5.100%の迷走(ロスト)
校外学習の二日目(13:25 PM)
(担任教師は焦燥を顔に浮かべ、両手を振りながら大声で叫んだ)
皆さん注意!ここがすぐに山車に占拠されます!警察からBエリアの駐車場へ直ちに移動するように指示がありました!急いで!
咲良
(パニックになりながら、CCのバッグを掴んでいる)
待って先生!CCがまだトイレにいます!戻ってきたら私たちを見つけられなくなっちゃう!
(担任教師は迫りくる人波を見て、一瞬考え、決断を下した)
間に合わない!これ以上いると隊列がバラバラになってしまう!咲良、柱にメモを貼って!私たちはあそこで彼女を待ちます!
(咲良は慌ててバッグからメモを取り出し、走り書きで数文字を書いて、目立つ街灯の柱に貼り付けた)
凜……お願い、これに気づいて……!
CC
(足取りは軽く、帽子のツバを整える)
水分補給完了。次は博物館へ……。
(CCのモノローグ)
この人混みは一体何?
CCは今日経験した細部を注意深く思い出す。すると、突然、一枚のポスターの光景が脳裏に浮かんだ。
〇時にイベントが行われる。パレードルートは以下の通り:
しまった。こんなに重要なことを見落とすなんて。もう自力で彼らを探すしかない。
[彼女は反射的にポケットに手を伸ばし、携帯を探そうとする。
指先に伝わるのは空虚な感触。彼女はそこで、自分の携帯をバッグごと咲良に預けていたことを思い出した。今、彼女は一人、人混みの真ん中で立ち尽くし、途方に暮れて思考する。]
CC
(深く息を吸い込み、無理やり脳を働かせる)
冷静に。氷室凜。彼らの行動論理を分析しなさい。
広場が占拠された場合、彼らはどこへ向かう?
可能性A:昨日の集合場所(古い街の土産物屋)に戻る。
可能性B:行程表の次の地点(神社の階段)へ向かう。
一つずつ探すしかない。
CC
(息を切らし、鋭い眼差しで店内をスキャンする)
いない……いないわ……
(彼女は店員の肩を軽く叩いた)
すみません、青藤高校の制服を着た生徒の集団を見ませんでしたか?
店員:(忙殺されている)ああ?気づかなかったな、お嬢ちゃん、道塞いでるよ!
CC
あ、ごめ……ごめんなさい。
(CCのモノローグ)
体力警報:血糖値が安全ラインを下回った。
(井戸のそばも誰もいないのを見て)
ここにもいない……なぜここにいないの?私の推論論理にどんな抜けがあったというの?
CC
(膝が崩れ落ちそうになり、膝を抑えて激しく息を乱す)
ハッ……ハッ……
見つからない。
私の世界……私の秩序が……**解体**していく。
(CCのモノローグ)
駄目……思考が……集中できない。
悠人くん……咲良……
(暑い……手が震える……世界が回ってる……)
咲良が木陰に立ち、携帯電話に向かって焦燥で大声を出している。
CC
(瞳孔がわずかに拡大し、最後の意志力を振り絞り、ターゲットをロックする)
咲良……!
咲良
(猛然と振り返り、顔面蒼白で今にも倒れそうな人影を見る)
CC?!
[CCはついに咲良の目の前にたどり着いた。距離ゼロ。
だが、この一瞬、彼女の体を支えていた最後の**論理神経**が断ち切れた。]
[彼女の体は前方に傾き、重い音を立てて咲良の腕の中に倒れ込んだ。
パタッ。
頭に被っていた帽子は、衝撃で滑り落ち、地面を二回転して埃まみれになった。
普段は冷静で、この時ばかりは無防備で、見る者を打ち砕くほど脆いその顔が、完全に陽光の下に晒された。]
咲良
(ぐったりとしたCCを抱きしめ、パニックになって大声で叫ぶ)
CC!どうしたの?!先生!早く来て!CCが倒れた!
ここは……まだ**彼岸**ではない。
CC
(か細く、掠れた声で)
ここは……どこ……?
[「ドク、ドク、ドク。」
太鼓の音ではない。重く、急いで、まるで破裂しそうな足音。]
悠人、健太、零司
(声は嗄れ、野獣のような焦りを含んでいる)
退け……!通るぞ!
[CCは苦労して首を回した。
彼女が見たのは、葉山 悠人が先頭を走っている姿だった。彼はスポーツ万能の健太すら振り切っていた。
彼は普段の温和な男子とは似ても似つかない。全身汗だくで、髪は額に張り付き、制服のシャツは汗で体に貼りつき、激しい呼吸に合わせて上下している。その眼差しは、CCが今まで見たことのない、**獰猛で恐慌に満ちた表情**だった。]
悠人
(息切れで、喉からふいごのような音を出す)
食べろ。早く食べろ。
バスから……持ってきた。
CC
(涙が止めどなく流れ、悠人の汗まみれの手の甲に落ちた)
悠人くん……
悠人
(彼女の青白い顔を見て、眉をひそめ、懇願に近い口調で)
喋るな。一口かじって。頼むから。
[CCは口を開け、クッキーを噛んだ。糖分が溶け出す。
悠人は彼女が飲み込むのを見届け、張り詰めていた肩が**ガクン**と崩れ落ちた。彼はそのまま地面に座り込み、まるで今、生死をかけた闘いを終えたかのように、大きく息を吸い込んだり吐き出したりした。]
傍の健太は、悠人のバッグから取り出したお菓子を山ほど抱えている。
CC、足りなかったら、ここにもたくさんあるからな。
悠人
(低い息遣いで、**100%の安堵**を含んだ声で)
大丈夫だ……間に合った。
(CCのモノローグ)
私は、論理に適合する場所を全て探したけれど、彼を見つけられなかった。
だけど、私が倒れた時、彼は**あらゆる生理的限界**を破って、私のそばに駆けつけてくれた。
これは計算ではない。
これは……**奇跡**だ。
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17:00 PM
帰りの観光バスの中。
車内は一種の疲れた静寂に包まれている。エンジンの低い轟音は、持続的な基底音のように響き、時折、後部座席からの健太の節操のないいびきが混じる。
凜は頭を冷たい窓ガラスにそっと預けた。路面の微細な凹凸が、車体の骨組みを通じて、直接私の側頭部に伝導してくる。その周波数は安定している。
私の右手は、既に半分食べ終えたクッキーのパッケージを、依然として強く握りしめている。
プラスチックの包みは私の手でシワくちゃになり、微かな摩擦音を発している。糖分は完全に血液循環に入り、指先の震えは止まり、脳の論理回路も再起動した。
**失神**。
この二文字は、私のデータベースに登録を許されたことがない。それは「自己管理の完全な失敗」と同義語だ。
記憶の映像は、故障したビデオのように脳内で強制再生される。
広場の熱波、回転する視界、そして……糸の切れた人形のように、威厳もなく咲良の腕の中に倒れ込む私。
何よりも私を羞恥の極みに追いやるのは、私のその脆さ、私の恐慌、そしてあの無防備な顔が、何百人もの見知らぬ人の網膜に露呈したことだ。
あの瞬間、私が築き上げた「完璧な秩序」は、**ゼロに戻った**。
これは私の人生の履歴書の中で、最も修正不可能な**致命的なエラー**だ。
ガラスの向こう側で、世界は高速で後退していく。
元々は起伏に富み、**変数**に満ちていた翠緑の山々は、今、夕日によって曖昧な紫紅色に染まっている。空の縁では、いくつかの恒星が信号を発しようとしたばかりなのに、遠くの高速道路で点灯した、整然とした人工の街灯の光に覆い隠された。
私たちは、あの制御不能な大自然から離れ、鉄骨、コンクリート、そして信号機で構成された、**秩序ある都市**へと戻りつつある。
これは私に安心感を与えるはずだ。理論上は。
だけど、私は昨晩の旅館での「混乱」を思い出した。行程表では22:00消灯と規定されていたのに。
咲良たちはその規則を無視し、私を無理やり「女子パジャマパーティー」という**混沌に満ちた活動**へと引きずり込んだ。
顔に塗られた、「100%保湿」と謳われながらもベタベタするパック。
彼女たちが「キスしたことがあるか」と問い詰めた時の叫び声。危うくあの記憶を漏らしそうになった。
そして、あの戦術論理皆無の枕投げ合戦。
羽毛が舞い、空気は埃で満たされていた。私はあの時、私の「最適睡眠サイクル表」を完全に忘れていた。
うるさい。乱雑だ。極めて非衛生的。
だけど……
なぜ私の胸には、「**喜び(ハッピー)**」という名のデータが振動していたのだろう?
みんな、とても楽しそうに笑っていた。私も……とても笑い疲れた。
車はトンネルに進入した。
オレンジ色のナトリウムランプの光が、光の帯となって、リズミカルに私の顔を横切る。
明、暗、明、暗。
まるで今の私の心拍数のように、上がったり下がったり、落ち着かない。
私は顔を回し、狭い通路を隔てて、反対側の座席に視線を固定した。
悠人は眠っていた。
彼の頭は力なく一方に傾き、車体の揺れに合わせて軽く頷いている。あの極限の疾走で汗に濡れた制服のシャツは既に乾き、シワくちゃになっていて、美的な要素は皆無だ。前髪は乱れて額に張り付き、眉間は眠りの中でもわずかに皺が寄っている。
疲れているように見える。ひどく疲れている。
私は手の中のクッキーの袋を見下ろした。
この微々たる炭水化物のために、システム崩壊した私という愚か者を救うために。
この人は、生理的な限界を破り、34度の猛暑の中を丸々4キロも走った。
体力配分の計算はなかった。熱中症のリスクも考慮されなかった。
彼の行動は、生存論理に**完全に反している**。
ただ……私が必要としたから。
トンネルは終わった。
目の前がパッと開けた。
街の無数の灯りが、夜の帳の下に広がる**煌めくデータ海洋**のように敷き詰められている。
あの整然とした通り、規則的に切り替わる信号機、幾何学的な形状の建物たちが、私に告げている。「秩序の世界へようこそ、氷室 凜。」と。
だが、私は知っている。いくつかの**コアコード**は、既に永久的に書き換えられてしまったことを。
私は窓ガラスに映る自分自身を見た。
あの冷静だったはずの瞳には、今、自分でも見知らぬ、**柔らかな光の波動**が揺らめいていた。
私は手を伸ばし、そっと帽子のツバを深くした。
お疲れ様……そして、ありがとう、悠人くん。




