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八話 牛

 受付嬢の言葉を受けて次の日には移動で私が王都まで来た荷馬車とは違ってもっとしっかりしている作りの荷馬車を用意されて魔女なのかローブを着ているコスプレと西洋の甲冑が数名乗っている馬車で、私が乗るときに視線を感じたが無視して座って過ごす。


「えっと、本当に貴方が一人で倒すの?」

「俺たちと同じDランクって聞いたけど?」


 馬車が動いていると暇なことに痺れを切らして喋りだす人が増えてきて、その会話に聞き耳を立てている御者もコスプレの人だから少し合いの手を入れるように「解体だけでいいんだよな?」と言ってるがみんなが質問をするので埋もれて誰も聞いて無さそうだ。


 牛と聞いてはいるが、ゴブリンが人間だとしてウルフや野犬の類も考えると色んな生き物が魔物という病気で浸食されていってるんだと推測できる。

 解体して肉も欲しいと言ってたので調べるか食べるんだろうけど、魔物も食用として食べれるなら火の問題さえなんとかすれば非常食などを買い足さなくても現地調達出来る気がする。


「元々どこに住んでたんだ?」

「パーティって剣士だけ募集してるの?魔法使いはいらない?」


 ライターと…あとは炭だろうか?サバイバル知識が無いのだけど、ナイフさえあれば火も食事もある程度何とか出来ると聞いたことがある。水の確保がなにより重要だとか。


 川の近くを拠点にすれば森の中でも大量に魔物を狩れるし、あと金貨5枚を稼ぐならそういう下調べをしてからやっていこう。


 一日銀貨100枚でも足りない。500枚を目標に行動していきたい。

 今回は受付嬢の提案によるものだったけど、地上の生き物かどうかを確認してから肉も皮もいらない魔物を狩る仕事がないか再度聞いて確かめてみよう。


 西の平原がどこまでか分からないのでイメトレだけはしておきながら牛に備えておく。


「この子寝てるのかな?」

「そもそも目開いてたっけ?」

「薄目開いてた気がするけど、目が悪いのかもしれないな」


 周りの声を聞きながら一日野宿を挟んでから少しずつ周りの人が体を強張らせているのが分かる。


「本当に任せて大丈夫なの?」

「危険なら逃げていいつっても馬車を走らせてミノタウロスから逃げ切れるものなのか?」


 不安な声を他所に、御者を担当してる人が焦ったような声を上げ始める。


「一体確認したぞ!どうする?まだ遠くだが…」


 私の感知範囲外にいるようなので立ち上がって御者側に体を乗り込ませて前方を確認すると、黒い毛をした筋骨隆々とした牛がこん棒を持ってとぼとぼ歩いている。


「ど、どうする?」


 そう言いながらも馬を停めているので、私は歩いてミノタウロスとやらに近づく。歩いて行けば少しずつミノタウロスの音が聞こえ始める。


 心音の近くに鉱石の反応があるので間違いないだろう。どういう進化を遂げて太い脚に蹄と成長していったのかは分からないが、筋線維が人間のそれとはちがって丈夫なのが十分に伝わる。


 頭を狙えば木刀でもなんとかなるが豚ゴブリンと同じで身長という体格差があり、豚ゴブリンの上位互換というのが分かる。


 仕方ないので荷物を降ろして、銅刀だけを腰に下げて対峙する。

 目がそこまで良くないのか、眼球の動きよりは鼻が良いのだろう。鼻呼吸をしてから私の存在を認知して、魔物というのは理性があまりないのか「ぶもぉぉおお」と叫んだあとにこちらにこん棒を振り回しながら近づいてくる。


 万が一にも父より遅いあの攻撃が当たるとは思わないが、出鱈目に振り回している攻撃の一番の隙を突いて一足飛びに近づいて両足を抜刀一閃する。時間差を置いて、ミノタウロスが前に倒れてくるのを確認してから体重に合わせるように首を刎ねる。


 銅刀の耐久性も丁寧に扱えば問題はないが、思ったよりもミノタウロスの筋肉が凄かったので刃が少し潰れてしまっている。壊れなければいいがミノタウロスを乱獲予定が今後も来るなら何本が刀のストックが必要そうだ。


 やることはやったので周囲に耳を傾けるが、一匹以外に反応はないので、荷物を持って馬車に戻る。


「あんたすげえな!」

「何が起こったのか分からなかったんだけど!」

「本当に一人で簡単にやっちまった!」


 どこまで解体作業がかかるかは分からないので、次に備えて休んでおく。

 始めて対峙する相手なので慎重に戦ったがこれなら数体が相手でも問題は無いと思う。


 ミノタウロスという生き物を間近で感じた上でここにいる人間たちも武器の品質も問題はないし慎重に戦えば恐らく倒せると思うが、はしゃぎ方からしてまさかミノタウロスのよく分からない素振りを目で追えなかったのかもしれない。

 私は追えていたけど、それも父という師があってこそだし、戦闘の際には目を開いてないことが多いから何とも言えない部分もあるが父の偉大さを実感するはしゃぎ方で少し嬉しい。


 数人がかりで解体をしたからか田舎にいた子供よりも早く荷馬車に肉などを乗せたあと移動を再開して御者の目が良いのか私の音を拾う感知外から発見の報告を再度受ける。


 外を見れば確かに遠くに数体山羊?みたいな生き物を食い散らかしてる姿を見かけて、遠いが歩いて向かうと短慮に「ぶもぉぉおお」とまた叫んで武器を持ってない者は頭から突進して来てくれるのをありがたく横に逸れて首を落とす。


 残り二体がずっと「ぶもぶも」言いながらこちらを警戒して叫んでいるので様子を見るが、どうしようもないので私から近づいて一体の脚を両断した後に首を刎ねる。

 次の一体がそれに対して怒り心頭に上段へと構えたこん棒を雑に縦振りするので素直に避けて脚と頭を切断して終わる。


 三体…合計四体を相手にしただけで銅刀が刃が潰れてしまっている…次からは木刀でも相手すべきかもしれない。想像以上に筋肉が発達している。


 後の処理を任せて時間をかけて次のミノタウロスを探しつつ処理していき、荷馬車が獣臭くなるのを感じながら積まれてくミノタウロスの肉と角が血抜き処理もしてないし獣臭いだけでなく血生臭さも残っている。


 周りの人らはそれが平気なのか、嗅覚に敏感なせいでとても嫌な気分になる。


「報告だとそろそろ終わりだと思うんですけど…どうしますか?」


 受付嬢は十数体と言っていたが今のところ処理したのは八体ほどだ。まだ足りないのでは?と疑問に思うも周りはそんな空気ではないみたいだ。


「これだけ倒したら終わりよね」

「すごいな本当。解体するだけでいいって美味い話もあるもんだ」


 多分この空気だと帰ってしまいそうなので御者の方を見てから「次」とだけ言うと。


「わ、分かりました」


 嫌そうにしてるが、私だって別に好き好んでやってるわけではない。正確な数が分からないにしても十体以上は仕留めないとこちらは金貨5枚がかかっている。この人らが幾らで雇われたかは知らないが依頼失敗にはしたくない。


 進んでいくと夕方近いこともあって御者が何も見えてないのか発見の報告を言ってこないのにミノタウロスの鼻息が聞こえてくる。


 私が前に出ると、馬の動きを停めてくれるので、鼻息が聞こえた方に馬車を降りて向かうと丘になっている場所があってその周辺で呑気に居眠りしているミノタウロスが結構な数いる。


 牛って集団生活して生きていくものなのか。まぁ草食動物…あれ?山羊みたいなの食べてなかったっけ?いつの間に肉食になってたんだろう?


 起こさないよう一体ずつ処理していき、子供のミノタウロスも丘の上に四体ほど眠りこけている。一応魔石があるか確認してから魔物だと分かったので処理する。

 子供は数えないとしてここら一帯にいたミノタウロスは七体か。合計十五体。


 判断に困るから馬車の方へ戻ると「どうでした?」なんて呑気に言われる。


「七体と…子供四体」

「いたんですか!?」


 数が数だから時間がかかるだろうとみんなが解体をする間に周辺を歩いて探ってはみているが特に息遣いも動きも聞こえないからこれで良いのかな。


 私達が向かう途中に出会ったミノタウロスは狩りの最中だとしたら、奥へ進めばもっといる来もするが。


 暗くなり始めてることもあって作業が長引いてしまったようで、荷馬車がさらに重たくなって馬の動きが遅い状態になったからこれ以上仕留めても載せることが出来ないから帰りましょうと言う全員の言葉に頷いておく。


 帰りは荷物が多いのもあって一日半時間がかかり、その際に不思議なことがあった。

 魔女の恰好をしてる女が何かしたのか保冷剤のような物で肉を冷たくしていたのでどこにそんなものを隠し持っていたのか私の耳に入ってくるのは濁った泥水のような音が微かに聞こえて肉を冷やしていた。


 目を開けて確認しても保冷剤は見当たらないのに肉が冷えているので、便利な道具が売ってるのかもしれないから雑貨屋に何かないか探してみるのもいいかもしれない。


 そんなことを思いながら王都に着くと荷馬車に積んだ血生臭い香りをまき散らしながらギルドへ着いて、受付嬢が笑顔でこちらに手を振っている。


「ティーナさん聞いてよ!この子本当に一人で全部やっちゃった!」

「そうでしたか!それは良かったです。アカネさんありがとうございますね」

「見せてやりたかったな。何が起きてるか何回見ても分からなかったからな」


 会話が弾んでるようで、私は水をもらいながら空いてる席に座って水を飲んで換金されるのを待つ。

 荷馬車に積んだものを解体場とやらに運ぶのに外では色々と作業をしているみたいで、受付嬢が私の所へ来るのは結構な時間を要した後だった。


「アカネさんお疲れさまでした。どうでしたかミノタウロスは?」

「見つけたのは…十五、子供四でした」

「はい!たしかにその数でした。皆さんの報告も聞きましたが皆さんアカネさんの話しばかりでして…ミノタウロスはまだいると思いますか?」

「恐らく…荷馬車に積めないから帰ろうと言われました」

「やはりそうですか…街路付近に住み着かれると迷惑なので早めに対処したいんですが…アカネさん…」


 何故か懇願されるような声音で私に言ってくるが、私一人だと解体とか出来る自信がない。


「魔石だけでいいんです…魔石だけで追加金貨1枚…少しでも角も持ってきてくれたら銀貨500枚でどうでしょうか…?」

「…明日…行ってきます」

「本当ですか!ありがとうございます!あ、今回の報酬お支払い今がいいですか?」

「次でいいです…」


 また馬車で行くよりは徒歩の方が早いかと思い、お金の誘惑に諦めて、銭湯に向かった後は武器屋に行く。


「おう。嬢ちゃんか、一応試作品出来てるけど見てくれねえか?」


 銅刀の手入れを頼みに来たのだけど、もう完成したのか。

 鉄刀を見せてもらい重さは申し分ない。少し刃の部分が太い気がしたので「太い」と言えば説明される。


「丈夫にってことだからそれくらいがいいと思ったが駄目だったか?一応試作品だ、使ってみてくれねえか?」


 貰えるようなので貰うとして、銅刀の鞘よりもしっかりした鞘が鉄刀には付いていてそこは気に入ってる。

 丈夫という意味ではミノタウロスを相手にしていた時に思ったがこのサイズも案外ありなのかもしれないが刃こぼれすれば結局似たようなものかと思い店主に「同じのを数本」とだけお願いしておくとまだ在庫があったらしく試作品が三本ほど渡される。一応どれも鞘付きだ。


「一応作ったはいいが、耐久性がなぁ」


 そう言われたので指で叩きながら強度を確認するとたしかに均一な強度ではないし、不純物もあるのか最初に渡されたのがまだマシかもしれない。とはいえ木刀を使うよりも丈夫そうなので素直に貰っておく。


「これの…手入れを」

「おん?あぁ最初の見本か、随分使われてるな。ただ壊れてないのが不思議なくらいだ…多分研ぎなおしても長持ちしないがそれでもいいのか?」


 頷くと、ちゃんと研ぎなおしてもらい、その間に背中に四本鉄刀を背負って返してもらった銅刀と木刀を腰の包帯に括り付けておく。


「ぜ、全部使うのか?」


 これもマジックバッグとやらがあればなんとかなるのかもしれないが…無い物を思っても仕方ないので、問いには首を横に振って置いて、お辞儀をしてから店を出るときに背中の刀が引っかかりながら恥ずかしい思いをして気を付けて外に出てから雑貨屋で携帯食量を買い足して、宿に向かう。


 宿へ行くと私を見るなり鍵をスッとカウンターに置いて笑顔を向けられるので銀貨一枚と交換して部屋に向かって荷物を置く。


 野営するにしても結局仮眠生活になるだろうし、明日に向けて今日は十分に休んでおこうと食事が来るまで仮眠、食事を食べたらその後は睡眠として次の日を迎える。


 荷物がやはり刀四本が邪魔だけど持って行かないとと思い早朝に宿を出ようとしたら受付の人が話しかけてきた。


「お部屋、空けておきますので荷物は置かれていきますか?」

「数日…いませんよ?」

「少々不便にしてるように見えたので、荷物を預かるくらいなら大丈夫ですよ、お部屋もわざわざ当店に毎回来てくださるので気に入ってもらえたのかと」


 都会も都会でこんなサービスみたいなことしてくれるんだなと思い背中の鉄刀を二本預けることにして「ありがとうございます」と言うと笑顔でお辞儀されたのでこちらもお辞儀を返す。


 少し身軽になったところで再度西へ向かい、残りのミノタウロスを探すために一度通った道を歩いて進んでいく。


 行きは馬車の方が早いのか、私の歩幅が小さいせいか予定してたよりも野営したところに着くよりも暗くなってしまって、歩きながら仮眠を取って進んでいく。


 疲れた時には一応休憩をするようにしてるが、いまいち体の限界が分からない。

 多分呼吸で無理やり誤魔化してる部分もあるせいだとは思うが、その割には筋肉が断裂することもないし、骨に関してもヒビは入ったかもしれないが、日数経てばそんなに処置を施さなくても治る。


 父に初めて入院送りにされたときはどうなったかと思ったが、もしかしたら今までの経験が活かされてるのかもしれない。


 改めて父に感謝をして、残党狩りに向かう。

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