彼女の命日
一体、何年経ったのでしょうか。
私は「いばら姫」。
お父様の失敗で私は100年間糸を紡いでいなければならないそうです。
15歳の誕生日のあの日、私はちょっとした好奇心でこのイバラの塔に足を踏み入れました。お父様が危険だから絶対入ってはいけないと言っていたのに。
誰とも会えず、喋らず、外も見ず、ただひたすら、糸を紡いでいます。
紡いだ糸は塔の隙間から何処かへ消えていきます。
一体どこへ消えてゆくのでしょうか。
どのくらい時間が経ったのかはわかりませんが、ただひたすら、糸を紡いでいます。しかし不思議とお腹はすきませんし、眠いと思ったこともありません。まるで夢の中にずっといるような感覚です。
たしか、ある日家庭教師の方が言っていたような気がします。
「運命の人はきっと素敵なものなのでしょう。」
と。その時はどう言う意味かはわかりませんでしたが、
お父様に聞きましたら私の誕生日の日に12人目の仙女の方が100年経った日に私を運命の方が助けてくれるとか。私は早くその方の顔が見てみたくて仕方がありません。
さて、一体何年経ったのでしょうか。
おや、下の方から声がします。
私の名前を読んでいるような。
紡錘にかけてあった糸がぷつり、と切れました。
時間なのでしょうか。
一人の男性が塔下から顔をのぞかせました。
白衣を着ています。医者の方でしょうか。
「いばら姫様、お初にお目にかかります。医者のものです。
100年、たちました。」
そう言って彼は私に歩み寄ります。
私を見て少し驚いた顔をなさいました。
「手、どうされたのですか。」
私は塔から降りて驚きました。
まず、お父様とお母様がお亡くなりになられていたのです。
100年も経ったのです。仕方がないでしょう。
そして、私の手は無残にも変形しておりました。糸を紡いでいますと、手の形が変わってしまうと聞いたことがあります。
お城に戻り、知らないような、懐かしいような私の部屋へ通されました。あの日のままです。綺麗に残っておりました。
私は1国の王女となりました。しかし、15歳の時から時は止まったままです。
世界も違っていました。
「仙女の方々は、どうされました?」
最後の最後まで、14歳の私を心配してくださって12人の仙女。
「あぁ、魔女ですか。王女様が知られるようなことではありません。」
後で知ったことなのですが、今の世界では魔法は邪悪なものとされ、仙女たちは処刑されてしまったらしいのです。
しかし、私は魔法が邪悪なものとは知りませんでしたし、お礼も言えないまま100年も過ぎてしまったので、会いたいと思っていました。仙女は不死身とされていましたし、きっと生きているでしょう、と考えていました。同じ時を生きるものとして会いたかったのも事実です。
私があまりにも仙女たちのことを聞き、100年も生きていられるのは魔女だけだ、という話に国はなりました。
私は魔女として処刑されることになりました。
隣国の姫様も魔女として処刑されたという話を聞きました。
私の処刑は明日。
どうして私は死ななければならないの?
かわいそうな、お姫様。
***
「鏡や、鏡、壁にかかっている鏡よ。 世界で、誰がいちばん美しいか、いっておくれ。」
お妃様は私にそう問われました。
なので、私は答えます、
「お妃様、お妃様は決して一番美しいお方ではありません。
なぜなら今一番美しいのは隣街の赤ずきんだからです。」
するとお妃様はおっしゃいました。
「まぁ・・・なんということでしょう!!この私より美しい人がいていいわけないじゃない!」
お妃様はお怒りになっておられます。
「鏡よ、赤ずきんは私のために死ななければならないわ。
どうしたらいいかしら?」
私は答えます。
「お妃様の魔術をお使いになられてはいかがでしょうか。」




