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100%の集中モード  作者: WE/9
大学セクション

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20.無限の回想

数年後の、ある夜のこと。 凜は疲れ果てて自分の部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込もうとした。その時、視界の端に部屋の隅に置かれた一冊のオレンジ色のアルバムが映った。凜はゆっくりとそれを開き、ページをめくる。そこには、撮影者たちがそれぞれに名付けたタイトルとともに、彼女の人生の断片が収められていた。


1. 『共鳴きょうめい』―― 第29話:雨上がり 窓の外は雨が止んだばかりで、空気にはまだ湿った土の匂いが混じっている。ワークテーブルの暖色系のデスクライトの下、精密なカメラのパーツが散らばる中、悠人の右手はピンセットを握り、左手はテーブルの下で凜(CC)の手を固く握りしめていた。凜はいつものようにデータを計算するのではなく、悠人の肩にそっと頭を預け、目を閉じている。長い髪が二人の腕の間にこぼれ落ちていた。 小野寺がドアの隙間から息を殺して撮った瞬間。それはこの物語の中で最も静かで、最も安心できる平衡。二人の周波数は、この繋がれた手によって完璧な同期シンクロに達していた。


2. 『終着駅しゅうちゃくえき』―― 第44話:葉山家のプライベート卒業式 「家族」の温度に満ちた集合写真。悠人、凜、蛍、咲良の四人が寄り添って並んでいる。悠人は少し照れくさそうに凜の肩に手を置くべきか迷い、凜は端正な清廉さを保ちながらも、横目でこっそりと悠人を伺っている。蛍は腕を組んで不服そうに唇を尖らせ、咲良はダブルピースで誰よりも眩しい笑顔を見せていた。 四人の関係が「家族」として定着したことを示す一枚。嵐のような日々を越えた後に訪れた、純粋な時間。それは蛍の心の中にある、東京編の完璧な座標原点だった。


3. 『合焦フォーカス完了』―― 第46話:100%の専念モード 背景は、刺すように青い東京の空。凜の白い肌は太陽の下で発光するように輝き、白い帽子を被った悠人の瞳にはもう迷いはない。彼は真っ直ぐに凜を見つめていた。風が二人の髪を乱すが、その極致まで高められた専念フォーカスを乱すものは何もない。 高校時代、最後に撮られた二人だけの写真。その瞬間、フォーカスは完全に合い、未来の映像はすでに鮮明になっていた。


4. 『深山の光影しんざんのこうえい』―― 大学編 第7話:深山実習 蒼翠とした深い森を背景に、凜と悠人が肩を寄せ合っている。二人の前には、夜明けの最初の一筋の光が差し込んでいた。悠人は静かに凜の手を握り、二人の背後には深い闇が広がっている。 後にこの写真は、高木先生の手によって特別展の中央に飾られることになる。


5. 『現像げんぞうと別れ』―― 第12話、第19話(輝の作品) 一枚目は、旅館の廊下。浴衣姿の二人が背中合わせに立ち、夜風に髪をなびかせている。頭上に広がる煌めく星空を主軸に据えたその構図は、海外行きを模索していた当時の二人の心境そのものだった。 二枚目は、最も残酷で、最も優しい瞬間。海関イミグレーションの入り口で凜が振り返り、これまでの写真に必ず存在したあの「帽子」を、蛍に手渡している。蛍の顔は涙でぐしゃぐしゃになり、傍らでは沙也加と咲良が彼女を慰めながら、凜に最後の別れを告げている。凜の背後では、悠人が銀色のスーツケースを引きながら、遠くにいる佐藤や零司たちへ手を振っていた。 輝は、この関係性における「最も柔らかい部分」と「最も硬い部分」を同時に切り取った。この二枚の写真は、九千キロを跨ぐための拠り所となるネガフィルムだった。


凜は静かに五枚の写真を眺め終えた。それは、自分の青春を読み終えたかのようだった。


今の凜の隣に、悠人がいるのかどうかは分からない。今の彼女が何を想っているのかを解読する術もない。けれど、凜の口元には、微かな、本当に微かな微笑みが浮かんでいた。 彼女はゆっくりと顔を上げ、一つの棚に目を向けた。そこには――


一本の赤いバンダナ。 一つの銀色の髪飾り。 一つの黄色いオーバーイヤーヘッドホン。 そして、あの白い帽子。


その隣には、帰国した当日に撮られた、凜と悠人のツーショットがあった。写真の中の二人は眩いばかりの笑顔を浮かべ、まるで相手さえいれば、どんな問題も解決できると信じているかのようだった。


その写真を見て、凜は笑った。 かつて、万能であるかのように突き進んでいた自分を、愛おしむように。

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