3人の娘と3人の軍医
-死体置き場にずっと腐らない目と手と心臓がない女の死体があるらしい
という噂が立ち始めたのはここ数日だ。
ちょっと様子を見て、場合によっては持ち帰ってこいという命令があり、ある城の3人の軍医が調査に出かけることになった。
死体置き場というのは、ここ近辺の処刑場で処刑された者たちが集められるところだ。なぜ集められるかというと、魔女や人狼として処刑されたものも多く、呪いを恐れたためそれぞれをしずめさせる儀式を行うからだそうだ。しかし最近は魔女や人狼の疑いをかけ処刑される者も多く、死体の数もただ増えていくだけだ。
悪臭漂う中、目的の3人の女の死体はすぐに見つかった。
嗚呼、と3人の軍医はどこか見覚えのあるような、それでも初めて見る女をじっと、見つめた。
他には見えない何かが見える目、
どこか変形したおなごのような手、
時々以前とはどこか違う早く鼓動を打つ心臓、
以前からどこか変だとは思っていたが、自分たちはあの時ひどく酔いつぶれていたためあまり気にせず今まで過ごしてきてしまった。3人は居酒屋の娘の顔を思い出した。
3人は顔を見合わせると、何かを思い出したかのように城に戻ろうと思った。
「っ...」
1人の軍医が息をのんだ。
2人の軍医は何があったのだと、視線の先を見ると、そこには一人の男の首が転がっていた。それは男というにはまだ幼く、綺麗な顔立ちをした男の子であった。
1人の軍医はそっとその男の子の首に近づくと、そっと頬をなで、静かに涙をこぼした。
どうしたんだと2人の軍医が聞いても、1人の軍医はただ、わからないと言うだけだった。
***
3人の軍医は誰も何を発するわけでもなく、ただ森の中を城へ向けて歩いていた。城に近づくにつれ、周囲が慌ただしいことに気づく。城の姫がいなくなったのだそうだ。それは大変だ、ということで、森の中を姫を探しながら歩く。
木の陰に、1つの塊をみつけ、覗き込んでみると、それはボロ雑巾のような1人の女だった。そういえば、料理長が雑用をしてくれるやつを探しているという話があった。こいつなら大丈夫だろうと、行くあてがないというその女を3人の軍医は調理長に紹介した。料理長は喜んだ。
結局、姫は見つけることができず王は嘆き悲しみ、城の者たちは幾日も姫を探すことになる。