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冷酷姫と吐き気以上の何かがあるらしい俺

 埼玉県立橋丘高校には美女がいる。

 片桐紗凪(さな)を学年で知らない人はいない。他学年ですら知っている生徒は多い。

 芸能人と言われても頷ける美貌に男子顔負けの背丈は170cmもあるらしい。凛々しい容姿でありながら、ふとした時の微笑みは両極端の二面性を持ち合わせている。

 慕われ、頼られ、崇められ、何を取っても理想的な人間であるのは間違いない。

 ただそれは誰にでもそうというわけではない。


——女子にとっては、の話である。


 男子に対しては酷い。ただ酷い。

 コミュニケーション不良。視線が交われば仏頂面。馴れ馴れしくしようものなら悪口雑言。

 過去の出来事を一つ。

 あれは高校1年生の秋。文化祭で一人の男子が片桐紗凪にツーショット写真を求めた。

 彼女は当然のように拒否。男子生徒は悲しく青葉と共に散った。

 ただ、その男子生徒の勇気を、とある別の男子生徒は「よく勇気を出したっ」と褒め称え、片桐紗凪になぜ男子を拒むのかを知るために果敢に立ち向かったのだ。

 その生徒は片桐紗凪と席が前後になったことを利用して固執に関わり続けた。

 ただ片桐紗凪は口を開かない。

 それでも男子生徒は「なんで、ねえなんで。なんでなんで」と絡み続けた。

 無視が続く中、片桐紗凪は一言だけ口を開いた。


「あなたは吐き気以上の何かがあるね。言葉に出来ない気持ちの悪い何かが」


 そう蹴散らした。

 ただ片桐紗凪は完全に社交性がないわけではない。授業での義務的な関わりは応じるし、ノートも最低限の接し方で回収してくれる。決して、破ったり、廊下に投げ捨てるなんて愚行はない。

 彼女には、彼女なりの領域があるのだ。

 それを侵してしまうと冷酷姫が牙を剥く。

 だが蹴散らされた果敢な男子生徒こと……俺には例外だ。

 領域を侵さずとも、俺には毒牙が構えられているのだ。

 

 

 

 

 

読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと更新していきますので、よろしくお願いします。

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