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ネット小説の世界に転生しました

作者: 七地潮


〜ウェイントール・ルスコフリス〜



俺はルスコフリス王国の第一王子、ウェイントールとして生を受けた、元日本人の転生者だ。


6歳の誕生日に、婚約者となる公爵令嬢、レオノーラ・ダクソルンとの顔合わせの席で思い出したのだ。


この世界は姉貴が無料ネット小説サイトで書いていた小説の一つだって。


貴族学園の2年になると入学してくる、男爵家の庶子がヒロインで、俺がヒーロー。

彼女の入学式の日にお互いが一目惚れ。

でも俺には婚約者がいるし、お互いの想いを隠しつつ、諦めきれない募る恋心を消すことはできず、婚約者に隠れて逢瀬を重ねる。


まぁ、つまりは浮気だね。


『わかっていても止まらないのが恋愛脳だよね……多分。

今回は王道の基本路線なの』

とは姉貴談。


勿論隠していても婚約者にはバレバレで、婚約者が彼女を虐めるわけだ。

誹謗中傷から器物破損、傷害事件まで、ありとあらゆる手を使い二人を引き離そうとする。


そのイジメの証人を集めて、俺の卒業パーティーで断罪からの婚約破棄。


かーらーの、実はそれら全て彼女の自作自演で、証人はお金で頼まれた偽証人。

実は男爵が、庶子を使い俺を堕とし、王家に取り入ろうと計画し、庶子を俺好みに仕立て上げ、学園に入学させた。


そして、それに気付いた婚約者が、確たる証拠を揃え、断罪返し、つまり逆ざまぁをするお話し。



つまり、策を講じた男爵とその庶子、そして浮気をした俺が断罪対象なんだよな、コレが。



男爵家はお取り潰し、庶子は北の修道院行き(なぜどの小説でも【北の修道院】なのだろう?)、そして俺は、相手の本質も見抜けず、周りの言葉に踊らされ、証拠集めも不十分なまま、自分の婚約者である高位貴族を貶めた、などの理由で廃嫡処分となる。


さらに、王都から一番離れた小さな王領を一代限りの伯爵として拝領され、しかも、後に諍いを起こさないためにと、断種までされてしまう………



姉貴ーーー!!!!

王子に、いや男に何か恨みでもあるんかーーーい!!!


確かに姉貴はざまぁモノばっかり書いてて、お花畑ヒロインや、ヒドインや、王子や、その従者が酷い目を見るモノが多かったけど、読んでた時は

『へー、大変だねぇ、だがもっとやれ!』

とか思ってたけど、それが自分の身に起きるとなると話は別だ。


せめて継承権剥奪くらいにしておいて欲しかった……。



それにまあ、ネット小説読むくらいだからお察しだろうが、俺は【悪役令嬢】が好きだ。

もともと気の強い女性が好きだし、悪役令嬢ってハイスペックじゃん。


スタイル抜群、頭も良くて礼儀作法やマナーも完璧、色々万能。

そんな相手ににコンプレックスを持ってしまい、明るく軽く空気を読まないヒロインに走るとか、淑女として感情を隠してるところを、冷酷だ、能面だと難癖つけて正反対のヒロインに走るとかだろ。


俺としては分かりやすいあざと女より、完璧な女性がふとした時に見せる隙がグッとくる!!


しかも出会の頃はニコニコ可愛いキャラだったのに、完璧キャラになるのは俺に対する愛からだろ?

俺の隣にいるために色々努力して、感情を表に出さない様にいつも微笑んでいるから能面と言われる様になっちまうんだろ?

それをひっそり悩んでるけど、侮られないためにも、いつも微笑みを浮かべてるんだろ?


なんだそれ、可愛すぎるじゃんか!


だから宣言しよう、


俺はヒロインと出会っても絶対に堕とされない、レオノーラ一筋である!と。



明日の入学式での出会イベントは、

【入学式に遅れない様に早めに来たら、講堂がまだ空いていなくて途方に暮れているところに、生徒会長の俺が鍵を開けに行く、そこでお互いに一目惚れ】

…………姉貴よう、いくら王道つったって、今時これはナイワー



まぁどんな女性来ようとも、俺の愛はレオノーラだけに捧げてるからな。

あざと幼児体型ヒロインめ、来るなら来てみろ!

絶対に堕とされないからな!!














〜レオノーラ・ダクソルン〜




こんにちは、公爵家の次女に転生した、レオノーラ・ダクソルン こと長谷川 温和はるなです。


趣味は前世、今世共に読書で、前世では紙媒体は場所を取り、床を変形させるので、ネット書籍を読む様になったある日、無料サイトに辿り着き、色々読み散らかして来ました。


そして、多分、この世界はその作品の一つだと思われます。


ナーロッパと言われていた世界観、半端に日本の物があり、貴族社会の筈が、かなりなあなあと言いますか、緩い。


庶民が貴族の馬車の前を横切ったからと言って鞭打ちする、なんて事もなく、領主であろうともタメ口をきいても罰せられず、平民メイドが貴族の子女を虐めても、バレなければ大丈夫とか、有り得ないですわ。


お屋敷で虐げられている子女を虐めたり、その子供の持ち物を盗んだりなど、日本の常識でもあり得ないでしょう。


なのにバレた時は、貴族以上に酷い罰則があるとは、ハンパ感この上ないですわ。


読み物として読んでいた時は、サラリと読み流していましたけど、転生して現実となってみると、違和感しかありません。


まあ、小説は創作世界の事ですから、あまりとやかくいうのはナンセンスですね。



それよりも、記憶を思い出したきっかけは、この国の第一王子である、ウェイントール・ルスコフリスとのお見合いです。


幼い頃に王子との婚約、親は宰相の公爵令嬢、しかも私、銀髪の美少女でしたの。


これはパターン的に、悪役令嬢で断罪されるか、ヒロインを逆ざまぁすると言う、いくつも読んだ小説なのでは?


たくさん読みすぎてどのお話しかは分かりませんけど、この先学園に入学すると、婚約者の王子がヒロインと出会う確率が高いのでは?


だって転生モノのパターンでしょ?


そして前世の記憶のある王道パターンとして、悪役令嬢の私がフラグを折って、断罪の時に逆ざまぁをするんですよね?


…………でも、私、王子のこと好きなんですよね、かなり本気で。


いや、分かりますよ、これって【幼い頃はとても優しかったのに、王子妃教育が進むにつれてだんだんと疎遠になって来て、学園に入学する頃には距離があり、ヒロインと出会ってからは………】ってパターンですよね?


でも、本当に優しいんです、ウェイントール殿下は。


いつも優しくて、気を遣ってくれて、王子妃教育が上手くいかなくて落ち込んでいる時も慰めてくれて、ご自身もお忙しいのに、少しでも時間があれば会いに来てくださるし…。


何より見た目がどストライク!!


なのでぽっと出のヒロインなんかに奪われたくありません。



だから私は考えました。


パターンを知ってるなら、早期対応が出来るのではないか、と。


そこでまず私のした事は、父親に前世の記憶があると言う告白です。

どうやらこの世界には前世の記憶を持って生まれ変わる人が稀にいるらしく、別の世界の記憶がある人もごく少数では居たと記録があるそうで、すんなりと信じてもらえました。


それを踏まえて、これから私や王子に起こる事を告げ、その回避のために力を借りる事になりました。


男爵家が庶子の娘を引き取る書類を提出して来たら知らせてもらう様手配したのですけど、庶子を引き取る男爵家の多い事……。


全ての家を調べましたけど、なかなか【当たり】はなく、この世界は小説とは関係は無いのだろうかと思い始めた頃、私の学園入学の年に、【当たり】がでました。


どうやら一つ年下の様で、今年は関わることがない様です。


この男爵家、それなりの資産がある様で、王子の事を細かく調べている様です。

主に好みを。


娘の入学までに、ウェイントール殿下の好みに仕上げるつもりなのでしょう。


いくら今は優しくても、好みの女性から言い寄られると殿下も靡いてしまうかもしれません。


そして、その一年後には………。



不安の目は潰すに限りますね。

公爵家の為にも、私のためにも、もしかすると私に逆ざまぁされてしまうかもしれない殿下の為にも。


ふふふふふ、公爵家にできない事は少ないのですよ。

火のないところに煙を立てることもできますの。


公爵令嬢である私を貶める事は、公爵家を貶める事なのですからね。

身分の違いを、身をもって味わっていただきましょう。


ふふふふふふ。





あら?冤罪をでっち上げるのかですって?

高位貴族を侮る事が既に罪ですわ。






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