王と雑用係の娘
どれくらい走っただろうか。私は近くにあった木の根元に腰をかけた。
嗚呼、これからどうしようか。
「わっ!」
頭上から声がした。私はびっくりしたが、怖くて上を見ることができなかった。
そっと、覗き込まれる。
綺麗な目をした男性だった。
少し顔を上げてみてみると、うちの城の軍医のようだった。バレた、とおもった。
「女か?なんでこんなところに。こんなところにいられては困るんだが。女、行くあてはあるのか?」
気づかれていないようだ。恐る恐る首を振った。
この人は優しそうな人でよかった。
「そういえば、料理長が雑用を探していて、いい人を紹介してくれたら金をくれると言っていたっけ。」
「コイツなら大丈夫だろう。」
「おい、来るか?」
もうひとりの男性が手を差し出した。綺麗な手。
私はその人の手を取り、お城の中へと再び戻ることになった。
***
私は料理長の雑用係となった。
そして、ここのお城の姫はとうとう見つからず、今夜、王は新しい結婚相手を探すために舞踏会を開くそうだ。舞踏会には料理が出される。今日は朝から料理の仕込みを手伝わされて忙しい。
ついに料理が出来上がり、料理が召使たちによって運ばれていくのを見て私も少し覗きに行きたいと思った。
ずっと隠していた月のドレスを着て、そっと舞踏会の会場へ。
***
今夜も王は新しい結婚相手を探すための舞踏会を開くのだそうだ。なんでも綺麗な女性を見つけたのでその人にもう一度会いたいのだ、と召使たちが料理を運びながら噂をしていた。一体どんな人なんだろう。私も少し見てみたいと思った。
ずっと隠していた星のドレスを着て、そっと舞踏会の会場へ。
***
今夜、ついに王の結婚相手が決まるそうだ。今日の舞踏会でその人を正式に発表するのだそうだ。昨日はついにその綺麗な人を見ることができなかった。今日は確実に見れるだろう。
ずっと隠していた太陽のドレスを着て、そっと舞踏会の会場へ。
***
「私の王妃となってくれるだろうか。」
私は太陽のドレスを着て王の隣に立っていた。
「えぇ。王が望むなら喜んで。」
私はそう答えた。