表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王命で敵対する公爵家の令息と結婚させられたのだけど……。あなた、無事に初夜を迎えられるようにって、惚れ薬を飲まされたの?  作者: 新 星緒
《王命で敵対する公爵家の令息と結婚させられたのだけど……。あなた、無事に初夜を迎えられるようにって、惚れ薬を飲まされたの?》
1/14

1・国王命令

ヒロイン・ローザリンデのお話です



「いい加減にしろーーっ!!」


 国王の怒声が轟き、誰もがビクリとして体を竦めた。かくいう私も。

 恐るおそる玉座に目を向けると、立ち上がった彼が、怒りで顔を真っ赤にしてフルフルと震えている。

 今は第一王子の誕生を祝う会の真っ最中。そんなめでたい席だというのに、突然の国王の激怒に王宮の広間は緊迫感に包まれた。


 即位してまだ一年弱の若い国王レイルズは温厚で寛容。声を荒らげたことなんて一度もない。その彼が激昂しているのだもの。血の気は引くというものよ。ましてや怒りを向けられているのが自分の親ならば――。


「ヒュブナーにカーマン」

 と、国王が目前に立つふたりの名前を呼び捨てにする。いつもは爵位をつけるのに。

「即位してから私は何度も何度も頼んできたよな。我が国のたったふたつの公爵家がいがみ合うのは、やめてほしい、と」


「はい……」

 国王の父親世代のふたりの公爵が、うなだれる。

 小国である我が国に、公爵家はふたつしかない。『東のヒュブナー家』と『西のカーマン家』。歴史書によると、両家は建国のときからの犬猿の仲だそうだ。


 でもレイルズ国王は、それをよしとしなかった。即位して最初にしたことが、両家の仲を取り持つことだった。とはいえ長年の軋轢や憎しみや慣習は、そう簡単には変えられない。


 ということで両家の仲は今でも最悪だし、常に反目しあっている。

 だけどどうやら、生まれたばかりの御子の前で嫌味の応酬をするふたりの公爵に、国王は限界に達してしまったみたい。


「いくら言ってもわからないのならば!」国王がふたりの公爵を順ににらみつける。「私も強硬手段に出る」


 強硬手段!

 まさか両家とも取り潰し!

 そんなことになったら……


 ……まあ私は庶民として頑張ればいいわ。なんとかなるでしょう、命さえあれば。幸い先月に成人になったところだしね。

 来月は挙式予定だけど所詮は政略、グイドには新しい花嫁を探してもらえばいい。むしろ、彼は心に秘めた想い人がいるみたいだから、ちょうどいいかもしれないわ。


 なにも問題無し!


 落ち着いて国王を見る。と、バチリと視線があった。

 なぜ今私と?

 首をかしげる。

 けれど国王はすぐに目前のふたりを見て低い声で言った。


「両家とも、来月長男長女が結婚するな」


 そうなのよね。競い合いすぎて、ヒュブナーの第一子たる私ローザリンデとカーマンの第一子たるディートリヒは一日違いで同じ聖堂で挙式を行う。私のほうが一日先だけど、それはくじ引きで決められただけ。先を引き当てたお父様は飛び上がって喜んだらしいわ。

 ついでに言えば彼と私は生まれた日も一日違い。悔しいことに、ディートリヒが先なのよ。


 でもこの流れって、結婚式の中止命令かしら。


「予定は変更だっ」とレイルズが叫ぶ。「結婚はローザリンデ・ヒュブナーとディートリヒ・カーマンで行え。これは国王命令だからな、背けば謀反で一族郎党国外追放だ!!」


 な、な……


 結婚!?

 私がカーマン家のディートリヒと!

 十八年間、ろくに口をきいたことがないあの男と!

 そんなの、冗談じゃないわ。

 それなら庶民になったほうがよっぽどマシよ。



 ……だけど一族が全員国外追放となると、命令に従うしかないかもしれない。


 そっとディートリヒを盗み見る。

 彼は不愉快極まりないと叫びだしそうな顔をして、私を睨みつけていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ