時の流れと科学者
今日の図書館はとても静かだ。周りには誰もいない。
僕は一冊の本を棚から持ち出し、席に座った。
そして、本をめくる。
ひとつの物語が変わるだけでこんなにも連動して他の物語も変わるものなのか。
と、思いつつ、「グリム童話」と書かれた本のページをめくる。
「あれ、- - ?」
どのくらい時間が経っただろうか。
あまりにも数多くある童話を僕は端から読んでいた。
本から顔を上げると、三人の人影。
「あ、先輩、お久しぶりです。」
僕の中学校時代の先輩だ。三人とも別の高校へ行ったと聞いていたが、
「本当に、久しぶりだというのに。相変わらずセットなんですね。」
「本当に、久しぶりだというのに。相変わらず本が好きなんだね。」
笑顔を崩さずに言う先輩。変わっていないな。
僕は本に目を戻す。ひとつの題名が目に入った。
{三人軍医}
夕日が窓から差し込む。
「じゃぁ、僕らはそろそろ行こうかな。」
時間とともに変化していく現状。
寂しいものだ。
その点、物語はいつまでも変わらない。
変わってしまうということは怖いことだ。
僕は変わらない世界を、望む。
いつまでも語り継がれる、過去となった物語のように。