7.友達?悪い友達?
午後の自主活動の時間、2年1組の教室。
教室内の空気はひどく混乱していた。暑さの残る空気の中に、数十人分の議論の声が混じり合っている。
CCは自分の席に座っていた。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、左手は深青色の手帳にそっと置かれ、ペンの先は正確に「カフェ」という選択肢の横で止まっている。彼女の指先は規則正しく机を叩き、「タッ、タッ」という乾いた音を立てていた。それは騒がしい周囲のノイズとは鮮明なコントラストを成している。
佐藤誠(級長)
(チョークを掴んで黒板を二回叩き、耳障りな音を立てる)
静かに!
一瞬にしてクラスが静まり返った。「皆、文化祭の出し物について、具体的な提案が必要だ!」
CC
(立ち上がりはしないが、その冷ややかな声が雑音を突き抜け、有無を言わさぬ安定感を持って響く)
級長。「テーマ型模擬カフェ」の想定収益率が最も高いわ。
データモデルによれば、物資の準備コストと予想利益の比率が最適よ。これがクラスの利益に最も合致する案だわ。
級長の佐藤は眼鏡を直し、大きく安堵のため息をついた。だが、次にやってきたのは新たな難題――「人員配置」だった。
(データ精算部の零司が黒縁眼鏡を押し上げる。窓の外の光がレンズに正確に反射し、冷たい光を放った)
人員の機能的配分は既に完了している。
彼は大股で黒板の前まで歩み寄り、手に持ったタブレットが微かな光を放つ。その視線はレーザーのようにCCをロックオンした。
零司
葉山くんがドリンク調製を担当。そして氷室さん、君は財務分析、それから……フロントの**「ビジュアル担当」**を受け持ってもらう。
CC
(動きが唐突に凍りついた。机を支えていた指先が一瞬で白くなり、帽子のツバの下の瞳が火を噴くほど鋭くなる)
ビジュアル担当?
彼女は勢いよく立ち上がった。その細いシルエットから強烈な威圧感が放たれる。
CC
(100%の拒絶を込め、声は微かに震えている)
零司くん、私の感情出力は極めて低いのよ! それは顧客満足度を90%から50%以下に低下させる要因になるわ!
あなたの提案には致命的な変数が存在している!
零司
(タブレットを握りしめ、初めてCCの気勢に困ったような表情を見せる)
……だが、これはデータ上の最適解だ。君の「外見データ」は極めて高い集客効果を備えている。
CCが理性の盾で零司を圧倒しようとしたその時、活気に満ちた波紋が膠着状態を打ち破った。
咲良
(彼女はバネのように飛び起き、興奮して力いっぱい拍手した)
賛成! CCを看板娘にしよう!
笑わなくても、CCが制服を着たら絶対に100%のギャップ萌えだよ! それは天性の集客力だよ!
「可愛い!」「ギャップ萌え!」「絶対バズる!」
騒ぎは津波のようにCCへと押し寄せた。
CC
(彼女は慌てて手を伸ばし、帽子のツバを下げようとしたが、その動作は錆びついた歯車のようにぎこちなかった)
皆……理性を保ちなさい。
咲良……何を言っているの……? 代案ならあるわ……
しかし、議論の声は完全に彼女の抗弁をかき消してしまった。
(CCの内心)
論理が崩壊していく。
集団の非理性的な熱狂には抗えない。これは私の計画にはなかったこと。
そうだ……もう一人いるわ。
CCは一縷の絶望と助けを求めるような眼差しを、後方の悠人へと向けた。彼は彼女にとって最後の秩序の柱だった。
悠人は彼女の救助信号を受け取った。
彼はゆっくりと立ち上がった。その動作は誰よりも遅かったが、不思議な安定感を纏っている。彼は佐藤級長の隣まで歩き、まるで神聖な審判を言い渡すかのように口を開いた。
悠人
(穏やかだが、異常なほど肯定的な口調で)
皆! 臨時動議を発動する!
議題。果たしてCCに**「可愛くて親切、賢くて綺麗なカフェのウェイトレス」**を任せるべきかどうか!
CC
(全身の力が抜けきったように、力なく椅子に座り込んだ)
……あなたまで……
投票結果。CCを除き、全クラスの賛成で通過。
CCは極度の羞恥心から頬が赤らんでいくのを感じ、指先が無意識に手帳の革をひっかいていた。
CC
(震える声で、100%の当惑を滲ませる)
私……分かったわ。
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ホームルームが終わった後、悠人は混乱に乗じてCCの机の側へ歩み寄った。
悠人
(うなだれ、耳の根元まで赤くなっているCCを見て、申し訳なさそうに頭を掻く)
あの……君がウェイトレスをしたら、きっと可愛いと思ったんだ。でも、君がクラスメイトとずっと言い争うのも見ていられなくて、動議で強行突破することにしたんだ……ごめん。
CCはゆっくりと顔を上げた。
帽子のツバの下の瞳には、先ほどまでの脆さはなく、代わりに捨て身の決意が宿っていた。
CC
(彼女は立ち上がり、視線を悠人に釘付けにしたまま、真摯で柔らかな声で言った)
その任務、引き受けるわ。
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あっという間に放学の時間。
悠人が部活の用事で先に席を立った後、CCは向きを変え、にやにやしながら逃げようとしている咲良を見据えた。
CC
(冷ややかな声だが、拒絶を許さない力強さがある)
咲良、残りなさい。
咲良
(体が硬直する。乾いた笑いを浮かべて振り返る)
へへ……CC、もしかしてさっきの「背後からの一突き」の仕返しかな? 私はあなたの人気を思ってのことなんだよ!
CCは怒るどころか、むしろ咲良に一歩近づいた。彼女はベースボールキャップを脱ぎ、長い髪を肩に滑らせる。その瞳には、かつてないほどの真剣さが宿っていた。
CC
(少し考え込んだ後、断固とした口調で)
あの……あなたに先生になってほしいの。私に、あのような「可愛い」表情や話し方を教えてほしい。
(CCは自分の意図をどう表現すべきか、あまり分かっていないようだった)
(だが咲良は、CCが自分にそんなお願いをするなんて思いもよらず、既に興奮の絶頂に達していた)
咲良
(目を見開き、直後に絶叫した)
おおお! CCが自分から改造を求めてきたー!!
CC
(彼女は少し居心地が悪そうに毛先をいじり、視線を床に落とした)
だって……実は自分でも、写真の中の自分の顔が無表情に見えると思っていたの。でも、あなたたちと一緒に遊んでいる時……私はとても楽しいのよ!
だから、お願い。
(咲良は心の中で思った:この人工知能、ついに自分に表情管理機能がないことに気づいたんだ!)
(直後、CCを抱きしめ、興奮しながらその頬に顔をすり寄せた)
任せて! 私に任せなさい! 週末、私の家に来て。あなたを全文化祭で最高の看板娘に仕立て上げてあげる!
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CCの今日の日記 (Ep. 9 結末)
記録事項:文化祭カフェの「ビジュアル担当」に配属される。
コーチ任命:咲良を「感情出力コーチ」に決定。
核心的変数:微笑訓練の経験ゼロ。これは完全に未知の、非論理的な高難易度領域である。
今日の心情まとめ:100%の緊張と、100%の期待。




