3人の軍医
私の働いているお店は小さな居酒屋です。
ある日、3人のお客様がおいでになりました。
「一番いい席へ」
と店長が静かに言いましたので、一番いい席へお通ししました。
なんでもお城からきた腕のいい軍医様達だとか。
お酒をたのまれたので、ワインの瓶を3本、グラスをいくつか準備し、テーブルへ持っていきました。軍医様たちからはお酒の匂いがしました。ここが一軒目ではないようです。
「なぁ、聞いてくれよ、お嬢さん、」
と、一人の軍医様。はい、御用でしょうか。
「俺はな、この前腕のとれた人を元通りにしたんだ。すごいだろ。」
えぇ。切れたものが元通りになるなんて。
「いやいや、僕なんか目がとれた人をきちんと見えるように元通りにしました。こっちのほうがすごいでしょう?」
えぇ、本当にすごいですわ。
「俺は心臓がとれたひとを元通りにしたぞ。」
えぇ、それは神のやることではないでしょうか。
軍医様たちが口々におっしゃるので、私は本当かどうか怪しくなってきました。
「本当ですか?」
そう、私は行ってしまったのです。
軍医様たちはムッとした顔をなさって、
「おい、店主、お盆を持って来い。」
何をするのかと思えば、ナイフを取り出し、それぞれ、
腕、目玉、心臓を取り出し、店主が持ってきたお盆の上にのせ、私に。
「明日、また来るから、その時はそれをもってこい。元通りにしてやるから。」
腕のない軍医様と
目玉のない軍医様と
心臓のない軍医様は
立ち上がると、店をあとにしました。