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千年前からやってきた見習い魔法使い、現代に生きる  作者: 桃月 とと
第二章 師匠の墓はどこ?

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第14話-2 懐中時計

 遅くに帰ってきたユーリは夕食を取りながら、ノア・エレオスに会えなかったことを本気で嘆いていた。


「うわぁぁぁぁぁ!! オレも会いたかったぁぁぁぁあ!!」


 子供のように遠慮なく嘆く姿は清々しいものがある。


「魔法使いの十分の三がこんな短期間で現れるなんて思わなかったから油断した……もう二度とメルディの側を離れない……」

「ロマンティックさが足りないわねぇ」


 ナーチェが呆れながら皿を戸棚にしまっている。


「私に集まってるんじゃなくて、お店に集まってるんだよ」


 メルディは濡れてた皿を布巾で拭き、ナーチェに手渡した。

 マグヌスの手紙、イザベラ、セフィラーノ、そしてノア、それから見習いのレン。全員が一度フォリア・アンティークスにやって来ている。


「……ノアさん、また来てくれるかな? イザベルさんの時みたいに何か連絡来てない!?」

「来てないけど、メイシもらったよ。連絡先書いてるやつ」


 何かあれば、と帰り際に手渡されたものだった。


「俺も貰った」


 と、揶揄うようにエリオがチラリと名刺を取り出すと、


「い、いいなぁあああ! 魔法使いの名刺っ!」

「ここに書いてる肩書きは上級研究員だけどな」


 反応に満足したのか、ケラケラと笑いながらその名刺をユーリに渡した。


「ああそうだ。あとでメールしなきゃ」

「なになに!? 用があるの!?」


 名刺を大事そうに両手の指先で摘んだまま、ユーリは目を輝かす。


「マンドゴラが必要みたいだからあげちゃおうかなって」

「えっ!!?」


 メルディはマンドゴラを持っていた。たった一本だけだが。時空転移に巻き込まれる直前、偶然採取していたものだ。彼女の指輪の中に引き抜いた直後の状態のまま保存されている。


「おまえそれ……いくらになると思ってんだ……」


 懐中時計の五十万エルが霞むほどの金額になるのは間違いない。マンドゴラの標本ですら高値で取引される世の中だ。

 メルディには千年前から持ってきた魔獣の素材がこの他にもいくつかあるが、全て指輪の中へ仕舞い込み、表に出すことはなかった。この時代の状況を知ってからは、慎重に動くべきだと早々に判断している。


「お金はないと困るけど、お金がありすぎてもトラブルの元なのよね」

「なになに!? またマグヌスの話!!?」


 案の定、ユーリは前のめりだ。だがメルディは、そうだよ、と軽い返事のみにとどめ、


「これに関しては、ノアさんの方が私よりきっとうまく使ってくれる気がするからさ」


 確信するように少し遠くを見ていた。


(マンドゴラ、増えたらちょっとくらいもらえるかな? アラクネ糸みたいに)


 ちょっぴり呑気なことを考えながら。

 マンドゴラは挿木で増やすことができた。気の遠くなるほどの環境整備が必要だが、ノアならやれそうだ。彼の錬金術への情熱はこの半日で理解できるほどだった。


 深夜、千年前からやってきた魔法使い見習いは、ノアの名刺に載っていたメールアドレス宛に一通のメールを送ったのだった。



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