ゆめの中の小さな楽園
皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます! クリスマスイブならではの短編を、ここで投稿させていただきたいと思います。
前置きが長くなっては聖夜に間に合いませんので、本編をお楽しみください!
人々が夢を求めてあちこちを彷徨うようになった時代。
鈍色の空から雪が降り続ける、寒い冬の日のことでした。
狭い部屋のなかで、みんながそうするように、太郎くんはゆめのなかへと分け入りました。
「おおぉ……」
ゆめのなかに入り込んだ瞬間、太郎くんは思わず声を上げてしまいました。
いろいろなことが起きる現実とは違って、ゆめのなかはとても温かくて、心地よくて、太郎くんはたちまち夢中になってしまいます。
とても心地のいい夢を見られるという噂を聞いてこの場所を訪れた太郎くんでしたが、これは噂以上のものだ──あまりの心地よさに心を奪われそうになりながら、頬を綻ばせました。
ゆめのなかは狭い道のようでもあり、広い野原のようでもあり。暁の光と共に始まる未知の世界のようでもあり、すぐに夜へと沈んでいく夕焼けの美しい空のようでもありました。
「すごい……」
太郎くんは、もうそんな声を漏らすことしかできませんでした。ゆめのなかにいるのはとても幸せで、もうこのままゆめのなかで溺れてしまってもいいと思うほどでした。
「もう最高だ、最高だよ。ずっとここにいたい。ずっとこの中で埋まっていたいなぁ!」
汗をかきながら、太郎くんは笑います。
口伝てでしか広まらないのも納得です。こんな素敵で幸せなところ、みんな独り占めしたくなってしまうに決まっています。それでも太郎くんにゆめの中に辿り着けたのは、日頃疲れきってしまっている太郎くんに、サンタさんがクリスマスプレゼントをくれたからなのかも知れません。
甘いミルクのような満足感が、太郎くんの全身を包みました。
深い幸福感に浸り、もうずっとこのままでいいと思った太郎くんですが、人はいつまでも夢を見てはいられません。
ピピピ……ピピピ……
無機質な鐘の音で、太郎くんの夢はおしまいです。
「もうこんな時間なんだね」
名残惜しそうに呟きながら、太郎くんはゆめの中から抜け出て身支度を整えました。また次もここに来られるだろうか──そう思いながら、太郎くんはニッコリと笑って言いました。
「ありがとう。とってもよかったよ、ゆめちゃん」
ゆめと呼ばれた女の子は少しの間黙ったままでしたが、やがてゆっくりと笑顔を作って「よかった」と答えました。
ゆめの中の楽園は、誰に対しても平等に開かれているのです。太郎くんにも、太郎くん以外の人たちにも。
部屋から立ち去った太郎くんのスマホが鳴りました。きっと奥さんがお土産をねだっているのでしょう──今日はクリスマス。大概の人たちが家族や大切な人たちと過ごす夜なのですから。
人々が夢を求めてあちこちを彷徨うようになった時代。
特別な夜にあっても、ゆめの中の楽園を求める人々は後を絶ちません。そんな人たちを、ゆめはいつだって受け入れるのです。
もちろん、今日も。
前書きに引き続き、遊月です。本作もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪
なんと本日はクリスマスイブです。私は家族へのプレゼントを買った以外はまったくいつも通りの日曜日を過ごしていましたが、皆様はいかがお過ごしですか? ひょっとしたら小さな女の子たちに煽られるようなASMR音声を聴いて過ごされていたりするのでしょうか? いいですよね、私も大好きです。
閑話休題。
今回は、安らぎたい人たちの楽園のお話でした。疲れてしまう現実世界、たまにはゆめの中に入ってしまいたいと思うのかも知れませんね。
また別のお話でお会いできれば幸いです♪
ではではっ!!