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100%の集中モード  作者: WE/9
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12.隠し要素(イースター・エッグ)は誰だ?

文化祭が終わって二ヶ月が過ぎた。

窓外の空は冷え冷えとした石英のような灰色に染まり、北風がガラスを叩いては鋭い鳴音を上げている。電気代節約のため、学校の中央暖房はいつも申し訳程度にしか機能していない。しかし、旧校舎のほとんど使われていない備品室の中だけは、今、室温より15度も高い熱を放っていた。


小野寺拓海はどこからか古い座卓を持ち出し、分厚いパッチワークの布団を被せ、あろうことかその下に電気ヒーターを密かにつなげていた。今の彼は、巨大なセイウチのようにこたつに身を沈め、ホットココアを手にしている。

悠人の制止に対し、彼は大真面目な顔で言い放った。

「悠人殿、それがしを侮るなかれ。これは校則違反ではなく、『領土防衛』でござる!」小野寺は光り輝く眼鏡を押し上げ、激昂した神情を見せる。


「だからさ! あの『リコスリス』(LycoSlyce)についてだけど!」咲良がクッションを力いっぱい叩き、隣の悠人をびくつかせた。「あの白髪の主人公、あんなに相方を信じてるのに、最後にあっちの黒髪の子が銃を向けるなんて? 絶対脚本家の悪意だよ! 悠人、あんたはあの黒髪の子が本当に殺すと思う?」


大姉御おおあねご、それは考えが浅いでござる!」小野寺も負けじと反論する。「あれは『極限状態における感情の昇華』でござるよ! 親友同士の愛憎アイゾウこそが真髄。拙者なら、美少女の親友に殺されるなら本望。それこそ名誉あるエンドカードというものでござる!」


「名誉なわけないでしょ! あんたのオタク脳には何が詰まってるのよ!」咲良は怒ってチョコ棒を剣のように振り回す。


「まあまあ、二人とも落ち着いて」悠人が仲裁に入る。「じゃあ最近の『転生したらゴブリンだった件』はどう? みんな見た? 俺、最近ああいう気楽な建国物語、癒やされるから好きなんだけど……」


「おおお! あの作品でござるか!」小野寺が瞬時にモードを切り替え、瞳に深みを宿す。「悠人殿、拙者なら、後で出会うあのスライムたちを引き連れて他国を侵略するでござるよ。何しろ、拙者の体には人工知能と氷雪の龍が宿っている設定ゆえ、聖教会など恐るるに足らず!」


「でも、やっぱり主人公はゴブリンキングに進化して、エルフの姫さんとかを嫁にするのが王道じゃないか?」悠人は困惑して頭を掻く。


「それは俗物! 異世界のテンプレートでござる!」咲良が突っ込む。「私は魔物が傲慢な人間をボコボコにする展開が好き。超スカッとするじゃん?」


三人は「親友は殺めるのか」から「ゴブリン進化の社会学的意義」まで、議論の波を次々と高くしていった。


屋根を吹き飛ばさんばかりのこの議論の戦場において、CCは背景の隠し要素のように静かだった。

彼女は本来、今日の宿題を片付けるついでにサボりに来ただけだったが、今は咲良の隣に座り、膝をこたつの中に埋めている。こたつの熱気が催眠効果をもたらしたのか、あるいは三人の騒がしい声の周波数が、彼女の脳内で「安全なホワイトノイズ」に分類されたのか。


CCのまぶたが次第に重くなる。真っ直ぐだった背筋がゆっくりと傾き始め、最後には、すべての防備を解いた猫のように、彼女の頭は無意識に咲良の肩へと預けられた。

肩にかかった重みを感じ、咲良が驚きの声を上げる。

「……こいつ、寝ちゃったよ」

咲良はそう言いながら、CCの帽子を少しだけ真っ直ぐに直してあげた。


それまで咆哮していた小野寺が、咲良の肩で眠るCCを見て、急に声を潜めた。

咲良は肩の高さを調整し、CCがより快適に寄りかかれるようにしながらも、毒づくことは忘れなかった。「あんたたちがうるさすぎるから、この人間計算機までフリーズしちゃったじゃない」


そんな温かい空気も、三分と持たなかった。

「ぬおお! それでは次の作品、『転生して錆びた歯車になった僕が世界を救う件』について……」小野寺は興奮のあまり、ついボリュームを下げるのを忘れ、激しくテーブルを叩いた。


ドン!


咲良の肩に寄りかかっていたCCが、その音に弾かれたように目を見開いた。

彼女の両目は瞬時に冷徹な清明さを取り戻し、睡眠を中断されたことによる「低気圧」さえ纏っていた。

彼女はゆっくりと頭を上げ、視線を縮こまった小野寺に正確にロックオンする。


「小野寺くん」CCの声は、窓外の北風のように冷たかった。「モニタリングの結果、あなたの挙げた作品タイトルの論理性は極めて低いわ。それから『リコスリス』の議論について。ビッグデータによれば、親友が主人公を殺害する確率は20%以下。議論の内容から推測するに、結末は二人が協力して台北101の爆破を阻止するものと確信している。あなたたちは低確率な事象の議論に45分間を浪費したわ」


「え……ひ、氷室殿、お目覚めでござるか?」小野寺が首をすくめる。

CCは立ち上がった。その動作は鞘から抜かれた軍刀のように鮮やかだった。彼女は片手でこたつの布団を掴み、もう一方の手で正確に入り口を指し示した。


「現在時刻16:45。非公式熱エネルギー施設の撤収まで、あなたに300秒の猶予を与える。さもないと先生の巡回が来るわよ」

「そんな殺生な! 拙者の心のオアシスがぁ!」小野寺は悲鳴を上げながら片付けを始めた。


冷たいガラス越しに夕日が備品室へ差し込み、立ち去るCCの背中を照らしている。言葉は相変わらず厳しいが、彼女が咲良に寄りかかっていた側の髪が、まだ少しだけ乱れていることに悠人は気づいていた。


その時、CCは心の中でこう思っていた。

(ふん、アニメ勢の連中ね。私はもう『転生ゴブリン』の原作小説を読み終えているわ。ネタバレしないでおいてあげるのが、私の最後の優しさよ)


CCの今日の日記


記録事項:違法こたつ集会に参加。

異常報告:システムが予期せずスリープモードに移行。

ノイズ分析:「転生ゴブリン」や「リコスリス」に関する議論はデータ的価値はゼロだが、発生する音エネルギーは睡眠を効果的に促進するようだ。

個人メモ:小野寺くんを口頭で脅しはしたけれど、明日また彼がこたつを設置したとしても、通報の優先順位は0.5秒ほど後回しにするかもしれないわ。



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