表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BAD!!  作者: ソメイヨシノ
BAD START
2/4

狭間 亜門の日常2

災難は 知らないうちに 忍び寄る





南ヶ丘西高校。南なのか西なのかはっきりしろと言いたい高校だ。何でも5年くらい前までは南ヶ丘東高校というものが隣町にあったためにこういう名前になっている。東高は現在はもう廃校になってしまったみたいで、もう存在しない。なら西取ればいいのにと思ったが、東高が廃校になったのは合併のためで、合併した高校の名前が南ヶ丘山高校。なんか南ヶ丘に宿命でもあるのか?ちなみにここは南ヶ丘という市名でも何でもないから不思議である。

そんな名前不思議高校が俺の通っている学校だ。特に目立った部活やら功績やらはない公立高校。そんな高校こそ楽しかったりするのである。

俺と正は走って学校に着くなりすぐさま教室に向かった。

「三木恭子はいるかー!!」

ドアをビシャーンと勢いよく開ける。教室の奴らはビクッとなっていたが、

「やれやれまた正か。」

「朝から元気いいねー。」

「まったく馬鹿だなーあいつは。」

「まったく馬鹿だなーあいつらは。」

みたいなことをぱらぱら言うだけだった。実は正は今日に限ったことではなく毎回こんな登場だ。高1とはいえ3ヶ月も続ければ慣れるんだろうな。てか下のほうの意見。なんで俺まで馬鹿扱いなんだよ!?そんな中、一人の女子がこちらへ向かってくる。

「あんまり大きい声で名前呼ばないでよね。恥ずかしいから。」

女子の名前は三木 恭子-みき きょうこ-。

肩くらいまでかかった髪に眼鏡をかけてる勉強できそうだなーって感じの女子。ちなみに勉強は実際できる。見た目通りってなんかいいね。

「悪い恭子、数学の宿題見せてくれ!」

正は三木の前で手を合わせてお願いしている。三木ははぁ、とため息をついた後自分の机に向かって、ノートをとって戻ってくる。ノートには数学と書いてあった。

「はいこれ。ちゃんと授業始まる前に返しなさいよ。」

「おおサンキュー!すぐにやっちまうからよ!」

正はノートを受け取ると自分の机で宿題写しに取りかかる。

「正のこととはいえ悪いな毎度毎度。」

「いいのよ別に。もう慣れたわ。」

三木はフッと息を吐く。正は宿題を忘れると決まって三木に写させてもらっている。正と俺は三木とは中学の頃から同じで、高校も同じところで同じクラスという縁があった。この2人とは特に仲がいい。こういう友達がいるってのは実にいいな。

「なに一人で頷いてるのよ。」

心の呟きが動作になっていたようだ。三木に言われるとなんか恥ずかしい。

「ところで。あなたは宿題やってきたの?」

「正みたいなことにはなってねえよ。今回はバッチリだぜ。」

「この前は忘れて立たされてたじゃない。廊下に。」

「まさかあんなに怒られるとは思わなかったんで油断してただけだよ。ほら、今日はこの通り・・・」

と俺は学生鞄に手を入れて数学のノートを取り出そうとしたが、なかなか見つからない。

嫌な予感がする・・・

「あ・あれ?ないぞ?どこいった?」

「まさか・・・家に忘れたとか?」

サーッと血の気がひくのが自分でも分かった。

「み、三木・・・俺にも宿題見せ・・・」

「ノートないのにどうするのよ・・」

そうでしたー!っと俺は床に手をついてうなだれた。なんでこんなベタなことやっちまってるんだ。これじゃ先生からの温情判決なんざもらえねえ。そんな俺に三木が肩をポンポンと叩いてくる。慰めかな。

「今日はバケツ持って廊下かもね。」

現実を突きつけられて改めて落ち込んだ。




「だあー疲れたー。」

1時間目終了後の休み時間目、俺は机に突っ伏ていた。宿題を家に忘れてしまった俺はもしかしたら正直に言えば温情判決がでるやもと、素直に先生に宿題はやってきたけど家に忘れましたーと言ったところ、頭に派手にチョップを喰らった後で廊下に立たされていた。1時間目中。今時どんな罰だよちくしょう。てか今考えたら宿題やってきたけど家に忘れましたで温情なんかわくわけねえか。とにかく1時間目からすでに帰りたいほどに疲れた。次の授業なんだったっけ?

「あ、あの・・・狭間君。大丈夫?」

ぼそぼそとした繊細な声をかけられた。

「んあー、一ノ瀬か。どしたよ?」

「えっ?あ、いやその用というかなんというか・・・・えーっとえーっと」

このオドオドした喋り方をするのは俺のクラスメートの一ノ瀬 静香-いちのせ しずか-だ。聞いての通り女の子。三木と同じくらいの髪の長さで花のヘアピンをつけてる。可愛らしい奴。スタイルも高校1年にしてはなかなかのものをお持ちだ。いやーあんな過酷業のあとだけに癒されるね。

「その・・・大丈夫かなと思って・・・」

指をもじもじしながら何とか用件を伝える感じはさらによしだね。

「いやなに、宿題家に忘れるなんていうベタなことやった後にこれはきつかったなーと思ってただけだよ。心配はしなくても大丈夫ー。」

「そ、そお?良かった・・・。」

一ノ瀬はハハっ、と笑う。キュートだね。

「一ノ瀬のおかげで元気出たよ。ありがとうな。」

「ひゃうっ!?」

突然ひょうきんな声をあけだた一ノ瀬の顔が赤くなる。

「いやそんなたいしたことじゃないというかなんというかしんぱいしてたのはほんとうだけどちょっとこえかけただけであってそんなはざまくんからおれいをいわれるなんてことしてないというかありがとうというかきょうのごはんはかれーにしようかなっていうか」

「落ち着け一ノ瀬!オーバーヒートしてるぞ!」

「はうっ!ご、ごめんなさい。」

普段はおとなしい一ノ瀬も、何故かたまにこのような暴走状態に入る。主に俺が誉めたりお礼したりすると。・・・まさか一ノ瀬・・・照れ屋なのかな。少ししゅんっとなってる一ノ瀬ベリグー。

一ノ瀬とは高校から一緒でまだ長くても3ヶ月くらいなのだが、今は大分仲良くなった。きっかけは確か・・・車に引かれそうになった猫を助けたことだったっけな。その猫が一ノ瀬の飼い猫で、そっから友達になった。今では正と三木と4人でよく遊ぶ。

「よー亜門。お勤めご苦労さんっ!」

後ろから正に肩をたたかれる。

「人を刑期終えた罪人みてえに言うなよな。」

ちなみに正は宿題を1時間目スタート2分前に終わらせやがった。なんか理不尽だ。

「あんな風にチョップ喰らって、廊下に立っとれー!、みたいな光景初めて見たぜ。」

「他人事だと思いやがって。」

こんなことなら正に宿題の話をするんじゃなかったぜ。2人ならせめてチョップは無かったかも。

「まあまあそんな疲れたツラすんなって。そうだ放課後どっか行こうぜ!いつもの4人でさ!恭子もいいだろ?」

少し離れた席に座って政治経済の予習をしている三木に話かける正。つーか予習なんてようやるわ。

「私は別に構わないわ。」

と、政治経済のノートわ、見ながら答える。端から見たら愛想がないにもほどがあるが、俺や正は中学からこれなのでもうすっかり慣れた。それにあんなつれない感じこそするが、三木はあまり感情が表情に出づらいだけで、意外にカラオケとか好きである。ちなみに上手い。

「よーし決まりだな!一ノ瀬も来るよな?」

「へっ?あ、うん。邪魔にならないなら是非。」

「いつも一緒に遊んでんじゃん。」

「あはは。ごめんね。最初のほうはずっとこんな感じで答えてたから慣れちゃったのかな?」

「ま、いいや。俺達の方が邪魔かもしんないしなー。」

「?」

一ノ瀬が不思議そうに首を傾げる。正は俺のほうをちらっと見た。なんだなんだ?

「何なら誰かさんと2人っきりで遊びに行ってもいいんだぜ?」

「んにゃっ!?」

猫みたいな声をあげたと思ったら、一ノ瀬の顔がボンッと赤くなる。どうしたよ。

「にゃ、な、何のはなし・・・」

「いやいや別に隠さなくてもいいじゃねえか。お前があも・・」

「わーーダメー!!」

正が最後まで言い切る前に、一ノ瀬は正の手を引っ張って教室の外まで行ってしまった。何だってんだ?てか正引っ張っていけるって意外に力あるのな一ノ瀬の奴。

「おい恭子。今のは結局何だったんだ?遊ぶのはいいとして最後の暴走は分からん。」

とりあえず三木に投げかけてみた。すると三木は顔をあげて言った。

「あなたが鈍いからよ。はあ。」

「え?」

最後にため息まで三木は予習に戻った。

その後戻ってきた一ノ瀬に聞いてみたが、「ななな、何のことかなあ!?」と話を逸らされ、正は「想像にまかせるわ。」とのことだ。結局迷宮入りした。







そこからはあっという間に放課後になって、

何をして遊ぶかという話なり、三木の提案によりカラオケをすることになり、とりあえず全力で歌い(やっぱり三木は上手かった)、その後は皆各々の帰路につくことになった。俺は正と一緒に帰り道を歩いていた。

「いやー歌った歌った。楽しかったなー。」

「まあな。今日身に起きたことは忘れられそうだよ。」

「相変わらず恭子はうめーしな。一ノ瀬もなかなかのもんだったな。」

「天童よしみ歌った時のチョイスは何回みてもハマらないな。そういえば一ノ瀬といえば朝のあの暴走何だったんだよ?」

迷宮入りした事件が気になったので堀り漁ってみた。

「んー。そりゃお前、一ノ瀬から聞かないと。」

「いいじゃん。教えてよ。」

「ダメダメ。本人から聞いてこそ意味があるってもんだよ。」

「ふーん?」

意味はよく分からなかったが、正はあれで意外に口は固いからな。多分食い下がっても無駄だろう。

「あと一ノ瀬さ、俺の時だけなんかオドオドした喋り方するだろ?何でかね?」

正直これも気になっていた。正には・・・というより他の奴とは結構スラスラーっと話すのに、俺の時は会話中に3回は必ず止まる。うーん俺のこと苦手なのかねー?

「三木の言ってた通りだな。」

「?なにがだよ?」

「お前が鈍いってことさ。」

「??」

ますます分からない。一ノ瀬の喋り方と俺の鈍さ(?)が関係すんのか。

「んまー何はともあれ!」

正は話を切り上げるとバンザイするように両手を挙げた。

「今日は楽しかった!!」

と正はいった。

「こんな日がずっと続ければいい!そうだろ亜門!」

正は満面の笑みで俺に問いかけてきた。

俺は少し間を取ってから

「・・・そうだな。」

と、薄く笑って答えた。今回ばかりは嘘じゃない。





その後正と別れて、俺は自分の家までの僅かな帰路についた。こんな日がずっと続けばいいか。まったくその通りだよ。そんなことを思いながら俺は曲がり角を曲がる。ここを曲がればすぐに家だ。今はまだ6時くらいだから父さんはまだ帰ってきていないかもな。帰ったら母さんの手伝いをしないと。そして曲がり角を曲がりきったところで、


人が倒れていた。



「・・・えっ?」

さっきまで家に帰ることばかり考えていた俺は、この非日常にずくに対応できなかった。そしてこの出来事が始まり。俺の身に降りかかる、悪い出来事の始まり。そのスタートだった。





運命の歯車が   回り始める


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ