18.悠人へ
大磯浜へと向かう区間電車は、少し古びた軌道の上で、単調かつ規則的な「ガタン、ゴトン」という音を立てていた。
車内の乗客はまばらで、暖房が効きすぎていて、人を微睡ませる。四人の座席は向かい合わせに並んでいた。咲良は頑丈にパッケージされたおにぎりと格闘しており、小野寺はヘッドホンをつけ、ゲーム機の画面上で指を素早く動かし、時折悔しそうな声を漏らしている。
「それで、あんたはどうして二巻目のネガがあるって分かったわけ?」 咲良がついにパッケージをこじ開け、口におにぎりを放り込みながら、好奇心いっぱいに沈黙を破った。
CCは窓際の席に座っていた。今日は黒のロングダウンコートを羽織り、墨のような黒髪が胸元に垂れている。黒いキャップを深く被り、顔の半分以上を隠しているが、影の中から覗く鋭い瞳だけは、外を飛び去っていく残雪の冬景色をじっと捉えていた。
「観察は、データ分析の基礎よ。」 CCの声は冷たく静かで、蒸し暑い車内において一筋の清流のようだった。 「あの日、カフェで2008年のネガについて話した時、私は悠人に一つ質問をしたわ。『あの露出したネガ以外に、当時残された写真はなかったの?』とね。」
CCの向かいに座っていた悠人は、窓の外をぼんやり眺めていたが、その言葉を聞いて肩をわずかに強張らせた。
「その瞬間、悠人の右側眼輪筋が約0.5ミリメートルの微小な痙攣を起こし、視線が左下へと逸れた。これは典型的な『深層のネガティブな記憶の抽出』に伴う『防御的隠蔽』の兆候よ。」CCは顔を向け、視線を悠人に正確にロックオンした。「もし本当にあのダメになったネガ一枚きりなら、彼の反応は自嘲か平然としたものであるはず。『警戒』ではないわ。」
「だから私は、お父様が本当に彼に見せたかったものが、故郷に埋められているのだと推論した。そして彼はその瞬間、それを私と共有する準備ができていなかったこともね。」
「わあ……」咲良はおにぎりを飲み込み、少し同情したように悠人を見た。「悠人、CCの前だと、本当にレントゲンを撮られてるみたいだね。」
悠人は苦笑いしながら髪を掻き、瞳には諦めとどこか晴れやかな色が混じっていた。自分の私事のために奔走してくれる仲間たちを見て、心の中の分厚い防護壁がまた少し緩んだようだった。
「君の勝ちだよ、CC。」悠人が静かに言った。その声は、電車がトンネルを抜ける際の微かな共鳴に混じった。 「親父が入院する一週間前、確かに『奇蹟』を撮ったって言ってたんだ。僕が小学校に上がる時のお祝いのサプライズだって。レイカーズが勝ったら一緒に現像しに行こうってね。」 「でも、親父が死んじゃったから、そのサプライズは僕自身の手で封印した。バスケットボールが刻まれた小さな木箱に詰めて、実家の裏庭にある木の根元に埋めたんだ。この十年間、その木を思い出す勇気さえなかった。」
機械的な電子放送とともに、電車の速度がゆっくりと落ちていった。車窓の風景は広大な田畑から、濃い灰色の屋根を持つ小さな平屋が並ぶ景色へと変わった。
ドアが左右に開くと、都会とは全く違う空気が流れ込んできた。それは腐敗した海藻、冷たい塩分、そして長い間人が住んでいないことで生じる、埃っぽい風が混ざり合ったものだった。
四人はホームに降り立った。そこは線路が一つの、極めて簡素な無人駅だった。錆びついたトタンの雨除けが、海風に吹かれて「ギィ、ギィ」と微かな音を立てている。木製のベンチは塗装が剥げ落ち、年月の重みを感じさせた。
「うわ……寒っ!」 咲良は首をすくめ、力いっぱいコートのファスナーを上げた。
無人の改札を抜けると、駅前には海へと続く長い坂道が伸びていた。通りはがらんとして、路肩の電柱には枯れた蔦が絡まり、壁面は海風に侵食された白い塩の跡でいっぱいだった。道端の自動販売機には、ピンク色に褪せた古い飲料の広告が貼られたままだ。
ここのすべては、2008年のあの夏の終わりに、あの大敗とともに一時停止ボタンを押されたかのようだった。
「データによれば、この町の人口流出率は過去十年で30%に達しているわ。」CCは最後尾を歩き、強烈な海風に黒髪を乱されていた。彼女はキャップのつばを引き、固く閉ざされたシャッターを眺めた。
「説明は難しいけど、本当に別の世界に来たみたいな感じだね。」小野寺は大きなカメラバッグを背負い、静かな通りに自分の足音を響かせていた。
悠人が先頭を歩いていた。灰色がかった冬の海を背景に、彼の背中はどこか頼りなく見えた。彼は坂の突き当たりで翻る波を見つめていた。消波ブロックを幾度となく叩く波の音は、この町の重苦しい鼓動のように聞こえた。
「あそこが、僕の家だ。」悠人は坂の中腹にある、塀に囲まれた二階建ての木造建築を指差した。
その家の玄関には「葉山」と書かれた古い表札が掛かっており、文字は薄れていた。斑な壁の向こう側では、一本の巨大な、葉の落ちた古木が灰色の空に向かって枝を広げていた。まるで干からびた手が虚空を掴み、この忘れ去られた土地を守っているかのようだった。
悠人はその古い家の前で足を止め、ポケットの鍵に手を伸ばしたが、指先がわずかに震えていた。 「ギィ――ッ」 重い扉を開けた瞬間、古い木の匂いと乾いたオレンジの皮のような香りが漂ってきた。屋内は薄暗いものの、意外にも生活感が漂っていた。
「悠人かい?」少し老いているが、張りのある声が廊下の奥から聞こえてきた。 紺色のエプロンをつけた、白髪の小柄な老人が現れた。悠人の祖母だ。悠人の背後の仲間たちを見て、祖母は一瞬驚いたが、すぐに温かい笑みを浮かべた。
「あら、お友達を連れてきたのかい? 先に電話をくれればいいのに、何も準備してないよ。」 「ばあちゃん、ごめん。急に来ちゃって。」悠人が歩み寄ると、親族に会った安堵からか、強張っていた肩がふっと緩んだ。「こっちは同級生の、凜、咲良、それに小野寺だ。」 「おばあちゃん、こんにちは!」咲良が元気に挨拶し、小野寺も礼儀正しく頭を下げた。
CCは軽く会釈をし、キャップの下から祖母を観察した。祖母が荷造りされたバッグを手に持ち、玄関脇に手土産が用意されていることに彼女は気づいた。
「ちょうどいい時に帰ってきたね。」 祖母はみんなを家の中に招き入れながら、笑って言った。「隣の村の阿照さんのところに数日泊まりに行くところだったんだよ。友達同士で温泉旅行に行こうって約束しててね、今日の午後に出発するんだ。留守中に誰もいないのが心配だったけど、これで安心だ。ゆっくりしていきなさい。」
「ばあちゃん、旅行に行くの?」悠人は少し驚いた。 「そうさ、この歳になると、動ける日もそう多くないからね。」 祖母は悠人の手を叩き、瞳に含みを持たせた。「台所には今朝蒸したばかりのあんまんがあるし、布団は二階の押し入れだよ。若い人たちで自由にやりなさい。鍵は預けるよ、悠人。」
祖母は彼らが何をしに来たのか聞かず、ネガのことにも触れなかった。その温かい配慮に、悠人は鼻の奥が熱くなるのを感じた。
三十分もしないうちに、祖母は言い残すと荷物を持って出かけていった。去り際、彼女はCCをちらりと見ると、悠人の耳元で笑って囁いた。「あの帽子を被った女の子、お母さんに目がそっくりだね。理性的だけど時々優しい。しっかり案内してあげるんだよ。」
門が閉まる音とともに、古い家は再び静寂に包まれた。ここが彼ら四人の臨時基地となった。 「よし。」悠人は振り返り、裏庭へと続く廊下を見つめた。瞳には決意が戻っていた。「暗くなる前に、裏に行こう。」
彼らはあの古木の下へとやってきた。悠人は小野寺のカバンから折り畳み式のスコップを受け取り、深く息を吸った。 「裏庭を全部掘り返してでも、あの奇蹟を見つけ出す。」 彼はスコップの柄を握りしめ、力いっぱい土を踏み込んだ。
ガチッ――。
スコップの先が土に入って十センチも経たないうちに、固い金属製のものに当たった。 「待って、今の音はおかしい。」小野寺がすぐに駆け寄った。「木箱なら、もっと鈍い音がするはずだ。」
悠人はしゃがみ込み、湿って冷たい土を手で退けた。次第に、錆びついた長方形の輪郭が現れた。それは木製ではなく、年月の経過を感じさせる錆だらけの「クッキーの空き缶」だった。 「僕が埋めたのはこれじゃない……」悠人の呼吸が激しくなる。「これは……親父の字だ。」
腐食した缶の蓋の縁に、マジックで書かれた二つの掠れた文字が、辛うじて読み取れた。
『悠人へ』




