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17/68

17.14482回目のミスショット

夜のストリートバスケットコート、空気さえも鋭い結晶へと凍りついていた。


急いで駆けつけた悠人はスリーポイントラインの外に立ち、荒い呼吸が空気中で白く大きな塊となって凝結していた。彼は午前中のデートの時と同じ、エレガントなウールコートを羽織っていたが、その姿はこの古びて錆びついたコートにはひどく不釣り合いだった。


彼はゴールの下に佇むCCをじっと見つめていた。街灯の残影の中で、その姿はひどく華奢に見えたが、同時に氷のように冷たく硬かった。


悠人 「どうしても、ここまでする必要があったのか? 凜」 (声は震えていた。寒さのせいか、あるいは掌の中でくしゃくしゃになったあの白紙のせいか)


CC 「曖昧なはぐらかしは、受け付けないわ。嘘を見破った時、気づいたの。午前中のあなたは、完璧すぎたわ」


CCは屈んでボールを拾い上げ、悠人に向かって強くパスを放った。死寂の深夜に響くボールが掌を打つ鈍い音は、まるで落雷のようだった。


CC 「打ちなさい。お父様に教わったフォームで。もし、あの『父親はまだ生きている』という嘘を維持したいのなら、私に証明してみせて」


悠人はボールを握りしめた。指先に伝わる冷たく硬い感触が、十年もの間眠っていた筋肉の記憶を呼び起こす。2008年のあの蒸し暑い夜、父親の大きな掌、そして一面の緑色の紙吹雪の中で崩れ去った紫金の夢。


彼は跳んだ。コートの裾が風を切り、跳躍の高さ、放たれた角度、指先がボールの皮を弾く感覚――すべてが教科書のように完璧だった。


――ガコン!


ボールはリングの後縁を正確に叩き、激しく跳ね返った。床の上で孤独にバウンドし続け、ついには金網の隅へと転がっていった。悠人はシュートの残心のまま空中で固まり、やがて重々しく着地した。


CC 「弾道が3.2センチメートル逸れたわ。ボールが手から離れるその瞬間、あなたの脳が拒絶したからよ。……あなたは怖がっている。もしシュートが決まってしまえば、あの『温かくしなやかに』という期待を背負い続け、壊れてしまった自分を演じ続けなければならないから。……そうでしょ? 悠人」


悠人はゆっくりと手を下ろした。背骨を抜かれたかのように力なく、氷のようなベンチに崩れ落ちた。


悠人 「……君の勝ちだよ、凜。」 (自嘲気味に笑ったが、その瞳は急速に潤んでいた。一日中維持し続けたあの完璧な偽装が、ボールが弾け飛ぶとともに、音を立てて粉々に砕け散った)


CCは黙って歩み寄り、悠人の隣に静かに腰を下ろした。


CC 「勝とうなんて思っていないわ。私はただ、あんな『遺憾いかん』な表情を浮かべる悠人に戻ってほしかっただけ」


悠人 (冷たい空気を深く吸い込み、両手の中に顔を埋める。その声は砂紙で擦ったように掠れていた) 「聞きたいかい? あの……39点差で負けて、すべてを失った物語を」


悠人が吐き出した白煙が彼の横顔をぼかし、時間を2008年のあの絶望の夏へと引き戻していく。


悠人 「凜、知ってるかい? 四歳の子供にとって、『ヒーロー』と『父親』は同じ意味なんだ。あの夏、親父が入院したんだ。親父は病室に小さなテレビを置かせてこう言った。 『悠人、見てろ。あのコービーも今、怪我をして、みんなに見下されている。でも彼は必ず奇跡を起こす。彼が勝てば、パパも勝てるんだ』って。 当時の僕は、純粋に『試合の勝敗』と『父親の命』をイコールで結んでいた。レイカーズが優勝しさえすれば、死神は去るはずだったんだ」


悠人 「そして、2008年の第6戦。92対131。39点差の虐殺だ。テレビの中の緑色の紙吹雪と、ブーイングの中でうなだれて去っていくヒーローを見た。あの瞬間、病室の酸素がすべて吸い取られた気がしたんだ」


父親はその大敗の後、容態が急変し、言葉を発する力さえ失っていった。


悠人 「親父は死ぬ間際、最後の力を振り絞って僕の頭を撫でて、聞こえないくらいの小さな声で言ったんだ。『悠人、たとえ世界が崩れても、温かく歩んでいくんだ』って。 ……だから僕は、今のようになったんだ。本気になった途端、運命がまた僕に『39点差』の結末を突きつけるのが怖くて。勝とうとしなければ、あんなに無残に負けることもないと思い込んでいたんだ」



CC 「悠人。あなたのロジックは間違っているわ。あなたは2008年を終着点ラストシーンだと思っているけれど、それはただの過程プロセスよ」


CCはネガの入った木箱を彼の方へ押し出した。


CC 「39点差は確かにあなたたちを打ち砕いたわ。けれど、あの男は一年後に王座を奪還した。そしてお父様が教えたあのネガも、十年間露光したままだったけれど、今、私が救い出したわ。奇跡はあの夜に消えたんじゃない。あなたが2008年に置き忘れてきただけよ」


CCは立ち上がった。黒い長髪が風に吹かれて彼女の頬をかすめる。


CC 「残りのネガは、あそこにあるんでしょ? お父様が倒れる前に連れて行こうと言っていた、あの『奇跡』が起きた場所よ」


悠人は目の前のCCを見つめた。この少女は、最も残酷な「暴露」をもって、時を超えた救済を自分に与えたのだ。


悠人 「……凜。列車の切符、結構高いんだよ?」 (目尻の涙を拭い、ボロボロではあるが、もう偽物ではない笑顔を浮かべる)


CC 「つべこべ言わない。小野寺くんと咲良がもうグループチャットでお土産をねだっているわよ。行きましょう。あなたの時間を2008年から早送り(スキップ)しに戻るのよ」


悠人の目に映る凜は、全身から光を放っていた。その輝きは安定し、物語の結末まで決して消えることはないだろうと確信させた。


【CCの今日の手帳】

任務記録: 目標の真の感情を回収することに成功。


データ修正: 2008年の惨敗は「因」であるが、「優しい空殻」が唯一の「果」ではない。


行動分析: 目標の故郷へ同行。冬休みの最適省エネ計画には反するが……。


個人メモ: 午前四時の曙光の下で、悠人の笑顔の輝度は120%増加した。――今夜の私のパフォーマンスは完璧パーフェクトだったわ。午前中の悠人よりもずっとね!

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