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勘違い

コンビニ

作者: ルーバラン

「ふぅ……とうとう今日、俺が売人をやれるときになったか」


苦節3年……コンビニや工事現場でこつこつとバイトしながら金ためて、色んなところに頭下げて、人脈を作って、コネを作って……先輩からほんとにうだうだと言われまくりながら……とうとう俺が売人をやれるときになった。クスリの売人になるまで……ほんとに長かった。

これからはバンバンとクスリを売りまくってがっぽがっぽ稼いでやるからな。

……さて、最初の客とここのコンビニでこっそりと取引をする予定なのだが……遅いな、何をやってんだ。取引時間の18時を回っているっつうに。


「ったくよお……このくそ寒いってのに、おっかあの野郎、『大晦日なんだからちょっとは働きなさい! 今から洗車やるんだから! これとこれ買ってきて!』とか……夜になってから言うんじゃねえよ。雪降ってるってのに……おおっ、さぶっ!」


……お、あいつか? 取引相手は。確か取引相手の人相はワカハゲ……そこまで若くはないがはげている……うーん、どうなんだ?


「こんちは! 店員さん、シンナーって売ってっか?」


お、お、おい!? このおっさん! いきなり大声で何言ってやがんだよ!?


「シンナーだよ。コンビニで売ってないんか? ちょっと欲しいんだよ」


「バ、バカ野郎!? そんな大声で叫ぶんじゃねえ!?」


誰かに聞かれたらどうすんだよこのおっさん。


「バカだと!? てめえ、店員の癖してなんて言葉使いしてんだよ。ったく、近頃は教育がなってねえなあ……ま、いいよ。シンナーくれよシンナー」


こ、こいつかなりの依存症だな。シンナーのことしか頭にねえじゃねえか。


「何本いるんだ? 1本あたり4000円だが」


「たっけえなあ!? なんだよそのボッタクリ」


いや……相場に比べりゃかなり安いかと思うんだが。


「ったくよお……ただ拭くだけなのにな、何でそんなに高いんだかな?」


「吹いちゃダメだろ!? 吸うんだよ!」


吸わなきゃ気持ちよくなれねえだろうが。


「全く、今までどんな使い方してきたんだよ」


「……は? や、まあ普通の使い方してきたと思うんだけど……それよりさ、早く売ってくれよ。くれないとおっかあが怖いんだよ」


「おっかあ!? お前の母ちゃんが、つ、使うのか!?」


「ああ、そうだけど? あ、おっかあっていっても俺の妻だけどな」


「つ、つ、妻!? お前の家、夫婦でやんのか!?」


「んー……いや、多分息子と娘も一緒にやるな」


「息子と娘!?」


こええ、一家全員シンナー付けとか、どんな家族だよ。


「妻はマジおっかねえけどさあ。娘がマジかわいいんだよ。今ちょうど5歳になったとこ」


「ご、ご、5歳!? お、お前5歳にそんなことさせんのかよ!? お前、頭おかしいだろ!?」


ご、5歳にシンナーなんか吸わせたらどうなんだよ!? マジ人生終わってるってもんじゃねえぞ!? 始まる前から奈落の底じゃねえか。


「だよなあ……お前もそう思うよな。俺もさあ、このくそ寒いのに外でさせるなんてよお。でもおっかあが『子供にもさせるのが我が家の教育方針』って聞かねえんだよ」


「いやいや!? 外とか中とか関係なしにそんなことさせんなよ! 聞くとか聞かないとかそういう問題じゃねえってば! 子供の頭がおかしくなったらどうすんだよ!」


ったくこいつの奥さん何考えてんだ!?


「い、いやあ……まあ、風邪はひくかもしれないけど、頭がおかしくなる事はないんじゃねえかなあ?」


「おっまえなあ! 効果をしらねえだろ!?」


「知ってるよ、シンナー使えば(車が)ピッカピカのツッルツルになるんだろ」


「その通りだよ! (脳が)ピッカピカのツッルツルになるんだよ! 知ってんなら、何でやるんだよ!」


「ピッカピカのツッルツルになったほうがいいだろ?」


「いいわけないだろ!? バカかお前は!? ああ、バカだよな、バカだもんな、ピッカピカのツッルツルにお前は既になっちまってんだもんな……でもな! 子供には罪はないだろ! 頼むから、子供にはさせないでくれよ……」


「あ、ああ……何でお前がそこまで俺の子供を心配してくれんのか分からねえけど……了解したよ、子供にはさせないようにする。俺が洗うことにするよ」


「うん、うん……それがいいよ。お前も足洗うなんてめっちゃいいことだよ」


よかった……前途洋々な若者の未来と、ついでに老い先短いおっさんを救うことが出来て、本当によかった……。


「や、別に足は洗わねえけど……あ、ちょっと電話だ。うわ、おっかあからか……また小言かねえ……嫌やなあ」


しかし……売人が買人に『買うんじゃねえ』なんてありえねえよなあ……まだ仕事してないけど、こんなこっちゃ仕事なんて出来やしないよなあ。


「あー、もしもし、おっかあ? 何? 今どこにいるかって? コンビニだよコンビニ、シンナー買おうと思って。あん? そんなところにある訳ない? あ、そうなの? ……ああ、ああ、ごめんなさいごめんなさい。お小言は帰ってから聞きます。へ……えっ? ミキが風邪ひいた!? お前、何やってんだよ!? どうせ外の窓拭きでもさせて風邪ひかせたんだろ! ああ、わかったわかった。風邪薬買ってけばいいんだろ? 今コンビニにいるから薬売ってるか聞いてみればいいんだろ? ……はい、はい、りょーかい、んじゃ、切るからなー」


うん……これからシンナー、クスリ、ドラッグ……売りまくって儲けまくろうと思ったけど……うん、やめた! 俺も売人から足洗おう!


「なあ! 店員さん、クスリって売ってっか?」


「てめえ! ふざけんなあ!」


シンナーは洗車、ペンキ落とし等などに利用。

よく落ちます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い! なんという食い違いww [気になる点] 三点リーダー(…)を使いすぎだと思いました [一言] でも、全体的のストーリーが面白くてよかった 子供がシンナーっていうのがツボにはまりま…
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