺が店番なんかやってんだろうか」


こっちは、魔王を一時退却までさせた勇者だぞ?それを顎で使って、店番させるって、どこのジャイアンのオカンだよ。

まあ、一緒に旅した幼馴染の魔法使いだが。


「ぶつくさ言ってないで、商品整理ぐらいしてよ」


「このご時世に買うやついるのかよ?」


そばに立てかけてあった、おそらく売り物の杖で殴られる。


「売り物使うな!」


「大丈夫。私のだし」


「常に立てかけてあるものが、自分のかよ……」


頭をさする。若干コブになってるような気がしないでもない。


「ってえ……」


「治してあげよっか?」


「いいよこれくらい。そのうち治んだろ」


殴られた場所をさすりながら答える。殴られた程度であれば、忘れた頃に痛みは引いているだろう。もっとも、全盛期であれば、痛みすら感じない程度の攻撃ではあったのだが。


「弱くなったなあ、俺」


「見栄張って、『俺が最強だー』なんて言い張っちゃうのもどうかと思うよ」


「まさか、弱くなってるなんて思いやしないだろ」


腕試しで、旅の直後にパーティメンバーと一度剣を交わしたが、負けなしだったのに、一撃で勝敗がついてしまった。

魔王との戦闘により何かしらやられたと見ているが、真偽は定かではない。


「魔王の最後のいたちっぺか、本格的に俺が弱くなったか」


「二年間何もやってないでしょ?」


「だから、こうやって店の手伝いぐらいはやってるだろ」


「いや、ニートかどうとかじゃなくて、モンスターとかの戦闘とか」


「魔王が浮いてから、モンスターもさっぱりじゃねえか」


「魔王が浮くって、聞き取り方次第で、難解になるね」


存在が浮いてるとか、物理的に浮いてるとか。別に二重の意味をかけて、発言したわけじゃないけど。

浮いてるのは城であって、魔王自身じゃないしな。


「そー言えば、王様呼んでたよ」


「なんだよ。老い先短いから、さっさと王位を俺に譲る気になったか?」


「まだまだ現役っぽかったけど。それ以前に王族でもないソードにそんな権利はないよ」


「王族全員闇に屠れば俺がなれんじゃね?」


「私が告発するからね〜」


世知辛い世の中だ。世界を救う働きをしても英雄になれても王様にはなれんのな。


「で、いつまでに行けばいい?」


「え〜っと、確かお昼の三時ぐらいって」


店にかけてある時計を確認する。

あと、五分。


「もう間に合わねえや。明日にしよう」


「こらこら。国家反逆罪にでもされるよ」


「王様が直接言やいいだけの話なのに、又聞きの情報を鵜呑みにして、挙げ句の果てに遅刻たあ、王様がキレるのが目に浮かぶね。ウィナ、テレポートの魔法使って」


「目と鼻の先でしょうが!さっさと行ってこい!」


店番から離れて、店の外へ追い出された。

残り二分。目と鼻の先とは言うものの、目には見えるものの、だいたいこういうのは目測より遠い。

遅刻は覚悟でのんびりと城へ向かうことにした。


「で、なんだ?そちは我輩の命よりその猫を優先していたとでも言うのか?」


遅れること30分。ようやく、城の謁見の間にたどり着いた。顔パスなので城へはすぐに入れるし、余計な手続きなどは無いのだが、いかんせん、余計なものは拾ってきてしまった。


「王様、猫嫌いか?姫は好きだって言ってたぜ」


「貴様ー!いつ姫に会った⁉︎我輩ですら、週に一度しか顔を合わせない上に合わせると怪訝な顔をされると言うのに!」


もう、それは嫌われてんですよ。王様。いい加減気づきましょう。親父というものは得てしてそういうものなんだよ。姫も思春期なんだよ。

姫はどう思ってるか知らないが、俺は以前は王子に剣の手解きをしていた。その王子は修道院へ修行に行ったきりだが、姫とはその際に仲良くなり、時々会いに行っている。

姫は確か三つ下だったかな。王子は二つ下。


「猫はいい。話は他でもない。ソード・ブレイバー」


「王様。俺を頼るより、王子引き戻したほうがいいんじゃね?」


「うちの息子を危ない目に合わせるわけにはいかん。ん?我輩が何を言うのか分かったのか?」


「カマかけただけだよ。危ない目ってことは魔王がまた侵略でも始めたか?」


「う、うむ。パッタリといなくなっていたモンスターがここ最近現れていると言う報告を受けておる。いつ、この街に入ってくるかも分からん。調査に向かってくれぬか?」


「俺には危ない目にあってもいいと?」


「お主は勇者だろう。ブレイバー」


「二年も前だぞ」


「この街の学校すらロクに卒業せずに勇者でも無くなって、今は何をしてる?幼馴染の家を手伝ってるだけであろう?学歴もないこんな世の中で勇者と言うだけでは偉い方の用心棒ぐらいしかアテはないぞ」


「だったら、姫の護衛でもやらせてくれよ」


ビュオ!

短剣が飛んできた。

王様よ、そこまでの腕前があるなら自分で調査に向かってもらいたい。

俺の頬先を掠めて、後ろの壁に突き刺さっていた。


「何か言ったか?」


「喜んで調査に向かわせてもらおう、王様よ。報酬は如何なものか?」


とりあえずした手には出るが、報酬の催促は忘れない。これが、俺クオリティ。


「そもそもお主は魔王の討伐はしておらんだろう。姫の許可と、我輩からの許可と今回の魔王討伐が終わったら、姫の護衛をさせてやろう」


一個が無理ゲーだろ。どう転んでも無理じゃねえか。ふざけんな。


「てか、俺、学校ロクに卒業してないんだけど、通わんくていいのか」


「手配をしないでもないが、わざわざまた行きたいのか?」


「だって、ウィナも姫もまだ行ってるだろ。俺は挨拶回りとかで色々回ってたから結局入学手続きもできずに見送られたけど」


「お主は世界の平和と一時の青春とどちらを天秤をかける?」


「そりゃ青春でしょ。結局3年も無駄にしちまったし、俺18だぜ。精々今年がラストチャンスっしょ」


「何のだ、何の。お主の青春は魔王を倒すことだ。魔王としのぎを削って血で血を洗ってこい」


「全く横暴な王様だぜ」


「装備はこちらで用意しておく。明日から頼むぞ」


「へ〜い」


だだっ広い謁見の間を見渡してから、王様に一礼する。一応これでも王様だからな。敬意は払っておかないとな。

あれ?そういや、魔王を退けた時の装備ってどうしたっけ?

後でウィナで聞いてみるか。

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